富田さん:
はい,そうなんです。オーディションに受かったのは,奇跡なんじゃかな? っていうぐらい,信じられなくて,嬉しくて。
4Gamer:
マネージャーさんからの連絡を,電車の中で受けて,泣いてしまったという。
富田さん:
はい。……どうしてご存じなんですか? 私,どこかで言ったかなぁ(注:レ・ミゼラブル公式サイト内のコンテンツ「ムラタ日記 番外編1」)。「電車の中なんで切ります」って言った直後に,「受かったよ」って言われて,「え!?」って,すぐに電車を降りて,泣いて。
4Gamer:
電車に乗り合わせていた人が,間違いなくびっくりするシーンですけど,ご本人にとってももの凄く劇的な場面ですよね。
富田さん:
本当ですよね。連絡をとりあっていた友人と一緒に受けたんですけど,その子も受かったんで,さらにびっくりしました。
長期間のオーディションだったし,しかも絶対にダメだと思っていたんですよ。これまで裏声なんて出したことはなかったのに,裏声で歌わなきゃいけない役であり曲でありで,地声をほとんど使っちゃいけないんです。エポニーヌとの対比をつけるために。
4Gamer:
小さな頃から,この舞台,しかもコゼット役には憧れていたんですよね。
富田さん:
はい。だから稽古に出ても,まだ実感が湧かないんですよ。嬉しすぎて。チケットに「富田麻帆」って書いてあるのを見ても,「本当に出られるのかなぁ?」っていまだに思いますね。台本をもらったときには,さすがにちょっとだけ実感が湧いたんですけど。台本がまた凄く分厚いんですよ。
4Gamer:
台本の厚みと重みの分,実感が湧いてきた……と?
富田さん:
ええ。でも,やっぱり実感っていう意味では……まだまだですね。だから本番が楽しみなんです。だけど,まだしばらく本番の日は来てほしくないです。もっといっぱい詰め込みたいんですよ。下積みの時間がもっともっとほしくて。
4Gamer:
レ・ミゼラブルの公式サイトには,新年のあいさつの動画が掲載されていますよね。これまでに見てきた富田さんは,元気に騒ぎながらしゃべるという印象が強かったのですが,それとはえらく違っていて凄く面白かったです(笑)。
富田さん:
アハハハ。やー,あれは,コゼットの衣装を着ちゃったっていうのもありますよね。あの格好をしてしまうと,背筋がピンとしちゃうんですよ。衣装を全部着けたのは,あの日が初めてでしたし。だから,小さな頃からの憧れとか,いろんなものがこみ上げてきて,凄く嬉しくて。それで,改まっちゃったんですよね(笑)。でもたぶん,本番でもあんな感じだと思いますよ。
4Gamer:
では,これまでの富田さんを知っている人も,要注目ですよね。これまでと違う富田さんが見られるぞ! ということで。
富田さん:
はい。一幕では,アンサンブルでも出るんですよ。それはコゼットとは違う感じで演じようかなって計画しています。一幕では,コゼットではあり得ないようなシーンがけっこうあるらしいんです。私も,この舞台に出られるようになるまで知らなかったんですけどね。きっと今までコゼットをやってきた方も,コゼットとは違う感じでアンサンブルをやっていたのかな? と思うんですけど。
4Gamer:
観ていた舞台に出てみると,きっと見ているだけでは分からなかったことも分かるものなんでしょうね。
富田さん:
そうですねぇ。とてもスケールの大きな物語を,舞台では3時間に凝縮しているんですよ。だから広げれば広げるほど,知らないことがいっぱい出てくるんです。マリウス(注:コゼットに思いを寄せる青年)はこのときこういう気持ちだったからこそ,こういう歌を歌ってるんだな,とか。マリウスとコゼットの関係だったり,コゼットが抱える寂しさだったり。
4Gamer:
フットサル同様,知識が増えていくことで,さらにはまっていきそうですね。
舞台稽古は,どれぐらい前に始まったんですか?
富田さん:
3か月ぐらい前ですね。皆さん,とてもいい方達で,レ・ミゼラブルについて話し合ったりとか,いろいろ教えていただいたりしています。ここで得るものは,きっと大きいでしょうね……。だって,周囲には本当にうまい方しかいないんですよ。それだけに,プレッシャーもありますけど……。
でも,のびのびやろうと思ってます。もう,恥をかこうと思ってやってます。これまでは,恥をかくのが凄くイヤだったんですけど,今回は恥をかいて,どんどん成長していこうと思っています。
4Gamer:
猪木イズムですね(注:引退をかけて小川直也に挑んだ,故 橋本真也に向けて,アントニオ猪木が贈った詩に由来)。分からないと思うんですけど。
富田さん:
分からないです。今,どうしようと思っちゃって(笑)。
4Gamer:
いえ,それでいいです。気にしないでください。
えーと。本番まで,あと4か月ですね。
富田さん:
正直,焦り始めてますね。時間が過ぎるのが,びっくりするぐらい早いんですよ。いまのところ,稽古は週3日なんですけど,4月からは毎日になるので,本当にそっちにかかりきりになるんですよね。でも,かけがえのない経験をさせてもらってるなって感じています。この経験を,今後の活動にも生かしていきたいです。
4Gamer:
今後の活動としては,どんなことをやっていきたいと思っていますか?
富田さん:
やりたいことはいろいろあるんですけど,小さな頃からやってきた舞台は今後も続けていきたいと,マネージャーさんとも話しています。
4Gamer:
やっぱり舞台が一番お好きなんですか?
富田さん:
帰る場所,って言ったら変かもしれないですけど,安心できる場所なのかな? 色々なものに挑戦していく中で,舞台があるとちょっと安心しますね。舞台で育ってきましたから。
4Gamer:
先ほども少しうかがいましたが,富田麻帆として歌を歌うときにも,舞台で育ってきた経験が生きているんでしょうね。
富田さん:
意識はしていないんですけど,そういう部分はありますよね。アップテンポの曲を歌うときは,ライブ仕様というか,「イエーイエー」ってなってるんで,それは舞台ともまた違う世界だと思うんですけど……。ゆっくりの曲を歌うときは,「舞台っぽくなってる」と言われます。やっぱりそういう曲を歌っているときは,凄く楽しいですし。きっと,経験してきたものが自然に出ちゃうんでしょうね。
4Gamer:
では最後に,一応も何もバリバリのゲーム媒体としては,ゲームの話も聞いておこうかなと思うんですが……。まず,PCはお持ちじゃないんですよね。
富田さん:
そうなんですよ。残念ながら。
4Gamer:
一時期,ニンテンドーDSでは遊んでいたとか。
富田さん:
遊んでましたねぇ。でも最近は,舞台の歌を歌うのが日常なので,ゲームもやってないし,漫画も読んでないんですよ。
4Gamer:
「アイドル漫画道場」(注:スカイパーフェクTV!の「エンタ!371」で放送されていた,漫画情報バラエティ番組。共演は喜屋武ちあきさん)に出ていたのに。
富田さん:
出ていたのに! ……って,詳しいですね(笑)。この間,漫画道場のスタッフさんに久しぶりにお会いして,「漫画読んでる?」って聞かれて,「いや,全然」って答えたばっかりなんですよ。映画も頻繁に観に行っていたんですけど,ここ2〜3か月はほとんど見てないですねぇ。
とにかく常に,頭の中でレ・ミゼラブルの曲が流れています。だから,本番までには全編通して歌えると思いますね。それぐらい,ずーっと歌ってます。
4Gamer:
生活のほぼすべてが,レ・ミゼラブルになりつつあるわけですね。本番まで体を壊さないよう,気をつけてくださいね。
富田さん:
そうですよね。フットサルのやり過ぎで,怪我などしないように気をつけないといけませんね。
4Gamer:
6月の舞台まで,アルバムを聴きながら楽しみにしています。これからも炉火純青(注:「ろかじゅんせい」。2006年3月に活動休止した,女性版 一世風靡を標榜するユニット「雅」での,富田さんのキャッチフレーズ)目指してがんばってください。
富田さん:
はい。炉火純青と言われるように,がんばっていきたいと思います。