

初期国家選択画面から国旗が二つ脱落。1953年までにあと二つくらい減らす予定。もちろん減る国旗にイタリアが含まれないように努力する
ローマ帝国の復興を掲げて東欧の火事場からICを稼ぎ,内戦直後で混乱するスペインに殴りこんでイベリア半島を席巻,バルバロッサ作戦の背後をとってドイツを征服したイタリア。大陸ヨーロッパの覇者となったものの,いまだ有効ICはイギリス以下,ソビエトとは肩を並べるべくもない。果たしてここからムッソリーニは,ローマ帝国の完全復興をなし得るのだろうか?
というわけで,小賢しく領土拡大を続けるイタリアの第2回は,対ソビエト戦からとあいなる。ローマ帝国ってソビエト領にまで広がっていたっけ? といぶかしむ向きもあると思われるが,偉大なるローマ人は(たいへん気まずいことに)黒海沿岸にも植民都市を建設していたのである。いや正直,ドイツとポーランドは進呈するから,黒海沿岸の旧ローマ領と交換してくれないかなあ……。
この連載は,第二次世界大戦あるいはその後の歴史に関わった,いかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていません。ときに過激な表現が出てくることもありますが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものですので,あらかじめご了承ください。

イタリアの研究チームを一望する。この程度でローマの復興とか言っていたかと思うと
さて本編に入る前に,これまで紹介する機会のなかった,便利なゲーム付属ツールを紹介しつつ,イタリアが背負っている技術的ハンデを細かく分析してみたい。
まずは右の画面を見てほしい。これはドゥームズデイ付属のシナリオエディタを使って,イタリアの技術チームの一覧を表示させたところだ。ぱっと見てまず分かるのは,スキルの値の単純な低さ。原子物理学者エンリコ・フェルミ(1938年に退場)とマッキ社の6が最高で,平均すると5を切る。
ますます悲しくなるだけではあるが,ここで次の3枚の画面を見ていただこう。順に,アメリカ,ドイツ,日本の技術チーム一覧である。
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左から順にアメリカ,ドイツ,日本。アメリカは見える範囲で最低スキル値が5。ドイツもそれに近い。彼らに「効率」なんていう言葉を使われたくない気分満点 |
アメリカとドイツは研究チームが1画面に収まっていない。数が多いからといって一概に偉いというわけではないが,チーム数は研究の柔軟性の問題として,展開に影響を与える。
またスキルの値もかけ離れている。アメリカやドイツには8だの9だのが乱舞し,それに比べるとちょっと低いかなと思える日本ですら,スキル4が最低ランクだ。……正直,一つくらいイタリアに分けていただきたい。
さらに,こちらの資料も見ていただこう。順に満州国・オスマントルコ・フィンランドである。スキルの値だけ比べると,イタリアはフィンランドに及ばず,満州国やオスマントルコとほぼ対等であることが分かる。いや,分かりたくないけど。
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同じく満州国,オスマントルコ,フィンランド。イタリアから見てだいぶ仲良くなれそうなラインナップである |
問題はスキルの値だけではない。技術開発チームが持つパラメータにはスキルと適性があり,どんなに高いスキル値を持っていても,研究項目に適性が合致していないと,無駄に時間がかかる。
ここで再びエディタを見てみよう。今度は具体的に開発すべき技術と,イタリアの技術開発チームが持つ適性の噛み合わせに注目する。
イタリア(上)とドイツ(下)の,歩兵関連の開発力比較。比べてはいけない相手だが,一応。陸軍の基幹となる部隊を研究する組織で,これだけの差がある
まず歩兵関係。この部門では,イタリアではブレダ社が最適な研究チームということになっているが,それでも適性マッチングは2項目に過ぎない。これが例えばドイツのモーゼル社なら,4項目でマッチする。スキル値も含めて埋めがたい差だ。
もっとひどいのは装甲関係。実用的な戦車の基礎ともいえる「基本型中戦車」の開発に当たって,イタリアで最良のチームはフィアットである。適性のマッチングは4項目あるが,最も時間のかかる小研究5で適性がマッチしていない。ドイツでもクルップ社が4項目のマッチングだが,小研究5で適性がマッチしているので,効率は段違いだ。
4か所もマッチした研究チームがあるんだから恵まれてるじゃないか,という印象を抱くかもしれないが,実のところフィアットは非常に多忙な研究チームで,車両修理関係はすべてフィアット頼み,機械化歩兵から各種火砲,対空砲,IC増加効果のある工業関連技術,情報関連技術などについて,ことごとくフィアットに適性がある。
ではフィアットで装甲を研究している間に,あるいはフィアットが工業関連技術や火砲を研究している間に,他社がそれ以外を研究するという分担は可能だろうか? そう思って次点の適任チームを調べてみると,非常に頻繁に顔を出すのがマッキ社である。だが,マッキは航空機開発のエースなので,マッキにそれ以外を研究させると,肝心の航空機開発の進捗が伸び悩む。
イタリアには,マッキのタイニー版のようなマルケッティ社があるが,マルケッティのスペックは満州飛行機製造と完全に同等である。マルケッティに航空機開発のメインを張ってもらうという選択は,空軍技術での遅れを覚悟することと同義だ。
もちろん逆転の発想として,マルケッティに装甲を任せて,マッキは航空機に専念,フィアットを火砲そのほか細かな必須技術の研究に回すという選択はある。だが,この場合は装甲関係での大幅な遅れを覚悟しなくてはならない。要するに,イタリアの技術は絶対にどこかが大きくへこむのだ。
唯一の救いは,生産ライン関係の研究にほぼ万全の適性をもつランチア社の存在だろうか。数を揃える体制だけは他国にそう遜色ない速度で完備可能だということが分かる。
ちなみに暗号関係と海軍ドクトリン関係は悲惨の一語に尽きる。ここに至っては適切な代打すらいない。かといって暗号関係を捨てると,そのまま戦闘でのペナルティにつながるので,とにかく歯を食いしばって遅々とした進捗を見守るしかない。
かようにこのエディタは,全体的な戦略を練るに当たって,なかなか便利に利用できる。とくに,個々の研究分野に対して最も効率のよいチームを,先に調べておけるのが重要だ。意外なチームが意外な効率を発揮していたりすることは多いし,これがまたドクトリン研究のように即効性のある研究分野に限って,不思議な適性が生じていたりするので,状況がシビアな国(でも研究機関に選択の余地がある,シビアすぎはしない国)でプレイするときは,前もってチェックするか,同時に起動させておいて逐次確認していくかするとよいだろう。

パルチザン活動で真っ赤な欧州。とりあえず,これをなんとかしないことには,次のステップに進めない
さて対ソ戦の前には,重要な処理案件が二つ生ずる。一つめは外交処理で,戦後ドイツの処分と属国関係の見直しが課題となる。
ドイツを属州として独立させた場合,イタリアの基礎ICは激減する。代わりに復興ドイツはかつての研究機関すべてを引き継ぐので,イタリアは世界最高の研究機関が生み出した青写真を使って,素早い技術開発が可能となる。またヨーロッパは全体にパルチザン発生率が高いので,パルチザン対策という点でも再独立は十分考慮に値する。
属国の処遇について考えてみると,オスマントルコはいまだ十分な軍備ができていないことにも注意を払う必要がある。トルコと軍事同盟を締結して対ソ戦争に突入すると,イタリアはトルコ方面から侵攻してくる赤軍のことを,考えねばならないだろう。半面,トルコはバクーのお隣なので,イタリア軍が速攻でバクーを突くという選択肢も出来る。良し悪しである。
これらの案件については最終的に,ドイツの再独立はなし,属国はすべて傀儡政権を解体,軍事同盟は締結しないという方針を採った。技術開発面では最悪の選択ではあるが,理由はある。
まずドイツについては,やはりIC地帯を手放せない,という単純な理由である。再独立させたドイツと軍事同盟を結べば,ドイツからの援軍派遣を期待できるが,派遣された援軍を支えるだけのICが,イタリアに残らないのでは話にならない。
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オスマントルコとエチオピアの傀儡政権を解体。このあと,独立保障を行う。しばらくは独立独歩の国家として頑張れ |
また属国について説明すると,国力は低いが好戦度は高い同盟国というものは,思いがけない方向から宣戦布告されたり,ひどいときには思いがけない方向に宣戦布告したりするという問題がある。アメリカやドイツくらいの地力があればともかく,イタリアにそういった不測の事態を捌ききるだけの力があるかどうか,非常に疑わしかったため,多少の不利と引き換えに安全を買ったのである。とりあえず旧属国に独立保障はかけておいたので,そうめったに他国の餌食にされることもあるまい。

猛然と守備隊を生産。当然だが99個師団作りきる予定はなく,不要になったところでラインごと中止
もう一つの処理案件というのは,生産ラインの見直しである。現状,イタリアは猛烈な勢いで駆逐戦車を量産している。普通ならばこの対ドイツ戦に偏ったニッチなラインを止め,中戦車の生産に移行するわけだが,これをどうすべきか。赤軍も機甲戦力が強いのだから,このまま続行するのも一つの考え方である。
この問題については,あえて駆逐戦車の量産を維持することにした。ドイツ併合のタイミングから戦車の量産を始めても,結局は東部戦線の赤軍と同程度の軍隊にしかならない。戦車を作ればピンポイントで強力な軍隊を編成できるが,駆逐戦車+歩兵の量産ラインを維持すれば,火力でまんべんなく赤軍を凌駕する軍隊を維持できる。それくらい,完全徴兵制下における連続生産ボーナスはすさまじいのだ。
だが,駆逐戦車と歩兵が主体の陸軍というアイデアには,いくつか難点がある。そのうち最大のものは,駆逐戦車をつけたとしても,歩兵師団オンリーの陸軍が抱える最大の問題は,解消されないという点だ。
それが端的に表れるのは戦闘中ではなく,戦闘後である。歩兵は,戦車と違って防御関係の能力が低いため,戦闘が終わると部隊の指揮統制値がかなり大きく低下する。それゆえ,指揮統制値の回復が遅くなってくると,戦線を進められなくなるのである。加えて移動も遅いので,移動中に指揮統制値が下がり,侵攻先で反撃されて撤収というケースも増える。
これは歩兵そのものが持つ弱点なので解決は難しいが,筆者は「敵の倍の数を揃え,攻撃が成功した直後に無傷の部隊を進軍させて戦線を前進させる」という方策を採った。質は低いが動員師団数なら負けない,徴兵制下の歩兵軍ならではの方式だが,なんとなく,歩兵による無停止進撃戦術という気もしないでもない。
ちなみに駆逐戦車は物資消費,石油消費ともにかなり控えめな設定であり,攻撃部隊は常時「攻勢」を維持しても物資欠乏や石油欠乏に陥る心配はない。むしろ攻勢をかけてなんぼの編成なので,攻勢ボタンを忘れないように心がけたい。
駆逐戦車そのものについては,攻撃力こそ対戦車砲より高いが研究コストも高い,自走砲に比べて対歩兵攻撃力が劣るといった,まことにもっともな指摘も成り立つと思うが,イタリアでは新型兵器の開発こそがネックなのである。こまめに最適な編成を追求するのではなく,量産能力を生かす方向で行こう。

いよいよ対ソ戦の幕開け。厳冬期だが,逆に厳冬期だからこそ可能となる作戦もある。イタリア人向けとは思えないが,それは言わぬが華だ
というわけで外交方針をまとめ,ヨーロッパ中に守備隊や歩兵を撒き散らしてパルチザン対策および連合軍による不意の宣戦布告&上陸作戦への備えとし,大量の駆逐戦車と歩兵を伊ソ国境(というか,この言葉がすでに意味不明だが)に積み上げたところで,おもむろにソビエトに宣戦する。時に1943年の2月,ソビエト厳冬期の宣戦である。
あからさまに攻勢と大突破に不向きな季節を選んで宣戦したのには,もちろん理由がある。ソビエトはいまも日本と戦争中であるのみならず,中国統一戦線が日本と電撃的に和解,新たに満州を手に入れたソ連に宣戦したという,納得できるが信じがたい国際情勢を踏まえての冬季宣戦なのだ。
赤軍の主力は極東方面にあり,満州を押し潰そうとしている。だが満州が併合されると日本は対中戦争の停戦を選び,そこからは中国統一戦線+日本 vs. ソ連の戦争になる
ソビエト極東地域はあまりソビエト軍の編成と戦術に向いた地形ではないが,それでも弱体な日中連合軍では,真正面から圧力を受けたら守りきれまい。もう1943年に入っているとあって,ドクトリン研究や戦車の開発も進んだ「強いソビエト軍」が,完成しつつある時期である。放置しておけばソビエト軍は中国の赤化(毛沢東主義にあらず)をたやすく実現するだろう。
ソ連軍が電撃的に中国領を侵食できていない理由は,地形と季節である。冬季の凍結,吹雪によるペナルティはソ連軍にも重くのしかかり,破竹の進撃を押し留めているのだ。これは逆に言えば,雪が解け,ソビエト軍が山岳部を突破すれば,あっという間に中国を席巻するだろうということだ。
であるからには,開戦を急がねばならない。かつてバルバロッサ作戦を始めたドイツの背後を刺したように,今度は極東に主力を回しているソ連の背中を刺すのだ。刺すというより,殴りつけるといった風情の軍隊ではあるが。
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陸軍の戦闘修正一覧。冬季および泥濘のペナルティのすさまじさが目を引く |
かくして,大量生産した戦術爆撃機と,バルボによるドクトリン開発で高い指揮統制値を持つに至った迎撃機が,冬の伊ソ国境を覆い尽くした。そして爆撃機の阻止攻撃によって弱体化した赤軍前線に,歴史に残りかねない数の駆逐戦車が突入する。赤軍は数の軍隊だが,こちらとて少なくとも今この戦線においては,それを上回る数を用意している。
戦闘は不吉な停滞を示しつつも,爆撃機の支援と予備兵力の投入によって,重い重い冬季ペナルティは克服された。最初の攻勢は,無事成功を収めたのである。

4月になって雪解けが始まった段階で,すでに赤軍前線には大きな綻びが生じている。画面内の赤軍は20個師団強だが,イタリア軍北部戦線は1プロヴィンスに29個師団を集めている
戦線が崩れたら,血の匂いに群がるピラニアのごとく,大量の戦術爆撃機が追い打ちにかかる。前線に空いた穴を埋めるため,赤軍は移動を開始し,これがまた戦術爆撃機の的になる。そもそも正面戦力における数的優位を確保していたイタリア軍だが,開戦1か月後には,その差はもはや覆しがたい差となった。
冬季攻勢のポイントは,攻撃に出るのはとても困難だが,いったん成功し,進撃プロヴィンスを確保してしまえば,プロヴィンスが奪還される心配はほとんどないということだ。冬季ペナルティはもっぱら攻撃側に重く課せられるため,プロヴィンス確保後の防御戦は容易なものになる。イタリア軍は空陸共同で火力を集中,総力を挙げて一点突破したら進撃先を確保,という泥臭い作戦をくりかえすことで,じりじりと戦線を進めていった。
冬季攻勢には,これとは別のメリットもある。降雪時または氷点下のプロヴィンスでは,攻撃効率だけでなく,行軍速度も低下するのだ。無理にでも攻撃して,防御側に後退を強いれば,防御側は後退にも再前進にも時間がかかる。
移動に時間をかければ,それだけ指揮統制値も下がる。雪原を越え,疲弊して防御ラインに復帰してきた敵兵を,再び撤退に追い込むのはそう難しいことではない。
加えて,移動速度が低下するということは,それだけ長期間爆撃にさらされるということだ。足の長い戦術爆撃機であれば,戦線の裏でのろのろと動いている敵軍を,次々に崩壊させていくこともできる。
もちろん移動速度ペナルティがあるので,冬季攻勢で大突破を果たすことはほとんど不可能だ。だが冬の間中地道に消耗を強い続けることで,夏季における大攻勢と突破が容易になる。
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夏が近づく東部戦線では,赤軍の戦線が寸断されつつある。局地的な例外を除き,イタリア軍は随所で数倍の戦力を保持している |
日本がアメリカ軍による海上封鎖を突破してシベリアに上陸作戦を敢行。だが,補給を届ける輸送船が連合国の通商破壊でボロボロに |
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雪が降る寸前にモスクワの攻略に成功。実はこのときモスクワ近郊ではすでに降雪が始まっており,偶然モスクワだけがまだ雪害と氷点下の影響を受けていなかった。僥倖である |
今回の場合,1943年夏にはすでに戦争の行方は確定していた。スモレンスク正面の赤軍前線は8月には崩壊し,9月にはレニングラードが陥落,赤軍北方戦線は消滅した。10月にはモスクワが陥落,ちょうど雪が降り始めたこともあって,この段階で赤軍がモスクワを奪還できる可能性はなくなった。
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冬季攻勢その2。赤軍の前線を完全に包囲する。赤軍も包囲を回避しようと努力したが,氷点下のペナルティで包囲網をこじ開けることに失敗。そのまま殲滅 |
イタリア軍は1944年に入ってからも冬季攻勢を続け,これによってソビエトの前線ほぼすべてを包囲,2月には包囲網が閉じ,3月には最後の赤軍戦線が包囲網の中で消滅した。4月に入った段階で,イタリア軍の前に存在する敵はスカンディナビアのフィンランド軍と,そこに混じっていた赤軍の残存部隊だけで,あとは南部に守備隊が散在するのみとなった。44年の後半,冬にはウラル以西を完全制圧,イタリアとソビエトの基礎ICが並ぶ――が,ここから先がもはや消化試合なのは,誰の目にも明らかといえよう。
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この段階におけるソビエトの軍備状況報告。防諜能力が高いのか情報は不鮮明だが,まだまだ余力を残しているようだ。でも,とても227個師団も残っているようには見えないのだが…… |
同時期のイタリアの兵力。騎兵はとてつもない旧式なので,実際のところ戦力外。実質122個師団である。歩兵の半分以上に駆逐戦車が付属しているので,実数よりも戦力は高い |
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ソビエトが南方で反撃に出ようとして兵力を蓄積している。が,スモレンスク正面は戦線が崩壊,ここから北方の突破が始まる |
レニングラード方面に突破して,陥落させる。1943年中盤にもなって互いに1世代前の歩兵が主役と,苦しい台所事情が窺える |
残念なことに,ドイツと違ってイタリアにはソ連を降伏させるイベントがないので,ソビエトを屈服させるにはシベリアをえんえんと進まねばならない。少々うんざりする作業ではあるが,押し切れるときにきっちり押し切っておかないと,もっと面倒なことになるのも事実だ。あきらめて行軍を眺めることにする。

次の戦争に向けた準備。ターボジェットエンジンの開発は列強に比べて1年は遅れているが,とりあえずソビエトでは開発が間に合っていなかったので,問題なかったのだ
単純な作業の背後には,複雑な選択が隠れている。ここで突き当たった難問は二つだ。
その一つは時間という問題である。シベリア横断にはおおむね1年ちょっとかかるので,このまま進めればソビエト併合は1945年から1946年ということになるだろう。そこから兵力を戻してドーバーに集結,準備を終えて本格的なイギリス上陸作戦ができるのは,おそらく1947年から1948年。アメリカの援助で,たっぷりと肥え太っているであろうイギリスを叩くには,遅すぎるのではないかという懸念がある。
もう一つは外交的な問題だ。1945年には日中の停戦期限が切れるので,比較的高確率で日中戦争が再燃するだろう。そうなった場合,ソビエトは日中の双方と停戦すると思われるので,このまま適当なところで戦線を止めて,残りを日中によるシベリア分割レースにまかせるわけにもいかない。
また,ソビエトを併合したらしたで,好戦度が急上昇するので,連合国が突然イタリアに宣戦布告する可能性がある。この可能性を否定できない以上,ソビエト併合までには対連合国戦線を整えておかねばならない。とくにジブラルタルにハイスタックを作られると,かなり困ったことになる。
遅れに遅れて雲南がソビエトに宣戦。遅れる理由もよく分かる。君らソビエトに近すぎるからねえ
とはいえ,いつかは連合国と戦争しないと,ローマ帝国の旧領回復は不可能だ。連合国と戦争し,さらにイギリス本土にも渡るということは,英米の海軍をなんとかして,ドーバー海峡の制海権を握る必要があるということだ。もちろん海軍の準備はあるし,対艦攻撃機の準備もできてはいるが,それ以上に何か特別なトリックを考えねばならないかもしれない――そして考えるだけでなく,英国戦にそのトリックを間に合わせるには,もう仕込みを始めねばならない。
また最悪のケースとして,中国統一戦線がイタリアに宣戦する可能性がある。さすがに国民党中国と勝負して負ける気はしないが,これによって浪費される時間と資源を鑑みるに,できれば起こらないでほしい展開ではある。もっともそうなったらなったで,イタリア領と中国領が接点を持つのは中国北西部の山岳地帯と,場合によっては極東シベリアの予定だから,戦術爆撃機で時間を稼ぎつつ,陸軍の再配置で対応することは可能だろう。
ということでシベリア遠征に必要最低限な部隊だけを残し,ほかの部隊をペルシア方面,ドーバー方面へと再配置していく。イギリスを陥とす前にインドを陥落させておけば,イギリスのICは激減するので,戦争もやりやすくなる。イギリス本土陥落後,カラチにイギリスの首都が移ってしまうと,おそらくインドの労働力とイギリスの技術力が合わさった超軍事国家が誕生するので,その芽を先に摘んでおきたいというのも本音だ。
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フィンランドがどうしても和平に応じないので,ヘルシンキタワーを攻略することに。タワーを維持する国力はフィンランドには残っておらず,ちょっとつついたら自重で倒壊した |

ソビエトを併合。これによって好戦性は一気に跳ね上がる
シベリア踏破が終わって,1946年にはソビエトを併合。懸念された日中戦争はソビエト消滅直後に予想どおり再燃し,日本は極東シベリアと朝鮮半島を舞台に国民党と激戦を再開した。アジアのことはアジアの人達に任せようと思い,最後の空軍をペルシア方面に移動させ,いよいよ連合軍に宣戦布告する。
戦線は大きく分けて四つ。ノルウェー方面,ユーゴスラビア方面,ペルシア方面,ジブラルタルである。アフリカは得ても失っても何も変わらないので当面は放置し,ペルシアから中東を横断してスエズを攻略することを最大の目標とする。最終的にローマ帝国を再興するには北アフリカも占領しなくてはならないが,それは戦況が固まってからということで。
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ペルシア方面から中東になだれ込むイタリア軍主力。どういうわけか敵影はまったくない |
スカンディナビアの制圧完了。小規模な反攻上陸が何回か行われたが,すべて水際で撃退 |
ノルウェー方面は山岳続きのためやや苦戦したが,爆撃機の傘の下,順調に進撃を続ける。途中,英軍が上陸してきて補給線が断たれかけたりもしたが,基本的にトラブルはなくスカンジナビアの制圧は迅速に完了した。
ユーゴスラビア方面は連合軍がほとんどいなかったこともあって,素早い侵攻と包囲殲滅に成功。空軍を出動させるまでもなくイタリア固有の領土(注:アルバニアのこと)はすべて回復された。
ペルシア方面は悪路に阻まれ進軍が遅れたが,とくに重大な問題もなく占領地を拡大。ユーゴを平定し,ペルシアを併合したところで,オスマントルコをローマ帝国同盟に誘う。オスマントルコは中東とパレスチナも領有主張しているため,自動的にこの近辺のパルチザン蜂起頻発地域はオスマントルコに組み入れられていく。まことに便利だ。
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インドとパキスタンの独立。双方とも連合国には入っていないので戦争する必要はない。ローマ領でもなかったし |
ペルシア方面軍は二手に分かれ,一方はインド方面に渡ったが,ここでインドとパキスタンが独立。おまけに両国とも連合国に入っていない。そのため,念のためカラチに栓をするような形で数部隊を残し,残りはすべて中東方面にシフトさせた。
スエズを突破しアフリカ北部を踏破。旧大陸の戦争はイギリス本土を残すのみ
これもあって中東方面ではイタリア軍が連合軍を数で圧倒,微弱な抵抗はあったものの,掃討戦の範囲を超えなかった。アフリカでは連合軍の勢力拡張が続いてたが,それを無視してスエズを横断。スエズにもアレクサンドリアにも英軍の影はなく,なんら抵抗のないままイタリア軍は北アフリカを席巻していった。ジブラルタルは開戦直後に陥落したので,これによって地中海はイタリアが独占することになる。
また,このとき一部の部隊を南下させ,エチオピア領に接触するところまで進軍させた。そこに新たに設置した空港から,戦術爆撃機でエチオピア国境を偵察したところ,連合軍の兵力がほぼ存在しなかったため,エチオピアもローマ帝国同盟に参加させる。戦闘の役に立つかどうかはともかく,広大なアフリカを占領していくには人手が必要なのだ。
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対連合国戦完遂のため,量から質の軍隊に切り替えることを前提に,労働力増加からIC増加の大臣に交代 |
戦車を生産ラインに載せる。連合国と戦争していくには,機甲戦力の質の向上も図らねばなるまい |
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いままで戦車を作っていなかった背景には,戦車と同じくらいのコストがかかる戦術爆撃機の量産に励んでいたという事情も |
こうしてイタリアの大進撃に世界が震撼するなか,逆にイタリアを震撼させる事件が極東で起こった。国民党中国が,なぜかイタリアに宣戦布告したのである! 諸君らとは友邦の書簡を交わした間柄ではなかったのか!……紀元2世紀ごろのことだけどさ。
と,半ば予想していた「最悪の事態」が発生したところで,今回はここまでとさせていただきたい。次回は国民党中国との戦争,そしてローマ帝国再興への道をたどっていきたい,もとい,たどりたい。たどらせて。
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国民党がイタリアに宣戦! 驚きのあまり宣戦直後の画面写真を撮り損ねてしまった。戦争は泥沼化の気配を見せはじめる…… |
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