連載:ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?


ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?

第9回:すべての道はローマに通ず:イタリア(前編)

 

イタリアの工業力は本当にささやか。極論すれば「ICの高い国が勝つ」このゲームで,どこまで奮闘できるのか

 いきなり断言するのもなんだが,イタリアと第二次世界大戦という組み合わせは,あまりはかばかしくない。イタリア陸軍が主役になる映画というものが世の中には存在しているが,いずれの作品もイタリア軍が脆弱で士気が低いことを前提とした構成となっている。米軍=物量,独軍=戦車と同じようなステレオタイプとして,伊軍=弱い,が定着しているのである。
 しかしながら本作におけるイタリア軍は,史実のそれとは異なり,やればかなり頑張れる軍隊になっている。ムッソリーニの掲げた,途方もないローマ再興の夢(そもそもファッショとは,ローマの護民官の杖のことである)を現実に近づけるべく,イタリアがどこまでやれるか見てみよう。

 

この連載は,第二次世界大戦あるいはその後の歴史に関わった,いかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていません。ときに過激な表現が出てくることもありますが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものですので,あらかじめご了承ください。

 

 

ローマ帝国の夢と現実を直視する

 

 さて,普段は現実を直視することから始めるこの連載だが,今回はその前に夢のほうを直視してみよう。物の本で「ローマ帝国」の最大版図を調べたうえで,それを「回復」するとなると,戦う相手は,

  • イギリス
  • フランス
  • スペイン
  • ポルトガル
  • ドイツ
  • すべての東欧諸国
  • ソビエト
  • イラン
  • ペルシア

 ……という顔ぶれになる。これはつまり連合,枢軸,共産のすべてと戦わねばならないということだ。占領範囲にはロンドンも含まれるので,陸軍で枢軸と共産を上回ったうえで,海軍か空軍で連合(多分アメリカ込み)を打ち破り,英国本土に上陸しなくてはならない。要約すると,世界の約半分を征服しろということである。
 ローマ帝国の偉大さを噛みしめたところで,その夢を実現すべきイタリアがどのような状態にあるかを振り返ってみよう。

 

イタリア軍の初期生産ライン。正直潜水艦はキャンセルしてしまってもいいかも

 1936年のゲーム開始時において,イタリアはすでにエチオピアに宣戦しており,民兵を中心とした軍隊がエチオピアに展開している。そのため,軍事ユニットの数はそれなりに揃っている。
 また,海軍はそこそこ充実しており,旧式化した艦艇が目立つとか,空母がないとか,そもそも空母の研究がなされていないといった問題はあるが,世界有数の海軍国である。水上戦闘を行うなら,少なくともドイツ海軍よりは強い。

 

 問題はICと研究チームである。基礎ICが80を割っている――というか64しかない――ので,研究チームは同時に4ラインしか稼働しない。大国が軒並み5ラインで研究可能なICを持つのに対し,単純計算で80%の効率しか発揮できないというわけだ。
 さらに研究チームの弱さも顕著だ。全体的にレベルが低いだけでなく,適性も散漫,とくに装甲ユニットの研究に向いたチームが実質ないのが痛い。また情報関係の研究に向いたチームもなきに等しく,研究の基本的な速度を向上させるのにも時間がかかる。唯一バルボさんだけが空戦ドクトリンの研究機関として際立っているが,彼にしても英米独に輸出すれば「割と便利なおじさん」の域を出ない。そのうえ普通にプレイしていると,バルボは途中のイベントで死んでしまう。踏んだり蹴ったりである。
 資源関係もあまり調子は良くない。とくに石油は供給源がなく,人造石油の技術も低い(開発力が高くない)ため,ほぼ輸入頼みである。苦難の果てにイタリア戦車軍団やイタリア大空軍を組織しても,その先で燃料問題にぶつかるのは必定だ。

 

 いずれにしても,最初の課題は基礎IC80オーバーである。これを可及的速やかに達成しないことには,ほかの大国との差が開く一方だ。燃料問題うんぬんは確かに重要なのだが,燃料問題とは燃料を大量に使う軍隊を持てる国が言うべきことである。1936年のイタリアに,その資格はまだない。

 

エチオピア戦線の様子。イタリアの工業力だと,なかなか司令部まで手が回らない。貴重な司令部は大事にしたい

 

 

世界の放火魔としてのイタリア

 

枢軸に参加,もといローマ帝国同盟にドイツを入れてあげるところ。何事も強気でいかなくちゃ

 IC80を目指す場合,方針としては大きく分けて二つある。一つはいうまでもなく侵略戦争。イタリアのご近所には東欧という火薬庫があり,ここに点火すると,いろいろあったあとでイタリアのICが増える。火薬庫が大爆発するとイタリアも派手に炎上するが,ちゃんと準備しておけばなんとかなるものだ。ならなかったら,まあ,そのときは,その……最初からやり直すわけだが。ゲームっていいなあ。
 もう一つは,イタリア国内に大量の工場を建てることだ。工場建設に専念すれば,2年後には問題なくIC80に到達する。安定した手法だが,2年にわたって研究ラインが4本のまま固定されるのが泣きどころである。

 

 ゲーム的にみて最もクレバーな方法は,東欧の火薬庫に火をつけつつ,国内に工場を建てていくことだろう。東欧進出にはエチオピア遠征軍と国内駐留軍を転用し,なおかつ防御的戦闘を中心とすることで戦争状態をできる限り長く維持する。戦時は国民が要求する消費財の量が減少するので,これで浮いたICを使って軍隊を生産しつつ,じわじわと占領地を増やしていくという算段だ。
 もっともこれは,机上の空論で終わる可能性を考慮しなくてはならない。というのも東欧戦線が本当に大爆発すると,ドイツがイタリアに宣戦するケースが頻発するためだ。とくにハンガリー,チェコといったドイツに近い国々に戦争が飛び火すると,非常に危険である。
 こうなってしまうと,イタリアにとって永遠の都はアジスアベバになるし,イタリア半島を瞬く間に制圧したドイツにソビエトが宣戦したり,そのソビエトに連合国が宣戦したりと,世界がしっちゃかめっちゃかになることもままある。まあ,エチオピアに引っ越したイタリアには関係ないし,関与もできないわけだが。

 

ドイツはたいへん気前よく青写真を提供してくれる。イタリアの貧弱な技術開発チームでも,これがあればだいぶ楽に

 ここにおいてイタリアの破滅を防ぐ最も確実な方法は,ドイツと軍事同盟を締結することである。これでも相変わらず世界が火ダルマになる可能性は残るが,少なくともムッソリーニが真っ先に吊されて世界史から退場することはなくなる。
 とはいえドイツと同盟を結んだのでは,東欧諸国に対する戦争が,ドイツとイタリアによる分割レースになるし,ここでちゃっかりルーマニアやブルガリアが枢軸に加盟して,自国領を増やす場合も多い。戦時体制を維持しつつ,のんびり領土拡張など,やっている暇はどこにもない。

 

 というわけで,今回は基本的に軍事行動に頼った領土拡張を行うものとする。実のところ最終効率は工場建設と変わらない可能性もあるが,他国の首都を占領したときに資源が確保できるため,資源に乏しいイタリアとしては「敵から糧を得る」メリットを優先したいというわけだ。また外交的には序盤でドイツと同盟して軍事的裏づけを強化するとともに,世界一の技術力を誇るドイツから青写真を供与してもらって,技術開発を前進させる。
 ローマ帝国再建の第一歩がゲルマン人との同盟というのもシャクな話だが,なあにローマ帝国がゲルマン人を傭兵として使うのは,史実でお馴染みのことである。ローマ市民のためにせいぜい頑張ってもらおうではないか。

 

 

戦争,戦争,また戦争

 

エチオピアと和平交渉。遠い将来を見据えれば,併合から再独立という流れが望ましいものの,瑣末といえば瑣末な問題である

陸戦ドクトリンを軒並み破棄。実はこれにはバグが残っていて,反撃成功確率などは,ドクトリンを放棄しても加算されたままになってしまう

 まずエチオピア戦は順当に勝利,併合せずに傀儡化することで和平を結んだ。併合してもほとんど得るものはないし,むしろ将来的な対連合国戦で重荷になるだけだ。かといって併合してから再独立させると国民不満度が上がる。というわけで傀儡化で手を打つことにした。
 本当は併合して,イタリアの技術力が上がったところで再独立させるのが望ましかったとも思うが,正直ここでの選択が大勢に影響を与えることはない。そもそもする必要のない戦争なのだから,なかったことにしてしまうので十分だ。
 最初の1年は軍拡と工場建設に投じる。1936年中のユーゴスラビア侵攻も十分あり得るムーブだが,今回は見送った。というのも,今回のイタリアでは,事前に開発されていた陸戦ドクトリンを破棄,電撃戦ドクトリンに鞍替えしたため,最低限の研究が終わるまではユーゴ軍にすら苦戦する。あげく,横からドイツ軍そのほかにユーゴをかっさらわれることが予想されたためだ。こと電撃戦ドクトリンの研究において,イタリアには適切な人材がいるので,意外と進展は早い。

 

 陸戦ドクトリンの再研究のほかには,海軍と空軍のドクトリンおよび技術研究に全力を傾ける。歩兵は最小限の研究を行うが,装甲と火砲については完全にパスする。しばらくのあいだ電撃戦ドクトリンによる優越だけで勝てる相手としか戦争する予定はないし,それ以外の相手と戦争することになったら,軍隊が多少強い程度ではどうにもならない。

 

イタリアの自転車泥棒じゃなくて自転車操業。輸送機と青写真のトレードなどまったく割に合わないし,これらの青写真は「いつか」イタリアに無償提供されるのも分かっているが,イタリアにはその青写真が「いま」必要なのである

 

グラチアーニは電撃戦の研究に適性がある。この人がいなかったら電撃戦への乗り換えは難しい スペイン内戦には当然介入。どっちが勝ったとしても,そのあとでもういちど正規軍が伺いますがね

 

 1937年に入って雪解けを確認したところで,ユーゴスラビアに宣戦布告。戦術爆撃機と陸軍のコンビネーションで順当にユーゴ軍を蹴散らしていく。と,そこにギリシアとトルコからの宣戦布告。こちらから宣戦する手間を省いてくれたのはありがたいが,トルコからの宣戦をどう扱うかは微妙なところだ。
 トルコはソビエトと国境を接している。将来イタリアとソ連が戦争する場合,トルコを握っていればバクーを直撃するという選択肢が出来る半面,イタリア軍はトルコ方面をも守らねばならないという問題が生じる。それだけでなく,何かの手違いで連合軍もイタリアに宣戦してきた場合,トルコはソビエトと中東の連合軍の双方から殴られる修羅場になってしまう。パルチザン発生率は高く,それでいてICはあまり高くないので,できれば長期間のキープはしていたくない。
 一つの回答としては,ドイツAIがトルコと和平するまで放置しておき,戦時体制を維持しつつ東欧平定後の軍拡にいそしむという絵図があり得る。イスタンブールさえ占領しておけばトルコはヨーロッパに上陸できない(トルコ海軍に負けるイタリア海軍ではない)ので,あとは時間が解決してくれるというわけだ。
 だが,ここでちょっと計算してみる。ユーゴ全域を支配し,かつトルコのIC地帯を征服すると,基礎ICは安定して80を超える。IC80ジャストで喜んでいると,パルチザン蜂起一発で80割れして研究ラインが4本に減少,それまで進んでいた5本目の研究ラインが吹き飛ばされて泣きを見ることもあるため,ICにはある程度のマージンが欲しいのだが,そのマージン部分までトルコが提供してくれる。
 というわけで,明日のことは明日考えることにして,トルコに進撃を開始。イスタンブールを占領したころにICは80を超え,トルコ併合によって基礎ICは83に達した。素晴らしい!

 

ユーゴスラビアに宣戦。これに合わせてまずはギリシアが枢軸に宣戦,ついでトルコが宣戦する。おいしくいただく方向で

 

ユーゴ,ギリシアと次々に併合。この間,ブルガリアがこっそり領土を拡張し続けている

 

ついに念願の研究ライン5本を達成。これでなんとか,ほかの大国に大幅な差をつけられずに済む

ハンガリーに宣戦。まさかここから手痛いしっぺ返しを受けることになるとは……

 IC80を超えて一等国の仲間入り(?)をしたところで,余勢を駆ってハンガリーに宣戦する。ハンガリーはまだ,我が枢軸もとい「ローマ帝国同盟諸国」に入っておらず,やるならいま,なのである。しかもドイツとハンガリーは国境を接していないので,ドイツの介入なしに切り取れるのはいましかない。
 というわけでハンガリーに宣戦したところ,緊迫度に耐えきれずついに暴発する国が出現した。なぜかオーストリアがブルガリアに宣戦したのだ。このときブルガリアは枢軸に所属していたため,オーストリアの宣戦はドイツとイタリアも巻き込む。
 普段ならば手間が省けたと喜ぶところだが,ハンガリー戦線に兵力を集中していたイタリア軍はオーストリア国境をほぼガラ空きにしており,また主力がハンガリー領内中枢に切り込む形で配備されていたため,イタリア領内への侵入を許すことになってしまう。北イタリアの工業地帯をオーストリア軍に占領されたことにより,ICは一時的に53まで低下,研究ラインが二つ吹き飛んだ。80超えのマージンなどと,悠長なことを言っている場合ではない。
 もっとも,相手はしょせんオーストリア,すぐさま逆包囲してイタリア領への侵攻軍を全滅させることには成功する。が,ハンガリーを攻めつつアルプスを越える余力はなく,ドイツがオーストリア全域を制圧するのを,指をくわえて見守るのみとなった。非常に悔しい。
 ともあれ,ハンガリーはほぼ全域を制圧,東欧南部は完全に枢軸色に染まった。イタリアの有効ICは100を超え,日本とタメを張れるレベルに到達した。

 

このタイミングでオーストリアからの宣戦。オーストリア国境にいる部隊に,ハンガリーへの出撃命令を出した直後だ ここまでオーストリア軍に蚕食されるも,逆包囲で完結。しかし,これでイタリアのICは,一時的にがっくりと落ち込む

 

 ああそういえば,ここまでの間のどこかでアルバニアを併合したような気がするが,いつ宣戦して併合したか記憶にない。でもほら,ドイツでやってるといつルクセンブルク踏んだかなんて覚えてないしさ……。

 

 

イタリアのために鐘をつけ

 

東欧動乱が終わった直後のイタリアの版図。なかなか立派な大帝国だが,これはまだまだ序章にすぎない

 ここまで領土を拡張したんだから,そろそろ満足しろドゥーチェと言われそうなところまで進んだイタリアだが,ローマ帝国にはまだまだ遠い。次の目標は内戦が終結したスペインである。イタリアはローマとコンスタンチノープルを占領しているんだから,歴史に鑑みてグラナダもイタリア領になるべきではないだろうか。いや,なるべきだ。
 テキトーな理屈をつけつつ,スペイン攻略の準備に入る。ゲームマップ上のローマにある教皇庁から,1939年の中ごろにはゲルマン人が暴走するという預言をいただいたような気がするので,これを機会にドイツをローマ帝国同盟(枢軸陣営と呼ぶ人もいるが気にしない)から除籍する。新教徒との呉越同舟もここまでだ。
 世界大戦の序章を横目で見つつ,1939年の夏にスペインに宣戦布告,まずはスペイン領マジョルカ島に上陸する。イタリア海軍にとってスペイン海軍など敵ではなく,制海権は完全に掌握する。マジョルカ島には軍港・飛行場ともに揃っているため,海からスペインを攻略するにはたいへん便利だ。

 

そろそろポーランド侵攻が始まるので,ドイツをローマ帝国同盟から追い出す。連合国との戦争などごめんだ 第二次世界大戦勃発。すでにもう世界大戦規模の戦争をしているような気もするが,とりあえず気にしない

 

ICには余裕があるもののTCが真っ赤なので,とりあえずオスマントルコを切り離すことに。トルコ近代化の流れを真っ向から否定してみる

 これと平行して,輸送力の問題が露骨に出てきたため,トルコをオスマントルコとして再独立させる。ルネサンス時代にさんざん苦杯を嘗めさせられてきたオスマントルコが,いまやイタリアの温情で復興する立場になったのだ。ムッソリーニもご満悦であろう。トルコを独立させても基礎ICが80を割ることはないので,スペインでの増加分で採算が合うという計算も働いてはいるのだが。
 さて,イベリア半島にはスペイン陸軍が相当数存在する。そこで,マジョルカ島を踏み台にしてポルトガルにも宣戦布告し,脆弱なポルトガル軍を踏み潰して橋頭堡にしてからスペインになだれ込もうかと思ったが,ポルトガルとの戦争を始めると,いまのイタリアの国力では成功裡に終わらせられないのでパスする。
 まずは防備の薄いムルシアに上陸,海賊的に沿岸を荒らしてスペイン軍の前線に動揺を与えたあと,素早く撤退する。以後,防備が甘くなったところを狙って上陸と撤退を繰り返し,その都度防衛ラインを引きなおそうとするスペイン軍を空爆で削り続ける。
 海賊活動を1か月も繰り返すとスペイン軍はまともな海岸防衛ラインを引けなくなり,イタリア軍は余裕を持って上陸作戦を実行できるようになった。実はこのときイタリア陸軍は,空軍と海軍に予算を食われていたため実戦力が非常に少なく,スペイン相手ですらこのような奇策を採るしかなかったというのは軍事機密である。なにしろ戦線には,エチオピアに遠征していた民兵部隊とか混じってますから。
 スペイン内戦のやり直しのような戦争を繰り返したあと,1940年春にはスペインを併合。相手がスペインであることを鑑みるに,えらく時間がかかっているが,この段階ではまだまだ真面目に戦争をできる軍隊ではないので,仕方がない。本当の戦争は,ここから始まるのだ。

 

スペインに宣戦布告。陸軍の数で負けているため長期戦は必至だが,さすがに本気で戦って負けるような相手ではない スペイン南部に陽動作戦。同じようなことを繰り返してスペイン軍の部隊数を削る。上陸した部隊に民兵がいるのは秘密

 

若干泥沼化したものの,確実な包囲殲滅を繰り返すことでスペインは抵抗力を失った。ほどなく併合

 

 

アルプスを反対向きに越えて

 

電撃戦の研究段階がドイツを上回った貴重な画面。もっとも,ドイツは電撃戦をほぼ完成(この時点で80%近く)させていたのだが

 さて,この段階でイタリア軍の編成を確認してみる。陸軍はドクトリン研究こそ進んでいるが,主力は1939年式歩兵で,山岳歩兵が軍の最大戦力となっている。また政体を徴兵制に寄せているため,指揮統制はドイツに比べると見劣りする。装甲車両の研究はまるで進んでいないし,戦車は1両も存在しない。
 空軍は戦術爆撃機が10ユニット。戦術爆撃機のドクトリン研究は進んでいるが,戦闘機および迎撃機のドクトリン研究は立ち遅れており,制空権には不安が残る。とはいえ東欧とスペインで実戦経験をたっぷりと積んだ彼らの戦闘力はすさまじく,現時点では世界最高の爆撃部隊といって問題ないだろう。
 海軍は空母4隻を備える空母機動部隊が完成。海戦ドクトリンも順調に研究が進んでいる。やろうと思えばイギリス艦隊と決戦も可能だろう。
 準備は整った。演習も終わった。ここからが,イタリアにとって最初の戦争である。

 

イタリア空母機動部隊の完成。空母の開発をやめ,戦艦で制海権を争うことも不可能ではないのだが この人達はこんなところに,いったい何をしに来ているのだろうか……観戦武官? 国際旅団?

 

見事に電撃戦ドクトリンの軍隊となったイタリア陸軍。でも,戦車はまだない。ただの浸透戦術じゃないでしょうね? それ

 まずは陸上部隊の大量生産に入る。徴兵制に寄せているため量産効果は高く,瞬く間に歩兵が増えていく。
 続いて,駆逐戦車の量産ラインも設置する。「使えない」「中途半端」「開発に手間がかかりすぎ」「これなら戦車使うよ,普通は」と言われる駆逐戦車は,筆者も大いにその意見に同意するところではあるのだが,低ICで高い対戦車能力を発揮するとともに,対歩兵の能力も向上,それでいて部隊の進撃速度は低下しないと,性能だけでいえば決して悪くない。
 また,1941年式の駆逐戦車に限って言えば,前提となる技術が軽戦車で止まっているのもポイントが高い。イタリアは戦車関係の技術開発が非常に苦手(研究機関の特性マッチングが極めて悪い)なので,戦車に比べると研究負荷が半分以下の対戦車砲と駆逐戦車は,イタリア軍にとってありがたい存在なのである。

 

ドイツによるフランス侵攻が始まる。これに呼応して連合軍にケンカを売るのも手ではあるのだが,今回は見送り

 ことにいまからイタリアが臨もうとしているのは,ドイツとの戦争である。ドイツ軍の戦車に対抗するには歩兵にも相応の対戦車能力が必要だし,常備軍全開で指揮統制の高いドイツ歩兵に対抗するには,対歩兵能力のブーストアップも不可欠だ。
 残念ながらいまのイタリアのどこにも,戦車を大量生産する力はないが,駆逐戦車ならばなんとかなる。ドイツを打倒したあとならば,戦車の量産も可能な体力がついているだろう。それまでの移行期間を戦い抜くために,日陰の存在である駆逐戦車にお呼びがかかったというわけだ。うん,決して普段と違ったことがしてみたくなっただけではない。と,日記には書いておこう。

 

不幸な事故が起きることもなく,あっさりとフランス併合に成功したドイツ。普通はこんなものだ

 

よく見てみたらスウェーデンが枢軸に加盟している! 中立政策がウリじゃなかったのかと,問い詰めたい

 対ドイツ戦争に当たっては,戦略を大きく見直す必要がある。ゲームマップ上のローマにある教皇庁からは重ねて,ドイツは1941年6月に対ソ戦争を開始するという預言を賜ったので,これを機会としてドイツの後背を突く。ここまではよいとしよう。
 問題は,対ドイツ戦争を展開するには,現状では戦線が広すぎるということだ。とくに東欧地域は対ソ戦の余剰戦力を南下させるだけで簡単に破綻する。これを破綻しないように戦線を張れば,絶対的な戦闘力と物量の差が出て,ローマはまたもゲルマン人に蹂躙されてしまう。
 そこで,東欧諸国は完全に放棄する。守れないものを守ろうとするだけ無駄なのだ。代わりに東欧諸国に配置していた守備兵をヴェネツィアに再配置,ヴェネツィアには要塞を建設して東から来るであろうドイツ軍への盾とする。

 

 また,陸軍は大きく二つに分ける。制海権はイタリアにあり,たとえドイツ海軍が出てきて,これを連合国海軍が補足しそこねたとしても,イタリア海軍の空母機動部隊はドイツ海軍をやすやすと撃破できる(はず)。この制海権を利用し,攻勢軸はアルプス越えと,イベリア半島からの突破の二つとする。
 イベリア半島からの突破が成功するようなら,フランス海岸に上陸作戦を敢行して大包囲網を形成することもできよう。アルプス戦線はドイツ本国に近いぶん膠着する可能性が高いが,そうなったらそうなったでアルプス山脈に陣取れば,そうそう簡単に突破を許す心配はない。

 

 結局のところ,イタリアを攻略したい軍隊は,二つの地峡を押さえられてしまえば,アルプスを越えるしかないのだ。「そんな山越えはあり得ない」という山岳信仰(笑)は,ハンニバルのみならずナポレオンによっても挫かれている。東欧側の地峡を要塞でカバーし,フランス側の地峡がヴィシーフランスの壁によってカバーされているいま,アルプスを越えるべきはイタリアなのだ。

 

 

トイトブルグの復讐

 

ドイツの対ソ宣戦布告に呼応して,イタリアからドイツに宣戦布告。フランスのラテン系旧教徒を保護するため……とは思えないが

 バルバロッサ作戦開始と時を同じくして,イタリアはドイツに宣戦する。フランス駐留軍が東部戦線に流れるのを待ってもいいのだが,実はそれだとあとあとの苦労が多くなる傾向にある。
 イタリア本国を進発した部隊は,旧オーストリア領を突破,山岳地帯に陣取る。そのままババリア方面への突破を開始したが,あっという間にドイツ軍機甲部隊が集まってきたため,戦線は膠着。戦術爆撃機による消耗戦を続けるものの,控えめに言って劣勢,正直言って危険な水準に達した。

 

 一方でイベリア方面軍は細かな上陸作戦でダクス近郊の12個師団ほどを包囲殲滅,北部フランスへと突破を開始する。フランス領のドイツ軍が東部戦線に出払うのを待つと,この軍隊がパリのあたりから引き返してきてしまい,フランスで戦線が膠着しやすい。
 初期の包囲戦で数的優位を確立したイベリア方面軍は,イタリア軍随一の指揮官バルボに率いられ,北部フランスを蹂躙。制海権を確信したイタリア海軍はドーバーに艦隊を派遣,カーンに上陸して再び包囲網を完成させる。これによってさらに10個師団程度を失ったドイツ軍は,フランス方面での戦闘が不可能な状態にまで追い込まれた。

 

イベリア方面軍の上陸作戦。ボルドーに上陸し,ダクスのドイツ軍を包囲殲滅する。これでフランス方面のドイツ軍はほぼ半減

 

フランス南部から突破したイベリア方面軍主力と,カーンに上陸する助攻軍で包囲網を作る

 イベリア方面軍の突破が成功したため,防衛線の再構築のためかアルプス方面軍正面のドイツ軍戦力が減少,そこを狙ってアルプス方面軍は攻勢をかけ,ドイツ軍を旧オーストリア領から追い出すことに成功する。

 

 だがこれはいささか拙速な作戦であった。オーストリア戦線の安定を確信してイベリア方面軍の突破を指揮していたところ,数で比較すれば伊:独=2:1程度という「負けないはず」の戦闘でアルプス方面軍が敗北,山岳歩兵3個師団+歩兵3個師団が孤立する。
 空軍を引き返させるとともに空陸一致で救出作戦にあたり,一時は補給線の回復にも成功したものの,包囲されていた部隊はドイツ軍の攻勢に遭っていたため戦略的撤退(戦略再配置)ができない。そうこうするうちに補給線は再び遮断され,6個師団はそのまま全軍降伏の憂き目にあう。この敗戦を受けてアルプス方面軍は旧オーストリア領南部の山岳地帯に全面撤退,防御戦闘に徹する構えをとった。

 

 アルプスで苦闘が続く一方,イベリア方面軍はドイツ南部からの援軍も軽く一蹴して大突破を開始する。パリを陥落させるとともに,ほぼ無防備な低地諸国を駆け抜け,一部の部隊を海岸沿いにベルリンへと向かわせた。ベルリンが陥落すればドイツの補給物資は消滅し,ご自慢の機甲部隊も足が止まる。

 

上陸作戦は成功。オーバーロード作戦と同じくフランス北西部でドイツ軍部隊が多数包囲される。フランス戦線はこれで崩壊,ベルリンへの道が開ける

 

形勢不利と見たルーマニアがソ連に寝返り,それをドイツが即座に踏み潰す。まるで,1944年のワルシャワ蜂起だ 進退窮まった日本。ちょっと極東情勢を覗いてみたら,日本が中国大陸から叩き出されようとしていた。何をしたんだか

 

火事場泥棒に出現した連合軍のハイスタック。アルバニアに上陸するのはイタリアへのあてつけかと

 やがてイベリア方面軍は,ドイツ南部を半包囲するように北から旋回,包囲の危険を感じたドイツ軍は撤退を開始したが,多くの部隊が包囲網に捉まって降伏していった。またベルリン進撃部隊は何の抵抗にも遭わずにベルリンを占拠,ここにおいて戦争の行く末は確定した。あとはソビエトとイタリアの,どちらがより多く美味しい部分を切り取れるか,それだけの問題である。

 

 そう思っていたら,連合軍が旧アルバニアに上陸,ここぞとばかりにユーゴスラビアを占領していく。そこはイタリア固有の領土だって! と言いたいところだが,いま連合軍と戦争するわけにもいかない。連合軍があまり大きな領土を持たないように,ハンガリー南部で線引きをする。
 ドイツ軍は最後まで抵抗を繰り返したものの,補給がズタズタになった状態では戦う術もなく,イタリア軍に数で倍しながら勝てないような戦闘を繰り返すばかりとなった。暫定首都を包囲してドイツの残存部隊をすべて補給切れに追い込む作戦は何度も計画されたが,それをしてしまうと東部戦線も補給切れとなり,ソビエトの領土拡張ペースが上がるだけなので見送られた。ひどい話である。

 

長期にわたって膠着していたアルプス戦線も崩壊が確定。新首都ミュンヘンを包囲するとソ連を利してしまうので,慎重に進軍 連合軍の火事場泥棒を防ぐため,怒りの上陸作戦。でも連合軍には騎兵が混じっていたため速度で負ける。馬にですよ,馬。まったく

 

 イタリア軍は戦術爆撃機の数が不足気味だったため,占領地の拡大が遅れたが,それでも旧ドイツ領はほぼ制圧した。ゲルマン人に対する気の長い報復戦争は,ラテン人国家イタリアの勝利という形で終結したのである。

 

 さて,欧州での戦争は終結した。残る日本はアメリカとの間で絶望的な戦争を繰り広げ,しかもすでにソビエトが対日宣戦布告しているとあっては,どうにもなるまい。
 だが,イタリアの,いやさローマ帝国の戦争はまだ終わっていない。ローマ帝国固有の領土を取り返すには,ソビエトを破り,イギリスを降さねばならないのだ。

 

枢軸を完全併合。これにより好戦度が205まで急上昇。どの勢力からいきなりケンカ売られても,まったく不思議でない国になりました

 

 ……うん,なんだかもういいんじゃない? と思うには思うところだが,ともあれ次は連合国かソビエトとの戦争である。もっともこの段階でイタリアの好戦度は200オーバーなので,どちらかに宣戦した瞬間,もう一方から宣戦される可能性は高いのだが……。
 片方とだけ戦争すれば,なんとかなるにはなるだろうが,二正面作戦になると今度こそ「苦戦」では済むまい。占領地の一時的な再独立も含めて,対策を講ずる必要もあろう。
 というわけで,次回はここから対ソ戦を開始する。普通に考えれば1943年春の開戦になるだろうが,果たしてこのイタリアは実質無傷の43年式ソビエトに勝てるのだろうか? ソビエト戦車軍団に,イタリア駆逐戦車軍団は対抗できるのか? というかそもそもイタリアは,まだ駆逐戦車を作り続けるのか? 請うご期待。

 

ヨーロッパの中枢がイタリアの占領地となる。生産した部隊はヨーロッパ全土に自由に配置できるようになって,たいへん便利。とりあえずは守備隊の充実を図らねば,ではある これだけの大帝国を作ってはみたが,有効ICはたった169。占領したドイツとフランスのICが復活してくれば,もうちょっと改善されるだろうが,まあおおむねこの程度だろう

 

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
コンピュータでもボードでも,ストラテジーゲームに関して研究熱心なPCゲームライター。「ハーツ オブ アイアンII」については海外AAR(After Action Report。リプレイ記事のこと)も大いに楽しむ彼によると,通な選択肢はルーマニアなのだという。国内に油田があり,ソビエトとドイツ双方から狙われる位置にある小国ながら,直接の隣国はさほど強くないのがポイントらしい。機を見るに敏な拡張政策と,大国を向こうに回した一大防衛戦を楽しめる好立地なのだとか。
タイトル ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ 完全日本語版
開発元 Paradox Interactive 発売元 サイバーフロント
発売日 2006/08/04 価格 通常版:8925円,アップグレード版:4725円(共に税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/800MHz以上(Pentium III/1.20GHz以上推奨),メインメモリ:128MB以上(512MB以上推奨),グラフィックスメモリ:4MB以上(8MB以上推奨),HDD空き容量:900MB以上

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鷲は舞い降りた 完全版
ジャック・ヒギンズの冒険小説。失意の降下猟兵指揮官シュタイナ中佐と部下に下ったのは,IRA工作員と協力し英国に潜入する任務だった。