連載:ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?


ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?

第11回:すべての道はローマに通ず:イタリア(後編)

 

 欧州およびロシアを屈服させ,シベリアのほとんどを手に入れて着々とローマ帝国への道を歩むムッソリーニ。だが長い戦いの果てに彼の前に立ちふさがったのは,なぜか中国国民党であった。
 と,ここまでの苦難に満ちたプレイを要約すると3行程度になってしまうことに怯えつつ,なおもローマ帝国への道を邁進していくことにしよう。いまだブリタニア(イギリス)は健在,「旧領回復」のためにはドーバーを渡らねばならない。そしてそのためには,とりあえずは目先の戦争をなんとかしなくてはなるまい。

 

この連載は,第二次世界大戦あるいはその後の歴史に関わった,いかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていません。ときに過激な表現が出てくることもありますが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものですので,あらかじめご了承ください。

 

 

ここが運命の分かれ道

 

見渡す限り,中国統一戦線の大軍がひしめく巨大な戦線。いまからこれと戦うかと思うと,気が萎える

 対国民党戦線については二つの対処法があって,それぞれ明瞭な利点と不明瞭な問題点がある。
 最初の選択肢はいうまでもなく,国民党勢力を地上から根絶するまで戦うという方針だ。利点としては領土拡大によるIC&労働力の増大である。中国はパルチザンが激しいので国民党を再独立させるとしても,無尽蔵の歩兵供給源を持てるのは大きい。
 問題はそれにかかる時間だ。アメリカからのレンドリースを受け,大ブリテン島全周を海岸要塞とレーダーで固めていくイギリスを,これ以上長く放置すれば,英国は難攻不落となりかねない。

 

 もう一つの選択肢は,国民党と可及的速やかに和睦すること。必要経費と最終的な国益という観点に立てば,非常に優れた選択肢である。対中戦に消費されるICと時間を鑑みるに,元が取れる可能性はほぼ皆無だ。今後の戦局は上陸戦が主体にならざるを得ないので,どんなに大量の歩兵を作ってもらっても,それを運ぶ水上交通の太さで前線への供給量が決まってしまう。
 問題点としては,常に和平が破棄される可能性があるので,結局中伊国境にはある程度の守備隊が必要になること,そしてその守備隊は,時とともに徐々に増員せざるを得ないであろうことが挙げられる。

 

 正直,これにはどちらが正解,という選択はないように思える。どちらも確定したメリットに対し,先の読めないデメリットが巨大すぎるのだ。始まってしまったから仕方ないとはいえ,そもそもこの戦争はイタリアにとって,一番避けたかった戦争なのである。

 

日本から青写真を獲得する。だいぶ古い技術のものが混じっているが,イタリアでは役立つのです

 さまざまに悩むことは多いが,結局今回は国民党中国を併合するまで戦争することに決めた。
 最大の理由は,日本が1946年に至ってなお,米軍に対抗し得る海軍を保持し続けていることにある。ドーバーを渡ることが至上命題のイタリアとしては,連合軍には一定規模の海軍を太平洋に割いたままでいてほしいのだ。しかし,このまま国民党がイタリアと和睦して大陸日本領を制圧すれば,日本の基礎ICは80を割り,さらには日本とイタリアの交易ルートも完全に遮断されてしまうため,工業力・資源・石油の三つで縛られた日本が,戦争から完全脱落するのは避け難い。
 また,現状で「ローマ帝国同盟」に参加してくれそうな大国は,もう日本しか残っていないということもある。「ローマ帝国同盟」は,同盟の中核がローマ帝国(イタリア)+オスマントルコという素晴らしく浮世離れした同盟体であり,ほどなく世界の半分を支配下に置こうとしているにもかかわらず,技術開発力は際立って低い。ここに日本を参加させれば,帝国の技術力が大きく底上げされることに疑いはない。
 ……というかイタリア海軍ドクトリン開発力は,歴史的に見てもう笑うしかないくらい劣悪なので,山本五十六長官の遺産を抱えた日本から青写真でももらわないと,まるでやっていけないのだ。

 

 かくしてイタリアは日本と軍事同盟を締結,中国戦線に本格的に介入していくことになる。

 

 

打算的結婚,その第二幕

 

局地的に雪が解け始めたので,攻撃を再開する。この地域での戦争は,とにかく時間がかかるのが悩みのタネ

 まずは欧州戦線から,大規模な空軍の引き抜きを開始する。陸軍の再配置には早くて1か月かかるので,戦線を停滞させるには即戦力が必要だ。
 最前線たるシベリアと中国北西部は,インフラ(交通網の整備率)も低ければ地形も嶮岨(けんそ),部隊の進軍は遅い。中国統一戦線軍は見渡す限り膨大な数の歩兵を揃えて進軍してくるとはいえ,歴戦のイタリア空軍爆撃部隊にとっては,鴨どころか七面鳥が葱を背負って大行進しているようなものだ。
 一方,問題がないわけではなかった。いかに空軍力で圧倒しているとはいえ,空軍を本当に有効活用するにはきちんとした陸上戦力が必須となる。イタリアが正面を取る方面ではやがて必要十分な数の軍勢が揃う予定とはいえ,日本軍のほうではすでに戦線が崩壊しつつあり,劣悪なインフラと気候だけが国民党軍の進撃を阻止している状態だ。
 この戦争の目的は,あくまでも日本を助けることであって,中国本土の支配などイタリアにとってみれば二の次だ(そもそも中国がローマ旧領のはずないし)。この観点に立つと,日本の占領地が減りすぎてもらっては困る。
 併合後に日本に領土を割譲していけば,国力維持には十分なのだが,ここを割譲したいと思ったプロヴィンスが割譲メニューに登場しないことがあるので,調子に乗っての大突破には危険が伴う。
 なんともはや,新中国の建設に殉じる覚悟で戦争を始めた蒋介石および「ムッソリーニってのは何省の軍閥だい?」という認識の前線兵士には申し訳ない話だが,この戦争はイタリアにとって打算の極みとならざるを得ないのである。

 

1年以上かけてようやくここまで進出。シベリア方面では日本軍の戦線が崩壊しており,このままでは危険

 高度に政治的な思惑はともかく,国民党軍の戦力が下がれば,日本も大陸領を増やしやすい。ならばひたすら爆撃と遅滞戦術を繰り返すことで国民党軍の出血を増やし続ける,それが現場にできることのすべてである。
 かくして大地を埋め尽くさんばかりの国民党兵士を,空を覆わんばかりの戦術爆撃機群が爆撃するという日々が始まった。なんだか全然戦いが噛み合っていないが,これも戦争だ。国民党は世界有数の技術貧者であり,その貧困っぷりはイタリアをして同情を寄せしむるレベルに達している。ごくごく稀に国民党空軍の姿も見るが,護衛を付けていない戦術爆撃機にあっさり撃退される有様では,そもそも戦争になりようもない。

 

 結論から言うと,イタリアにとってこの戦線における敵は,地形と局所的な劣勢,そしてそれによる時間の経過だけであった。ICおよび資源生産量において相手の数倍を誇り,軍の質と量においても総合的に優位を確保している戦争ともなれば,そういう展開以外にはなり得ない。
 日本軍の進撃路確保に腐心したり,中国共産党の要塞を間借りした国民党ゲリラに悩まされたりはしたものの,イタリアは迅速に中国を平定,占領地を逐次独立させてパルチザン負荷を下げつつ,1948年末には実質すべての戦闘が終了した。朝鮮半島および極東シベリアでは日本軍が支配領域を拡大,一時期60台にまで落ち込んだ日本のICは,80台後半にまで持ち直した。
 雲南軍閥は最後まで国民党に吸収されず,中国共産党ともども中国における抵抗勢力として残る姿勢を見せたが,最終的には現状復帰で和平を強要した。雲南の先には英領ビルマが控えており,緩衝地帯として立ってもらう必要があったのだ。
 かくして打算的な戦争は,どこまでも打算的に終結した。

 

山岳地帯を越えてしまえば,あとは殲滅戦。もっともこのときは部隊数が少なすぎて,余計な包囲や浸透を許してしまった 最終的に国民党中国を再独立させる。雲南軍閥とは原状回復で和平を結び,英伊の緩衝地帯となってもらおう

 

 

早かったり安かったりいろいろ

 

対イギリス戦に向けて準備が進む生産ライン。大規模な上陸を企てる以上,海兵は必須だ

 国民党を打倒したところで,パルチザンによるTC負荷が非常識な値を示し始めたため,素早く国民党を再独立させる。ローマ帝国属州中国の成立である。なんだか満州よりも立場のない国家を作った気もする。まあ,クレームをつけてくる相手は極端に減っているからよいようなものの。
 さて,次の目標はイギリスだ。この戦争の最初の終着駅予定地点である。イギリス上陸作戦を開始するにあたって,克服すべき問題を検討してみよう。
 対英戦は,要するにどうやって海を渡るかに,すべてがかかっている。しかしここにはいくつも課題がある。
 最初の課題は,当然ながら制海権。上陸の最中に空母機動部隊にやって来られては,ひとたまりもない。
 次の課題は,上陸戦闘そのもの。イギリスは海岸に沿岸要塞を敷き詰めているだけでなく,レーダーや対空砲も充実,海と空からの脅威に対し,万全を期している。しかもインフラの整備もよく,上陸地点には次から次へと援軍が押し寄せてくる。4〜5個師団による防御であれば,なんとか突破できる可能性もあるが,10個師団を超えられたら,さすがに厳しい。

 

既存の海戦ドクトリンを破棄,日本のドクトリンに合わせる。内容の有利不利以前に,自力での研究自体が不利すぎ

 一見したところ克服し難い課題ではあるが,なんとか手はあるものだ。まず前者の課題について,イタリアはこれまでの間,細々ながらも海軍の整備に時間とICを費やしてきた。結果として1949年現在,空母4隻に戦艦6隻を基幹とする機動部隊を完成させている。艦艇の年式が全体に若干旧式だが,実はイギリス海軍も割と旧式なので,装備面に大きな差はない。
 またドーバーの制海権に限っていえば,戦闘機と戦術爆撃機,それに海軍爆撃機を大量運用することで,まずは英国海軍の戦闘力を奪う。相手がドーバーに出てきてくれなければ爆撃もできないが,海峡に無人の輸送艦を出しておくとAI率いる英海軍は喜び勇んでこれを食いにくるので,そこに襲いかかる方向で。

 

フィリピンに米軍大兵力がいたので,戦術爆撃機で補給線を攻撃してみると,面白いように輸送船が沈んでいく

 

対英戦の決戦兵器が完成。よもやこれにあんなにも破壊力があるとは……

 もっと重大なのが上陸作戦そのものだが,ここに関してイタリアは対中戦争のさなか,ひそかに対英戦専用の決戦兵器を開発していた――V1飛行爆弾である。
 はいはい,そこで引かない。V1なんていつの技術だよ,とか言わない。そりゃあ筆者だってせめてV2にしたかったが,これでいっぱいいっぱいだったんだから仕方ない。イロモノ兵器に見えるV1飛行爆弾だが,これが局所的には非常に使える。
 V1は使い捨ての戦略爆撃機と分類されており,製造コストが安く,工期も短めに設定されている。これを徴兵制の量産効果を生かして大量生産するとあり得ない速度で揃ううえ,1本わずか1.6IC。10本作っても,戦略爆撃機1ユニットより安いし早い。
 その能力はウマいかというと,確かに破壊力としてはやや心もとないものの,そこは数でカバーできる。配備と発射の操作負荷のことさえ考えなければ,かなり優秀だ。
 で,この大量のV1飛行爆弾で,上陸地点の軍事施設およびインフラを徹底的に破壊する。インフラ整備率が0%近くに落ち込めば,英軍は上陸地点に即座に援軍を出すこともままならない。また対空砲とレーダーを破壊しておけば,上陸戦闘地点に爆撃機や護衛の戦闘機を投入しても,戦力を損なう心配はほとんどない。

 

 もちろん,同じことは戦略爆撃機でもできるが,対空迎撃を受けて消耗するので,ローテーションが組める程度の数を揃えねばならない。そのうえ,そうやってできた大量の戦略爆撃部隊は,たぶんこの後で使い道がなくなる。あまりにもったいない。それなら,必要なときに必要なだけ爆撃すればよいではないか。
 かくして,もう貧乏生活から抜け出して久しい(ICはすでにアメリカ並みの)イタリアは,なおも昔のクセが抜けないのか,安くてニッチな兵器の大量生産にいそしむことになる。

 

緩衝国だったはずの雲南がなぜか連合国に宣戦,あっという間にイギリスにのされる場面。慌てて援軍を送る イタリアの介入もあり,太平洋戦争で米軍が押し切れていないせいか,日本との貿易効率も徐々に上がってきた

 

広がっていくエチオピア。各国のアフリカ植民地を吸収し,将来的にはアフリカ大陸の南半分を統治する巨大国家に。でもICは9

 

 

史上最安の戦略爆撃

 

V1飛行爆弾による攻撃が,イングランド南部に壊滅的な被害をもたらす。上の画面で示した攻撃に,投入されたV1は100発を超えた

 準備が整ったところで,いよいよ対英戦開始である。まずは200発を超えるV1で,イギリス南部を焦土にする。上陸地点およびその周辺プロヴィンスのインフラ整備率は0%に落ち,レーダー,対空砲,空軍基地は全損した。復旧は自動的に行われるので,間断なく,五月雨式にV1を放つ。製造ラインには20ユニットのV1が載っており,それらは10日で完成するので,多少無駄撃ちしても弾切れはない。
 そのうえで囮の輸送船をドーバーに出し,敵空母機動部隊が釣れるのを待つ。案の定,まずはフランス海軍や南アフリカ海軍が食いついてきたが,爆撃機ではなくこちらの空母機動部隊で一蹴,すかさず港に逃げ帰る。ヒット・アンド・アウェイである。

 

上陸を阻止しようと英海軍が突入。だが空母の前にアウトレンジで叩かれる

 そうこうするうちに,ついに英国空母機動部隊が登場した。すぐさま昼夜を問わず航空機をドーバーに上げ,爆撃体制に入る。空襲の威力はすさまじく,機動部隊は瞬く間に大損害を被った。そこに向かって,満を持してイタリア海軍を投入。初の本格的な海戦は,イタリア軍の圧勝に終わった。
 制海権が取れたところで,今度はポーツマスを目標として上陸部隊を投入する。最新式の海兵隊に,軽戦車を付けた6個師団が2軍団,ローテーションを組んで上陸できる体制にある。イタリア海軍は新旧取り揃えた戦艦で上陸戦闘を支援し,空軍は焼け野原となったイギリス南部の空を埋め尽くす。

 

焦土に上陸作戦開始。防御側の指揮統制値を削るべく戦術爆撃機も投入。V1攻撃でレーダーも対空砲も壊滅しているため,RAF以外に敵はいない

 

10日で出来るV1。徴兵制が意外なところで効果を発揮した一コマ

 海兵隊による強襲,戦艦からの艦砲射撃,空軍による大規模な阻止爆撃によって,あっけないくらい簡単に上陸作戦は成功した。間髪入れず,ポーツマスに多数の陸上部隊を揚陸する。周辺には20個師団以上の英軍がいたが,インフラが完全にマヒしているため,上陸作戦中のポーツマスにたどり着けなかったのだ。
 とはいえ,一度ポーツマスをイタリア領にしてしまうと,隣接エリアからはインフラに関わりなくすぐに攻撃が可能なので,上陸軍は英軍の猛烈な砲火を浴びることになる。だが攻撃しているということは塹壕修正を得ていないというわけで,攻撃中の英陸軍を爆撃,指揮統制値を削っていく。戦力差の割に戦闘は膠着したものの,そこに次の上陸軍が滑り込んできて,戦闘の趨勢は決した。
 このポーツマス上陸作戦は,そのままイギリスの命脈を断ち切る戦闘となった。揚陸された増強55個師団は瞬く間にイギリス本島を制圧,空軍と連携をとるまでもなく,英軍防御線は崩壊した。V1によるインフラ低下でイタリア軍の進撃および指揮統制値回復も遅れたが,それは些細な問題でしかなかった。

 

ついに上陸成功。この瞬間,イギリス戦の趨勢は決まった。次々に後続部隊がなだれ込んでいく

 

 かくして公然の秘密兵器が炸裂して,イタリアはついにローマ旧領の回復をほぼなし遂げた。残るはヴィシーフランスとポルトガルだが,イタリアの地続きにある国家は,もはや敵とはいえない。あとは純粋に時間の問題といえよう。

 

一度大部隊が上陸してしまえば,英軍は敵ではない。英本土北部は爆撃被害もなく,インフラが生きていたため,逆に素早い進軍でケリがついた

 

 

世界にローマはただ一つ

 

この段階でのアメリカの実力。陸海空とも非常識な数を有している。とくに戦闘機36部隊が厳しい。海軍については見なかったことに

 ローマ帝国領の回収という所期の目標は達成した。だがここでムッソリーニは唐突に思い出してしまう。海の向こうに,本来はローマ軍団の標章たる「双頭の鷲」を,国章に掲げた別の国家があることを。そう,アメリカだ。元老院の許しも得ずに双頭の鷲を掲げるとはけしからん。ここはぜひ,我が精鋭軍団を引き連れてワシントンに乗り込み,「あんたんとこの知的所有権管理はどうなっとるの?」と難詰せざるを得まい。連合国とローマ帝国同盟との戦いも,まだ完全に決着してないことだし。

 

ニクソンが大統領に。ICにペナルティがあるのは,やはりニクソンだからだろうか

 ここまで何かと奇策を重ねてきたイタリアだが,事ここに至ると,もはや小手先でどうにかなるレベルではない。いや,策がまるでないわけではないし,仕込みはしてあるものの,これまでのように相手の弱点につけこんで背後から刺すことはできない。
 対アメリカ戦における問題は……などと,いまさら分析するまでもないだろう。ICこそ対等ではあるが,そもアメリカは1941年ごろからいまのICを保持している一方,イタリアがここに届いたのはごく最近の出来事である。10年の成果は覆し難いうえに,技術水準は間違いなく世界一である。
 ではイタリアのアドバンテージは何かといえば,そんなものは存在しない。ただまあ,少なくとも航空機部門に関してはアメリカと同じレベルにあり,海軍も,数はともかく質としては最終型(通常動力)の空母8隻を基幹とした主力艦隊に,旧式空母4隻を中核とした第2部隊と,二つの機動部隊を備えるに至っている。海戦ドクトリンにしても,破棄と切り替え,日本からの青写真輸入によって,アメリカと対等なレベルにある。

 

ポルトガルに宣戦布告。大西洋の重要拠点は基本的にポルトガルが持っているので,ここは彼らに涙を飲んでもらう。イベリア半島はローマ固有の領土だしね

 問題は陸軍で,ここには絶望的な差がある。歩兵はいまだ1949年式が多く,51年式が最低ラインであるアメリカとの差は大きい。また,自動車化/機械化歩兵,機甲部隊に至っては,比べるのが嫌になる世界である。イタリアに自動車化歩兵や機械化歩兵といったおシャレな部隊はいっさい存在せず,正面からぶつかれば絶対に勝てない。
 だが,何にせよこの戦いは,正面からぶつかるしかないのだ。幸い,爆撃機の数と錬度に限れば,イタリアに利がある。この唯一の利を生かすことを前提として,最終的な準備に入るとしよう。

 

 最初にやるべきは,空軍兵力の大増産である。まだやるのかといわれそうだが,イタリア軍はこれまで,制空権は天与のものであるかのように振る舞ってきた。イギリスにおいてすら,比較的小規模な戦闘機部隊を集中運用して緒戦を制したあと,V1で航空基地を破壊し,上陸作戦が終わるまで運用できない状況に追い込むというトリックで,その原則を守った。

 

対米戦の切り札,ICBM。核はまったく研究していないが,それでも十分に価値がある

 アメリカで同じことを狙うならICBMが必要だ。ただし現状,制空能力でアメリカ空軍に劣っているため,まずはここを克服する必要がある。
 戦闘機の増産をしている間に,ポルトガルを制圧,大西洋に足がかりを作る。またポルトガル併合後は,旧満州に陸軍と輸送艦隊を置き,東チモールを拠点として太平洋に残るイギリスの拠点を制圧していく。最後に残ったシンガポールは,周辺海域を徹底的に船団爆撃で洗って補給を断ち,消耗しきったところに陸軍をなだれ込ませてとどめを刺した。フランスに次ぎ,イギリスも併合完了である。そうこうするうちに,戦闘機部隊も増えてきた。アメリカ戦も間近に迫っている。

 

エチオピアがフランスを併合したため,カリブの島(海軍基地付き)がエチオピア領に。フロリダを狙うなら,こんなおいしい物件はないので,急いで買い取ってみる。だが,結局この島は使わずじまい……

 

 

アメリカに勝てる大艦巨砲主義

 

まずはニューファウンドランド島に上陸。カナダ経由でアメリカを攻略することに

 対アメリカ戦の基本戦術としては,上陸作戦における従来の基本である海賊作戦を放棄,完全に別の方策で消耗戦を期する。
 まずはカナダ沖に進出,ニューファウンドランド島付近を拠点として,カナダに上陸する。幸いカナダの北東部はインフラの整備があまり進んでおらず,上陸してしまえば米軍の集結までには時間がかかる。
 途中,思いがけないチャンスがあったので,ケベック付近のカナダ軍15個師団ほどを,小規模の上陸作戦と包囲で殲滅する。米軍が集まってきてしまえば,こんな小遣い稼ぎはとても無理なので,やれるときにやってしまうのだ。

 

ニューファウンドランド島からさらに,防備の手薄なラブラドル半島に上陸。ここが主戦線となる 前哨戦的にカナダ軍を包囲殲滅し,素早く撤収する。海賊もいいところだが,いつものことといえばいつものこと

 

対米戦のひそかな切り札,超大型戦艦。沿岸砲撃力18は最新鋭の空母艦載機による爆撃に匹敵するうえ,砲撃だと悪天候の影響を受けにくいのが魅力

 さて,そうこうするうちイタリア軍正面には70個師団前後の米軍ハイスタックが立ち上がる。が,これこそが狙いである。
 AIアメリカは,戦力の集中を優先しすぎたため,ほかの海浜プロヴィンスの守りが非常に甘くなった。そこで海軍をまわし,上陸地点の近傍に小規模な(といっても20個師団,司令部付き)部隊を上陸させる。
 当然,アメリカ軍はよい獲物が水揚げされたとばかりに上陸部隊に群がるのだが,ここには当然,罠がある。上陸プロヴィンスの沖には,超大型戦艦(いわゆる大和型の一段階上)2隻を含む戦艦10隻,空母12隻が待機しており,上陸プロヴィンスはその艦砲で強固に守られているのである。このゲームでは,艦砲射撃による支援効果は「敵軍の戦闘効率を%単位でダウンさせる」効果を持つため,ここで大量のペナルティを与えてしまえば,3倍4倍程度の兵力では決して陥落しないプロヴィンスになるのだ。
 実際,このときの艦砲射撃によるペナルティは−80%。都合5倍の火力を集めてようやく対等ということになる。夜間には艦砲射撃が弱まるが,今度は夜戦によるペナルティ−80%があるので問題ない。ここに一つでも渡河が絡めば−50%。20個師団程度の部隊で,80個師団を超える敵の総攻撃を,やすやすと捌き続けられるというわけだ。万が一耐えられなかったときは,上陸用舟艇に避難して逃げ去り,また手薄になったころに上陸すればよい。

 

艦砲射撃で−82.60%のペナルティ。軍の質を鑑みると49個対38個は厳しい勝負だが,これがあれば勝てる 冬になって進軍が難しくなった北米戦線を放置して,小さな戦域の処理にいそしむ。まずはイギリスを完全に併合する

 

沿岸砲撃を使った副戦線のトラップ。ここからリビエール・デュールに米軍大兵力が集まるものの,陥落させられない

 ハイスタック同士がにらみ合う主戦線と,小規模だが揺るがない副戦線が隣り合った状態で,膠着しつつも戦闘が続く。ここでいよいよ,制空権の奪い合いが始まるのだ。
 ここはもう,数に任せてローテーションを組み,戦力と指揮統制値を回復させつつ,持久戦を挑むしかない。米軍は海軍爆撃機や戦術爆撃機に護衛戦闘機を付けた部隊までも制空戦闘に投入してきたため(しまいには護衛戦闘機付き戦略爆撃機まで登場した),消耗戦は果てしなく,苦しいものとなった。1936年から戦い続けてきた迎撃機部隊が半壊したり,ドーバーで無理なローテーションに耐えて空を守り抜いた戦闘機部隊が壊滅したりと,実に心理的によろしくない戦況が続いたが,今はもう損害を顧みる段階ではない。

 

大兵力を揃え,ばらけて前進する米軍を押し返し続ける。そこを空軍が後押し。いつもの勝ちパターンだ

 そうこうするうち,米軍機の迎撃が止まった。尊い犠牲を払ったが,なんとか制空権を確保したのである。まあ米軍の戦闘機も相当数を墜としたのだから,勝ちは勝ちだ。
 制空権が取れたところで,これまで息を潜めていた戦術爆撃機部隊が爆撃を開始する。今度の戦線は,数が多くて互いに動きのない場所と,比較的少数が常に攻撃を続けている場所という,2局面に分かれている。当然,爆撃機にとって最高の狩り場は後者であり,みるみるうちに米軍地上部隊が爆撃の餌食になっていく。
 さらに,ここで作りだめしておいたICBMを一斉発射する。目標は米本土の空軍基地だ。ほんのわずかであっても,アメリカ空軍が回復する時間を引き延ばさねばならない。

 

ICBMによる滑走路爆撃。2発で規模10の滑走路が0にまで低下する。費用対効果は謎だが,意外と便利という印象

 

300個師団以上いた米陸軍は,気がつけば200個師団ほどに。さすがにもう負けない

 再び米軍の戦闘機が上がってくるようになったところで爆撃機は引き上げ,またも泥沼の制空戦闘を繰り広げる。大きな損害を出した部隊は場合によっては統合し,本国で生産された新部隊を交えてローテーションを組み直す。さらにはICBMの第2次攻勢を行い,再び空港に打撃を与えて米空軍の回復力を殺ぐ。
 だがそこまでやっても,徐々にローテーションは崩れ,やがて空戦は総力戦になっていった。戦闘機部隊に,めまいのするような大損害を生じさせつつ,再度制空権を取ったのはイタリアであった。
 再び仕事の時間となった爆撃部隊は,ケベックを中心として米軍を次々と撃破していく。そしてそうこうするうち,ついに主戦線のハイスタックから部隊が引き抜かれ,副戦線に投入される時が来た。いままで30個/50個師団程度のスタックだったのが,10個/50個師団程度に減衰する。
 かくしてチャンスは訪れた。副戦線を店じまいし,輸送艦に載せて引き上げさせる。輸送艦はそのまま主戦線に回して,機動部隊の任務は米軍ハイスタックが鎮座するプロヴィンスへの砲撃に切り替える。

 

イタリア軍による米本土での突破。イタリア軍が,正面からの戦闘で初めて敵軍を打破した貴重な瞬間

 攻撃を仕掛ける場合の支援砲撃は,前述したのと同様のペナルティを防御側に発生させる……たとえ目の前に50個師団がいても,−80%のペナルティがあれば,それは10個師団相当の火力しか発揮し得ない。戦艦は,海に大砲を撃って得られる戦果より,陸に打ち込んで挙げる成果のほうが大きい。さながら太平洋戦争末期のアメリカ戦艦のようである。
 見た目50個師団 vs. 60個師団という乾坤一擲の攻撃は,有効攻撃力で比較すれば15個師団 vs. 60個師団というレベル(10個師団相当まで行かないのは,イタリア軍の火力が相対的に低いため)に落ち込む。戦闘の行方は確定していた。そして米軍の50個師団タワーが倒壊したその瞬間,アメリカにおける戦争は実質終結したのである――いかに個々のスペックが高くても,逃げ惑う50個師団と,整然と追撃を展開する60個師団では比較にもならない。高いレベルで数的均衡を保っていた戦線は,一気に差し引き50個師団差となり,あとは無残な殲滅戦を待つのみだった。

 

オーストラリアでクーデター。連合国ではアメリカに次ぐ大国で,太平洋の要衝でもあるが,ここまでくるとオーバーキルだろう アメリカの中枢部を完全に支配した状態。もうちょっと手際よくやれば全土支配もできたはず。この段階でアメリカの基礎ICは57

 

 

純粋にゲームとして楽しめる国

 

最後の最後にイタリアを民主化してみる。共和制ローマの時代に戻ってみるのもまた一興かと

 かくしてイタリアの戦争は終わった。途中,余りに余った資金でオーストラリアとフィリピンにクーデター攻勢をかけてみたり,アメリカの大臣暗殺計画を発動してみたりと余興はあったものの,さすがにこのレベルの戦争になると,そういったフロックで戦況に影響を与えることはできなかった。
 あるいはカナダにクーデターを仕掛ければ,戦争はもう少し楽になっていたかもしれないが,むしろアメリカ軍があっという間にカナダを占領して,さらに強大化した可能性のほうが高い。
 時間的な問題でアメリカ全土の占領はできなかったが,1953年末の状態を見るに,仮にあと1年あればアメリカは地上から消滅していたであろうことは疑いない。主要な工業地帯を席巻し,テキサス州ダラス近辺の産油地帯も制圧しているので,アメリカに再起の可能性はない。双頭の鷲の正統な所有者が誰なのか,誰の目にも明らかになっただろう。
 旧大陸に関しては,目標どおりローマ帝国領の回収を達成した。よくここまで行ったなあというのが,素直な実感である。もっとも,イタリアは地理的・外交的なメリットをかなり大きく持つ国であり,技術開発力そのほかに重大な問題はあるものの,それを一種のハンデとして,プレイを楽しめるバランスになっているとは思う。
 そういう点において,「次はアメリカも完全併合を目指す」といった,ゲーム的な面白さを最大限に追求できる。手幅の広さこそがイタリアプレイ最大の魅力ではないだろうか。

 

かくして世界はローマ帝国の支配下に入った。アジアの盟主は日本で,アフリカの支配者はエチオピアという,実に不思議な世界

 

残った陣営は連合国のみでVP53。イタリアは単独で649。いかにイタリアが肥大化しているかよく分かる

 

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
イタリア編をきれいに締めたところでなんだが,やはりイタリア軍をネタにすることにかけては人後に落ちないという,ストラテジーゲーマーらしいPCゲームライター。いや,プレイの経過報告としてのスクリーンショットに「もうパスタとは呼ばせない」とかいう名前を付けるのはよいが,それは「のび太のくせに生意気だ」と,同じロジックのような気が。まあ,他国に食われないパスタならよいのかというと,それも微妙ではあるのだが。
タイトル ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ 完全日本語版
開発元 Paradox Interactive 発売元 サイバーフロント
発売日 2006/08/04 価格 通常版:8925円,アップグレード版:4725円(共に税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/800MHz以上(Pentium III/1.20GHz以上推奨),メインメモリ:128MB以上(512MB以上推奨),グラフィックスメモリ:4MB以上(8MB以上推奨),HDD空き容量:900MB以上

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http://www.4gamer.net/weekly/hoi2dd/011/hoi2dd_011.shtml



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敗北を抱きしめて 上 増補版
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