― 連載 ―

The Elder Scrolls IV: Oblivion

連載第10回 ヒットウーマン

前回までのあらすじ

ライター星原氏が,何の誇張もなく,素で,カワイイと言ってはばからない女性主人公ミッシェルの冒険を通して,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」の魅力を伝えるというのが,この連載の始まった理由。そのミッシェルが,囚人になったり,世界を救う英雄になったり,女盗賊になったり,トゥームなレイダーになったりしながら(でもクラスはスパイ),日々を送ってきたわけだが,……なんかこう,普通すぎる。そう思った編集者が,星原氏に電話をかけたところから,第10回は始まる。

ある晩の通話

「怒られてませんよね」
「はい?」
「連載のタイトルが『なんですぐ怒るの?』にもかかわらず,全然怒られてませんよね」
「まぁ,そうですね」
「初めのうちは編集部側で無理に怒った顔の画像を挿入するなどしてつじつまを合わせてきましたが,もう限界です」
「はあ,そうですか」
「それに悪人でプレイするという企画だったのに,ミッシェルは全然悪人になっていないじゃないですか。盗賊ギルドにだって,そのために入ったんですよね」
「いやまぁ,そうなんですけど,うーん,ちょっと待ってください。これはぜひ聞いてほしいんですが,殺人とかが起きないのには理由があるんです。盗賊ギルドには『三つの掟』(Three rules)というのがあってですね」

 

盗賊ギルド 三つの掟
  • 一つ,ギルドメンバーの持ち物を盗んではいけない
  • 二つ,仕事をするうえで殺人を犯してはいけない
  • 三つ,貧しい者から盗んではいけない

「二つ目のルール,『仕事をするうえで殺人を犯してはいけない』があるために,邪魔者がいたから殺しました,というようなプレイにはならないんです」
「だから?」
「それに……,それにこの三つの掟を見れば分かるように,この盗賊ギルドはいわゆる“義賊”のギルドなんです。だからこのギルドのメンバーとして振る舞おうとした場合,自然といい人っぽくなっちゃうんですよ。実際,『○○を殺してこい』みたいなクエストは発生しないみたいですし」
「つまり,盗賊ギルドに入ったのは,失敗だったと」
「はい」
「……」
「……」
「とにかく,方法はお任せしますから,なんとかしてください」
「えー,でもどうしましょう」
「とりあえず,誰か殺しましょうか」
「えー」
「盗賊ギルドはもういいですから,暗殺者ギルドがありますよね,それに入るとかしましょう。そしたらもう誰かを殺さざるを得ないですよね。それくらい追い込みましょう,ミッシェルを」
「うーん,いや,でもやっぱり僕はそれはどうかと思います。思慮浅く表現を規制することには反対ですが,それはそれとして,最近の4Gamerは以前よりも若年の読者が増えていると聞いています。そういったまだ若い人達も目にすることを考えれば,不道徳な振る舞いを面白がるみたいなやり方を,いまここですることには賛成できません!」
「はあ? 何ゴチャゴチャ言ってるんですか。言ったとおりにやってもらないと,困るんですよね」
「なんだって!? そんな風に脅かされたって,僕は不本意な仕事は決してしないぞ! 子供達の未来を守るんだ!!」
「あんたの子供好きは,ちょっと意味が違ってヤバイんじゃないの?」
「ぼ,僕は大人も好きだぁ!」

 

 ……大筋においてこのようなやりとりが行われた結果,ミッシェルは暗殺者ギルドのメンバーになる義務を負った。
 まぁ,ついいつもの調子で反対してしまったが,実のところ,目的なくぶらつくのがやみつきになりつつあり,ここらで別のことをしないとやばいなぁ,と思っていたので,ちょうどよいと言えばちょうどよい。

善人は医者いらず,ミッシェルは?

 このところ,ミッシェルの出会う敵がどんどん強力になっている。これまでの敵が小鬼の仲間や小さなトカゲの仲間だったのに対し,最近の敵は外見からして結構キテるのが増えてきた。

 

 

 本作ではプレイヤーキャラクターの成長に合わせて,野外やダンジョンで出会う敵の強さが上がっていく。ミッシェルがレベル10台になったので,敵もパワーアップしたということなのだが,この敵どもがどうにもこうにも強すぎる。
 これまでは1対1の戦いであればまず勝てていたが,最近は違う。1戦1戦が命懸けになってしまっているのだ。しばらくセーブしていない状態で殺されて「うわー,ちくしょう!」となることも増えてきた。
 どうしたものかと考えていたところ,あることに思い至った。

 

 第4回で気がついた能力値がダウンする病気だが,いつかネタとして使えるかもしれないと期待して,そのまま放置していたのである。しかもよく見たら,あのときよりも悪化している。もうネタだのなんだのと言っている場合ではないので,これは治すことにする。
 治療方法はもう分かっている。ローディング画面に表示されるTipsに書いてあったのだ。

 

 なるほど,レヤウィン(Leyawiin)の街にある教会に行って,祭壇でお祈りすればいいらしい。早速その教会に行き,祭壇を使おうとしたら……

 

 

「罪人よ,悔い改めよ!」と言われるだけで何も起きない。
 これってつまり,この世界の神には悪人として認められているということである。ほら,悪人プレイできてるじゃん! 神様ありがとう。でも病気が……。
 しょうがない。実はキュア・ディジーズ(病気治療)のポーションを数本だけ持っているのだ。本当ならただで回復できるはずなだけにもったいないけど,今回はこれを飲んで治すか。

 

 さて,病気は治った。さらに,いままで装備品はすべて拾った物でまかなってきたが,ある程度は買い揃えることにしよう。いま気になっているのは,頭部がいつまでも毛皮のヘルメットであることなので,チェインメイルの物を買ってみた。最近の戦利品と合わせて,いまミッシェルの外見はこんな風になっている。

殺し屋ミッシェル

 盗賊ギルドもそうだったが,暗殺者ギルドは普通の人に目につくような形でのメンバー募集は行っていない。裏社会の住人達とコンタクトをとるには,こちらから積極的に行動しなければならないのである。

 

 暗殺者ギルドとの接触に関するヒントは,実はこれまでの冒険の中で得ることができている。夜中に出歩いているときに,暗殺者ギルド“Dark Brotherhood”のうわさ話を耳にしたのだ。興味を惹かれたので「聞こえていないフリして,実は耳がダンボ キャッ( /ω\ )ハズカチイ」と言いつつ立ち聞きして,結局我慢できずに話しかけてみた。

 

 「Dark Brotherhoodは,殺人を犯した人間が眠っているときにやってくる。そうやって彼らはメンバーをスカウトしているらしい」

 

 要するに,「殺人を犯せば,向こうから連絡をとってくる」ということだろう。筆者は本作の初プレイ時に,この暗殺者ギルドへの勧誘を受けた。つまりあのときは,気がつかないうちに殺人を犯してしまっていたということか。誰だか知らないけど,ゴメン。

 

 ちなみに本作では,こちらに対して敵対的なNPCを殺しても,それは正当防衛と見なされて,犯罪としての殺人にはカウントされない。だから暗殺者ギルドからのお誘いを受けたい場合は,敵対的ではないNPC = 一般市民を手にかける必要がある。……うーん,やっぱちょっと気が引ける。でももう殺るしかない。
 ああどうしよう。誰を殺そう。決められない。しょうがない,これから最初に出会った手頃な人物を殺そう……。冒険の拠点としているWeynon Prioryの建物を一歩出ると,ダークエルフの男性がいた……。

 

 ああ,あなたですか……。あなたのことは覚えています。第4回で王子をここに連れてきたときに,「大変だ,いまここは襲撃されているぞ!」と教えてくれた人ですね……。ああ,よりにもよって記憶に残っている人と一番に出会ってしまうなんて……。でももう殺るしかない。
 この人,家族とかいるのかなぁ。何の罪もない教会勤めの用務員さんなんだよなぁ……。踏ん切りがつかなくて,ダガーを握ったままドキドキしながら彼の後ろについて歩くミッシェル。やるぞ,やるぞ,やるぞ,やるぞやるぞやるぞ,ゴメンナサイ!!!!!!

 

 

 あっれー,なんだろ。案外やってみると楽なものね。今度から,「コードネーム48」と名乗ろうかしら。血がブシャーと出るわけじゃないから,案外お子様にも安心かも。……そんなことないか。
 そして,えっと,次は,寝ればいいのか。とりあえず建物の中に戻って,よく使っているベッドに横になって眠った。……そして目が覚めると,噂どおり,一人の男が立っていた。

 

「私は暗殺者ギルド“Dark Brotherhood”のものだ。そしてお前は無慈悲に命を奪うことのできる冷酷な殺人者だ。我らがThe Night Motherはお前の行為を見て,お喜びになっているぞ……」

 

 いや,その,あたしゃそんな大した者じゃないっていうか,それは買いかぶりすぎ。

 

「我々ファミリーの一員になる気があるならば,The Inn of Ill Omenに行って,そこにいるRufioという男を殺せ。それで手続きは完了だ。その後,またお前が眠りについたときに,もう一度会いに来よう。それでは,また会えることを楽しみにしているよ」

 

 男はそう言って,一振りの剣「Blade of Woe」を置いて去っていった。……なるほど,次にすべきことは分かった。The Inn of Ill Omenは,最近よく利用していたブラビル(Bravil)へと続く道沿いにあるので,場所は分かっている。じゃあ……まぁ……い,行くか……行くぞ!

 

 宿の主人の話によれば,Rufioはここ数週間ずっとこの宿に滞在している,偏屈な老人らしい。いったいどういう理由で暗殺団に狙われているのか知りたいと思って聞いてみるが,よく分からない。なんだろう。組織の裏切り者だったりとかするのかな?

 

 老人は部屋の中で寝ていた。そのまま殺すことも考えたが,やっぱり事情があるのであれば知りたい。だから起こして話しかけた。

 

 起きあがった老人は命乞いをしたと思ったら,いきなり走り出して,部屋の隅でガタガタとふるえはじめた。もう話しかけても何も言わない。
 じゃあ,そろそろやろうか……。サヨウナラ!!!!!!

 

 

 さてと,これで暗殺者ギルドに入ることはできるはずだ。宿の主人のところに戻って部屋をとり,そこでしばらく眠ると,言ったとおりにあの男はやってきた。
 彼は,この殺人によってミッシェルがファミリーの一員となったことを告げた。次はCheydinhalの町にあるファミリーの“聖域”に行けという。よし,行こうじゃないか。もう行くしかない。あたし行くしかないわ。

 

 指定された廃屋の地下に行ってみると,すげぇやばい雰囲気の扉が。表面にはナウシカのオープニングっぽい絵が描いてある。
 例の男に教えられた合言葉を言うと,中に入ることができた。さらに指定された人物に話しかけると,かなり好意的に迎えられたうえに,プレゼントだと言って一揃いのアーマーをもらってしまった。あらあらあら。まぁせっかくなので,あたし着てみる。

 

 軽くて防御力もそこそこ高い。そして何よりBladeとかMarksmanとかSneakとか,そういういかにもミッシェル向きのプラスエフェクトがもりもりついている。コレいいじゃない!
 これほんとにもらっていいの? そんなスゴイ強い敵とかと戦ったわけじゃないんですけど。え,ていうか,殺し屋って,儲かったり,いい物がもらえたりする職業……ですか? ま,まいったなぁ。割とハマっちゃいそう(^^;;;;;

 

 

今週のお姿

暗殺者ギルド加入のお祝いにもらった素敵なアーマー。プレイの初期段階でもらっていれば,かなり序盤が楽になりそうな高性能(レベルが低い状態だと,もっと弱いアイテムしかくれなかったかもしれないけど)。しかし,悪いことをしたほうが簡単に良いアイテムが入手できるのだろうか……。さすが奥が深い。ま,現実世界ならいつか捕まっちゃうのがオチだから,あたしは捕まらない程度にがんばろっと。

 

■■星原昭典/ライター■■
ミッシェルのような「殺し屋」でこそないものの,ライター星原氏は,MMORPG業界で恐れられる存在になっているとかいないとか。というのも,星原氏が4Gamerで何度も何度も記事を書いたMMORPGは,軒並み,運営元が変わったりするのだ。「エバークエストII」しかり,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」しかり,「ファンタジーアース」しかり……。星原氏がたくさん記事を書いて,運営元などに変更のないMMORPGは,「信長の野望 Online」くらいだろうか。“信長の野望”とタイトルについているだけに,コーエーが手放すはずもないが,星原氏が連載を書いていたと考えると,予断を許さないだろう。
タイトル The Elder Scrolls IV: Oblivion
開発元 Bethesda Softworks(ZeniMax Media) 発売元 2K Games(Take-Two Interactive Software)
発売日 2006/03/20 価格 49.99ドル
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce FXまたはRadeon 9000以上[GeForce 6800またはRadeon X800以上推奨],グラフィックスメモリ:128MB以上,HDD空き容量:4.6GB以上

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(C)2006 2K Games.


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