あたしミッシェル。暗殺者ギルドの仕事は報酬としてなかなかいい物がもらえるので,もっとやってみることにしたわ。人を殺すことにはまだ慣れてないと思うけど,中には悪人もいるんだろうし,とにかく殺してみることにしたの。やってみないと分からないことって,世の中けっこうあるものだし。それじゃあ,こなしたクエストの中から特徴のあったものを,女の子の視点でセレクトして紹介するわ。
インペリアルシティに停泊している船に潜入して,船長を殺せというクエストね。前回のターゲットだった爺さんは,宿屋の地下で眠っていたから簡単に近づけたけど,今回はどうやってターゲットに近づくかを工夫する必要があるのがポイントだわ。
船への潜入には,貨物に紛れて忍び込むという方法を使ったの。あたしは華奢で小柄だから貨物箱の中にすんなりと身体が入ったわ。船内に入り込めればそこはもうあたしだけの恋の戦場。船長からの熱烈なラブ・アタックをラブ・ドッヂでかわして,首筋めがけて恋の短剣をラブ・クリーヴ。帰りがけに船員も何人かぶっ殺してラブ・トンズラをぶっこいたわ。
インペリアルシティの監獄にいるダークエルフを殺せというクエストよ。ターゲットのいる監房にたどり着くには,衛兵の巡回しているホールや通路をいくつも通り抜けなければいけないの。ことが荒立つとマズイから衛兵を殺すのは避けないとダメ。だからスニークを使って,まるで“サムおじさん”のように,見つからないようにこっそり進まなければいけないところがこのクエストのポイントね。ちなみに前回の「コードネーム47うんぬん」とかいうくだりは,またしても編集段階で勝手に加えられた内容なのだけれど,もういい加減フォローしきれないので拾わないわ。ゾルゲもそう。だいたい「ヒットマン」のファンとあたしのファンがかぶっているわけないじゃない。
ところで,監獄にいるダークエルフと聞いて思い出すのは,ゲーム開始時にあたしに向かって「肩幅が広い」と言い放ったあいつのこと。そして実際に行ってみると,やっぱりターゲットはあいつだったわ。あたしに未練があるみたいで図々しく命乞いをしてきたけれど,なんで男ってそうなんだろう。いい女は過去を悔やまないの。だからそんなものには耳を貸さず,グッサリと殺してやったわ。女の子って,ときに驚くほど残酷なものなのよ。
ターゲットがインペリアルシティにいるハイエルフであることと,その名前は分かっているのだけれど,シティのどこにいるのかが分からない。それを聞き込みによって探り出すところがこのクエストの特徴だわ。暗殺者仲間のアドバイスから始まって,商業街区のエルフ達,そして宿屋の主人と芋蔓式に聞き込みを続けていったら,最後にターゲットを見つけることができたの。でも……
こいつは言っていることがやばいし,目つきもやばい気がするわ。これまでに得た情報によればどうも重度の麻薬中毒らしい。あたし的には,この段階までには殺しにも慣れてきてたし,なにより毎回もらえる成功報酬の素晴らしさにもう乙女心を奪われまくり。女の子って“無料!”とか“応募者全員プレゼント(全プレ)!”なんていう響きに弱いもの。だからあまり悩んだりせずに,軽やかにブスッと刺してきたわ。
それでもやっぱりこの「パーティに招かれた五人のゲスト全員を殺せ」っていうクエストの遂行にはちょっととまどったの。一人二人殺すことには抵抗が無くなってきたけれど,さすがに五連殺は躊躇するわ。でも結局,全員昇天させちゃった(はぁと)。このクエストって殺し方によってゲスト達の反応に変化が現れたりとかあるみたいなんだけど,そんなの起こる間もなく5人を連続ゲット。この殺しでなんかいろいろ吹っ切れた気がするわあたし。さらにオンナに磨きがかかったかもっ。
暗殺者ギルドでは,任務(クエスト)を成功させると,まず基本報酬としてお金がもらえるの。そしてさらに,どのクエストにも「衛兵を殺すな」とか「ターゲットは指定の方法で殺せ」とかのオプションが用意されていて,そちらも指示どおりに達成できると,ボーナスとして武器やら指輪やらステータスアップやらのアイテムをもらえるわ。はっきり言って,盗賊ギルドの任務がバカらしく思えてくるくらい,報酬額も,もらえるアイテムも素晴らしいのよ。
とくに追加ダメージの魔法がかかった片手用の刀と,放つ矢に魔法を付与できる弓がもらえたのは,あたしとしては凄く大きいかったわね。ダンジョン探険ではどちらもなかなか出なかったのに,これさえあればゾルゲだろうがハナゲだろうがポンポコピーのポンポ……
「ちょっとすいません」
「はあ」
「なんなんですか,今回の原稿は」
「え,いや,ミッシェル口調ですけど」
「そうですか。私はてっきり,星原さんが転ぶかなにかして,頭をたっぷりと床に打ち付けたのかと」
「はあ,僕は健康そのものですけどね。いや,語り口がマンネリ化してきている気がして,何か変わったことをしたいなあという」
「変わっていればいいというものじゃないでしょう」
「それに最近はもう,どこまで4Gamer編集部を困らせることができるかがテーマになってきてますからね」
「どこまで読者に楽しんでもらえるかをテーマにしませんか」
「もっともですね」
「確かにこの展開にはもう飽きてきました。連載も次回で終わることだし,ここらで一つ何かドカンとやってほしいというのがこちらの希望です」
「暗殺者ギルド加入はインパクトのある出来事だと思うんですがダメですか」
「最終回までの3週連続で人殺しネタは勘弁してください」
「じゃあどうしましょう」
「どうにかしてください」
「だからミッシェル口調」
「じゃあもうバンパイアでいいです。バンパイアバンパイア」
「そんななげやりな」
「インパクトあるし。これ決定で」
「あ,分かった。今度は『ブラッドレイン』がどうとかまた記事に書き加えるつもりなんだ」
「それもいいかな」
「……」
「バンパイアがイヤなら,ほかのインパクトあるネタを考えますよ。例えば,“素手でアリーナのチャンピオンになる”“世界にどれだけのダンジョンがあるのか数えてみる”“盗みで手に入れたお金だけで家を買う”……」
「バンパイアでがんばりたいと思います」
Oblivion(というか,The Elder Scrollsシリーズ)の世界には,バンパイア(Vampire)が存在する。バンパイアという種族がいるわけではなく,普通の人間がバンパイア症(Vampirism)にかかることで,バンパイアになってしまうのだ。
バンパイア症には,これはもうオーソドックスに,バンパイアに噛みつかれることなどで感染する。バンパイアになると肉体は一般人よりも強靱になるが,日光によってダメージを受けるようになってしまう。また,バンパイアは迫害の対象であるため,なってしまえば一般的な社会生活を送ることは困難になる。
オーソドックスなスタイルでのプレイができなくなってしまうのは非常に痛いが,そこに目をつぶるのであれば,バンパイア症感染は手軽で効果の高い肉体のパワーアップ方法だと捉えることもできる……。筆者が事前に知り得たバンパイアに関する知識はまずこの程度だった。
実は以前プレイしていたときに,うっかりバンパイア症にかかってしまったことがある。
結構広いダンジョンの奥をうろうろしているときに,戦いを通じてスキルが上がって,あとは睡眠をとればレベルアップできる状態になっていた。出てくる敵がなかなか強力なので,少しでも冒険をラクにするためにも,早くレベルアップしてしまいたい。でも宿屋で寝るためにダンジョン深部からわざわざ一度街に戻るというのは面倒くさい。そんなとき,ダンジョンの床にベッドロールがポツンと置かれているのを発見したのである。
いかにも汚い寝床だが,背に腹は代えられない。おやすみなさあいと寝てみたら,見慣れないメッセージが現れて……起きるとバンパイア病にかかってしまっていたのである。えらいビックリした。まあこのときは直前のデータをロードすることで事なきを得たのだが……。
しかし今回は,自分からバンパイアになるために行動しなければならない。この世界にはバンパイアが根城としているダンジョンなんかもあるらしいが,今のところどこか分からない。あてもなく情報を探すには世界は広すぎる。となると,どこぞベッドロールの置いてあるダンジョンなんかを見つけて,そこで寝てみて以前の状況の再現を試みる……などという方法が思いつくが……うふふふふ,実は今回は,もうすでにいい方法を発見済みなのである。
この人。暗殺者ギルドのメンバーでミッシェルにたびたび任務をくれた人なのだが,顔色と目の色が明らかにおかしい。そう,彼はバンパイアなのである。言い渡されるクエストをどんどんクリアしてったら,彼は興味深い提案を持ちかけてきた。
「よく仕えてくれたお礼として,私はきみに“あるプレゼント”をすることができる。それは“闇の力”だ。バンパイアとなって闇の力を手に入れるつもりはないか?」
暗殺者ギルドという裏社会で生きている彼にとっては,バンパイアであることは利点であって障害ではないらしい。そしてその力をミッシェルにも分け与えてあげようか,という提案である。
うむ,そう言われるとバンパイアもそう悪いもんじゃない気がしてきた。初めて提案されたときにはさすがに躊躇して断ったが,ついに提案を受け入れるときがきたようだ。さあ,それじゃあいってみようか。
バンパイアにしてくれるように頼んだ。あとはこの暗殺ギルドアジトにある寝台で眠れば,寝ている間に感染させてくれるらしい。その後,三日まてば影響は身体に馴染んで,バンパイアになれるという。ああ,ちょっとドキドキしてきた。まずは寝てみよう。
可愛かったミッシェル
起きると首筋にキズがある。これで感染したようだ。まだ風貌には変化がない。この顔も見納めかもしれないので記念に撮影しておく。ああ,こんなに可愛いのに。
手っ取り早く時間を進めるためにこのベッドで連続で寝る。これまでがんばってきたんだからゆっくり休養もいいだろう。そして感染から三日後……
「あなたは夢を見た。誰かがベッドで安らかに寝息を立てている。そこにげっそりと痩せた人影が現れてベッドへと近づいていった。人影はかがみ込み,寝ている人物の首もとへと牙を突き立てた。しばらくして青白い顔を上げると,その口からアゴにかけて血が滴っている。吸血鬼の顔色が回復し,これまで見えなかった顔の特徴が見てとれた。あなたはその顔が,あなた自身のものであることに気がついた。あなたは叫びとともに目を覚ました」
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キャァァァァァ! |
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