壁に開いた穴の先は,ダンジョンになっていた。ここは,いわゆるチュートリアル・ダンジョンで,ポップアップするヘルプに従って,攻撃方法やアイテムの拾い方,魔法の使い方などを覚えられる。ぼろぼろではあるが,簡単な防具と武器も入手できた。
戦闘の相手として配置されているのは,ネズミやゴブリンといった弱いモンスター達だ。しかし,でかいとはいえ,ただのネズミのくせに,人間(Nord)様に歯向かうとは,いい度胸である。こちらがか弱い(編注:「恐い」の打ち間違いだと思われる)女性だからって,なめられたものだ。
これらをサクッと倒したり,Zキー(物体をつかむショートカット)で死体を引きずったり持ち上げたりしながらも,先に進む。そして道は,再び兵士達の脱出ルートへと通じ,また皇帝一行と遭遇することになった。やあ,お元気ですか?
すると,暗殺者の一人を切り倒したばかりの兵士が,こちらを目にとめて叫んだ。
「くそっ! さっきの囚人だ。暗殺者の仲間かもしれない,殺せ!」
いやいや,だから,牢屋に入れられていただけだっての。それも正直,身に覚えがないんだけどね。そのうえ暗殺者だと言われても,何がなんだか。なのに,殺せ? 先週みたいに,勘違いで怒るだけならまだしも,殺すってナニよ。とかなんとか言っている間もなく,迫る兵士。
ともあれ,降りかかる火の粉は払わねばならぬ。戦いに備えて弓を握り直すと,皇帝から兵士に制止の声がかかった。二言三言で兵士達を抑えて,皇帝はまたこちらに話しかけてきた。ミッシェルの魅力的な容貌に魅せられたに違いない。
ふむ……,どうもこの老人の言うことはボヤッとしていてつかみづらい。なんでも,なぜ自分がこちらを信用する気になったのか,自分でも理由を説明できないそうだ。シャイだなぁ。
そこまで告げて,皇帝はこちらのバースサイン(Birth Sign)を聞いてきた。
バースサインとは,Tamrielにおける星占いの星座のようなものだ。全部で13種類存在し,ここで選んだものによって,キャラクターに特別な能力が付与される。
この能力は,前回紹介した種族由来の特殊能力とよく似ており,やはりアクティブなものとパッシブなものが存在する。バースサイン由来のアクティブな能力の中には,一日の使用回数に制限がないものもある。
・The Apprentice |
Weakness to Magic | (100・パ) |
Fortify Magicka | (100・パ) |
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・The Lady |
Fortify Endurance | (10・パ) |
Fortify Willpower | (10・パ) |
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・The Thief |
Fortify Luck | (10・パ) |
Fortify Speed | (10・パ) |
Fortify Agility | (10・パ) |
- | - |
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・The Atronach |
Stunted Magicka | - |
Fortify Magicka | (150・パ) |
Spell Absorption | (50・パ) |
- | - |
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・The Lord |
Blood of the North | (Restore Health 6 pts for 15 secs on Self・Cost 50 Magicka・ア ※使用回数に制限なし) |
Weakness to Fire | (20・パ) |
- | - |
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・The Lover |
Lover's Kiss | (Paralyze for 10 secs on Touch,Damage Fatigue 120 pts on Self・ア) |
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・The Ritual |
Mara's Gift | (Restore Health 200 pts on Self・ア) |
Blessed Word | (Turn Undead up to level 25 for 30 secs on Target・Cost 40 Magicka・ア ※使用回数に制限なし) |
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・The Serpent |
Serpent Spell | (Cure Poison on Self,Dispel 90 pts on Self,Damage Fatigue 100 pts on Self,Damage Health 3 pts for 20 secs on Touch・ア) |
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・The Shadow |
Moonshadow | (Invisibility for 60 secs on Self・ア) |
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・The Tower |
Tower Key | (Open Average Lock on Target・ア) |
Tower Warden | (Reflect Damage 5 % for 120 secs on Self・ア) |
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・The Warrior |
Fortify Endurance | (10・パ) |
Fortify Strength | (10・パ)周り |
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ア……アクティブな能力。通常の魔法のようにセットしてCキーで使用
パ……パッシブな能力。常に効果が発揮されている
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女性に対して星座を聞くなんて,一体何十年前のナンパテクニックだ,とも思ったが,相手は皇帝である。うまくいけば,超玉の輿じゃないか(編注:たとえゲーム的にそんな要素があったとしても,ミッシェルには無理だろう)。
そんなわけでこちらのバースサインを告げると,納得したんだかしていないんだか分からないが,皇帝はさらに話を進めた。彼は自分の星の動きから,自分の死が間近に迫っていることはすでに理解しているという。そして会話の最後に話しかけると,彼ははっきりとこう言った。ああ,これなら分かる。
「ついてきなさい。おまえの運命は私の運命と,そしてTamrielそれ自体の運命と結びついている」
なんだかイヤらしいなぁ。ま,また怒られちゃかなわないし,ましてや殺されるのはまっぴらゴメンなので,一行に加わって先に進むことにしたのだが,それも長くは続かなかった。予定していたルート上の扉がすでに閉ざされている。ワナにかかったらしい。
さらに背後からも敵は迫ってきており,かなり危ない状態だ。兵士達が背後の敵に向かって斬りかかっていった直後,皇帝はまた話しかけてきた。
「私の命運はここで尽きるようだ。おまえは一人で,The Prince of Destructionとそのしもべ達に立ち向かわなければならない。このThe Amulet of Kingsが,彼の手に渡るようなことになってはならないのだ。さあ,受け取りなさい。これをJauffreに渡すのだ。私の,“最後の息子”の居場所を知っているのは彼だけだ」
え,なんかちょっといきなり話が具体的っていうか,困るっていうか,あ,アミュレット受け取っちゃった。……その直後,皇帝の背後にあった隠し戸が開いた(右の画像)。皇帝,後ろ,後ろー。……という客席(?)からの声が聞こえたかどうか,現れた刺客の短剣が皇帝の身体に深々と突き刺さる。
戻ってきた兵士の手によって刺客は倒されたが,皇帝はすでに絶命していた。ああ,玉の輿の夢が。いや,その最後の息子とやらを捜せばいいのかな。うふふ。
と,ちょっぴり不謹慎なことを考えていたら,兵士がこちらに話しかけてきた。
「我々は……いや,私は失敗したのだ。今や皇帝は亡く,その息子達もすべて死んでしまった……」
落胆する彼にさきほど皇帝から聞いた言葉を伝え,アミュレットを見せる。彼は少しいぶかりながらも,皇帝がなぜかこちらを妙に信用していたことを思い出して,いくつかの情報をくれた。
なんでも,その“最後の息子”については聞いたことがないが,確かにJauffreなら知っているかもしれないらしい。「なぜならJauffreは自身も所属する皇帝直属の騎士団The Bladeのグランドマスターだからだ。いま彼はChorrolの街の近くのWeynon Prioryで静かに暮らしている。そこに行きたければ,この先の下水道(Sewers)を抜けてImperial Cityの外に出ればいい」。
さらに彼は付け足すように,こう話した。
「下水道にはネズミやゴブリンなどがいる。戦いの素人にとって安全な場所ではない。しかし……さっきの戦いぶりを見て思ったのだが,ひょっとしたらおまえは経験を積んだAssassinなんじゃないか?」
というわけで,ここでは,キャラクターのクラスを選択する。Oblivionのクラス&スキル選択は実にシンプルなのだが,あまり例のないタイプなので,初めはとまどうかもしれない。そのためか,クラスの選び方には,2種類の方法が用意されている。スキルやボーナスなどの組み合わせを自由に考え,オリジナルのカスタムクラスを作る方法と,あらかじめ用意された21種のクラス(Predifined Class)から一つを選ぶ方法だ。
本作での「クラス」は,得意なスキルやスペシャライゼーション(Specialization)の集まりのことを指す。つまり,クラスを決めることで使用可能なスキルなどが決まるのではなく,逆に,得意なスキルなどの集まりを「クラス」としているわけだ。
重要なのはスキルであり,例えば剣術とヘビーアーマーを着こなすスキルに長けていれば,そのキャラクターは「戦士」と呼んでいいだろうし,隠密行動と軽業が得意なキャラクターは「盗賊」と呼べるだろう,という感じだ。スキル以外にもクラスを決定づける能力要素はいくつかある。
・Specialization
「Combat」「Magic」「Stealth」の三つのスキルカテゴリのなかから一つを選ぶ。ゲームに存在するすべてのスキルは,この三つのうちのどれかに属している。ここでカテゴリを選択すると,そのカテゴリに属するスキルには初期状態で+10のボーナスがつく。さらに,それらのスキルはほかのスキルよりも上昇しやすくなる。
・Favored Attributes
ここで選んだ二つの能力値(Attributes)には,初期状態で+5のボーナスが得られる。AttributesにはStrength,Intelligence,Willpower,Agility,Speed,Endurance,Personality,Luckの八つがある。
・Major Skills
三つのスキルカテゴリに七つずつ,合計で21種類あるSkillsの中から得意なスキルを七つ選ぶ。選んだ7スキルは初期値が25に設定され,そのほかのスキルよりも上がりやすくなる。メジャースキルが合計で10上がるごとに,キャラクターはレベルアップする。
・Minor Skills
メジャースキルとして選ばれなかったスキルは,すべてマイナースキルとなる。初期値は5に設定される。マイナースキルをいくら伸ばしてもレベルアップにはつながらないが,“レベルアップ時の,アトリビュートの上昇量”の判定には,マイナースキルも影響する。
さて,ではミッシェル(筆者のキャラ)は,どのクラスにしようか。
この連載を始めるにあたって,担当編集からは「星原さんによる生真面目キャラのプレイ日記なんて,そのまんますぎて面白くないでしょ。ここは,今流行のちょい不良(ワル)じゃないと」と言われている。うーん,清廉潔白にお天道様の下を歩いてきた筆者としては,あんまり自信がないが,一応悪事に手を染める可能性も考慮に入れつつ,クラスを決めるとしよう。
まぁ,どんなキャラクターでも悪事をこなせると思うが,ここは素直にステルス系のキャラクターにしてみる。Predifined Classの中では,確かにAssassinがイメージに近い。
ちなみに本作では,ここに至るまでどういう行動をしてきたかによって,ここで提案されるクラスが変化する。ミッシェルはここまで,弓とスニーク,そして剣をメインに戦ってきたのでAssassinが提案されているというわけだ。
ただ,このAssassinだとメジャースキルの中に魔法系のスキルがない。Alchemyがあるにはあるが,あまりそそらない。ということはカスタムしたほうがいいかも。
というわけで,基本はAssassinで,Alchemyは回復魔法スキルのRestrationに変える。Favored Attributesも,ステルス系らしくAgilityとSpeedに変更……と,こんな感じ。カスタムクラスには自分でクラス名をつけられるのだが,うーん,どんな名前にしようか……。決まらない……。こういったキャラメイクをするたびに思うのだが,ほかの人も,こんなに時間かかっているのだろうか?
……ステルスっぽくて回復魔法が使えて弓が撃てるので「Ranger」? でもそれだとあまり“ワルっぽい”感じがしない……。で,結局つけたのが「Spy」。大物っぽくない感じが気に入りました。
しかし,考えてみたら「女スパイ」じゃないか。ケイト・アーチャー(人気FPS「ノーワン リブス フォーエバー」シリーズの主人公)みたいで,なんかグッと来る響きだなぁ。
クラスが決まったところで,彼から受け取ったカギを使って下水道へと歩を進める。ここはチュートリアルの延長線上にあるようなちょっとしたダンジョンで,遭遇するのは数体のネズミとゴブリン程度。だがクラスを決定したおかげで,戦いの内容はこれまでと異なったものとなった。Sneakのスキルが上がったために,ステルス状態からの弓攻撃に成功するとダメージが3倍になるのだ。
このため,ゴブリンもネズミも一撃で仕留められる。気持ちがいい。もしもスニークがバレて近づかれたら,剣に持ち替えて攻撃。傷ついたら回復魔法で回復。うん,このスタイルでいけそうである。
調子に乗って下水道を進んでいくと,とくに問題なく,ゴールである街の外への出口へと到達できた。ここでチュートリアルは終了だ。出る前に,最後にもう一度,種族,バースサイン,クラスを変更できる機会があるが,もうこれで問題はない。表へと出ることにする。
ここまでがずっとジメジメと暗い地下での話なので,ここで晴れていると自然の美しさに「ウワースゲー」となるのだろうが,夜だった。残念。
考えてみれば,暗殺者の襲撃とかがあったわけだから,そりゃ夜か。
さあこれからどうするか。手元にある高そうなアミュレットは,我が物顔で装備して「俺皇帝,俺つええ」としようとしたが,なんだか装備できない。さすがに凄い呪いがかかっているようで捨てることすらできない。ま,とりあえずは言われたとおりにコイツを届けてやろう。
“Fast Travel”機能を使えば,文字どおり一瞬でWeynon Prioryに到着するが,今回のコレは,使命感に燃えた急ぐ旅ではない。とりあえずはプラプラと歩いて行くことにした。
広大な世界を,好きなように歩き回れる。それが本作の良いところだ。ようやく出ることのできた表の世界を楽しもうと,地面に生えている草の根を引っこ抜いたり,夜明けの川面をボーと眺めたりしながら歩く。
道中では,まっすぐ歩くカニやオオカミなんかが襲いかかってくるのだが,これは今のミッシェルでも難なく倒せた。問題は,BanditとかHighwaymanなどの人型の敵だ。たぶんこっちがスニーク慣れしていない(スキル値が低い)のが原因なのだが,なんだかすぐに見つかって怒られてしまうのである。そのうえ,攻撃してくる。どろぼーのくせに,生意気である。
一度見つかってヤツラが怒り出すと,スニークからの大ダメージ戦法は使えないので,ガチンコ勝負になってへろへろになる。たまにうっかり死ぬ。
とくに,途中で通り抜けた砦にいたHighwaymanはイヤな敵だった。あんにゃろめ,待ち伏せをしていたらしく物陰からいきなり現れて「静かにしろ,おれは泥棒だ」などといかりや長介風なセリフを吐いたのだ。
で,「荷物を渡すか,死ぬか選べ」だとか。いやぁ,こっちだって牢屋から抜け出てきたところで,人に何かあげるような余裕はないしなぁ。というわけで,荷物を渡すのを拒否すると,相手は怒り出し,武器を抜いて向かってきた。いやいや,いきなり行く手を阻まれて,怒りたいのはこっちなんだけど。
そんなわけでとりあえず抵抗したが,これがなかなか強い。涙目で盾を構えつつ,後ろに下がりながらえいえいと剣を振り回すこちらの姿は,相当カッコ悪かったことだろう。
ようやく倒したときにはヘルスがちょびっとしか残っていない。なかなかの強敵だったので,記念に何か逆にかっぱいでやろうと思いつき,ズボンを奪ってやった。こちらの下半身装備はずっと囚人服のままだったのである。
とまぁ途中危険な目に何度か遭いつつも,無事に(いや,死亡→ロードもしたけど)Weynon Prioryに到着。例のJauffreさんはすぐに見つかった。頭のツルンとハゲ上がった,だがなんだか確かに賢そうなおじいちゃんである。
アミュレットを見せたり事情を話したりしたら,こちらの言うことは分かってくれた模様。聞けば,かつては皇帝の側近を務めていたそうだ。んで肝心な部分,例の“最後の息子”についてだが,彼には心当たりがあるという。
「ある晩,皇帝は私を自室に呼びだした。そこにはバスケットに入った赤ん坊がいた。そして皇帝は私に,赤ん坊を安全な場所まで連れて行くようにと指示したのだ。赤ん坊についてそれ以上の説明はなかったが,私にはその子が皇帝の息子であることが分かった。その後皇帝は折に触れ,赤ん坊の成長の様子を知りたがったからだ。皇帝亡き今,王座を受け継ぐべき者はきっと彼に違いない」
その息子の名前はMartin。いまはKvatchの町の教会で牧師をしている。Jauffreは,彼をここまで連れてきてほしいと言う。
さあどうしよう。ここで彼に協力してもいいし,王子なんかほっといて世界を探検しにでかけてしまうのもいい。
Jauffreはとりあえず旅に必要な装備を提供してくれた。さらに,そのあたりにいる修道士が何か協力してくれるはずだというので話しかけてみると,なんと馬をくれた! よってここでは協力しておくことにした。うまくすればまた何かくれるかもしれないし,玉の輿の夢も諦めちゃいないしね。
馬は厩舎にいるというので見に行ったら,確かにいた。ちょっと目がうつろだけど可愛い。それではこの馬に跨り,そのKvatchという町まで行ってみるか。(つづく)