さて,お立ち会い。これからシングルRPG「The Elder Scrolls IV: Oblivion」のプレイ日記を連載していくので,ぜひご覧いただきたい。
というと,なぜこんな,日本で正式に発売されていない(直輸入品を扱っている通販サイトやショップで購入する必要がある)ゲームで,連載をするのか疑問に思う人もいることだろう。そんなわけで,連載の本編に入る前に,簡単に本作について説明しておこう。
Oblivionは,スタンダードなファンタジー世界を舞台にした,シングルプレイ専用のロールプレイングゲームだ。うーん,シンプル。じゃあ何が特徴かというと,
とにかく自由!
である。無数のダンジョン,クエスト,アイテムが用意された非常に広大な,かつ最新の技術で描かれた美しい世界で,自由気ままに冒険できるのが,Oblivionなのだ。
もっともっと詳しく知りたいという人は,レビュー記事をお読みあれ。
そんなわけで,面白い,長く遊べる,絵が綺麗と三拍子揃ったOblivionは世界中で大ヒットし,各種メディアでも軒並み高く評価されることになった。気が早いかもしれないが,間違いなく2006年を代表するゲームの一つなのだ。
しかし,である。なぜかここ日本では販売代理店がついておらず,コアなRPGファンが輸入版などをそれぞれ手に入れてプレイしている状態だ。そのため,せっかくの傑作なのに,まだまだ本作を知らない人もいることだろう。うーん,もったいない。
閑話休題。プレイ日記といえば,(決まった筋道のない)MMORPGで行うものと相場が決まっているが,あえてシングルプレイ専用のOblivionで展開してみるというのが,この連載である。Oblivionは,シングルプレイRPGでありながら,いわゆる“一本道”とは正反対のタイプのゲームなので,ネタバレとか気にせず,純粋にプレイ日記として成立するんじゃないかと考えている。
Oblivionの面白さを知る日本人が増えて,ついでに日本販売,いっそのこと日本語化まで検討してくれる会社が現れることを願いつつ,この連載を始めてみる。そんなわけで皆さん,とくとご覧あれ。
さて,Oblivion啓蒙作戦の一環としてプレイ日記を連載するのはいいとして,まず主役を作らなければ,話を進めようがない。誰もがOblivionで遊びたくなるような,実に魅力的なキャラを生み出すのが,編集部から筆者に課せられた最初の試練だ。
本作のキャラクターメイキングで最初にすることは,容姿の設定である。設定の多くはマウスでスライダーを動かすことによって行う。スライダーに合わせて,表示されている顔の3Dモデルがリアルタイムで変化するのだ。なお,各スライダーは,完全に独立しているわけではなく,周りの要素とある程度連動する。いわゆるプロシージャルなディテールの生成というやつである。
顔面および頭部に関する設定項目はもの凄く多い。ここまで頭の多くの部分をカスタマイズできるゲームは少ないだろう。ましてや,シングルプレイRPGとなれば,前代未聞ではないだろうか。
項目としてはBrow,Cheeks,Chin,Eyes,Jaw,Nose,Mouthなどがあり,さらにそれぞれの項目の中にいくつものサブ項目が存在する。例えばMouthであれば,その下には“Mouth drawn/pursed”“Mouth High/low”“Mouth lips large/small”“Mouth tilt up/down”“Mouth-chin distance short/long”などというように,10ものスライダーが存在する。さらに肌の色調も同様に部位ごとに細かく設定できる。
選択可能な種族は10種類。ベースには一般的な西洋風ファンタジーの伝統が見られるが,The Elder Scrollsならではの背景設定を持っている。用意された10種族は,そのバックグラウンドに基づいた種族達だ。
各種族はそれぞれに特徴が設定されており,それらはスキル値への初期ボーナス(Skill Bonus)と生来の特別能力(Specials)として表現されている。特別能力には魔法のように使用するアクティブなものと,常に効果が持続しているパッシブなものがある。アクティブな能力は一日に一度しか使用できない。
さて,今回は編集部からの要請(命令?)として女性のキャラクターを作ることが決まっている。ううむ,筆者はMMORPGなどではいつも,極力自分に近い容姿にして,感情移入しつつ楽しむのだが,どうもそれは許されない雰囲気だ。グッと我慢。
なぜ女性キャラなのかという明確な理由は教えてもらえなかったが,筆者に対する嫌がらせでなければ,純粋に編集者の趣味なのだろう。イヤらしい。とはいえ,確かにムサいおじさんキャラばかりが載っているよりは,そのほうがいいかもしれない。
しかし,わざわざ女性キャラと限定してきたからには,ある程度,ビジュアル映えするキャラである必要があるのだろう。そうなると,トカゲの亜人種ArgonianとリアルネコっぽいヒューマノイドKhajiit,それにいかにもモンスターなOrcは選択できない。それ以外で筆者の趣味に合いそうなのは……と考えて,結局Nordにした。この世界の北方に住む種族で,寒さに強く,戦士としての適性が高い。おそらく現実世界のバイキングをモデルとした種族だ。
種族が決まったら,顔を作っていくのだが,はっきりいってOblivionの女性キャラクターは,気を抜くとすぐにアンマカワイクナクできあがる。辛抱強くスライダーを調節し続けて,1時間近くをかけてキャラクターはようやくでき上がった。ひゃあ,疲れた。
しかしここまでカスタマイズが可能だと,キャラメイクにはゲームプレイ以外のセンスが求められる。今後こういうタイトルは増えるだろうし,そのへんのセンスに見放されている筆者などにとってはどんどん厳しいことになっていきそうだ……。
そんなこんなで,ようやくゲームスタート。
始まるとそこは牢屋の中だった。天井からは拘束用の手かせのついたクサリがぶら下がり,傍らの汚い机の上には汚い水差しと汚いコップ,床には汚い寝床がある。とりあえず全身を確認するためにメニューモードに入ると,
ちょっとたくまし過ぎないかコレは。うーん,4Gamer編集部の面々に怒られるだろうなぁ。あの人達,すぐ怒るからなぁ。ただ,本作の場合,頭部のカスタマイズ項目が多い半面,本作では背の高さや体格など,首から下の部分はカスタマイズできない。選んだ種族&性別ごとに固定のようだ。だから,仕方がないのだ。うんうん。
さて独房の鉄格子の扉に近づくと,正面の牢にいる囚人がからかいの言葉を投げてくる。
「おまえNordだな……ああそうさ,そのたくましい身体を見れば分かるさ!」
だーかーらー,仕方がないんだって。レディに向かってなんてことを言うんだ,こいつは。
ともあれ,いつまでもこんな牢屋にいては,ちっとも魅力的なプレイ日記にならない。なんとかならないかと鉄格子に手をかけると,遠くから看守のものらしき足音が聞こえてくる。
ところで,正面の囚人の様子がおかしい。こちらをからかいたくてたまらないようだ。
「おい,聞こえるか? ガードが来るぜ……。いよいよオマエが連れて行かれる番らしいな! へっへっへっ」
だがそうではなかった。こちらの牢の前に現れたのは,変わったデザインの鎧の兵士数人と,豪華なガウンをまとった老人だった。どうやらこの独房の中に入ろうとして来たらしい。この牢はカラだと思っていたらしく,兵士は予定外のこちらの存在に,勝手に腹を立てて「後ろへ下がれ! いますぐだ!」と怒鳴り立てる。
うーん,なんで怒られているんだろう。気づいたら牢屋に入れられていて,しかもそれが理由で怒られるなんて実に理不尽である。
とはいえなんか恐いので,とりあえず言われたとおりにすると,彼らは鍵を開けて中に入ってきた。兵士がこちらを壁に押しつけようとしたそのとき,ガウンの老人はこちらの顔を見て立ち止まり,話しかけてきた。
老人の話は要約するとこうだ。彼はこのTamrielの皇帝 Urial Septimであり,いまは暗殺者の手から逃れるために,この牢屋に隠された脱出ルートを利用しようとやってきたそうだ。王子である息子はすでに暗殺者の手にかかって殺された。いまこちらに声をかけたのは,あまりにも広い肩幅がどうしても気になったからではなく,こっちの顔が夢に出てきたものと同じだから,だという。
なんだか全部がにわかには信じがたい話だ。こちらが困惑しているうちに,兵士は皇帝に先を急ぐようにと促して,独房の壁面の隠し扉を開け,そちらへと進んでいった。どうしていいか分からず,とりあえず様子をうかがいながら後をつけると,確かに暗殺者らしき者達と兵士達が斬り合っている。黒い甲冑の暗殺者を倒すと,皇帝一行はさらに奥にある扉の先へと進んでいった。
……もちろん扉は施錠された。
これからどうするべきか。鍵の下ろされた扉の前にたたずみ,今一つはっきりしない頭で考える。そのとき,どんな種類の偶然なのか,前触れもなく右側の壁が崩れた。どうやらこちらからも奥へと進めそうだ。どうするか。牢に戻っても何もない。仕方がない。このどこへ続いているかも分からない壁の穴に,たくましい身体を押し込んだ。(つづく)