これまでの回で解説してきたゲームの展開と,それに応じたテクニックはおおむね,
- 古代 〜 古典時代……文明の立ち上げ
- 古典時代 〜 中世……財政の確保
- ルネサンス期以後……都市間の役割分担
- 中世 〜 工業化時代……戦争による領土拡張,または専守防衛できる軍備を整えて戦争を回避
とまとめられる。こうした,各段階のポイントさえきちんとクリアできていれば,ルネサンス期以後の技術開発は,割とお気楽に進めてもどうにかなるものだ。
とはいえ技術は,より効率的な順番で取得していくに越したことはない。例えば,世界で初めて取得することによりボーナスがつく技術は,優先して取得したほうがよい。また,宇宙開発競争での勝利を目指す場合,強力な軍事ユニットにつながる技術より,内政上重要な役割を果たす技術を先に取って,開発そのものを加速したいところだ。ルネサンス期以降は,そうした技術を優先して取ることで,技術的なリードを広げていくことが重要になる。下に示すのは,そうした条件に該当する技術のリストだ。原則としてルネサンス期以降のもので,おおむね登場順に列挙した。

自由主義を無事先取できたときのダイアログ。ご覧のとおり,技術が無償で得られる。ちなみに,技術にマウスカーソルを合わせてポップアップするウィンドウで,開発した場合の必要ターン数が分かる。この画面を撮影した状況では,必要開発ターン数は経済学が5ターン,天文学8ターンだったが,効果を考えて経済学を選んだ
Civ4における文明の近代化/現代化は,まず社会制度が先行する。これに役立つうえ,先取ボーナスも獲得できるおいしい技術が,「自由主義」と「経済学」だ。これらはいずれも「教育」からつながるルートにあり,どちらを先に取ることも可能である。
「自由主義」では,開発可能な技術を無料で一つ獲得できる。これは序盤に苦労して作った「アポロ神殿」と同じ効果で,たいへんおいしい。この時期,順調に技術開発ができていたとしても,コストが高い技術の獲得には8ターンから12ターン程度はかかる。これが短縮できるのは大きなメリットだ。さらに,近代の重要な社会制度である「表現の自由」「信教の自由」も採用可能になる。これらは必ずしもすぐに採用しないほうがよいこともあるが,内政系の勝利を目指すときには,いずれ必要になるものだ。
「経済学」については,まず,社会制度の「自由市場」が可能になるという効果がある。連載第3回で触れたとおり,これには自国都市すべての交易路を+1する効果があり,大幅な増収につながる。また,先取すれば大商人ユニットを得られ,ミッションを達成すれば1000コイン以上の一時金が得られる。擲弾兵/ライフル兵で軍事攻勢を構想している場合も,これらの経済効果で,軍事ユニットのアップグレードや維持費の調達が楽になるだろう。
こうした事情のため,「自由主義」先取 → その効果で「経済学」獲得 → 「表現の自由」&「自由市場」を一度に採用,大商人ユニットも獲得というコンボは,狙いがいがある。「経済学」より開発コストが高い「天文学」という選択肢もあるのだが,「経済学」を優先する価値が高い,ということだ。もっとも,「天文学」によって海洋を越えた大陸との間に交易路が開けるようになるので,これも経済的には無視できない技術ではある。

民主主義の大きなメリットといえる「自由の女神」。中世頃の世界遺産には効果が微妙なものもけっこうあるが,これは十分に狙う価値のある効き目を見せてくれる
一方,近代的な政体を可能にする技術には,もう一つ「憲法」&「民主主義」というグループがある。これらは前のグループとはルートが異なり,また「憲法」は「民主主義」の取得条件となっている。
「憲法」で「代議制」に移行すると,科学技術開発のペースが大幅にアップする。具体的にいうと,専門家一人につきビーカー+3である。これはできれば素早く取りたい。
「民主主義」は「普通選挙」「奴隷解放」を可能にする。これらへの移行はプレイ終盤,いずれ必要になるとはいえ,あせらなくてよい。むしろ,取得可能になる時点では,強力な世界遺産である「自由の女神」が建造可能になる効果が大きいだろう。「自由の女神」では,すべての自文明の都市に専門家を一人ずつ配置でき,どの専門家にするかはプレイヤーが選べる。
これらの二つのルートのうち,どちらを優先するかが迷いどころだ。「憲法」を先に取って技術開発を加速していくのがよさそうに思えるが,それだと「自由主義」を先取するボーナスが得にくくなる。自分が十分にリードを取っていて,「自由主義」が先取できそうならそちら優先,逆に,最先進国に後れをとっているなら「憲法」優先,というのが目安になるだろう。

新しい社会制度が,常により良いものとは限らない。一見していかにも危なそうに見えるものに加え,実は経済を鈍化させてしまう「環境保護主義」なんてのもあるので要注意である
なお,宗教志向の指導者でなければ,「社会制度は常に二つ1組で変える」のがコツになるはずだ。というのも,社会制度を変えると無政府状態が生じ,解消するまでの間,生産や技術開発の効率が大幅に低下する。同時に二つの社会制度を変えた場合,無政府状態は1ターンで済むが,ここで三つの制度を変えると,2ターン続いてしまうのだ。前述のコンボで「表現の自由」と「自由市場」をまとめて変更し,そのほかをいじっていないのはこのためなのである。
近代社会を特徴づける要素といえば,社会制度だけでなく,高い工業生産力も挙げるべきだろう(Industrial Societyというわけだ)。Civ4でもそのあたりはキッチリ再現されており,重工業化が進んだあとの社会や都市では,それまでと段違いのハンマー生産力(70〜100以上)が実現される。軍事ユニットでいうと,トップクラスの工業化都市では「歩兵」や「戦車」,「機械化歩兵」といった強力な軍事ユニットが2ターン程度で量産できるようになるのだ。何ターンもかけて騎士を作っていた頃とはまさに隔世の感,と思えるはずだ。いやまあ,実際に時代が違うのだが。
こうした工業生産力の基礎になるのが,近代以降に実現する,以下のような技術/施設である。
- 工場の建造(都市建造物)
- エネルギーの供給(都市建造物である,3種類の「発電所」,または世界遺産の「三峡ダム」)
- 製鉄所の建造(国家遺産)
- 鉄道の敷設(労働者による地形改善)
- 製材所の設置(資源活用施設)
前の三つは都市建造物で,得られているハンマーを増幅する効果があるもの,後の二つはハンマー収入そのものを増やす手立てだ。製材所は「共通規格」技術で設置可能になる資源活用施設だが,プレイの後半ではたいへん優秀なハンマー獲得源になる。極地手前で森林に囲まれた都市などでは,序盤であまり森林を伐採しすぎないようにしよう。また,製材所や鉱山は,鉄道を敷設することで収益が+1される。
これらのほか,単に技術を得ることでハンマーなどの収入が上がることもある。こちらの例としては,町や村,工房/風車/水車などが該当する。
もう一つ,意外と気づきにくいが,「生物学」を取るとハンマー生産を増やしやすくなる。丘に囲まれた都市では,周りの高ハンマー地形を生かしきるだけの人口が養えないことが多い。生物学で食糧生産が増えると,こうした都市での食料調達が楽になり,より多くの人口をハンマー生産に割り当てられるようになるのだ。

工場は工業化の要ではあるが,これだけでハンマー生産が飛躍的に伸びるわけではない。とくに,三峡ダムを取りそこなったときには,主要都市だけでもしっかりとエネルギー供給を行って,工場の真価を発揮させてやる必要があるだろう
気をつけたいのは,製鉄所を除いて,これらのうち単独の技術/施設に突出した効果があるわけではない点だ。シリーズ従来作品のプレイヤーはしばしば,工場に劇的なハンマー増幅効果があるように思い込んだままプレイを続けてしまうが,Civ4における工場単体の効果は,中世に建造した「溶鉱炉」と同じだけしかない。つまり,ハンマーを25%増幅するだけだ。
溶鉱炉と工場は併用可能なので,工場を建てる甲斐は十分にあるのだが,一方でコスト面からみると,単独で劇的においしいというほどではない。「大量生産」の技術を取るやいなや,すべての都市で一気に工場建設に走ったりしてしまうと,得てして軍備がおろそかになり,戦争を仕掛けられて手痛い目に遭うことになる(筆者だけだろうか?)。
さて,ここでようやく見出しに掲げた話題に入るわけだが,工場に真価を発揮させるには,「エネルギーの供給」という条件を満たす必要がある。これにより工場のハンマー増幅率は50%まで上がり,うまみを味わえるようになるのだ。ただ,エネルギー供給を担当する発電所の建造コストも,決して安くはない。また,最も割安で早くに作れる「火力発電所」は衛生に悪影響を与える。

三峡ダムについてはこれまで何度か取り上げてきた。以前のシリーズで前身といえるフーヴァーダム以来の個人的なお気に入り,ということもある。今回名前が変わったのは,やはり終盤の米国産世界遺産ラッシュに気兼ねしたからかなぁ,とか思ったり
このジレンマを解決するのが,「川沿いの都市に世界遺産の三峡ダムを作ってしまう」という方法だ。これにより,同じ大陸のすべての自国都市にエネルギーが供給できるようになる。以前の回で,「川沿いに工業都市を一つは作っておくこと」が大事だと触れたが,それはこの方法のための布石だったのだ。
ただし,三峡ダムの建設コストは標準で1750。実質的にすべての世界遺産の中で最も高価だ。というのも「軌道エレベーター」はコスト2000ながら,アルミニウム資源さえあれば実質のコストは半分になるためである。大きな話だけに,建設に当たってはさまざまな事柄を考え合わせる必要があろう。
そして,三峡ダムの建設と活用は,そろそろ目前に迫った宇宙船建造をうまくやるためのプランとも,密接に関わってくる。ということで,最終回となる次回は,三峡ダムともからめつつ,最後のツメともいうべき宇宙船建造計画をお届けしたい。
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ゲームの序盤近くから作れる「工房」だが,あまり増収効果が高くないので忘れている人も多いだろう。だが,中世後半くらいから技術によって次第に能力を増す。森を伐採したあとの平原からハンマーを得たいときに有効だ |
自動化した労働者に森がすっかり伐採されてしまう,とお嘆きの人は,オプション画面を開いて「自動化された労働者による森の伐採なし」にチェックを入れるとよい。この画面の設定で,自動労働者の使い勝手はかなり上がるはず |