― 特集 ―

東京国際アニメフェアの会場にて,メタルユーキ氏に単独取材!

Text by midi 

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仰天企画! 東京ドームを借りて学校対抗の大運動会を開催!?

4Gamer
 今回のアニメ化発表も,先ほどおっしゃってたコラボレーションの一つとして捉えていいんですか?

 

メタルユーキ氏
 そのとおり。まずはTMOの存在を知ってもらわないと始まらないから,そのきっかけ作りとしてアニメを持ってきたんだ。これまでのコンシューマゲームでは,販促のためにテレビCMを打つ展開が中心だったよね。でもこのTMOは会員制でずっと遊んでもらうビジネススタイルを採るわけだから,長い期間展開するという部分では,CMスポットでボンっと入れるよりは,一定期間アニメを放送するほうが有利だろうからね。

 

4Gamer
 アニメ化の話は,かなり前から動いていたんですか?

 

メタルユーキ氏
 うん,そうだね。紆余曲折があったけど,何とか今回発表できるまで持ってこれた。これまでもときめきメモリアルシリーズは常にアニメ化を望まれていて,自分自身もプロデューサーとして,幅広い展開をやっていきたいと思ってたんだけども……。事業として実現できるものとできないものがあってね。アニメは,この12年間でOVAが発売されただけだからね。

 

4Gamer
 そのOVAの発売からも,かなり日にちが経ってしまいましたし。

 

メタルユーキ氏
 あのOVAは,最初の「ときめきメモリアル」のものだから,もう7年ぐらい前か。あれ以降も,ずっと「アニメをやりたい」って思いはあったんだよ。「ときめきメモリアル2」の派生ソフトで,「サーカスで会いましょう」というアニメがいっぱい詰まったソフトを作ったり,ときめきメモリアル2や「ときめきメモリアル Girl's Side」のオープニングをアニメーションにしてみたりと,いろいろやったんだけどね。
 今回のような形で,しっかりしたストーリーを伴った,アニメ展開という形でお届けすることは,なかなかできなかった。

 

4Gamer
 じゃあ今回は,タイミングを含めたさまざまな要素が,うまく合致したんですね。

 

メタルユーキ氏
 うん。オリジナルアニメはアニメ単独でやってもなかなか上手くいかないし,ゲームはゲームでこれからさらに競争が激しくなってくるはずなんだ。そういう環境の中で,ゲームとアニメ,二つの大きな両輪を一度に回して動かせるというのは,かなり大きなアドバンテージだと思うんだよね。

 

4Gamer
 アニメ,ゲーム双方で相乗効果が狙えますもんね。アニメ版の公式サイトもオープンして,情報もいくつか出てるわけですが,正直まだまだ情報は少なめです。例えば,いつから放送開始なのかとか,天宮早百合や桜井 晴,春日つかさ,弥生水奈以外の恋愛候補生は登場するのかなど,そのあたりもユーザーは気になっていると思うんですが……。

 

メタルユーキ氏
 明日になったら,また新たな情報がコナミステージで発表されるんだけど(編注:翌日のステージにて,春日つかさや弥生水奈の声優が発表され,イベントにも出演した),情報を少しずつ出して期待感も高めていければいいなと。それと同時にゲームのほうも,盛り上がっていけばいいなと思ってるんだけどね。

 

4Gamer
 先ほどのステージイベントで,アニメとゲームの連動の話が出てましたが,具体的にどのようなアイデアが出てきてるんでしょうか?

 

メタルユーキ氏
 まず一つは,アニメを作るにあたって,TMOのゲームの世界観を極力採り入れているって部分。ゲームをやっている人がアニメを見て,違和感を感じちゃったらおしまいだからね。あとは,オンラインゲームならではの連動。パッチを当てればゲーム自体を更新できるから,アニメの何話目でこういう話をやるというのをあらかじめ決めておけば,それと同じタイミングで同じアイデアをゲームでも再現できる。
 アニメはアニメ,ゲームはゲームでそれぞれ勝手に作っていくんじゃなくて,お互いに情報をフィードバックし合うことで,よりいい作品を構築していきましょうってことだね。

 

4Gamer
 じゃあ例えば,アニメのほうでクリスマスにイベントが描かれた回があると,それと連動した伏線がゲーム中で張ってあったりとか,そういうことが考えられるわけですよね?

 

メタルユーキ氏
 うん,そうだね。

 

4Gamer
 じゃあ,プレイヤーが通ってる学校とアニメの学校がどんどんリンクしていくんですね。

 

 

メタルユーキ氏
 うん。そういうアイデアは積極的に採り入れていきたいね。逆に,採り入れなければいけないと考えているし。

 

4Gamer
 アニメに出てくる学校(私立つむぎの高校)が,アニメ放送開始と同時にゲームにも実装される,なんてことはあるんですか?

 

メタルユーキ氏
 アニメの舞台であるつむぎの高校は,同じ世界観だけれども別のものとして考えてるんだ。アニメではあるエピソードが発生しているのに,自分が通っているゲーム中の高校では発生していないっていう不整合をなくすために,アニメのほうはあえてアニメのみの高校にするつもり。共有できる部分はしっかりするけど,アニメのすべての要素をゲーム中に持ってくるのは難しいからね。

 

4Gamer
 イメージ的には幻のサーバーみたいな?

 

メタルユーキ氏
 そうそう(笑)。

 

4Gamer
 面白い連動になりそうですね。

 

メタルユーキ氏
 そうだね。今までのゲームだと,まずゲームが立ち上がって,その後に関連商品が出てくるという形がほとんどだった。ゲームが駆動力となって,三輪車のごとく後ろを引っ張っていくというイメージ。でも今度は,アニメとゲームの二つの前輪があって,それが同時に動くことでグイグイ引っ張っていく,前輪駆動の四輪車のようなイメージなんだよね。

 

4Gamer
 なるほど,確かにそれは力強そうですね(笑)。車輪としては,アニメだけじゃなく,さっき名前が出たエコルもありますし。

 

メタルユーキ氏
 マルチメディア展開,いろんな企業とのコラボレーションが,今回のTMOの特徴かもしれないね。

 

4Gamer
 あの,これはちょっとアニメから話がズレるかもしれませんが,アニメがスタートするとなると,コナミさんのこれまでのマルチメディア展開のやり方から見て,「ラジオもあるんじゃないか?」と期待してしまうんですが。

 

メタルユーキ氏
 今までのときめきメモリアルも,いろいろとラジオ展開はしてきたからね。もちろん考えてはいるよ。どういう展開がプレイヤーに最も望まれている形態なのかを,現在検討してる段階だね。昔はラジオってパーソナルな環境で聴くものだったから,ときめきメモリアルの世界観に浸るには絶好のメディアだった思うんだよ。でも今は,PCのディスプレイの中でゲームを遊びながらインターネットもできるという環境だからね。そういうものを上手く使った放送がいいかもしれないし。

 

4Gamer
 ええと,それは……ネットラジオってことですよね?

 

メタルユーキ氏
 あー,んー,どうだろうねー?

 

4Gamer
 このかわしかたは怪しいなぁ(笑)。

 

メタルユーキ氏
 まだまだ検討中だからね(編注:後日,ネットラジオのスタートが,正式にコナミよりアナウンスされた)。

 

4Gamer
 このTMOは,ラジオで生放送をしながらゲーム中で連動してイベントをやるとか,そういうことが非常にやりやすいタイトルだと思うんですよね。

 

メタルユーキ氏
 そうだね。今回は,ゲストキャラクターという形で,タレントや声優さんにプレイヤーと同じ立場で参加してもらってるよね。だから,例えばその方達が持ってるブログでの展開や,先ほど言ってたラジオなどで,プレイしている様子をリアルタイムで紹介する実況中継のようなこともできる。そういうのは,きっと楽しいと思うんだよね。だから,ネットだけじゃなく従来の媒体,例えば紙媒体でのコミック展開なども含めて,有効な手段として使っていきたいとは思ってるよ。

 

4Gamer
 あとはアレですね,ときめきメモリアルといえばイベントを忘れちゃいけませんよね。毎回多くのファンが集まりますし。

 

メタルユーキ氏
 去年の年末から年始にかけて,「ときめきメモリアル スーパーライブ」のファイナル公演もやったしね。

 

4Gamer
 やりましたねー。

 

メタルユーキ氏
 あのライブでは「TMO」を紹介する時間があって,従来のときめきメモリアルシリーズファンに,新しいものが始まることを知ってもらった。今後も,ああいうことはドンドンやっていきたいね。

 

4Gamer
 エコルでも毎月イベントをやってますよね。こういうのは,今後も引き続き精力的に行っていくんですか?

 

メタルユーキ氏
 もちろん。エコルとは今後も連動していくよ。大きな箱を使うイベントもあっていいと思うけど,逆にエコルのような小さなスペースでコミュニケーションを密にとりつつやったほうがいいイベントもあるからね。大小いろんな規模でのイベントを考えているよ。それには,プレイヤーの盛り上がり,熱が必要になってくるけどね。……東京ドームを借りて大勢のプレイヤーを集めて,学校対抗の大運動会をリアルにやるってのも面白いかもしれないよね(笑)。

 

4Gamer
 僕は欠席しますよ,体力ないから(笑)。

 

メタルユーキ氏
 あははは。でもね,ときめきメモリアル2の発売に合わせてやった,「ひびきのネット」っていうWeb展開のときには,プレイヤーが運営しているそれぞれのクラブがリアルで活動していたんだよ。
 吹奏楽部だったら,実際に楽器を持ち寄って練習してみたり,演劇部ならみんなで集まって演劇の練習してみたりね。だから,校内でのイベントに実際に参加してもらうというのは,ちょっとありなのかなという気もしているんだ。

3年間遊び続けてもらえるように学園を成長させる仕掛けを投入したい

4Gamer
 話をゲーム自体のほうへ戻しますね。ちょっと固い話になるんですが,このTMOという作品は,どれくらいのスパンで作業計画を進めているんですか?

 

メタルユーキ氏
 スパンかぁ……。それはね,やっぱり高校だから,3年間やらなくちゃダメだと思ってるんだよね。

 

4Gamer
 あ,そこはちゃんと高校らしく(笑)。

 

メタルユーキ氏
 うん。ある意味,学校経営に近いのかもしれないけどね。せっかく入学してもらったんだから,最低3年間はやらなきゃいけないな,と思ってる。それに対して,どれだけ制作側が頑張れるか,プレイヤーの興味を維持できるかという,リアルな問題もあるけどね。

 

4Gamer
 プレイヤーに興味を持たせ続けるための,具体的な方策などはありますか?

 

メタルユーキ氏
 ん……,考えてはいるけど,まだ言えない。

 

4Gamer
 現段階では内緒ですか。

 

メタルユーキ氏
 いや,ここで構想を言うのは簡単だけど,それが実装できないと「メタルユーキの嘘つき!」って言われるからさ(笑)。それに,プレイヤーさんを失望させてしまうしね。今言える具体策としては,以前も言ったと思うけど,プレイヤーとのキャッチボールをしっかりと行って,上がってきた声を反映させていく準備がある,ということ。
 例えば,βテストのときに出ていた要望は,できる限り収集して検討する方向で考えてるんだ。「学園をみんなで育てていこうよ!」って意識のもと,プレイヤーから意見/要望/不満も含めて受け取って,こちら側も機敏に動いていきたい。意見をチェックした,実装できるか検討に入った,できそうなものは制作準備に入った,まさに今制作中,もうすぐ実装されるよ! ……そういった,タイミングごとのアナウンスも,オープンに見せていきながら,期待感を高めていきたいなと思ってるんだ。

 

4Gamer
 それって実は,これまであまりされてなかったことですもんね。

 

メタルユーキ氏
 そうだね。もちろん,プレイヤーの声だけに頼るのではなくて,「こういうのはどうだろう?」っていう提案も随時していくつもり。ただ,こちらから出すだけだと,押しつけになるし,みんなで学校を育てていくことにはならないからね。
 提案もするけど,みんなにもいいアイデアがあればドンドン提案してもらいたいな,と。その中からいいアイデア,みんなが必要としている要望があれば,極力それは実現していきたい。

 

4Gamer
 正式サービスから導入されたウィンドウモードも,要望が多かったものでした。

 

メタルユーキ氏
 うん。これはかなりのユーザーから「実装してほしい」という意見があったから,真っ先に導入したんだ。それ以外にも,ほかの学校に転校できる“転校モード”みたいなものも実装すべきかどうか,検討しているよ。そういう部分を一つ一つ実装して,進化を見せていきたいね。ゲーム内でいえば,アイテムの数もどんどん増えていくだろうし。

 

4Gamer
 そういえば,アイテムやキーワードの数は正式サービス後に一気に増えましたね。

 

メタルユーキ氏
 そういう要望が多かったからね。あと,期待されている新しい恋愛候補生,転入生っていうのも導入しなきゃいけないと思ってるよ。

 

4Gamer
 やることがいっぱいですねぇ。それら恋愛候補生の追加だったり,さらなるアイテム追加のアップデートに関しては,どれくらいのタイミングで?

 

メタルユーキ氏
 それに関しては,プレイヤーの消費スピードや,ニーズの高まりに合わせて逐次入れていくつもり。今実装されている,クラブ活動やドラマイベント,授業に関しても「これで完成した!」とはまったく思ってないから,どんどん進化させていくし,内容も濃くしていくよ。それとは別に,さまざまな新機能の実装といった更新も随時していくだろうね。

 

4Gamer
 随時となると,かなり大変になりますね。

 

メタルユーキ氏
 そうだね。これは理想なんだけど,プレイヤーがイベントを企画して,盛り上げられるための,いい環境を作りたいんだ。プレイヤー個々が気軽に主催者になれる環境と言い換えてもいんだけど。
 例えば,「ミスコンテストをやりたい!」っていう人がいるとするよね。でも,実際にやるとしたら投票管理とかがすごく面倒なんだよ。だって,今のシステムだと,誰が誰に投票したかをいちいちメモして把握しなきゃいけないからね。だったら,自動的に集計できる投票システムを搭載したらどうだろうか,とかね。そういったものがあったら便利じゃない,絶対。

 

4Gamer
 そうですね,ツール系の搭載は嬉しいかもしれません。

 

メタルユーキ氏
 だから「こういうことがしたいから,こういう機能が欲しい」という意見を,たくさんもらいたいね。もちろん,すべてを実現できるわけじゃないけど,声が多く挙がったものは極力入れるように検討していくよ。

 

4Gamer
 多くのMMORPGでは,一定周期ごとに大規模なアップデートを行ったりしていますが,そうじゃなくて,こまめに順次アップデートを行っていくというイメージなんですね。

 

メタルユーキ氏
 そう,学校を徐々に成長させていく,といった感じかな。もちろんそれとは別に,季節ごとのイベントなどは入れていくけどね。春夏秋冬,一年の中で重要なイベントはもちろんだし,来年,一周年のタイミングで記念イベントをやるとか,大掛かりなものも別途検討していくよ。

 

4Gamer
 現状,β2テスト参加者は無料で遊べてますよね。それが課金に切り替わる4月下旬が,一つのターニングポイントになるんじゃないかと思うんです。その切り替えのタイミングで,ほかのオンラインゲームに流れるユーザーもいると思うんですが,そういう人達を引き止めるために何か考えていることはありますか?

 

メタルユーキ氏
 お試し期間っていう形で無料で1か月遊んでもらっているわけだから,そこで「このゲームは僕には合わないな」と感じたユーザーを無理に引き止めるつもりはないんだ。ただ今回は,課金期間になっても税込みで月1200円,つまり一日40円で楽しめる学園生活を提示させてもらった。その価格で,意義を感じてもらえる努力はこれまでしてきたつもりだし,続けて遊んでもらうための努力は,今後もしていくよ。そこで,評価してもらえればと思うよね。

 

4Gamer
 なんでこんな質問をしたのかというと,30日の無料期間が切れる段階で大きなアップデートがあるんじゃないかなー,と予想していたんですよ。

 

 

メタルユーキ氏
 大きなアップデートがあるかどうかは分からないけど,30日単位での課金ということもあって,30日単位を軸にしてアイテムやアイデアを投入して,プレイヤーの興味を持続させようという考えは,もちろんあるよ。

 

4Gamer
 まぁ,それは当然といえば当然の策だし,課金の切れる頃に「もう少し続けてみようかな」と思わせる仕掛けは絶対に必要ですもんね。

 

メタルユーキ氏
 うん。さっき言ったようにね,課金が切れたときに,ほかのゲームに移っちゃう人が出てくるのは,ある程度しょうがないかなとは思ってる。ただ,このTMOが提示したような,新しいニーズの発掘を続けないと,オンラインゲーム自体がなくなっちゃう気がしているんだよ。MMORPGばかり増えていくと,お互いのメーカーがつぶし合う消耗戦になるから。
 だから,MMORPGという土俵で勝負するんじゃなく,新しい土俵で,新規の顧客開拓に果敢にトライし続けていきたいし,それがビジネスとして成功すれば,ほかのメーカーも含めてね,オンラインゲーム業界が活気づくと思うんだよ。

 

4Gamer
 その話と関連することなんですが,今回実際に遊んでみて,「TMOで初めてオンラインゲームに触れました」って人がけっこう多かったので,ビックリしたんですよ。

 

メタルユーキ氏
 それはホントに嬉しいことだよね。こちらが考えに考えて,狙っていたところだから。

 

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タイトル ときめきメモリアルONLINE
開発元 コナミデジタルエンタテインメント 発売元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 2006/03/23 価格 パッケージ版:1980円(税込)〜,プレイ料金:税込み1200円/30日〜
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP,CPU:Pentium III/650MHz以上,メインメモリ:256MB以上,グラフィックスメモリ32MB以上

(C)2005 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.

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