4Gamer:
わざわざ日本語で"党"と名付けたことから,この党が政治システムに関連してくるというのは想像できるのですが,具体的にはどう絡んでくるんでしょうか?

マスケッティア(男性)
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IMAGE ILLUSTRATION:TOMOMI KOBAYASHI
キム・ハッキュ氏:
政治システムのベースとなるのが,次回テストするトーナメントですね。端的に言えば,このトーナメントでベスト4に入った党に,立候補の権利が与えられるわけです。
4Gamer:
立候補? あ,そうか。本作には"選挙"があるんでしたね。ベスト4に入ったら即権力を得られるのではなく,ひとまず被選挙権が与えられる,と。では評判の悪い党は,どれだけ強くても,権力を得られないわけですか。
キム・ハッキュ氏:
基本的にはそのとおりです。評判というのは重要で,人気を得て選挙で勝ち,その党(のリーダー)が例えば"領主"になったとしますよね。しかし,政治手腕に問題があれば,他国との競争で後れをとるでしょうし,その結果評判が悪くなり,次の選挙では勝てないかもしれませんね。
4Gamer:
なるほど,政治システムが完全に実装される日が楽しみになってきました。しかしまずは,そのベースとなるトーナメントをテストする,と。
ちなみに,韓国の第二次クローズドβテストでは,15人以上で一組という党単位で応募を受け付けていますよね(
「こちら」参照)。日本でも同じになるんでしょうか? 日本のコミュニティは小さいものが数多くあるのが特徴だし,正直15人という単位の応募はかなり厳しいと思うんですけど。
キム・ハッキュ氏:
正直に言って,そのあたりは今悩んでいるところなんです。例えば,8人一組での応募という風に緩和して,その代わり韓国の倍の"党"でテストをする,といったアイデアも出ています。何人くらいならいいと思います?
4Gamer:
うーん,6〜8人ですかね。むろんゲームシステムとの兼ね合いもありますけど。
キム・ハッキュ氏:
なるほど。まあでも,あまり党員の人数を減らしすぎては意味がないと思うんです。次は,あくまでも"党同士が戦うトーナメント"に絞ったテストですからね。
韓国でも当然反発はあったんですよ。15人以上で応募しろと言われて,すぐに応募できる人はわずかでしょう。でも,15人以上での応募と限定したために,新しくコミュニティができてきたんです。
例えば日本でも,さっき言っていたように6人くらいのグループなら結構あるだろうし,すぐ作れると思うんですよね。で,6人のグループが3組集まれば……ほら,党が一つ作れるわけです。こういった,コミュニティ同士のコミュニケーションも我々が意図しているものですから。
4Gamer:
確かに,ルール上15人以上で応募しなければならないのなら,みんな集まろうとするでしょうね。ちなみに韓国の場合,そういったコミュニティはどういった場で生まれたんでしょうか?
キム・ハッキュ氏:
公式サイトの掲示板もそうですし,BBSなんかが置いてあるゲームメディアやファンサイトでも,次々と"党"となる新たなコミュニティが生まれたみたいですね。
4Gamer:
なるほど。日本でも,公式サイトなりで,そういう"コミュニティ同士のコミュニケーションの場"さえ与えられれば,問題ないかもしれませんね。
キム・ハッキュ氏:
この党単位での募集というのは,特殊なものに思われるかもしれません。しかし我々は,グラナド・エスパダを特別なものにしていきたいので,そのあたりを理解してもらえるといいなと思っています。
4Gamer:
今までの日本の展開を見ていると,基礎となるコミュニティは根付きつつあるようだし,募集に関してはあまり心配ないのかもしれませんね。
このコミュニティの形成には,日本の公式サイトのトラックバック&RSSのシステムが,ずいぶん寄与しているように感じます。導入には勇気と度胸が必要だったでしょうけど(笑)。そういえば昔,ハッキュさんとトラックバックについて話をした記憶がありますが,もしかして,日本公式サイトの"バラック"は,ハッキュさんのアイデアですか?
キム・ハッキュ氏:
いえ,あれは日本のスタッフのアイデアなんですよ。でも凄くいいですよね。いつも翻訳サイトにかけて読んでますよ(笑)。
4Gamer:
ではついでに,少し気が早いかもしれませんが,ゲーム内ではどのようなコミュニケーション手段を用意するつもりなのか,聞かせてください。ROはコミュニティ機能が良くできた作品だったんですが,現状のグラナド・エスパダにはそういうものが全然ありませんよね。むろんテスト版だしないのは分かるんですが,きっと何か考えているんだろうな,と思って。
キム・ハッキュ氏:
うーん,そうですね……。例えば,最近Googleがメッセンジャー「Google Talk」を公開しましたよね。ああいったものを,なんらかの形で取り込めないかとは考えています。
韓国Hanbit Softは,
「Hanbit On」というゲームポータルを持っています。そことどう連携するか……。ちょうど
「TANTRA」がHanbit Onと連携していて,ゲーム内からでも,ほかのプレイヤーのブログやデータのページに飛べるんです。で,これが良い成果を上げている。グラナド・エスパダでもそういった,ゲーム内とゲーム外がシームレスにつながるようなものにしたいですね。
4Gamer:
具体的には,どういうものでしょう? 以前,キャラクターの家からブログにつながる……なんてアイデアを聞いた記憶がありますが。
キム・ハッキュ氏:
うーん,まだ具体的なことは何も。イメージとしては,ゲーム内の街中に掲示板があるとして,その掲示板をクリックすると,ゲーム内のインタフェースのままで,Webの情報が見られる……そういう感じでしょうか。
まぁゲーム内のコミュニティも大事ですけど,今はまだ,骨組みを作っている段階ですから。IMC(編注:この3文字に込められた意味は,X-meetingレポート#2
「こちら」参照)の,「I」(impress)と「M」(motivate)の段階です。「C」(connect)は,今後追々作っていきます。
4Gamer:
ああ,IMCというのは,ちゃんと順番になっていたんですね。
キム・ハッキュ氏:
ええ,まさにそのとおりです。最初のテストは「I」の部分。グラフィックスの美しさや,MCCという本作の特徴のお披露目という感じですね。そして次回が,「M」に近い。政治という大きな目的の土台をチェックするうえで,党単位でチェックするのは必然です。なのでさらに先のテストがあるとしたら,「C」の部分になるでしょう。
4Gamer:
なるほど,テストも順を追っていた,と。実は次回のテストで,「党単位での応募が必須」というのなら,ハッキュさんの目指す「グループを組んでも楽しい,一人で遊んでも楽しい」というゲームの方向性とずれていると感じていたのですが,単に,"次のテスト"が,そういうテストだということなんですね。
キム・ハッキュ氏:
もちろんグラナド・エスパダの完成形ならば,一人でも楽しめます。しかし,一人で楽しめる部分があるのと同様に,大勢でないと楽しめない部分もあるだけです。次のテストでは,一人では楽しめない部分をチェックしたいと考えています。
ちなみに一人で楽しめる部分というのは,MCCや,キャラクターのコレクションといった部分ですね。次のテストはグループが対象ですが,その次あたりなら……。
4Gamer:
でも第三次クローズβテストが行われるとしたら,第二次が10月というのだから,2006年になっちゃいませんか?
キム・ハッキュ氏:
まぁ,そうかなぁ……。
4Gamer:
もうそろそろ時間ですので,これを最後の質問としますね。ズバリ,正式サービスはいつごろでしょうか? 2005年は厳しそうですし……。あ,この答えはプロデューサーとしてではなく,IMC Gamesの社長として答えてください(笑)。
キム・ハッキュ氏:
うーん。クローズドβを通じてIMCの三つの要素がクリアになったら,その次には,多くの人に楽しんでもらいたいですね……。今日はこのくらいで勘弁してください(笑)。
4Gamer:
ううむ,どうやら正式サービスは,まだ先のようですね。では,とりあえずは次のテストを楽しみにしています。本日はありがとうございました。
キム・ハッキュ氏:
いえいえ,いつもながらありがとうございました。
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これだけ何度も同じゲームについてインタビューして,毎回,驚かせてくれる人というのも珍しいだろう。宣戦布告は一方的にできるとか,マッチングではレベルを考慮しないとか,あとで説明を聞けば納得できるのだが,その場その場では,実に驚かせてくれた。
すでに日韓で一度ずつβテストが行われているが,"いざ動いてみると期待外れ"ということもなく,未だ期待が日に日に増している人も多いだろう。正直スケジュールに関しては不安も残るが,いつか来る正式サービスのときには,きっと我々を楽しませてくれるのではないだろうか。そしてその段階で,またハッキュ氏と,一プレイヤーとして話をしてみたいと思う(それまでに,あと2,3回はインタビューの機会がありそうだが……)。