Text by Kazuhisa / Photo by kiki
4Gamer:
しかしですね。例えば普通の今までの大半のMMOは,上の人がしてる装備とかレベルとか,そういうものを見て下の人がモチベーションを持って上がってくるのがお約束ですよね。善かれ悪しかれ。
| ヴェネツィア出向所での一こま。この街の出向所はこの美しい夕日(だと思う)が特徴的で,ファンも多い |
松原氏:
ええ。
4Gamer:
それがシステム的にも用意されてたりしますし。そういうものっていうのはこのゲームにはあまり見当たりませんね。
松原氏:
うーん,そうですね。もちろんそのシステムを否定するわけじゃないんですけど,その楽しさにいたるまでの過程をもっと楽しんでほしいな,というのが基本コンセプトですから。
4Gamer:
なるほど。
松原氏:
私もね,変な話ですがMMOのプレイに時間を大量に投下できるほうではないので,一日1時間やっても楽しいとか,1時間でもちゃんと何か成果が得られるとか,そういうシステムのほうが嬉しいですね。オンラインゲームというもののパイを広げようと思ったら,やはりそういう部分もキチンとフォローしていかなくてはダメかな,と思いますし。
4Gamer:
もう"一部の人だけのもの"じゃないですしね。
| 職業を問わずダメージを与える「嵐」。前触れもなく突然航海中にプレイヤーを襲う。荷物は失うわ船はダメージを食うわ船員は流されるわで,クリティカルな事態になることも。だが,これもまた楽しい |
松原氏:
そういういままでのゲームもね,すごい楽しいものだと思うんですよ。で,せっかく楽しいゲームがあるのにね,なかなかその部分まで行き着けないのがね。一日4〜5時間遊ばないとダメらしい,とかそういう先入観で判断されちゃうのがすごくもったいない。
会田氏:
4Gamerの人達は,一日8時間とか普通にやることもあるらしいですよ。
4Gamer:
う。
松原氏:
(笑)。そういったユーザーは本当にありがたいですね。必ず最初の部分を切り開いてくれる。でもそのあと広げていこうっていう段になると,そういう人が好む作品ばかりでは,どうしても広がっていかないと思うんですよ。もっと気楽に入ってこれる作品じゃないと。
4Gamer:
実はコーエーさんって,日本でオンラインゲームをやってるメーカーとしては相当老舗ですよね。もしかしたら一番長いんじゃないですか?
松原氏:
そうですね,信長の野望 Internetからですので。あの時代はすでにほかの国はMMOが花開いていたわけですけど,そういう……なんていうかな,便宜的に「第一世代」とでもいいましょうか。EQとかUOとか。そういう時代からは大きく変わってますから,やはり開発する側としても対応していかなくちゃいけないと思うんですよ。
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4Gamer:
蓄積多そうですよね,コーエーさん。だからそういうことが言えるんですよ,きっと。なんか急に,昔アプサラスの発表会に来たのを思い出しました。
竹田氏:
すごい名前が出てきましたね。
4Gamer:
でもそうか,松原氏さんはコーエー歴そこまで長くないんでしたっけ。
松原氏:
ええ。アプサラスまでいっちゃうと,ちっとも(笑)。
4Gamer:
ちっとも,って(笑)。
渥美氏:
私はその前の「三國志 Internet」のときにディレクターやったのが最初ですね。その後スタンドアローン二つ作って,またオンラインの世界に。
松原氏:
私は信Onプロジェクトが始まった直後くらい……開発が始まってすぐかな。そのあたりに来てあとは見てますね。
4Gamer:
がっつり入った初めての作品ですね。
松原氏:
入社したばかりだったので,それしか見る余裕がなかっただけなんですけど(笑)。オンラインゲームの開発ってほら,お金も人材も,物量をかなり動員させるじゃないですか。サーバーとかゲームマスターとか。スタンドアロンのゲームとは比較にならない。三國志 Internetとかのころって,サポートはもちろんやってましたけど,"ゲームマスター"の組織はなかったんですよね。で,信Onではそれも作らなきゃいけない。
4Gamer:
お。ゲームマスターについてはちょっと聞きたかったんですよ。
松原氏:
大航海なんかもう,最初から「あるものだ」として使ってますけどね(笑)。信Onのときに作った組織でしたねぇ,あれも。「どうしよう」とか悩みながら。
4Gamer:
結構普通に稼働しててすごいですね。
松原氏:
ありがとうございます。色んなところに聞きに行きましたよ。「教えてください」って頭下げて。国内はもちろん,韓国とか海外にも。どういうメンバーで,どういう運営を,どのようにやってるのか。
4Gamer:
日本のメーカーでキチンとしたGMの組織持ってるところって,たぶん片手で数えるくらいしかないですよね。
松原氏:
まぁMMO自体が,まだまだこれからですからね(笑)。でもたぶん数社くらいなんでしょうね。
| プレイヤー主催で行われた,セビリア教会でのオークション大会。名前を呼ばれて壇上に立って自分で紹介をするというシステムが,オンラインゲームっぽくて,良い。一部邪魔するプレイヤーこそいたものの,概ねうまく進んでいた |
4Gamer:
どれくらいいるんですか,GM。
松原氏:
2タイトルですからね。相当いるんじゃないかな……。信Onのときに30人くらいでしたから,大航海でまた増やしましたし。
4Gamer:
思っていたより多いですね……。
松原氏:
信Onで経験積んだスタッフを何人かこっちに移動させて,クローズドのときにすでに実地研修に入ってました。
4Gamer:
そういうノウハウって,今たいがいの会社にはないものですから強いですね。
松原氏:
いろんなノウハウ溜まりました,おかげさまで。運営とかサービスとか,あとGMツールとか。すごく大事ですし,これ。
4Gamer:
まだまだ運営会社で気付いてないところも多いですけどね。
渥美氏:
開発側にとっては仕事が増えるんですけどね(笑)。
竹田氏:
しかもすごい増えるんです。
渥美氏:
ユーザー様から来た要望とか,リスト化してあって即見られるんですよ,当然。で,朝から来てそれ見て,気付いたら午前中ずっとそれ見てたりして。
竹田氏:
で,終わったらグッタリ疲れたりガックリきたり,逆にやる気出たり(笑)。
松原氏:
やはりユーザーさんと近いっていうのは良い面もあり,悪い面もあり。とてもダイレクトに色々聞こえてきて素晴らしいんですが,開発チームをそれを1個1個真面目に考えちゃうものだから,なかなか大変な事態になってることも多いですよ。
渥美氏:
でもやっぱりあのダイレクトにつながってる感はいいですね。プレオープンが2月23日に始まってから今まで,本当に楽しくてツラくて早かったです。気付いたら3月も終わってるし。正式サービス開始というのも,オンラインゲームにとっては通過点に過ぎませんしね。
4Gamer:
でもちょっとは楽になったんじゃないですか?
渥美氏:
そうですね。初期に見られたような不具合とか,ゲームシステムが認知されていない事によって発生する初期段階の問い合わせというのはかなり減ってきましたし。全然そんなつもりではないんですが,敢えて言うなら"一段落"ですかね。
4Gamer:
サーバー落ち祭りとかログイン祭りとか,そういうのあんまりなかった気がしますし,元々さほど不具合ってないんじゃないですか?
渥美氏:
先ほどのエンジンの話につながるんですけど,まぁ確かに少ないですね。相当覚悟は決めていたのですが(笑)。
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