4Gamer:
いきなり話題ががらっと変わるのですが,最近のガンホーというと,「ラグナロクオンライン」周り,不正行為対策の話題がホットだと思います。ここに至るまでに,さまざまな困難があったと思うのですが。
そうですね……一番大きかったのは,Gravityとガンホーで共同声明を出せたという,第一歩ですね。今までデベロッパとパブリッシャ,それぞれ市場も違えば文化も違う中で,こちらからの声がなかなか理解されない部分もありましたが,今回両社で共同声明を出したとおり,協力してやっていきます。イタチごっこの部分も当然ありますが,進めていこうと。
4Gamer:
確かにあの発表はあらゆる意味で異例でしたね。 森下氏:
そして,共同声明から具体的な対策へと動いていくわけですが,それについてはもちろん,前々から準備を進めていたわけです。そして,セキュリティツールだけでなく,プログラム上の抜本的な対策というのも,今後やっていかなくちゃならない。どこをもって成果を上げたと言えるかは分からないけれど,とにかくこの努力を永続的に続けていきます。
これからコンテンツを長期的に育てていかなければならないし,ラグナロクオンラインというブランドは,両社にとって本当に重要なものだということです。 4Gamer:
コンテンツを守るための長い戦いを,倦まず弛まず続けていく,ということですね。 森下氏:
そうです。そして,ここからはもっぱら個人的な考えになるのですが,ラグナロクオンラインの話とは別に,そもそも不正行為をやる気が起きないようなゲームデザインが必要なのではないかと。
レベルを上げることに対してのモチベーションとして機能するのでない成長システムの形とか,そういったことですね。
例えば「エミル・クロニクル・オンライン」の憑依システムやマリオネットシステムは,それをある程度逆手に取ったものですし,そうした工夫/アイデアが,これからのゲーム開発には必要なんだと思います。
不正行為の問題だけでなく,長時間にわたるプレイとか,いろいろ問題はあると思うんですよ。単純なレベル上げ競争にならないようなゲーム性が必要だろうと。
その意味でカジュアルゲームは,より短い時間でプレイでき,初めての人でも楽しめる。長くプレイして何かを得たから有利というものではない。そういったものも,今後は必要だし,重要になっていくと考えています。
「エミル・クロニクル・オンライン」で,プレイヤーのログアウト中にも働いてくれるマリオネット(左)と,他プレイヤーの装備品に“憑依”したところ(右)。憑依は,ログアウト中にレベル上げを行う手段として使える |
今話題に出たエミル・クロニクル・オンラインですが,昨年末には海外展開の話題も出てきましたね。これは近く具体化しそうな勢いですか? 森下氏:
ええ,Gravityを介して海外展開をスピードアップしようというのが,グローバルパブリッシング契約の狙いです。 4Gamer:
有望な販売先候補は,もう上がってきていますか? 森下氏:
2005年の東京ゲームショウ頃から,アジア圏を中心に,お話はかなり来ています。
4Gamer:
中華人民共和国,台湾,タイ,マレーシア,フィリピンあたり……あ,それに韓国か。逆に苦戦している地域とかも教えてください。
森下氏:
今挙がったアジア各国のパブリッシャさんには,だいたい興味を持っていただいてます。ただ,今のところヨーロッパはなかなか。もちろん話はしているのですが,今後Gravityに期待するところも大きいです。ヨーロッパではむしろ,もう一本のほうはどうなんだとか,あ,グランディアオンラインのことです。こちらはまだそういった話を始めていないのですが,シリーズ作品には販売実績もありますし。 4Gamer:
海外展開がらみで気になるのは「北斗の拳オンライン(仮)」なんですけれども,こちらは海外での評判は高いそうですね。逆に,展開スケジュールのお話を聞ければと思うのですが。 森下氏:
プロダクトとして,マーケティング機会をなるべく活用したいと思いますので,映画やDVD発売などの機会もあるでしょうし,うまくそうしたものに合わせて何かやりたいな,とは考えています。
4Gamer:
映画のタイミングだとすると,もう遠くないですよね?
森下氏:
ええ,ですから映画のタイミングでサービスが始まるとか,そういうことでないのはもちろんですが。そういったものにうまく合わせて,プロモーションもできるということですね。
ゲームに関しては,けっこうぎりぎりまで明かせないかも知れません。 4Gamer:
それは残念ですね。聞きたいことは山のようにあるんですが。 森下氏:
そうですね,一つコンテンツとして言えることは,原作ならではの良さを生かしつつ,さらにゲームの面白さの要素を組み込んでいきたいですね。
北斗の拳のファンだからといって,ゲーム好きだとは必ずしも限らないじゃないですか。だから,基本的にゲーマーでない北斗ファンが遊んだときに,今までのようなMMORPGだとちょっと難しいとか,分かりづらいとか,そういったものになってしまう。それをもっとカジュアルに遊べるシステムにしたいと考えています。 4Gamer:
では最後になりますが,読者に向けて,今年のガンホーのどこに期待してほしいか,メッセージをいただければと思います。 森下氏:
コンテンツ面で期待してほしいものと言えば,今年リリースするグランディアオンラインですね。すでに当社の作品を楽しんでくれている人だけでなく,グランディアシリーズファンの人も,もっぱら家庭用ゲーム機でゲームをプレイする人にも,ぜひ試していただきたいと思います。いろいろなサプライズがあると思います。
一方,サービス面においては,ラグナロクオンラインにおけるGravityとの関係がそうであるように,開発会社との関係を強固にしていきながら,プレイヤーの皆様の期待に応えられるよう,努力してまいります。
最後に,オンラインゲーム業界は新しいタイトルや新規参入企業もあって,どんどん大きくなっていくと思いますが,家庭用ゲーム機も含めたゲーム産業全体の中で大きなポジショニングを確立できるよう,ガンホーは今後も成長発展していきます。そのために邁進しますので,ぜひ応援をお願いします。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
今年サービスが展開される予定のガンホー・モードと,グランディアオンラインを中心に展望を語った森下氏だが,ラグナロクオンラインにおける不正行為対策など,地道なところでガンホーが努力を続けている側面にも注目すべきだろう。実際,昨年末以来続いている,不正ツールとの激しい戦いは,今もその真っ只中だ。折に触れてオンラインゲームが「売りきりの商品じゃない」こと,「コンテンツを長期的に育てていく」ことを強調する氏であるが,その氏の姿勢を具体的に示すのが,このところのラグナロクオンラインをめぐる一連の動きであると言ってよいだろう。
不正行為と並んで「長時間のプレイ」について,現行オンラインゲームの問題として言及した氏の,回答がガンホー・モードで整備されるカジュアルゲームラインナップなのか,それともこれは,グランディアオンラインや北斗の拳オンライン(仮)にまでおよぶ話なのか。とくに後者についてはまだ定かでないわけだが,それも,時期を追って明らかになっていくことだろう。(Text by Guevarista,Photo by kiki)