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森下氏,2006年のガンホーを語る:「ガンホー・モード」と「グランディアオンライン」

 ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 森下一喜氏に,今年(2006年)のガンホーについて話を聞く機会を得た。今年の東京ゲームショウまでには,独自のポータルサイト「ガンホー・モード」と「グランディアオンライン」をキックオフさせたいという。
 「エミル・クロニクル・オンライン」や「ヨーグルティング」の正式サービス開始,ゲームアーツ,ブロッコリーのM&Aがあった昨年を,「助走」と表現する森下氏。その氏が率いるガンホーが,今年どのような「飛躍」を遂げるつもりなのか,早速見ていこう。 なお,ガンホー・モードの基本的な構想については,当サイトで2005年9月20日に掲載したインタビュー記事を,まずご覧いただきたい。

独自のポータル構想「ガンホー・モード」および,ゲームアーツと共同で開発を進める「グランディアオンライン」を中心に,今年の抱負を語る,ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 森下一喜氏
総合エンターテインメントポータル「ガンホー・モード」

4Gamer
 本日はよろしくお願いいたします。今年に入って初めてのインタビューということもありますので,ぜひ森下さんの今年の抱負,ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下,ガンホー)のこれからの一年について,まずはお話をいただけたらと思います。

森下氏
 昨年(2005年)は会社としても株式上場を果たし,ジー・モード,ゲームアーツ,ブロッコリーといった会社との資本提携を積極的に進めて,今後の成長戦略上の助走として非常に良い形で進行できたと自負しています。
 今年(2006年)に関しては,昨年10月31日に立ち上げたガンホー・モードという会社,ジー・モードとガンホーのJV(ジョイントベンチャー)なんですが,これがグループ会社を含めた総合エンターテインメントポータル戦略,つまり一つの中核事業になってくると思います。そこで,ゲームに限らず映像や音楽などといったものを含めてサービスを具体化し,積極的に推進していきます。
 そこではもちろん,M&Aという手法を含め,さらなる成長戦略を描いていきたいと考えています。
4Gamer
 昨年の東京ゲームショウでお聞きした構想が,予定どおり具体的な会社になったわけですね。ですが,まだ詳しい事業内容などは公にされていませんよね?
森下氏
 実はここに事業内容をまとめた会社案内が。現在のところ,会社自体はガンホーの社屋内にあります。連携していく事柄が多いですから,スタートアップ時点ではガンホー内にオフィスを置いています。そのための人材も採用し,以前から取り組んできたメンバーと一緒になって,開発作業も含めて立ち上げている最中です。

 

4Gamer
 先ほど,昨年のガンホーの動きを「助走」と表現しましたが,その助走を生かした「飛躍」が,ガンホー・モードというわけでしょうか?
森下氏
 ガンホー・モードはもちろんそうですが,ガンホーグループとして成長戦略を描く中での,重要な要素の一つということです。ガンホーグループの戦略は,大きくポータル事業・ゲームの開発事業・メディア事業・キャラクター事業・モバイル事業と分けられます。ガンホー・モードはポータル事業を受け持ち,家庭用ゲーム機を含めたゲーム開発でいえばゲームアーツ,モバイルであればジー・モードなどといった会社がある,という構図です。
4Gamer
「家庭用ゲーム機を含めた開発」として,ゲームアーツの名が出てきたわけですが,ゲームアーツの既存ラインナップに加えて,「グランディアオンライン」も家庭用ゲーム機向けに開発されるのでしょうか?
森下氏
 これからの新ハードウェア,Xbox 360はもう出ましたが,当然携帯型のゲーム機も含め,マーケットの状況を見て,勝算があればぜひ参入できるようにしていきたいと,考えています。
4Gamer
 事業の中核となるPCオンラインゲームでは,昨年中,さすがに「ラグナロクオンライン」ほどのホームランは出なかったわけですが,今年はぜひ当ててやる,というスタンスなのでしょうか? それとも全体的な成長,バランスをとりながら手を広げていくイメージと捉えるべきなのでしょうか?
森下氏
 それはもちろん,両方ともだと考えています。あくまで足許の事業として大きくしていくには,次のヒットは当然大事です。その一方で全体の戦略として考えると,マルチタイトルによる会員数の極大化と,オリジナルタイトルによる自社プロパティ(所有物,資産)の強化と,海外への展開,マルチユースによる拡大という,ガンホーとして既定の路線がある。それに,今後の成長に必要な企業は積極的にM&Aをして,グループ企業として拡大化させていくという展開も,もちろんあります。足許の事業と成長戦略は,別にかけ離れた事柄ではありませんから,ここは両方ですね。

 

4Gamer
 なるほど,それはそのとおりですが……。

 

森下氏
 ヒットタイトルということで言えば,この3年間「ラグナロクオンライン」に匹敵するものは出てこなかった。我々としては今後,家庭用ゲーム機ユーザーを取り込んでいく部分として,「グランディアオンライン」というタイトルに期待をかけています。
 当然グランディアシリーズのファンがいますし,国産RPG,この場合は家庭用ゲーム機のそれですね。そのファンがいる。それらをオンラインゲームに引き込んでいくことを考えています。
 そして,もう一つが先ほど述べたガンホー・モードです。必ずしもRPGタイトルといったものではなく,もっとライトなもの,ジー・モードが得意としているカジュアルな方向ですね。それをどんどん揃えてマーケットの拡大を図る。
 そしてその中で開発力や技術力などで,パートナーシップを,ということが必要になれば,M&Aしていくのも一つの手法であると。別にM&Aに固執しているわけではないので,提携や事業上のシナジー(相乗効果)を前提として,ですが。
4Gamer
 ガンホーグループによるPCオンライン市場に加えて,家庭用ゲーム機のゲームアーツ,携帯電話のジー・モードと,揃ったところなわけですが,当面これらの会社が中心になってがんばる,という見通しでしょうか,それともゲームアーツやジー・モードと同格のパートナーが,これからもどんどん入ってくるのでしょうか?
森下氏
 実際に入ってくるかという話は……今のタイミングでそうしたことは言えないですけど,当然あり得ますし,検討の視野には入れていきたいと思っています。
4Gamer
 ここまでのお話で,ガンホーが思い描く成長の形は,総合的なもの,ということになりますね。昨年と今年で,成長戦略の質的な違いや,段階的な位置づけを述べるとしたら,どういったものになるでしょうか?
森下氏
 そうです,総合的なものです。ゲームだけでなく,広くエンターテインメント産業がブロードバンド時代になっていく中で,例えば映像分野も新しい形で伸びていく。そうした中で,新しいビジネス領域を探して,今年は今までと形式の違うことをしようか,ということです。
4Gamer
 それは例えば,具体的に音楽コンテンツや映像コンテンツを持っている/作れるところが,パートナーシップの対象として視野に入ってくる,ということですか?
森下氏
 映像にしても,昨年試験的にやってみたりもしています。ただし,そこにフォーカスを置くのでなく,あくまで総合的に展開していく中で,ということになりますが。もともとオンラインゲームのビジネスは,課金やパッケージ販売,アイテム販売だけでは終わらないですよ,ということです。

 

4Gamer
 もともとゲームは映像的要素も含んでいるし,音楽要素も含んでいると。
森下氏
 そうそう。ただし映像や音楽を作れればよいというわけでもない。やはり中核となるビジネスの根底は,コミュニティである,ということですね。
4Gamer
 そのコミュニティを担うのが,ガンホー・モードなんですね。

 

タイトル グランディアオンライン
開発元 ゲームアーツ 発売元 ガンホー・オンライン・エンターテイメント
発売日 2007年内 価格 未定
 
動作環境 N/A

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