“元祖”トラックマニアがリニューアル
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| 海外で大ヒットした,元祖トラックマニア。イカれたトラック(コース)を走り抜ける面白さに虜になった多くの“トラックマニアマニア”が誕生した。最新のゲームエンジンでリメイクされた「トラックマニア オリジナル」で,元祖の面白さを味わおう | |
トリッキーでアクロバティックでデンジャラスなトラック(コース)を,いかに速く,ミスなく走破できるか……。そんなところに焦点が置かれた,一風変わったドライブゲーム,トラックマニアシリーズ(以下,トラックマニア)。海外での人気は非常に高いが,いかんせん日本では名前すら知らない人も多い,マイナーゲームに甘んじている。なんてもったいない話だろうか……。
今までは,プレイしたくても輸入版に頼らざるを得なかったが,嬉しいことにオーバーランドより最新作「トラックマニア サンライズ エクストリーム 日本語版」(以下,TMSE)が発売されており,すでにプレイしている人もいることだろう。当サイトでもTMSEのレビュー記事や週刊連載「トラックマニア マニアックス」にて,トラックマニアのイカれっぷりや面白い部分をお伝えしてきた。そろそろ「トラックマニアって知ってる?」と聞けば,即座に「知ってる」と答えが返ってくるほど,名前ぐらいは浸透しているはずである(たぶん)。
そして今回紹介するのが,TMSEと同じくオーバーランドから7月26日に発売された「トラックマニア オリジナル 日本語版」(以下,TMO)である。TMOとは,2004年に発売された初代「トラックマニア」を,最新のTMSEエンジンでリメイクしたもの。海外でのトラックマニア人気の火付け役となった“元祖トラックマニア”が,装いも新たに帰ってきたのだ。前記の週刊連載「トラックマニア マニアックス」第3回で紹介しているが,今回はもう少し踏み込んでTMOを見ていこう。
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| 現実ではあり得ないほどの大ジャンプ。ブースター(加速装置)を確実に踏まないと飛距離が足りないシーンも数多い | 分断されたコースはまっすぐジャンプすれば良いわけではない。ピンポイントで斜め大ジャンプが必要なところもある | TMSEでは水中も走行可能だが,TMOでは走行不可で復帰ポイントへのリトライしか選択肢はない。絶対に落ちるな |
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| コンパクトなレイアウトのTMOのコースは,コンパクトゆえのトリッキーなレイアウトが随所に見受けられる | スキンエディタで,車のボディ色やテクスチャ変更,文字追加などが可能。あまり高機能ではないので期待せぬように | プロフィールで,難度を「見習い」「プロ」「チャンピオン」に設定可能。登場する車のカラーもここで変更する |
腕と運が必要な「サバイバル」チャレンジが
猛烈に面白い
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| 「プラットフォーム」チャレンジでは,泣きそうになるほど難しいコースが数多く登場する。通過できる走行ラインは分かっているのに,まぐれでしか通過できなかったりと本当に泣きたくなってくる。かなりシビアな部分もあるので,覚悟してトライすべし |
TMOには,「ソロモード」と「マルチプレイヤーモード」の二つが用意されている。ソロモードはキャンペーン形式で,150種類もの多種多様なレースに挑戦する「オフィシャルキャンペーン」,ネット上で公開されているほかのプレイヤーが作成したキャンペーンに挑戦できる「コミュニティキャンペーン」,オフィシャルキャンペーンに登場するトラックや,自分およびほかのプレイヤーが作成したオリジナルトラックに挑戦できる「シングルチャレンジ」のモードがある。
マルチプレイヤーには,「ローカルエリアモード」と「インターネットモード」が用意されている。インターネットモードは専用ロビーに接続して,手軽に世界中のプレイヤーとマルチプレイが楽しめる。専用ロビーには国別に分かれた部屋が用意されており(日本の部屋は用意されていない),どの部屋も数名のプレイヤーがチャットやゲームを楽しんでいた。とはいえ,接続した時間帯が悪かったのか,盛り上がりに欠けている印象は拭えない。ちなみにローカルエリアはLANによる対戦モードだ。
しかしレースゲームでありながら,シングルプレイであるソロモードでも存分に楽しめるのが,TMOというかトラックマニアの良いところ。
ソロモードのメインとなるのは,「オフィシャルキャンペーン」だ。キャンペーンには,最速タイムでコースを走り抜くことに徹する「レース」チャレンジ,少ないリトライ(やり直し)でコースを走り抜く「プラットフォーム」チャレンジ,用意された建設ブロック(コースブロック)を使い,最短でゴールできるコースを作る「パズル」チャレンジ,回転や宙返りなど派手なスタント走行でポイントを稼ぐ「スタント」チャレンジ,ライバルとレースを行い,最下位にならないようにすべてのコースを走破する「サバイバル」チャレンジという計五つのゲームモードがあり,ドライブゲームに珍しいほどゲームモードは多彩だ。
それぞれのチャレンジは,レベルごとに分けられたキャンペーン形式で,各キャンペーンは複数のチャレンジ(レース)で構成される。すべてのチャレンジでメダルを獲得してクリアすれば,上位レベルのキャンペーンへと進めるが,徐々に達成条件(タイムやスタントポイント)が高くなるため,後半のキャンペーンほど上位レベルに進むのが難しくなるという,お決まりの流れだ。
TMSEには「クレイジー」チャレンジというものがあったが,これに対してTMOでは「サバイバル」チャレンジが用意されている。筆者はこれが非常に気に入っている。3台のライバル車と全18コースのレースを順番に戦っていくのだが,最下位になった時点でゲームオーバーとなり,再び最初のレースから挑戦することになる。
最初のレースはレベル1で,レースが進むにつれてレベルが上がりライバル達は速くなっていくため,後半になると小さなミスでビリになりかねないのだ。そのため,全18コースを制覇するのは相当厳しい道のりとなる。
面白いのが,実は全18コースを走らなくてもいいというシステムだ。レベル1のレースから挑戦していくわけだが,次に走るコースはランダムに選ばれた2コースから選択していく。そのため,運が良ければ自分の自信のあるコース,苦手なコースを選択できるのだ。
また,レース結果により1位なら次の2コース,2位なら次の1コースをスキップできるので,常に上位入賞を果たしていけば,少ないレース数で最後のレベル18まで進めるというわけだ。ただ悩ましいのが,スキップできるコースもランダムに2コース選ばれるところ。スキップするコースに苦手なコースが入っていればラッキーだが,自信のあるコースが入っているとガッカリである。
比較的楽勝の前半で苦手なコースが登場し,後半で自信のあるコースが登場するのがベストということになる。もちろん,そんな都合の良い状況になることはほとんどないわけだが,この憎たらしく感じるシステムが,チャレンジモードの面白さを引き立てている。プレイするたびにレースの展開が変わり,何度プレイしても楽しめるので,ぜひ挑戦してほしい。
オリジナルコースを作れる「トラックエディタ」も,もちろん搭載されている。本作では「トラックエディタ」でコースを作成するとき,一つのパーツを使うたびに「カパー」が必要になる。
オフィシャルチャレンジで,チャレンジをターゲットタイム内でクリアすると,成績によって「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」のメダルを授与され,カパーが加算されていく(初期値は1500カパー)。つまり,カパーが多いほどゴージャス(?)なオリジナルコースが作れるというわけだ。よって,トラックエディタでも遊ぶつもりなら,多くのチャレンジを好成績でクリアしておくことが重要になる。とはいえ,少ない建設ブロックでも面白いコースは作れるので,結局はセンスの問題だろう。
完成したオリジナルコースは,ネット上にアップロードして,世界中のプレイヤーに向けて配信できる。当然,ほかのプレイヤーのオリジナルコースのダウンロードもできるので,製品版の全コースをクリアしたあとも,遊び続けられるというわけだ。
なお,トラックエディタについては,週刊連載「トラックマニア マニアックス」の第4回,第5回で詳しく触れているので,そちらを参照されたい。
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| 筆者お勧めの「サバイバル」チャレンジ。全18コースをビリにならないように走破する。テクニックだけでなく運も必要 | 「スタント」チャレンジは,アクロバティックな走りでポイントを稼ぐ。制限時間内にゴールできないとすべて水の泡 | 限られた建設ブロックで“ゴールまでたどり着ける”コースを完成させる「パズル」チャレンジ。地味だけど奥が深い |
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| 「サバイバル」チャレンジは,ランダムに選択された二つのコースのどちらかを走る。苦手なコースは避けていこう | 各チャレンジにターゲットタイム,ポイントが決められており,成績によりメダルが獲得できる。良い成績を目指せ | 一度走ったことのあるコースは,「シングルチャレンジ」モードで自由に走れるようになる。コースを制覇しよう |
ラジコンカーのような挙動の車でイカれたコースを
攻め続けろ
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| 車の挙動はラジコンカーのフィーリングといってもよく,ドライブゲームが初めてという人でも普通にプレイできるはずだ。ライバルカーとのアタリ判定がないため,接触も気にせず走れる。ライバルカーやゴーストカーが気になる場合は,消せるので安心だ |
本作には,特色の異なる三つのステージがあり,各ステージに150種類ものチャレンジ(コース)が用意されている。使用できる車はステージで固定されている。
寒々とした日本の雪国がモチーフの「スノーステージ」は,日本家屋を彷彿させる板張りのコース。激しいアップダウンあり,直角コーナーあり,逆バンクありで非常にテクニカルなレイアウトだ。コースがあってないような広大な雪上&氷上を走るところもあるが,氷上ではステアリングを切ってもまっすぐ進み,ブレーキをかけてもどんどん進み続けるといった“どうにもならない恐怖感”を味わえる。
このステージで使う車は,意味不明なカタカナロゴが書かれたピックアップトラック。タイヤのグリップ力が高く,狭いコースをハイスピードで走り回れるのが気持ちいい。
アメリカの砂漠地帯や,グランドキャニオンの中にコースを設営している感じの「スピードステージ」。コースはガードレールのある舗装路面ばかりなので,普通に走るぶんにはコースアウトの心配がないせいか,無理な走りをしてしまいがち。ジャンプの着地時にコースがなくて転落することも多く,プレイヤーの心理を逆手にとった意地悪なレイアウトが多い。大ジャンプ,360°ループがあるのも,このステージの特徴である。
使用する車は,アメリカンスポーツカーを再現したアメリカン・カー。加速力,最高速も高いのだが,さすがはアメ車(?)だけあり,足回りはフニャフニャでコーナーリング時に片輪走行になるわ,ジャンプの着地であらぬ方向へ進んでしまうわ,乗りこなすにはコツがいる。
ヨーロッパの片田舎に作られたような「ラリーステージ」では,サーキットを思わせるロードコース,湖(沼?)の畔や民家の軒先を走り抜けるグラベルコース,コースがあってないような草原,どういうつもりか城壁の上など,移り変わる路面状況にいかに対応できるかがポイントだ。
使用するクルマは往年の名車であるルノー 5 Maxiっぽい匂いのするラリーカー ターボ2。さすがはラリーカー,加速&ブレーキ性能も高く,ハンドリングはクイックなのでコース内をキビキビ走れる。ただし,本物のラリーカーのような挙動は微塵もなく,ラジコンカーを走らせてるような挙動だ。カウンター(逆ハン)を当ててドリフトをコントロールするような走りが,できないのが残念なところか。
TMOのコース全体の作りを見ていくと,マップ自体はかなりコンパクトで,TMSEよりインパクトが薄い傾向にある。ただしコンパクトゆえにコース幅が狭く,コーナーも増えており,起伏,うねり,ジャンプスポットなどがうまく配置された,トラックマニアの原点ともいえるコースレイアウトを楽しめるだろう。
TMSEでは,広大なコースの中を瞬きしていられないほどの猛スピードで走り抜け,あり得ないほどジャンプしまくるといった「大げさ」な感じだが,TMOは箱庭の中にコースを作ったというイメージで,TMSEのあとにプレイすると,コースの特色の違いに少々戸惑うかもしれない。とはいえ,人気を博した元祖トラックマニアのコースということもあり,トリッキーさやイカれたコースレイアウトは健在。明らかにTMSEよりもシビアなコースもあるため,ナメてかかると痛い目を見るだろう。
筆者はレビュー記事,連載記事を執筆するにあたり,TMSEとTMOを約2か月ほど毎日プレイしてきたわけだが,暇なときなど,ちょっとプレイしてしまう日々が今も続いている。オフィシャルコースを攻め尽くしたら,自分でオリジナルコースを作って楽しみ,ほかのプレイヤーが作ったコースをダウンロードして走り回る。コースは無限大といっても過言でなく,かなりの時間楽しめるだろう。
どちらかというとラジコンカーを走らせるような感覚でプレイでき,リアルシミュレータのような高等テクニックは必要としない。トリッキーなコースレイアウトも手伝って,誰でもコースを攻める楽しさを味わえるはずだ。もちろん,高価なステアリングデバイスすら必須ではなく,むしろゲームパッドが一番使いやすい(キーボードではちと辛い)ので,「今までドライブゲームをプレイしたことがないよ!」という人でもTMOは楽しめると思う。興味のある人は,ぜひプレイしてみてほしい。
なお,どの程度のイカれっぷりなのかは,週刊連載「トラックマニア マニアックス」にプレイ中のムービーを掲載しているので,ぜひご自分の目で確かめてほしい。
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| ジェットコースターかと勘違いしてしまうほど,狭苦しいスペースに階層を多用してレイアウトされたコースも登場する | 一番,扱いにくいアメリカン・カー。速度を落とさずにコーナーリングしようとすると簡単にインリフトしてしまう | ラリーステージではコースが途切れて,草地の中を走ることも。コースが分からなければ,まずはライバルカーの後を追おう |
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| 朝,昼,夕方の時間帯はコースにより固定されている。夕方は幻想的で美しいが,コースが見えにくくて難度は高い | オフィシャルコース顔負けのイカれたコースを作れるトラックエディタ。建設ブロックを繋ぎ合わせていくだけと簡単 | リプレイエディタでリプレイのカメラアングル変更,ブラー効果追加などオリジナルリプレイを作れる。ただし難しい |






















