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[韓国ゲーム事情#568]「Lineage」名義盗用事件の関係者が立件
2006/07/05 22:15
Kimの韓国最新PCゲーム事情#568

「Lineage」の名義盗用事件,関係者立件(2006/7/5)

Text by Kim Dong Wook特派員


 韓国警察庁は,2006年2月に発覚したMMORPG「Lineage」での名義盗用事件に関して,同ゲームの運営を行っているNCsoftのKim副社長を名義盗用幇助の疑いで立件,またそのほか9名を名義盗用の疑いで立件した。韓国警察庁サイバーテロ対策センターの発表によると,事件の経緯は以下の通り。

 ゲームアイテム売買(RMT)サイトを運営していたとされるChoi容疑者は,以前務めていた会社内のネットワークから約10万人分の顧客情報を不正に入手。その情報を利用してLineage内に作成したキャラクターで得たアイテムなどを販売し,約20億ウォン(約2億4000万円)を売り上げた。
 また7名の容疑者は共同で,約100人のアルバイトを雇い,500台余りのPCを使用し,組織的にキャラクターのレベル上げやゲーム内アイテムの生産などを行う“アイテム工場”を運営。約28万人分の不正に得た住民登録番号を使い,約142億(約17億400万円)ウォンの売り上げを得たとされている。

 個人情報の入手方法は,Webサイトの制作業者であるKim容疑者の場合,会社で管理する1万人分の顧客情報を不正に入手。400万ウォン(約48万円)でアイテム工場運営者に販売した。また,以前信用情報会社に勤めていたKoo容疑者は,退職時に持ち出した10万人余りの個人信用情報を,アイテム工場の運営に悪用していたとされている。

 NCsoftのKim副社長は,こういった情報の不正入手には関わっていない。だが,Lineageで名義が盗用されている事実を知っていたにもかかわらず,防止するための技術的な処置を取らなかったことと,盗用された情報が使用されていたことが分かっていながら,会員加入を受諾していたことから,名義の盗用を幇助した疑いがあると同センターは発表している。

 名義盗用幇助の根拠は,2004年から2006年2月までの間に,名義盗用に関してNCsoftへ毎月数百件の申告があった点。会員加入時に入力するEメールアドレスと電話番号に重複があり,名義が盗用されていることが明らかだったにもかかわらず,加入を受諾した点。2005年12月には,同一IPから同時に,Lineageへの多数ログインが確認されていた点の三つが挙げられている。

 この名義盗用事件に関して,韓国内だけでなく中国人の関与も疑われており,同センターはインターポールを通じて中国の公安へ捜査を要請したことを明らかにした。

 今回の問題は,韓国で「住民登録番号」のみが本人確認手段となっていることが,大きな要因として挙げられる。Lineage以外のゲームでも同じような名義盗用が発覚していることからも,この確認方法に問題があるのは間違いないだろう。こうした流れを受け韓国政府は,住民登録番号に代わる案の作成を行っており,2007年頃にはなんらかの形で施行されるようだ。

 本来,本人確認は不正発覚時などに適切な対処ができるように行っているわけだが,今回は,この確認の方法に問題があったことや,一部企業の個人情報管理が行き届いていなかったことから,大きな問題へと発展した。

 日本では,基本料金無料/アイテム課金制のオンラインゲームの登録時には,メールアドレスのみで確認が行われている場合が多く,事実上“本人確認”は,なされていないというのが現状だ。
 メールアドレスは,個人で際限なく持てるため,一人でいくらでもキャラクターを作成できる状況といえる。ということは,不正発覚時にメーカー側がアカウント停止の処分を行ったとしても,すぐに別のアカウントの取得が可能となり,販売を目的としたレベル上げやアイテムの生産が行えてしまう。
 本人確認が徹底され,停止処分を受けた人が新たなアカウントを作成できなくなると,RMT業者とその利用者は,アイテムの売買などがやりづらい環境が作られる……はずである。

 確かに,なんらかの形で本人確認を実施すると,登録への障壁を高めることになり,登録者数/収入の減少へとつながることが予想される。現在,オンラインで安全に本人確認を行う方法などというものは,存在しないに等しい。だが,本気でRMT業者などへの対策を試みるのであれば,韓国で用いられる新しい本人確認方法なども参考にしつつ,業界全体として,今後取り組んでいかなければならないテーマだろう。



リネージュ
■開発元:NCsoft
■発売元:エヌ・シー・ジャパン
■発売日:2002/02/12
■価格:1400円/月
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2006.07/20060705221539detail.html