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[COMPUTEX 2005 #11]グラフィックスカードはテレビに近づく
2005/06/07 20:47
■テレビ並みの映像エンジンを搭載!?
 頭から,ゲームとあまり関係なくて恐縮だが,ASUSTeK Computer(以下ASUSTeK)は,「Splendid Engine」という見慣れないチップを同社製グラフィックスカードに搭載していた。
 聞いてみると,これは「映像エンジン」との答え。なんでもASUSTeKの子会社がテレビとその関連技術を開発しており,その技術をグラフィックスカードに転用したものだそうだ。簡単に言うと,Splendid Engineは映像(動画ファイル)のコントラスト比や色の補正などを行うハードウェアで,Ageiaについての記事(「こちら」)でも紹介した同社プロダクトマネージャのSean Lai氏いわく「少なくとも黒い部分はソニーのWEGAよりもキレイ」。動画再生時のみ効果が現れるよう設定しているから,プログラム側で適切に色設定が行われているゲームの色が変わってしまったりということはないそうなので,この点は安心していい。

 ちなみに,Splendid Engineはこれから出荷される同社製ビデオカードに搭載される予定。現行製品は近い将来にSplendid Engine搭載モデルへ置き換わる。既存のASUSTeK製ビデオカード向けには,Splendid Engineと同等の機能を提供する専用ドライバ「ASUS Enhanced Driver」が6月9日夜までに同社Webサイトからダウンロード可能になる見込みだ。ソフトウェアレベルの対応だとCPU負荷はかなり高いそうなので,本命はあくまでSplendid Engine搭載製品になるだろうが,ASUSTeK印の映像エンジンをまず試したいなら,(上がった段階で)専用ドライバをダウンロードしてみてほしい。


左,中央:ASUSTeKブースで展示されていたグラフィックスカードの一部には四角い箱が付いていた。この箱の下にSplendid Engineチップが搭載されているようだ。ちなみに「Smart Doctor」は同社製ビデオカードにこれまでもあったソフトウェアオーバークロックツールで,すわ新たにハードウェアチップ搭載かと思いきや,こちらは単に見栄え重視とのこと
右:ASUSTeKの子会社が開発したという同社ブランドの液晶ディスプレイは,まさにこのSplendid Engineを搭載しており,これはそのデモである。画面の左側がより鮮やかに描画されているのが分かる


GameLiveShowのデモ。左のディスプレイがASUSTeK製ビデオカード搭載PCに接続されており,オンスクリーンディスプレイ(OSD)で設定した内容に従って,映像配信サーバーソフトがリアルタイムで動作する。ちなみに写真では720×480ドット,30fpsで隣のPCへ配信中。映像は若干コマ落ちする程度で,十分滑らかだった
 なお,ASUSTeKはこのほかにも,自社製グラフィックスカードの独自ドライバと付属アプリケーションを使ってオーバークロック以外の特徴を打ち出していたので紹介しておこう。
 「GameReplay」は,プレイ中の様子をムービーファイルとして保存できる機能。そして「GameLiveShow」は,それをリアルタイムにインターネット上へ配信できる機能だ。GameLiveShowはASUSTeK製グラフィックスカードを搭載するPCを映像配信サーバー化するもので,CPU負荷はそれなりにかかるものの,ゲームサーバー構築などのスキルがなくても,また,どんなゲームでも配信できるのがウリ。配信を受ける側は,他社のグラフィックスカードを使っていても,Internet Explorerさえあれば配信元のサーバーにアクセスして映像を楽しめるという。ローカルで2台のPCを接続しているデモ(写真参照)程度の解像度やフレームレートでインターネットに向けて配信……というわけにはいかないと思われるが,ゲーマー向けとして面白い試みなのは確か。
 ちなみにGameReplayとGameLiveShow機能は,前述のソフトウェア版映像エンジンと同様,ASUS Enhanced Driverの一部として今週中に提供される予定だ。(佐々山薫郁)



■AGP/PCI Expressのリバーシブル仕様
Geminium-VIII
 グラフィックスカード新製品の主流はすでにPCI Express x16ベースとなっている。現在AGP 8Xベースのシステムを利用している場合,グラフィックスカードを買い替えるにあたって,どうしてもシステムのほぼ全面入れ替えを視野に入れる必要が出てきた。しかし,システムを丸々入れ替えるとコストがかさむ。このため,引き続きAGP 8X接続のグラフィックスカードを購入してもいいものかどうか,悩んでいる人も多いのではないだろうか。
 そんな悩める3Dゲーマーを救ってくれるかもしれないグラフィックスカード「Geminium-VIII」を,MSIがブースで展示していた。
 Gemini(双子)にあやかって命名されている同製品は,カードの両サイドにPCI Express x16とAGP 8X用のコネクタを持ち,どちらでも利用できるようになっている。まさに「リバーシブル仕様」と呼ぶに相応しい。
 ディスプレイ出力用のDVI-Iコネクタが実装されたブラケット部は,専用ケーブルによってカード本体と接続される。この仕様のため,どちらのインタフェースでマザーボードと接続しても対応できるというわけだ。

 カード部はどうやって固定するのか,ケーブルは長すぎないかといった疑問は残るが,これについてエムエスイアイコンピュータジャパンのプロダクトマネージャ,Minky Chen氏は,「展示品はあくまで初期サンプル。製品版ではカードデザインは全面的に変更されるし,ケーブル長も短くなる」という。Radeon X800 XLに256MBのGDDR3 SDRAMを搭載し,価格は400〜500ドル程度になるそうだ。同氏は「そう遠くない将来に国内で販売する。NVIDIAソリューションも検討している」と力強く語ってくれたので,期待していいかもしれない。(トライゼット 西川善司)

左:カード本体は見事にPCI Express x16とAGP 8Xのコンパチブル仕様。グラフィックスチップはPCI Express接続で,カード上に変換アダプタを用意してAGP 8Xにも対応しているという
中央:カード上の専用コネクタ。ここにはグラフィックスカードを固定する機構がなく,まだサンプル段階であることがうかがえる
右:ブラケット部。DVI-I×2,コンポーネントビデオをサポートする


■あのSparkleから高品位&長寿命なグラフィックスカード
「このユニコーンマークと黒い箱が目印で〜す。日本の皆さん,Calibreシリーズをよろしく」とはSparkle女性社員のお二人
 どちらかといえば「リファレンスデザインのカードをいかに安く提供できるか」を勝負どころとしていたSparkle Computer(以下Sparkle)が,なんと「Calibre」シリーズという品質重視のブランドを立ち上げた。
 Calibreの製品開発/製造コンセプトはズバリ「高品位と長寿命」とのこと。上質の部品を,信頼性の高い冷却システムと組み合わせ,製品開発時には連続稼働や振動/落下テストまで行うという。今までしてこなかったのか,というツッコミはさておき,メーカー無償保証期間3年間というあたりに,Sparkleの自信が見える。登録済みユーザーに関しては,電子メールで質問を送ると,48時間以内に確実に返信するというアフターサポートも提供されるという。
 なお,製品はPCI Express x16仕様の「P」シリーズと,AGP 8X仕様の「A」シリーズがある。AシリーズのGeForce 6600 GTモデル「Calibre A650」とGeForce 6600モデル「Calibre A600」には,同社が「VGA Rectifier Technology」と呼ぶ金属板が取り付けられていた。これは,熱やクーラーの重さでグラフィックスカードが“しなる”のを防ぐ装置。NVIDIA SLIをサポートするPシリーズには用意されていない。
 いずれも価格は未定だが,Pシリーズは7月,Aシリーズは6月中に出荷開始となるようだ。(トライゼット 西川善司)

左上:GeForce 6600搭載の「Calibre P610」。PCI Express x16接続で,メモリは128bit接続のGDDR3 256MB(1.6ns)。コアクロック300MHz,メモリクロック1GHzとなっている。標準的な製品より高クロックで,しかもDVI-I×2,コンポーネント出力×1という仕様は日本でも受けそうだ
右上:前出のCalibre A650。AGP 8X接続で,メモリは128bit接続のGDDR3 256MB(1.6ns)。コアクロック450MHz,メモリクロック1GHzで,これもDVI-I×2,コンポーネント出力×1という仕様
左下:GeForce 6600搭載の「Calibre P600」。メモリ容量が128MBで,出力コネクタがDVI-I×1,D-Sub×1,コンポーネント×1になっている以外はCalibre P610と同じ
右下:GeForce 6600搭載でAGP 8X接続の「Calibre A600」。VGA Rectifier Technologyが使われていないこと,そして接続インタフェースがAGP 8Xなのを除けばCalibre P600と同じ

Splendid
■開発元:ASUSTeK Computer
■発売元:ASUSTeK Computer
■発売日:2005年内
■価格:無料
→公式サイトは「こちら」
ATI Radeon X800
■開発元:AMD(旧ATI Technologies)
■発売元:AMD(旧ATI Technologies)
■発売日:2004/05/11
■価格:製品による
→公式サイトは「こちら」
GeForce 6600
■開発元:NVIDIA
■発売元:NVIDIA
■発売日:2004/08/12
■価格:製品による
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2005.06/20050607204741detail.html