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ついに動く「グラナド・エスパダ(Granado Espada)」日本語版を見た! HUE事務所直撃取材
2005/04/13 14:31
 "「ラグナロクオンライン」の生みの親,Kim Hakkyu氏が手がける最新MMORPG"と,鳴り物入りで登場した,同氏率いるIMC Gamesの「グラナド・エスパダ(Granado Espada)」(以下,GE)。日本国内では,韓国ハンビットソフトと日立製作所の合弁会社であるハンビットユビキタスエンターテインメントが,新興というビハインドを跳ね除けて運営するなど話題づくしの作品だが,2005年に入ってからは,2月のHUE開所式(記事は「こちら」)を最後にぷっつりと話題が途切れてしまった。
 目を見張るスクリーンショットや,ちびちびと漏れ出てくるGEの情報に一喜一憂してはいたものの,日本国内では「大航海時代 Online」や「エバークエスト II」といったメジャータイトルが相次いで正式サービスやβテストを開始し,最近は我々の目も徐々にGEから逸れてきていた。

 このように,GEに関してはしばし静観を決め込もうとしていた(?)矢先に,HUE事業推進部部長の平田氏から「ちょっと(GEが動いてるのを)見てみませんか?」という連絡が入った。「こちら」のムービーに辛うじてプレイシーンが収録されているものの,実際にGEの稼動シーンを見られるのは今回が初めて。まさに寝耳に水だ。

ローカライズの話をしたところで,本棚からごろごろ出てきた資料の数々。スキル名に関して平田氏は「(選択式の)公募という手もありですね」と漏らしていたが……
 そんなわけで,4月8日に早速HUEにお邪魔して,平田氏の説明を交えてGEを見せてもらった。
 訪れたのは,開所式から2か月ほどが経過した東京は秋葉原のHUE事務所。室内はまだ真新しい壁紙の匂いが漂っていて,そこにGM(となるかも知れない人達)を含めた20名弱のスタッフがせっせと業務をこなしていた。静かだったのが意外だが,あちこちにケースを外されて中身が剥き出しになったPCがあったりと,ローカライズとテストによる社内の慌(あわただ)しさがひしひしと感じ取れた。やはりローカライズに関してはかなり苦戦しているとのことで,参考書を山のように用意しつつ,翻訳専門チームとは別にスタッフを総動員して,オリジナルの意味や表現を損なわない翻訳を目指しているとのことだ。

 さて,平田氏が実際にプレイしてみせてくれたのは,キャラメイクシーンや戦闘シーンなどの"ゲームの要所"をピックアップした部分で,(マシンの再起動なども含めて)正味1時間ほど。画面インタフェースや日本語処理部分もほとんど決定していないため,ゲーム画面の撮影などは一切NG。「GMコマンド打つから見ないでくださいね」という氏の言葉に,「目は開いているけど見てませんよ」などと返しつつ,シゲシゲと"動く"GEを見てみた。


■ただただ圧倒される本作のグラフィックス

【日本語版画像1】初公開のGE日本語版画像の一枚。これはキャラクターを格納しておく"バラック"だ。この画像では3体のキャラクターしか見えないが,数が増えてくると,後ろの階段や左隅に見えるテーブルなどでゆったりとくつろぐキャラクターの姿を確認できる。またここで見られる"ステンドグラスから漏れ出る光"は,ドレスルームをはじめ,本作で多用されている美しい表現だ
 まずは全体的な質感とグラフィックスの印象をお伝えしておこう。
 この日見せてもらったのは,現時点ではグラフィックスオプションそのものが実装されていない本作の"ハイレゾモード"。

 初めて動くGEを見た印象は,ズバリ"公開されているスクリーンショットに偽りはなかった"である。
 中世ヨーロッパ風のキャラクターコスチューム,石造りの街,宮廷を思わせる家屋室内の装飾,また野外のグラフィックスでは,目前の木や葉(一枚一枚がポリゴンだ),遠めに見る山々,微妙に流れる空の雲まで,トータルで見ると本作のグラフィックスクオリティは一級と言い切ってもいいだろう。

 元々本作のデザインは,コミカルタッチでもなければ,ドロッとした"洋ゲー"ライクなクセもない。デザインこそ異なるものの,大航海時代 Onlineのように日本人に受けそうなグラフィックスである。おそらくこのクオリティを出せる理由は,すべてテクスチャの"陰"部分が異様なまでに描き込まれているからだろう。
 マップのオブジェクトをシゲシゲと見てみると,例えば石畳などは,岩と岩の割れ目までクッキリと陰影の表現が施されており,歩くとコツコツ音のしそうな"石"らしい質感が実現されている。遠景はいわゆる"一枚絵"だが,描き込まれたマップを見ていると,はるか遠くの山々までシームレスに到達できるような錯覚さえ覚えるほどである。

 そして何より特筆すべきは,そういったオブジェクトを描き出しいるグラフィックスエンジンの"軽快さ"だ。
 この日デモに使用されたPCのスペックは,CPUがPentium4/3.6GHz,メモリ1GB,グラフィックスチップはGeForce 6600。まだまだ未完成のプログラムのためゲームの動作もギクシャクするだろうと覚悟していたのだが,戦闘中でさえ,処理がもたつくことはほとんどなかった。GEオリジナルグラフィックスエンジンの開発にはかなりの年月を割いているし,おそらく動的LoD(Level of Detail)などの,ちょっとした"小細工"を総動員して,この軽さを実現しているのだろう。

 逆に見られなくて気になったのは金属の表現ぐらいだろうか。見せてもらったキャラクターのコスチュームがいずれもヒラヒラした布,もしくは皮のアーマーだったため,フルプレートなど金属製の装備品を身につけた場合のグラフィックスがどうなるのかは若干気になる。刀身を見る限りでは,「リネージュ II」のようにヌメッとした質感にはならなそうだが。

 ちなみに,必要なPCスペックの目安は? と聞いたところ,「デモのPCは,タルベンチ(編注:「Vana'diel Bench」)のロースペックモードで大体6000ぐらいです。おそらく4000以上あれば,GEはある程度快適に動くんじゃないかと。他社のソフトで恐縮ですけど(笑)」と教えてくれた。ずいぶんと気の早い話だが,まぁPC環境に特別気を遣うことはなさそうだ。

 ただ今回見られた動作のフィーリングは,あくまでもプレイヤーが一人でプレイした場合の話である。本作は後述する「MCCシステム」の搭載により,一人のプレイヤーが3体のキャラクターを操ることになるため,プレイヤーがどっと押し寄せた場合の負荷は計り知れないものになると予想される。この辺りの懸念材料をエンジン側でエイヤと対応するのか,はたまたEQIIが実装した"ゾーン選択"のようなサーバーテクノロジーで凌ぐのか,興味をソソられる部分である。


■バラックとドレスルーム

 さて全体の印象はともかく,氏がまず見せてくれたのは,プレイヤー(コマンダー)が,作ったキャラクター達を格納しておく「バラック」だ(固有名詞については,「こちら」の韓国版リリース和訳記事に詳しい)。
 ドラゴンクエストシリーズで言うところの"馬車"に相当するこの画面では,プレイヤーが作成し育てたキャラクターが9体格納できるようになっていた。韓国での最新プレスリリースには12体と記述されていたが,現時点では9体。平田氏によると,キャラクター数に関しては本国でも仕様を揉んでいる最中とのことだ。
 この場面,早い話が(ただの)キャラクター選択画面だが,個々のキャラクターが,イスに腰掛けて談笑したりモデル立ちしたりと思い思いに行動しており,決してシステマチックに徹して冷えた表現のモードになっていない。こうした演出の積み重ねが,本作の世界観を確固たるものにしていると感じられる部分である。

 また「ドレスルーム」は,キャラクターメイキング画面。プレイヤーがキャラクターの名前,性別,職業,ヘアスタイルを決定するモードだ。
 プレイヤーが上記の選択を行っている間,キャラクターは鏡の前でポーズをとってくれる。もちろん選択肢によって着ている衣装なども次々と変わる。見せてくれたのは性別"男"の"ウィザード"と"スカウト"で,ウィザードはタキシード調のデフォルトコスチューム,スカウトはレザーのような質感の,タイトで少しごちゃついたデザインのアーマーを身に纏っていた。
 ちなみに,このドレスルームの雰囲気は,以前「こちら」で紹介したムービーで2秒(再生開始から7〜8秒のシーン)ほど見られるので,気になる人は覗いてみるべし。



■MCCシステムによる戦闘。スタンスとスキル

【日本語版画像2】これも初公開のGE日本語版画像の一枚。スキルスロットが七つしかないためか,非常にシンプルなインタフェースに見える。ちなみに,キャラクターの足元に描かれた○(マル)や△(三角)は,それぞれ"リーダー"と,AI制御の"非リーダー"のキャラクターを表したものだ
 ある意味一番見たかったのがこのMCC(Multi Character Control)システムの部分。Hakkyu氏もこれまでに多くの時間を割いて説明してくれた部分だが,その意気込みとは裏腹に,こちらとしては直感的に理解しづらい概念でもあった。
 今回のデモでは,平田氏が次々にキャラクターを切り替えて,街での移動や戦闘を見せてくれた。なお,今回はあくまでもテストバージョンでのデモのため,リリースバージョンとは若干異なる可能性があることを覚えておいてほしい。

 通常,プレイヤーはF1からF3キーに割り当てられた3体のうちの1体をリーダーとして操作し,残りの2体はリーダーを追従する形で行動する。前評判通り,Path Engineによる移動は滑らかだ。リーダー以外のキャラクターには,追従と個別移動の状態を設定することができ,場合によっては単独で行動することもできる。平田氏のデモを見ていると,AI操作のキャラクターは常にオート戦闘になっていて,敵が近づくと自ら率先して攻撃を始めていた。AI制御のメニューは詳しく見せてもらえなかったのだが,おそらくは,追従1,追従2(オート戦闘),個別行動の3タイプがあるのではと推測される。個別行動に関しては具体的な使い道は思いつかないものの,戦闘のフォーメーションとして利用するのか,「ファンタシースターオンライン 」のように,"3人いないと開かないドア"のようなパズルがあるのかなど,興味は尽きない。"一人でないと入れないダンジョン"なんかがあったりするだろうか。

 そして肝心のMCCによる戦闘だが,キャラクタースキルとプレイヤースキルの両方を駆使できそうで,正直かなり面白そうだ。
 具体的には,リーダーの切り替えとスタンスの切り替えによるスキル戦闘が,いい意味で煩雑になっているのが興味をそそる部分。スタンスは既報の通り,武器によって2,3種類用意されているキャラクターの"構え"のことだ。この構えによって,最終的にキャラクターが発動できるスキルセットが決定される。
 意外だったのは,スタンスの変更がかなり機敏に行える点である。つまりプレイヤーは戦闘中,F1〜F3キーでリーダーを変更しながらAlt+1〜4キーでスタンスを変更(ということは,一つの武器につきスタンスは最大4種類?),さらにそこからスキルを選択して発動という流れになる。スキルは現バージョンの画面インタフェースを見る限りは7種類となるので,理論上は3×4×7通りのショートカット操作が可能だ。数字だけ見ると,「ね?これだけバリエーションがあれば,取り急ぎ"2次職"はいらないでしょ?」と語る平田氏の言葉にもうなずける。
 もちろん通常リーダー以外のキャラクターはAIに操作を委ねることになるが,高レベルになればなるほど,戦闘でプレイヤースキルが問われる度合いが増すのはほぼ間違いだろう。以前よりHakkyu氏,平田氏共に「戦闘はRTSライクになる」と口グセのように述べていたが,あながち大げさな表現でもなさそうだ。

 その後しばらく平田氏のプレイを見ていて自然に口をついたのは,「ディアブロか?」という言葉。つまり本作のキモは戦闘の部分にあり,ある程度プレイヤースキルの入り込む余地を残したHack&Slash系のタイトルではないか,ということだ。これは"政治システム"などの一見MMORPGらしい仕様を,あくまでも"オマケ的な要素"だと言い切るHakkyu氏の言動からもうっすらと感じ取れる。ただ,実際には韓国でのオリジナル開発においてもまだ本作の全体像は見えていない状況である。この部分はプレイアブルなバージョンが表に出てきてから,じっくりと考えていきたい。

 画面インタフェースについては未確定の要素が満載なはずなので,見られた事実だけを淡々とお伝えしよう。ぜひ画面写真と見比べてみてほしい。
 メイン画面は,左上にキャラクターアイコンとそれぞれのHP(ヒットポイント)/SP(スキルポイント?)/EXP(経験値),左下にスタンスアイコンとスキルショートカットスロット七つ,右下にチャットウィンドウという感じ。チャットウィンドウのメニューは,全体/ささやき/パーティ/グループ/システムといったオーソドックスなもので,汎用的なチャットコンポーネントのような印象を受ける。
 キャラクターのステータスは,STR/AGI/CON/DEX/INT/CHAの6種類(CONは,ファイターで数値が高かったので,おそらくConstitution:耐久力)。戦闘時のダメージ値は大きく丸文字の数字がポップアップする形の韓国産ゲームらしい仕様だ。ただこの辺りは,シリアスタッチを基本路線とする本作の雰囲気を壊す可能性があるので,改善を強く要望したい点である。




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 この日は平田氏が要所要所を道筋を立ててデモをしてくれたわけだが,「この機能はホントに使えるかな?」といった心境なのか,"おそるおそる"といった感じの手つきから,まだまだ本作のプログラムは"実装途中"という印象だ。それでも今回は,我々や読者にとりあえず"動いている"ところを見せて安心させたかったという意図もあるのだろう。

 そこで気になってくるのは,HUEとIMC Gamesとの連携である。
 平田氏によると,韓国側は日本に対してかなり"手厚い"サポートを敷いてくれているという。実際に,現在のローカライズ作業や新システム実装作業も,すべて韓国から一週間のタイムラグと,"ほぼ同時"の連携を維持しているらしい。
 実はこの日,GEに関しては19日に韓国でメディアプレビューが,その後1週間後れ程度で,日本で同じ内容の発表会を開催すると教えてくれた。そしてこの日程は,どうやらHUEが"1週間"を強調したいがためのようだ。
 ただ,ほぼ同時を目指しつつも"韓国より先に日本で情報が公開されることはない"と平田氏は語る。つまり当サイトの"韓国PCゲーム事情"でGEの最新情報を取り扱っているように,しばらくは本国の情報を頼りするしかないというわけだ。

 最後に,本作を心待ちにしているファンが最も気にしているであろう,βテストの情報について。

 以前GEの韓国パブリッシャであるHanbit Soft社社長が「状況が許せば(早ければ)3月末頃からクローズドβテストを行うこともできるはずだと」語ったことは,我々メディアを含め強い衝撃を受けた人もいるはずだ。もちろん半信半疑であったことは否めないが,これに対してHUEから正式なコメントもないし,もしかして……なんて考えていた人も多いだろう。
 この部分だけはHUEとしてハッキリとした回答がほしいと平田氏に聞いてみたところ,「HUEは3月末とも4月とも一度も言っていません。GEの公式サイトをはじめ,パブリッシャとしての準備が結構大変なので,もうしばらくお待ちください……」という回答が得られた。

 ただもちろんHUEはテストに向けて動いていて,6月あたりに計画中の「ユーザー向けカンファレンス」(内容は未定だが,GEのプレイアブル展示があるらしい)と同じタイミングで,テストに入りたいとしている。
 そのテストの内容に対して氏は,「このテストは"クローズドβテスト"と銘打たないと思います。韓国でもそうでしょう? 今考えているのは,ゲームの部分部分を段階を踏んでテストしてもらう,本当の意味でのテストです」と答えてくれた。テスターの対象は100〜200人という小規模なもので,レポート提出などの義務をキチンと果たしてくれる人にのみ行ってほしいとの声も聞こえてきた。

 ちなみに,オープンβテストサービスぐらいまではホスティングもすべて日本国内で行っているとのことで,秋葉原の回線の良さも相まって,こと通信環境に関しては,現在非常に良い状態でローカライズに臨めていると平田氏は語る。
 現時点でファンが意識しておくべきは,19日の韓国メディアプレビュー,そこから一週間後れの日本メディアプレビュー,そして6月予定の「ユーザーカンファレンス」だ。このスケジュールをしっかり頭に叩き込んで,続報を待っていてほしい。

※画面はすべて,開発中のものです
※【日本語版画像】とないものは,すべて韓国語版の画面です

「グラナド・エスパダ(Granado Espada)」
 →公式サイトは「こちら」
 →紹介ページは「こちら」

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