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「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
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印刷2012/12/15 00:00

レビュー

「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright初のゲーム用マウスを試す

Leetgion Hellion

Text by BRZRK


Hellion
メーカー&問い合わせ先:Lea-Min Tech(Leetgion)
実勢価格:8000〜1万円程度(※2012年12月15日現在)
画像集#002のサムネイル/「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
 冷却系PCパーツのブランド「Thermalright」(を展開するLea-Min Tech)が,日本国内でPCゲーマー向け周辺機器市場へ参入すると発表したのは,2012年9月のことだった。
 新たなブランド名は「Leetgion」。欧米で用いられるインターネットスラングで,エリートの意味を持つという「Leet」(リート)と,英語で「軍団」を意味する「Legion」(リージャン。日本語では「レギオン」とも)を足して作られたという新ブランドからは,RTS向けと謳われるマウス「Hellion」がすでに発売となっている。今回はそのHellionのテスト結果をお伝えしたい。


見た目以上に軽いHellion

近未来的なデザインは実用可能なのか


画像集#003のサムネイル/「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
 Hellionのサイズは実測で73(W)×123(D)×42(H)mm。ゴツゴツとした近未来的な見た目もあり,パッと見は大きそうであるものの,握った印象は,一般的なゲーマー向けマウスと大差ない。
 ケーブル込みの重量は実測約135gで,詳細は後述するが,マウスの分解を行ってケーブルを取り外したときの重量は同102gだった。ずんぐりして重そうに思えるだけに,見た目よりはずいぶん軽いと評していいのではなかろうか。

4Gamerの比較用リファレンス「G5 Laser Mouse」(型番:G-5T)と並べたところ。非常に特殊な形状で,ゴツゴツしているので大きく見えるのだが,実際の大きさはG5 Laser Mouseより若干小さい程度だ
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 ボタンは左右メインとセンタークリック機能付きスクロールホイール,左右メイン脇各1,本体左側面×1,マウスの後部にあるDPI変更×2の計8個。一見,マウス後部にはボタンがないようにも思えるのだが,Hellionでは底面最後部が斜めにカットされており,ここに細長いボタンが2つ用意されている。おそらく,DPI変更用ボタンを誤って押してしまうことを避けつつ,見栄えもよくしたいという配慮によるのだろう。このアイデアは悪くないと思う。

メインボタン周り(左)と,本体後方底面側から少し上に用意されたDPI切り替え用ボタン(右)
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[Attack]キーは,本体左側面の凹んだところに浮いたような感じで配置されている。ストロークは,マウスのボタンと比べると非常に長い
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 さて,そんなHellionにおける最大の特徴となるのは,デザイン上のワンポイントとなり,左右対称形状のHellionを右手用マウスにしてもいる左サイドボタンだ。[Attack]キー――Leetgionの公式Webサイトでは,ボタンではなく,キーだと紹介されている――とされるこのボタンには,ZF Electronics製のキーボード用キースイッチ,俗にいう“Cherry青軸”が搭載されているというのが,これまでにない見どころとなる。

 青軸スイッチは,押し込んでも荷重が変わらず,すっと押し込めるのが特徴だが,当然のことながらマウスのボタンスイッチと比べるとストロークは長い。実測では4mmといったところである。
 キースイッチが反応するのは2〜3mm程度押し込んだところなので,4mm目いっぱい押し込む必要自体はないものの,“キートップ”的に用意されている赤い部分は「ブカブカした」印象でぐらついており,適宜押下していく前提で親指を載せていると,つい押すような格好になってしまう。そしてそうなると,青軸の特性もあってスイッチの反応するところまですっと押し込まれ,見事,誤爆と相成ってしまうのだ。
 正直,Hellionにおける最大の特徴は,Hellionにおける最大の欠点になっていると言わざるを得ない。

[Attack]キーは引っ張るだけで簡単に取り外せる。取り外すと,キーボードでよく見られるメカニカルキースイッチが確かに搭載されていた。なお,ボタン側の裏側には,小さな金属板が仕込まれている
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画像集#013のサムネイル/「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
 もう1つ気になるのが,左右メインボタンの脇,それぞれ外側に用意された,黒くて細長いボタンだ。サイドボタンを搭載し,機能のカスタマイズに対応したゲーマー向けマウスの多くでは,サイドボタンに標準で「ページの送りと戻し」が割り当てられているのだが,Hellionでは左右メインボタン脇のボタンに同機能が割り当てられているので,Leetgionでは,サイドボタンの代わりと位置づけているのだろう。イメージとしては,Logitech(ロジクール)の「Gaming Mouse G300」に近いといえるかもしれない。
 ただ,使おうとすると指を大きく動かさざるを得ないため,指の移動量が大きくなってしまって押しづらい。「とっさの操作がしづらい」だけならまだ許せるのだが,Webブラウザの操作でもそう思うほどだったので,アイデアはともかく,実装上の完成度は低いと言わざるを得ない。

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 なお,左右メインボタンとメインボタン脇のボタンにはいずれもオムロン製スイッチが採用されているとのことで,いずれもクリック感は軽め,クリック音は小さめ。オープンエア型のヘッドフォンをかけながらゲームをプレイしてみると,クリック音は聞き取れないレベルだ。
 スクロールホイールは横幅が実測8mmで,ホイール部分は1mm間隔で幅1mm強の溝が刻まれている。横幅が広いため指と接触する部分が多いため,それほど力を入れずとも回転させられるのは好印象だ。ただ,センタークリックは左右メインやメイン脇のボタンと比べると重く,グッと押し込む必要があった。

Race Switchと名付けられたダイヤル。写真ではカスタム(CUSTOM)が選択されている
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 面白いのはマウスの底面部で,ここにはプロファイル切り替えを可能にするダイヤル「Race Switch」が用意されている。これを回すことで,内蔵フラッシュメモリに保存された合計5つのプロファイルを瞬時に切り替えることができるのだ。
 ダイヤル上のプロファイル名は,標準(DEFAULT)とカスタム(CUSTOM)を除くと「TERRAN」「ZERG」「PROTTOS」なので,RTS向けと言いつつも,方向性としては「StarCraft II: Wings of Liberty」のようなMOBA系タイトルを想定しているということなのだろう。
 なお,言うまでもないことだが,プロファイルの変更には,マウスを持ち上げて裏返し,さらにダイヤルを回す必要がある。これは手間だと思うかもしれないが,実のところ,プロファイル選択という重要な操作から,「操作ミス」の可能性を排除してくれている点はむしろプラス評価の材料だ。個人的には,この操作感はかなり好みである。

マウス底面(左)。ソールは独自形状のものが4枚貼られている。なお,工場出荷状態ではソールにビニールシートが貼られており,利用前にはそれを剥がす必要があった
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ケーブルは結束バンド付き
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 ケーブルは布巻タイプで,太さは実測約3mm。USBコネクタの先端から,マウスの手前側(≒最後部)までの長さは同1.96mある。USBコネクタの全長が同40mm,マウスの全長が同123mmなので,ケーブル長はざっと1.8mといったところだ。
 ケーブルは太さの割に馴染ませやすく,これといって引っ張られるような感覚はなかった。


側面の構造が特殊なため

持ち方は限定されやすい


 では,この特殊な形状をしたHellionは手に収まってくれるのか。今回も,「かぶせ持ち」と「つまみ持ち」,そして筆者独自の持ち方(だと自分で思っている)「BRZRK持ち」の3パターンで試し,その印象を写真メインで以下のとおり紹介したい。

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かぶせ持ちの例。指を伸ばす持ち方ということもあり,親指が[Attack]キーと干渉してしまっている。前述のとおり,[Attack]キーは,親指を腹を乗せておくと,ちょっとしたことで誤爆してしまうので,親指の腹を使ってマウスを押さえ込むように挟む持ち方はしづらいのだ。もちろん,ボタンよりも手前側(=マウス後方側)に親指を置けば解決できるが,かなり窮屈で,長時間の利用は厳しい
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つまみ持ちの例。指を立てるように持つため,かぶせ持ちと比べると,より後方にすべての指を配置できるため,親指の干渉問題からは解放される。マウスの右側面部はくびれた位置に薬指がジャストフィットしており,持ちやすく感じたのも付記しておきたい。ただ,今度は左右メインボタン脇にあるボタンへの距離が遠くなって,さらに押しづらくなるという新たな問題が生まれている
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そしてBRZRK持ちの例だ。親指と薬指,小指をつまみ持ちと同じ配置にしているため,[Attack]キーへの干渉は押さえられ,かつ,薬指と小指が右側面にフィットする。人差し指と中指は伸ばした状況なのでややアクセスしづらいものの,それでも左右メイン脇のボタンも押すことは可能だ

 というわけで,消去法でBRZRK持ちがベスト,といった感じである。かぶせ持ちは[Attack]キーとの干渉が問題で,つまみ持ちは,ただでさえ押しづらい左右メインボタン脇のボタンがさらに押しづらくなるといデメリットがあるので,今回試したなかではBRZRK持ちしかない。形状が特殊なので覚悟はしていたが,握り方をかなり選ぶマウスだ。


最新ではないが実績のあるADNS-9500を搭載

「ドライバレス+設定ツール」でカスタマイズ可能


センサーの位置がマウスの中央よりも右側(※写真では裏返しているので左側)にズレている。手のひらの中心を意識してマウスを操作しているプレイヤーだと,操作感覚の違いを感じるかもしれない
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 ここからは内部のチェックに入ろう。Hellionでは,Avago Technologies製のレーザーセンサー「ADNS-9500」を搭載することは明らかになっているが,下にまとめたとおり,細かなスペックは未公開だ。
 もっとも,ADNS-9500の公式スペックだと,トラッキング速度は最大150IPS,最大加速度は30Gなので,大きなカスタマイズが入っていないのであれば,スペックはイマドキのものだといえる。

●Hellionの主なスペック
  • ボタン数:8(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,左メイン脇×1,右メイン脇×1,左サイド×1,本体後方のDPI変更用×2)
  • トラッキング速度:未公開
  • 最大加速度:未公開
  • トラッキング解像度:100〜5000 DPI
    (※100/800/1600/2000/2400/3200/5000 DPIの7段階から選択)
  • フレームレート:11750 fps
  • 画像処理能力:未公開
  • ポーリングレート(レポートレート):125/250/500/1000Hz
  • リフトオブディスタンス:未公開
  • サイズ(実測値):73(W)×123(D)×42(H)mm
  • 総重量(実測値):約136g
  • 本体重量(実測値,ケーブル取り外し後):約102g

 Hellionは,Windowsのクラスドライバで動作する,いわゆるドライバレス動作の可能なマウスだ。ただ,Leetgionの公式サイトからは設定ツール「Hellion Software」(※もしくは「Hellion Configurator」。Leetgionのサイト内で表記が揺れているので,今回はツールのウインドウに書かれている表記を使う)をダウンロードできるようになっており,これを用いることで,ボタンへの機能割り当てや,上で紹介したトラッキング解像度あるいはレポートレートの変更などが行える。

Hellion Software。英語版のツールである。原稿執筆時点の最新版はバージョン1.01だった
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 ツールには「Button Assignment」「Adjust Performance」「Macro Management」「Light Management」と,4つの機能タブが用意される。字面からだいたいのことは想像できると思うが,ざっと説明しておくと,まずButton Assignmentでは,DPI変更用ボタン以外,すべてのボタンの設定を変更できる。スクロールホイールの前後回転にもそれぞれ機能を割り当て可能だ。
 本稿の序盤で,プロファイルは5つあるという話をしたが,このうち,カスタマイズに対応するのはカスタム(CUSTOM)のみのようである。ほかの4つも設定内容の閲覧,変更はできるように見えるのだが,実際に変更するとその内容はカスタム(CUSTOM)に上書きされる仕様になっていた。

Adjust Performance。テストした限り,「Scroll Speed」「Pointer Speed」「Double Click」の設定内容は,Windows側の設定と同期していたりはしないようだった
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 次にAdjust Performanceは,前述したトラッキング解像度やポーリングレートなど,センサー挙動周りを設定できる項目だ。
 問題は,細かく目盛りが振ってあるにもかかわらず,DPI設定は100・800・1600・2000・24000・3200・5000 DPIからの選択式であること。「好みのDPI設定値を選んだうえで,ゲーム側で微調整を行う」というのが,コアゲーマーの一般的な設定方法ではないかと思われるが,それができないのは痛い。
 というか,7段階の刻み方にも統一性はなく,はっきり言って珍妙である。Leetgionとしては,同じタブメニュー内にある「Pointer Speed」を併用して設定せよというのかもしれないが,この仕様には大いに疑問が残った。

画像集#028のサムネイル/「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
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 Macro Managementではマクロの登録と設定が行えるのだが,ここで注意したいのは,マクロがマウス本体に登録されるということだ。Hellion自体はドライバレスで動作するため,アンチチートツールの監視をくぐり抜けて,マクロを利用“できてしまう”のである。
 ゲーム大会ではレギュレーション違反と指摘される可能性があり,またオンラインゲームではペナルティの対象となる可能性もあるので,筆者および4Gamer編集部として,このマクロ機能をゲームで利用することは推奨しない。どうしても利用したいという場合は,すべて自己責任となるので注意してほしい。

 最後にLight Managementは,プロファイルごとに内蔵LEDの色を変えられる項目である。色は比較的自由に設定できるが,明暗の調整や明滅といった設定は行えず,LEDは設定した色で点灯し続ける。

Leetgionでは,LEDインジケータを「テールライト」と位置づけている。スクロールホイールの近くにあるHellionのロゴや,本体左右の凹み部分からも光は若干漏れるが,主に光るのは本体後方底面側と,Leetgionのロゴだ。色はけっこうキレイに出ている
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 DPI周りとマクロ周りを除けば,機能面はまずまず無難と評していいのではないかと思われるHellion Softwareだが,軽くダメ出しをしておくと,設定後に[OK]ボタンや[APPLY]ボタンを押すと,そのたびにウインドウが閉じてタスクバーに戻り,次の設定をするたびにタスクバーからウインドウを開き直さねばならない仕様はどうかと思った。また,Adjust Performanceタブを開いている状態だとマウス側のDPI切り替えボタンが機能しないというのも,挙動の違いを確認したいときには地味にストレスの原因となる。発売から1四半期経っているわけで,もう少し練り込んでほしいところだ。


分解して分かった「作りの甘さ」

ダイヤルの搭載がその原因か


 概ね仕様が見えたところで,分解してみよう。
 まず下に示したのは,マウスソールの“下”に隠されているネジを外し,とりあえずカバーを外した状態と,メイン基板に寄った状態のそれぞれカットである。メインボタン側にオムロンのスイッチが4個並んでいる点や,センタークリックのスイッチがHuano製である点,メイン基板とサブ基板の間をつなぐケーブルがずいぶんと多い点,そして青軸キースイッチがかなりの存在感を持っている点などが見て取れる。

ネジを外してカバーを外した直後(左)と,メイン基板のクローズアップ(右)。メインスイッチ側にオムロンのロゴ入りスイッチが4つ並ぶのはユニークだ
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 以下,気になる部分を写真メインで見てみたい。

スクロールホイールを取り外して,メインボタンのスイッチ周りに寄ったところ(左)。右はオムロン製スイッチの側面だ。「D2F-F 0861RAE」というプリントがあった
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ピントが合っていなくて申し訳ないが,スクロールホイールの“下”に置かれてたUSBコントローラ(と見られるチップ)。Holtek Microelectronics製で,型番は「HT82A525R」となっていた。このチップを使うのはかなり珍しいのではなかろうか
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Cherry青軸キースイッチ。もう,キーボードに搭載されているスイッチそのままである。メイン基板とは赤黒のケーブル経由で接続されるが,メイン基板側のコネクタソケットは立て付けが悪く,ケーブルを引き抜こうとしたらソケットごと抜けてしまった

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メイン基板部を別の角度から。本体底面のダイヤル部が底面側から内側に盛り上がっているため,メイン基板とDPI変更用ボタンのスイッチが搭載された基板とをつなぐためにサブ基板が必要となっているのが分かる。サブ基板のコネクタソケットは固定が甘く,浮き上がってしまっている
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メイン基板とDPI変更用ボタンのスイッチが搭載された基板とをつなぐサブ基板の“裏側”。ダイヤルユニット自体は10段階切り替えに対応していたが,前述のとおり,Race Switchではこのうち5段階を使うことになる。それにしてもこのごちゃっとしたケーブルはなんとかならなかったのか

マウス後方底面側のDPI変更用ボタン周り。ここで採用されているボタンの詳細は不明だ
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「A9500」と刻印されたレーザーセンサーユニット(左)と,レンズユニット(右)。搭載センサーは公称どおりとなる
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※注意
 マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。

画像集#044のサムネイル/「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
 普段はもっとバラバラに分解するのだが,今回はここまでとした。というのも,コネクタの接続や配線を見てもらえれば想像できると思うのだが,非常に作りが甘く,粗い。とくにメイン基板とサブ基板をつなぐケーブル部分はお粗末に過ぎる。
 まあ,これが最初の製品なので,内部設計については今後に期待といったところだろうか。底面のダイヤルはよいアイデアだと思うのだが,そこに振り回されてしまったような印象は受けた。


マウスパッド計15製品との相性をチェック

ADNS-9500は安定動作


画像集#045のサムネイル/「Cherry青軸採用のマウス」はアリなのか? Thermalright製のゲーマー向けマウス「Hellion」を試す
 ここまであまりいいところのないHellionだが,挙動,とくにマウスパッドとの相性周りはどうだろうか。今回もマウスパッド15製品との滑り具合と,リフトオフディスタンスを調べてみよう。
 なお,マウスのデフォルト設定ではAdjust Performanceタブを表示できないため,今回はカスタム(CUSTOM)プロファイルの初期設定をベースとしてテストを行うことにした。

 というわけで,テストに用いたシステムと設定は下記のとおりとなる。

●テスト環境
  • CPU:Core i7-860/2.8GHz
  • マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-P55A-UD4(BIOS F15)
    ※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結
  • メインメモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2
  • グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-N560OC-1GI(GeForce GTX 560 Ti,グラフィックスメモリ容量1GB)
  • ストレージ:Western Digital Caviar Green(WD10EADS,容量1TB,Serial ATA 3Gbps)
  • サウンド:オンボード
  • OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1

●テスト時のマウス設定
  • ファームウェアバージョン:6.1.7600.16385(※デバイスマネージャから確認)
  • DPI設定:100〜5000 DPI(※主にカスタムプロファイルのデフォルトである1600 DPIを利用)
  • レポートレート設定:250Hz(※カスタムプロファイルのデフォルト設定)
  • Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
  • Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効

 なお,Hellionのリフトオフディスタンス値は公表されていないため,本稿では「厚さ1mmの1円玉を何枚重ねた状態で反応が消えるか」を,以下,マウスパッドとの相性テスト結果の後ろに【 】書きで付け加えることにした。「2枚」ならリフトオフディスタンスは2mm以下ということになる。

●ARTISAN 隼XSOFT(布系)
 良好な滑りで問題なく操作可能。【2枚】

●ARTISAN 疾風SOFT(布系)
 操作も滑りも良好。【2枚】

●ARTISAN 飛燕MID(布系)
 ザラザラとした抵抗感はあるが,操作に問題なし。【2枚】

●DHARMAPOINT DRTCPW35CS(布系)
 少し抵抗感はあるが,操作に問題なし。【2枚】

●DHARMAPOINT DRTCPW35RS(布系)
 抵抗感は感じるものの,操作に支障はない。【2枚】

●Razer Goliathus Control Edition(布系)
 擦れる感触がある。ただ,操作自体は問題なし。【2枚】

●Razer Goliathus Speed Edition(布系)
 滑りやすく,操作もしやすい。【2枚】

●Razer Ironclad(金属系)
 抵抗感はあるが快適に操作可能。【2枚】

●Razer Scarab(プラスチック系)
 摩擦を感じる。操作性は良好。【2枚】

●Razer Sphex(プラスチック系)
 少し抵抗感があるが,操作に問題なし。【2枚】

●Razer Vespula(プラスチック系,両面)
 両面とも抵抗を感じるが,快適に操作可能。【2枚】

●SteelSeries 9HD(プラスチック系)
 良好な滑りで,快適に操作可能。【2枚】

●SteelSeries QcK(布系)
 良好な滑りで,問題なく操作可能。【2枚】

●ZOWIE G-TF Speed Version(布系)
 これといった問題もなく,快適に操作できた。【2枚】

●ZOWIE Swift(プラスチック系)
 抵抗感はう受けるが,操作に支障はなし。【2枚】

 一言で結果をまとめるなら「ADNS-9500は安定している」に尽きる。これといったネガティブアクセルを感じることもなく,エイミングやポインティングを行えた。

直線補正の具合を確認すべく,Windows標準の「ペイント」で線を引いたところ。気持ち補正が効いている印象だ
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そのチャレンジは評価したいが

適正価格は3000円以下がいいところ


Hellionの製品ボックス。凝っている
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 Hellionの実勢価格は8000〜1万円程度(※2012年12月15日現在)と,かなり挑戦的だ。だが,ここまでのテスト結果を踏まえるに,その値段相応の製品かと問われれば,残念ながら「否」と答えざるを得ない
 まず,最大のウリである青軸キースイッチが,むしろ操作性を阻害しているというのがいただけない。メインボタン脇のボタンもサイドボタンの代わりになるような使い勝手ではなく,設定ツールは設定ツールで,リサーチ不足や練り込み不足が目立つのも減点対象となる。

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 ユニークな形状,ユニークな仕様のマウスに挑戦したこと,それ自体は否定されるべきものではない。むしろ,いきなりこういう尖った仕様のマウスを作ろうとしたことは評価されるべきだろう。そこまでコストがかかったであろうことも理解はできる。しかし,シビアに製品として評価するなら,Hellionの適正価格は3000円以下がいいところだ。
 少なくとも筆者自身は,8000〜1万円のマウス購入予算があったとして,Hellionを選択肢に入れることはない。より安価で,機能も充実した他社製品を選ぶだろう。

 デザインのコンセプト自体は悪くないので,次があるなら,“飛び道具”ではなく,使い勝手で勝負してほしいと思う。

Leetgion公式Webサイト

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