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ATI Radeon HD 5700
  • AMD
  • 発表日:2009/10/13
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印刷2009/10/31 10:30

テストレポート

「ATI Radeon HD 5770」CrossFireXテスト。2万円のカード2枚でHD 5870に迫れるか?

 世界初のDirectX 11対応GPUとして,たいへん順調な滑り出しを見せているATI Radeon HD 5000(以下,HD 5000)シリーズ。その実力パフォーマンスはレビュー記事でお伝えしているとおりだが,価格対性能比,消費電力対性能比に優れるGPUシリーズであることに,疑いの余地はない。2009年10月末日時点での課題は流通量くらいである(※それはそれで,大いに問題だったりするのだが)。

ATI Radeon HD 5870レビュー記事
ATI Radeon HD 5850レビュー記事
ATI Radeon HD 5770&5750レビュー記事

 今回は,そんなHD 5000シリーズのうち,概ね2万円程度から購入可能(※2009年10月31日現在)な「ATI Radeon HD 5770」(以下,HD 5770)搭載グラフィックスカードを2枚使って,2-way ATI CrossFireX(以下,CFX)のパフォーマンスを検証してみたい。Stream Processor数800基のGPUを搭載したグラフィックスカード2枚で,同1600基のシリーズ最上位モデル「ATI Radeon HD 5870」(以下,HD 5870)に迫れるかをチェックしてみよう,というわけだ。


HD 5770 ×2はHD 5870とわたりあえるか?

ATI Radeon上位モデルと横並びで比較


SAPPHIRE HD 5770 1G GDDR5 PCIE DUAL DVI-I/HDMI/DP
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:1万9000〜2万4000円(※2009年10月31日現在)
ATI Radeon HD 5700
 今回,CFXのテストに用いたのは,レビュー記事でも利用したAMDのリファレンスカードと,Sapphire Technologyの販売代理店であるアスクの協力で入手した,「SAPPHIRE HD 5770 1G GDDR5 PCIE DUAL DVI-I/HDMI/DP」(以下,SAPPHIRE HD 5770)だ。
 SAPPHIRE HD 5770は,リファレンスデザインを踏襲した製品で,動作クロックやグラフィックスメモリ容量はリファレンスカードとまったく同じ。今回,比較対象として用意したのは,HD 5870,「ATI Radeon HD 5850」(以下,HD 5850)リファレンスカード),「ATI Radeon HD 4870 X2」(以下,HD 4870 X2)で,これらの主なスペックをまとめたものが表1になる。


 冒頭で,HD 5770のStream Processor数はHD 5870の半分と述べたが,動作クロックはそのままに,“いろいろと半減”しているHD 5770が,2枚差しでどこまでがんばれるかが,本稿のポイントということになるだろう。

SAPPHIRE HD 5770を別の角度から。紛れもなくリファレンス仕様のカードである
ATI Radeon HD 5700 ATI Radeon HD 5700

HD 5770リファレンスカード。CFXのテストに当たっては,本製品をマスター(プライマリ)とし,SAPPHIRE HD 5770はスレーブ(セカンダリ)で用いた
ATI Radeon HD 5700
 テスト環境は表2のとおり。基本的にはHD 5770レビュー時のままだ。

 HD 5770レビュー記事の掲載後に,AMDは新しいグラフィックスドライバ「ATI Catalyst 9.10」をリリースしているが,HD 5770はサポート対象になっていないため,今回は,先のレビュー時と同様,AMDからレビュワー向けに配布された「8.66.6-091006a-089804E」用ドライバで,バージョンを統一している。


 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション8.2準拠で,「バイオハザード5」については,海外向けとなる「Resident Evil 5」の公式ベンチマークソフトを利用している点もHD 5770のレビューと同じ。そのため,HD 5770レビュー記事から,流用できるスコアは積極的に流用するが,高いグラフィックス負荷環境下でこそ真価を発揮するCFXのテストということもあり,解像度設定は(シングルカードの評価時とは異なり)1680×1050/1920×1200/2560×1600ドットの3パターンとした。

 なお,HD 5770のCFX構成については,以下本文,グラフ中とも「HD 5770 CFX」と表記する。


CFX専用の動作ステートは正常に機能せず?

プライマリカードのPowerPlayにも課題


 さて,HD 5000シリーズの発表時にAMDは,CFXを構成した場合には,「Ultra Low Power State」(以下,ULPS)という特別な動作ステートへ移行することで,セカンダリGPUへの電力供給をカットし,さらなる低消費電力を実現すると説明していた(関連記事)。そこで,まずはこのULPSの実際をチェックしてみることにしたい。

 テストに用いたのは,ログの取得が可能なワットチェッカー,「Watts up? PRO」。OSの起動後,30分間放置した時点を「アイドル時」,レギュレーション8.2で定める各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時とし,各時点におけるシステム絵全体の消費電力をまとめたのがグラフ1だ。

 ここでは,アイドル時の消費電力に注目したい。
 HD 5770 CFXは144W,HD 5770は124Wなので,20W高くなっている。アイドル時におけるHD 5770の公称消費電力は18Wなので,カード1枚分高くなっている計算だ。AMDが主張するように,ULPSで消費電力がさらに低下するのであれば,アイドル時におけるHD 5770 CFXの消費電力は,HD 5770のそれにもっと近づいていなければつじつまが合わないのに,そうなっていないのである。

グラフ画像をクリックすると,別ウインドウで拡大版を表示します
ATI Radeon HD 5700

ATI Radeon HD 5700
アイドル時におけるスレーブGPUの動作状況(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
ATI Radeon HD 5700
アイドル時におけるマスターGPUの動作状況(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
 このとき,アイドル時におけるスレーブGPUの動作クロックをATI Catalyst Control Center(以下,CCC)のATI OverDriveから確認すると,コアクロック,メモリクロックはともに0MHzと表示されていた。ただその一方,搭載するGPUクーラーは20%の設定で回転し続けており,カードへの電力供給が依然として行われ続けていることも推測できる。

 また,CFX環境では,消費電力に関連したもう一つの問題も確認できた。それは,マスターカードにおけるATI PowerPlayの挙動だ。
 マスターカードの動作クロックを同じくCCCから見てみると,アイドル時はコア507MHz,メモリ2GHz相当(実クロック500MHz)。先のレビュー記事で紹介したとおり,シングルカード構成だと,順に157MHz,1.2GHz相当(実クロック300MHz)までアイドル時には下がるので,今回の構成だと,マスターカードにおけるATI PowerPlayの“効き”が悪くなっているというわけである。

 CCCの示す動作クロックを信用する限り,スレーブカードの消費電力は,少なからず下がっているが,それを,マスターカードの制御周りに生じた問題が帳消しにした結果,ULPSの意義を見いだせないスコアになってしまっている可能性が高い。
 このあたりは,HD 5770を正式にサポートするであろう,「ATI Catalyst 9.11」か,それ以降のドライバリリースを待つ必要がありそうだ。

 頭を切り換えて各アプリケーション実行時を見てみると,HD 5770 CFXの消費電力は,HD 5870と比べて30〜50W程度高く,2枚のグラフィックスカードを利用することによる,消費電力面でのデメリットは小さくないことが分かる。まあこれは逆にいうと,それだけHD 5870の消費電力が素晴らしく低い,ということでもあるのだが。

 なお,グラフ2に示したのは,3DMark06を30分間連続実行させた時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.3.5)から取得したGPU温度のデータだ。
 室温は20℃で,システムはPCケースに組み込まない,いわゆるバラック状態でテストしているが,やはりGPU温度でも,HD 5770 CFXはHD 5870と比べて不利といえる。CFX構成を行うに当たって,ケース内のエアフローなど,冷却面への配慮は必須だろう。



シングルカード比で170〜180%の性能を発揮

HD 5870を上回る場面も多く見られる


 消費電力とGPU温度では,2枚のグラフィックスカードを搭載することのデメリットが大きく出てしまったが,パフォーマンス面はどうか。
 グラフ3,4は,「3DMark06」(Build 1.1.0)の総合スコアを比較したものである。HD 5770 CFXは,解像度が高ければ高いほど,グラフィックス描画負荷が高ければ高いほど,HD 5770比でスコアが大きく伸びている。2560×1600ドットでの「高負荷設定」で,HD 5770に対して184%というのは,なかなかインパクトが大きい。
 また,すべてのテスト条件でHD 5870のスコアを上回り,シェーダプロセッサ800基当たり,容量1GBのグラフィックスメモリを確保できるHD 5770 CFXのアドバンテージも見て取れよう。


 極めて描画負荷の高いテスト条件になっている「Crysis Warhead」のテスト結果がグラフ5,6だ。シングルカード構成に対するHD 5770 CFXの“スコア伸び率”は50〜70%程度。Crysis Warheadは,マルチGPUの恩恵を比較的受けにくいタイトルで,それを勘案すればがんばっているスコアだが,HD 5870に届いていないのも確かだ。
 プレイアブル,という観点では,「標準設定」の1920×1200ドット,高負荷設定の1680×1050ドットが限界ラインとなる。


 続いて,グラフ7,8に示した「Left 4 Dead」だと,HD 5770 CFXとHD 5770の関係は,3DMark06に近い。しかし,HD 5870にはあと一歩というところに留まった。


 シェーダプロセッサ数(≒テクスチャユニット数)に応じたスコアが出やすい「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)では,HD 5770 CFXが多くの解像度で圧倒的なスコアを示している(グラフ9,10)。HD 5770シングルカードに対して,90%以上も高い平均フレームレートを叩き出しており,HD 5870と比べた場合も,スコアは6〜14%ほど上回った。
 まずシェーダプロセッサ数でHD 5870ともども残る3製品を引き離し,さらに,シェーダプロセッサ当たりのメモリ容量で,HD 5870に対しても優位に立ったと見てよさそうだ。


 海外版の公式ベンチマークソフトを用いることで,CFXでもスコアの向上を見込めるようにした「バイオハザード5」のテスト結果がグラフ11,12となる。本タイトルは,マルチGPUに最適化されていることもあって,HD 5770 CFXとHD 4870 X2のスコアが全般的に高い。
 HD 5770に対するスコアの向上率は65〜80%だった。


 グラフ16に示した「ラスト レムナント」では,HD 5770 CFXとHD 5870のスコアが並んでいる。最も分かりやすくCFXの効果が出ているといえるかもしれない。
 ちなみに,HD 5770比でのパフォーマンス向上率は77%程度で,これも十分高いレベル。


 パフォーマンス検証の最後は,「Race Driver: GRID」(以下,GRID)になる(グラフ14,15)。全体的な傾向はLeft 4 Deadに似ているが,高負荷設定でHD 5770 CFXがHD 5870といい勝負を演じている点は押さえておきたい。



最初から2枚買うくらいならHD 5870に行くべき

だが,アップグレードパスとしては面白い


SAPPHIRE HD 5770の製品ボックス
ATI Radeon HD 5700
 バイオハザード5のスコアが参考値である(※実際の日本語製品版だと,今のところ今回示したテスト結果を体感できるわけではない)点は注意してほしいが,HD 5770 CFXの効果は,対応アプリケーションにおいてたいへん良好だ。10月下旬時点の実勢価格が4万円台中後半になっており,流通量も決して多いとはいえないHD 5870と比べると,コストパフォーマンス,入手のしやすさとも,HD 5770 CFXのほうが上である。

 しかし,2枚差しであるがゆえの弊害もHD 5770 CFXには確かにあり,スマートさでは間違いなくHD 5870に軍配が上がる。それを踏まえると,最初からHD 5770 CFXに手を出すくらいなら,HD 5870を探して購入するほうが,正しい選択だろう。
 一方,ひとまずHD 5770を1枚で運用しておいて,今後,ディスプレイを買い換えたり買い足したりした結果,性能面に不満が出たら,もう1枚手に入れて,HD 5870相当のパフォーマンスを手に入れる――そういったロードマップを描ける人にとっては,アップグレードパスとして,悪くない選択肢といえる。

 その頃までに,ATI Catalystの諸問題が解決していることを期待したい。
  • 関連タイトル:

    ATI Radeon HD 5700

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