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「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ
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印刷2011/01/04 11:00

レビュー

ゲーム用途でのSandy Bridge徹底検証

Core i7-2600K/3.40GHz
Core i7-2600/3.40GHz
Core i5-2500K/3.30GHz

Text by 宮崎真一


 先行して掲載した基礎検証レポートでお伝えしているように,Intelは,同社の新世代CPUにして,開発コードネーム「Sandy Bridge」と呼ばれていた製品を,まもなく市場へ投入する見込みだ。

画像集#002のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ
 Sandy Bridgeにおけるトピックは2つ。1つは,Intelの「Tick Tock」(チックタック)戦略に基づいて登場した,第2世代の32nm High-kプロセス技術採用プロセッサであること。もう1つは,「Intel Microarchitecture(codename Sandy Bridge)」とされる新しいマイクロアーキテクチャを採用してきたことだ。
 とくにマイクロアーキテクチャの刷新は注目すべき点といえ,グラフィックス機能やノースブリッジ機能をCPUコアやキャッシュと一緒にシングルダイに統合するなど,従来製品からの大きな変更が見られる。

i7-2600Kの性能評価用エンジニアリングサンプル。ヒートスプレッダ上の刻印は製品版と異なる
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 基礎検証レポートでは,Sandy Bridgeが持つ「素性のよさ」が明らかになっているが,PCゲームにおいてもプロセッサ性能を期待できるのか。入手した「Core i7-2600K/3.40GHz」(以下,i7-2600K)と「Core i7-2600/3.40GHz」(以下,i7-2600K),そして「Core i5-2500K/3.30GHz」(以下,i5-2500K)の3製品を使い,まずは「CPU編」として,単体グラフィックスカードを利用する前提で,Sandy Bridgeの実力を検証してみたい。

左から順に,i7-2600とi5-2500Kの性能評価用エンジニアリングサンプル
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Sandy Bridge基礎検証レポート



エントリーからハイクラスまで幅広く

製品展開されるSandy Bridge


Sandy Bridge世代におけるCore i7・i5・i3プロセッサの位置づけ。一部例外もある
画像集#006のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ
 基礎検証レポートの序盤でもお伝えしているとおり,IntelはSandy Bridgeを,デスクトップPC向けとノートPC向けそれぞれで,文字どおり「上から下まで」一気に展開する。デスクトップ向けだけでも,「Core i3-2100/3.10GHz」からi7-2600Kまで,省スペースPC向けモデルなども含め14製品が,発表に合わせて投入される見込みだ。

 今回はデスクトップPC向けモデルに絞って話を進めるが,Intelが「第2世代Coreプロセッサ」と位置づけるSandy Bridge世代のCore iシリーズが置き換えるのは,Core i7-900番台を除くCore i7・i5・i3プロセッサ。各ブランドは,ざっくり,以下のような形で差別化されている。「Intel Hyper-Threading Technology」(以下,HTT)や,第2世代となった「Intel Turbo Boost Technology」だけではなく,より広範に,機能面で区別されるようになった印象だ。

  • Core i7:4コア8スレッド対応,L3キャッシュ容量8MB,グラフィックス機能の最大動作クロック1350MHz,
  • Core i5:4コア4スレッド対応,L3キャッシュ容量6MB,グラフィックス機能の最大動作クロック1100MHz
  • Core i3:2コア4スレッド対応,L3キャッシュ容量3MB,グラフィックス機能の最大動作クロック1100MHz

i7-2600Kを「Core i5-660/3.33GHz」(右)と並べた写真を,基礎検証レポートより再掲。切り欠きの位置が異なる
画像集#007のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ
 もちろん,実際にはこれ以外にも差別化ポイントは存在する。例えば,Extreme Editionが設定されないデスクトップPC向けSandy Bridgeでは,倍率ロックフリーモデルとして,Core i7-800&i5-600番台と同じく「K」シリーズが用意されるが,Kシリーズのみ,統合されるグラフィックス機能のブランド名が「Intel HD Graphics 3000」で,ほかは「Intel HD Graphics 2000」であるといった具合だ。
 ただ,LGA1155パッケージを採用する点や,デュアルチャネルDDR3-1333メモリコントローラを搭載する点,新命令「AVX」(Advanced Vector eXtensions)がサポートされる点,ベースクロックが従来製品の133MHzから100MHzへ変更された点,チップセット(≒サウスブリッジ)たる「PCH」(Platform Controller Hub)と片方向の帯域幅20Gbit/sのDMI 2.0でつながる点などは共通である。

CPUソケットの固定方法はLGA1156時代と変わらない。ストッパーを引き上げると金属製の固定具も開くので,プラスチック製のソケットカバーを外してCPUをセットし,あとは逆の手順で固定するだけだ。LGA775以降のマザーボードでCPU取り付けの経験があれば難しくないはず
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P67 PCH
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 PCHについても基礎検証レポートでお伝えしているが,4製品用意されるIntel 6シリーズのPCH中,4Gamer的に押さえておきたいのは,「Intel P67 Express」(以下,P67)と「Intel H67 Express」(以下,H67)の2つだ。
 P67は単体グラフィックスカードの利用を前提とする製品で,H67はSandy Bridgeの統合型グラフィックス機能を使うことも,単体グラフィックスカードを使うこともできる。拡張性という点からすると,よりPCゲーマー向けといえるのは,設計次第でマルチGPU構成にも対応可能で,「Intel P55 Express」の後継になるP67のほうだろう。

P67(左)とH67(右)のブロックダイアグラム。Intel 5シリーズの2倍,20Gbit/sの帯域幅でCPUと接続され,最大2ポートのSerial ATA 6Gbps(※Serial ATA自体は最大6ポート対応)を標準でサポートする。一方,USB 3.0コントローラの内蔵は見送られた
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「倍率ロックフリー」はTurbo Boostベース

オーバークロックでは空冷5GHz動作を実現!


 冒頭で紹介したとおり,今回4Gamerで入手したのは,i7-2600Kとi7-2600,そしてi5-2500Kだ。まずはこれらを用いて,「Intel Turbo Boost Technology 2.0」(以下,Turbo Boost 2)の挙動を確認しておきたい。

「CPU-Z」(Version 1.56)実行結果。左から順にi7-2600K,i7-2600,i5-2500Kだ
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 「基礎検証レポートでも深く掘り下げているのになぜまたやるのか」と疑問を持った人もいると思うが,それはマザーボードによってTurbo Boost 2の挙動に違いがあったからである。
 先に用いたMSI製のP67マザーボード「P67A-GD65」の場合,「OCCT」(Version 3.1.0)を用いたテストだと,i7-2600KのTurbo Boost 2は,1コア動作時に37倍,2〜3コア時は36倍,4コア時は35倍といった具合に倍率設定が切り替わっていた。

Intel製のP67マザーボード,DP67BG
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 しかし,Intel製のP67マザーボード「DP67BG」だと,BIOS(※正確にはUEFIだが,便宜的に以下BIOSと表記する)のデフォルト設定は,1コア動作時が38倍,2〜4コアは順に37倍,36倍,35倍設定。さらに,ASUSTeK ComputerのP67マザーボード「Maximus IV Extreme」だと,BIOSからTurbo Boost 2設定を「Auto」に設定した場合,DP67BGと同じ挙動を示した。なお,Maximus IV ExtremeにはTurbo Boost 2設定に「All Cores mode」というものも用意されており,こちらに設定すると掛かる負荷が1コア分であろうと4コア分であろうと,Turbo Boost2の上限倍率,i7-2600Kなら38倍(=3.80GHz)まで動作クロックが上がるようになった。

 もちろん,発売前のマザーボードを用いた検証なので,BIOSの練り込み具合によってその挙動が大きく変わる可能性も十分にある。ただ,Sandy Bridge世代では,マザーボード(のBIOS設定)によってTurbo Boost 2の挙動が異なることも考えられる。その根拠となりそうなのが「倍率ロックフリーのKシリーズを用いたオーバークロック周りの仕様」だ。

 「Core i7-875K/2.93GHz」(以下,i7-875K)や「Core i5-655K/3.20GHz」(以下,i7-655K)における「K」の意味は,一言でまとめるなら「倍率ロックフリー」なのだが,厳密に言うと,動作倍率そのものはロック解除されていない。市場には,動作倍率を手動で設定できるマザーボードも多いが,実のところ,それは動作倍率設定ではなく,Turbo Boostの上限倍率を変更し,しかもその倍率で固定することにより,動作倍率変更ができているように見せかけているのである。
 最終的な結果として得られるものは動作倍率変更とほとんど同じなのだが,あくまでも動作倍率は規定のまま,より上の動作倍率を実現するため,Turbo Boostの仕組みを利用したと考えるのが分かりやすいだろう。

 そしてその仕様,Sandy Bridge世代でも変わっていないようだ。
 というのも,DP67BGとMaximus IV Extreme&i7-2600Kとi7-2500Kでは,いずれの組み合わせでもCPUの動作倍率設定自体はi7-2600Kで34倍,i5-2500Kで33倍が上限だったからだ。そして,この仕様を示唆する文言が,Intelのスライド資料からも見て取れる。

「K」シリーズでは,Turbo Boost 2の倍率固定が解除されるとするスライド。「コアの倍率はターボ経由で引き上げられる」(Increase core ratios via Turbo)とも書かれている
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 Maximus IV Extremeに用意された「All Core mode」は,まさにこの「動作倍率変更機能の代わりに用意された特別Turbo Boostモード」と言えそうだ。いずれにせよ,「K」付きかそうでないかというのは,

  • 「K」付き:Turbo Boost 2の上限倍率ロックフリー
  • 「K」なし:Turbo Boost 2の上限倍率に制限あり

ということになるので,この点は押さえておいてほしい。

※お詫びと訂正
 初出時,倍率ロックフリーの説明が,誤解を招くものになっておりました。お詫びして訂正いたします。

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Maximus IV Extreme
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
予想実売価格:4万1000円前後(※2011年1月4日現在)
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XTS100H。以前Intelから登場した「DBX-B」と似て非なるデザインだ
 実際,Maximus IV Extremeで試してみると,BIOSからロックフリーになっていたのは,動作倍率ではなく,Turbo Boost 2倍率設定のほうだった。i7-2600だと,上限値は42倍なのに対し,i7-2600Kとi5-2500Kでは255倍で,その上限は事実上ないに等しい。
 マザーボードによってTurbo Boost 2周りの仕様が異なるのではないかと筆者が推測するのは,このあたりが理由だ。「K」なしのモデルでも,Turbo Boost 2の倍率引き上げが制限付きで可能になっている以上,そこのチューンにメーカー間の違いが出てくる可能性がある,というわけである。

 では,実際にどれくらい上の倍率を設定できるのだろうか。i7-2600Kとi5-2500Kの2つで,Turbo Boost 2ベースの倍率変更を試してみよう。
 マザーボードはMaximus IV Extremeを用いることにし,LGA1155にも対応するIntel製のサイドフロー型クーラー「XTS100H」を装着。その状態で,後述するテスト環境を構築してOCCTを6時間連続実行し,問題のない状態を「安定動作した」と判断することにした。

3本のヒートパイプを採用すると見られるXTS100H。LGA1156用にリリースされたものだが,LGA1155にも対応する
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基礎検証レポートでも用いた「TMonitor」(Version 1.03.1)から50倍設定時のTurbo Boostを追ったところ。Turbo Boostなので変動はするが,5GHzに到達していることは分かる
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 結論からいうと,i7-2600Kは50倍,つまり5GHzでの安定動作が可能だった。ただ,CPUコア電圧は1.45V,Maximus IV ExtremeのBIOSが「警告」の黄色文字を示すレベルまで引き上げる必要があったが,それでも5GHzという数字にはインパクトがある。

 一方のi5-2500Kは,46倍4.60GHzが上限。こちらもコア電圧は1.4Vにまで高めているが,これ以上電圧設定を引き上げても47倍以上では安定動作しなかった。なお,Turbo Boost 2の上限倍率設定にあたっては,BIOSから「All Cores mode」に設定しているので,実際に5GHz,4.60GHzで動作したと捉えて問題はないだろう。

 個体差の可能性は否定できないものの,i7-2600Kのほうがオーバークロック耐性が高いという結果が出ている点は興味深い。

i7-2600Kが5GHz,i5-2500Kが4.60GHzで動作している状態に対してCPU-Zを実行したところ
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※注意
CPUのオーバークロック動作は,CPUやマザーボードメーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,CPUやメモリモジュール,マザーボードなど構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer 編集部も一切の責任を負いません。


Maximus IV Extremeでテストを実施

CPUの性能差を見るべくGPU負荷が低いテストを選択


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USB 3.0×8という,圧巻のI/Oインタフェース部。左から2つめのボタンはCMOSクリア用で,右から4つめのボタンは,外部のノートPCやスマートフォンからマザーボードのオーバークロック設定を変更する「ROG Connect」機能用だ
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拡張スロット部
 話が前後するが,ここで,今回利用したマザーボードであるMaximus IV Extremeを紹介しておきたい。製品名からも想像がつくように,これはASUSのゲーマー&オーバークロッカー向けブランド「R.O.G.」(Republic of Gamers)の最新モデル。オーバークロッカー向けとなるExtremeシリーズの新作である。

 PCI Express x16スロットを4本用意し,「nForce 200」ブリッジチップを駆使することにより,

  • シングルグラフィックスカード接続時:x16,x8,x8,x0
  • デュアルグラフィックスカード接続時:x8,x8,x8,x16
  • トリプルグラフィックスカード接続時:x8,x16,x8,x16

という柔軟なレーン構成をとり,3-way SLIおよび3-way CorssFireXに対応する一方,PCIスロットは1本もないという,潔い仕様になっている。

8+1+1というフェーズ構成の電源部。CPUソケットの近くで存在感を発揮している「NEC/TOKIN 0E907」刻印のチップは,「プロードライザ」と呼ばれるNECトーキン製のデカップリングコンデンサだ。オーバークロック時の安定性を高めるために搭載されているという。右の写真で右下に見えるのは,ASUSのP67マザーボードでウリになっているデジタルVRM「DIGI+ VRM」
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主立ったオンボードデバイス群。Intel製の1000BASE-T LANコントローラ「82583V」と「82579V」に,ルネサス エレクトロニクスのUSB 3.0コントローラ「μPD720200」(D720200F1),Realtek Semiconductor製のHD Audio CODEC「ALC889,JMicron Technology製のPCIe−SATAブリッジ「JMB362」といったあたりが外部I/Oを提供する。Serial ATAは,6Gbps対応が4ポートで,うち2ポートはIOH,2ポートはMarvell製コントローラ「88E9182」による提供。PLX Technology製ブリッジチップ「PEX 8608」の用途は不明だが,上で示したとおり,マルチグラフィックスカード構成時にnForce 200の仕様を超えたレーン数になっているため,ここで使われている可能性が高い
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「nForce 200」ブリッジチップを搭載しており,2-wayだけでなく3-wayのSLI動作もをサポートする。チップ上の刻印は「NF200-SLI-A3」
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OC向けモデルらしい電圧テスター「ProbeIt」の端子や,液体窒素などを用いた極冷環境向けスイッチ「LN2 Mode」スイッチも用意
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マザーボード背面。強度確保用か放熱用か,メイン電源部の背面に金属板が取り付けられている。パッシブクーラーはネジ留め仕様

 序盤でも軽く触れたとおり,BIOSはUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)ベースのものへとガラッと様変わりしており,マウスでの操作が可能になったほか,ホイールによる画面スクロールに対応しているのも特徴だ。

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UEFIベースとなったMaximus IV ExtremeのBIOS画面。キーボードはもちろんのこと,マウスでも操作可能になっている。i7-2600Kおよびi5-2500Kを装着すると,動作倍率は固定だったが,Turbo Boost 2の上限倍率は255倍まで変更でき,上で紹介したオーバークロック設定はこの項目を利用して行っている。なお,i7-2600の場合は,倍率上限値が42倍になっていた
画像集#057のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ
i7-2600Kを50倍設定で動作させるため,CPUコア電圧を変更したところ。安定動作を実現できたのは1.450Vをかけたときで,ご覧のとおり設定項目が黄色で表示されており,すぐ上の「CPU Voltage 1.175V」という表示と比較しても,この設定がかなりリスキーであることが分かる。5GHzで動作はしたものの,常用するにはもう少しクロックを下げる必要がありそうだ

 さて,今回のテスト環境は表1のとおり。用いたCPUの主なスペックは別途表2にまとめているが,具体的にはLGA1366プラットフォームにおけるクアッドコア最上位の「Core i7-975 Extreme Edition/3.33GHz」(以下,i7-975)と,LGA1156プラットフォームのクアッドコア最上位モデルとなる「Core i7-870/2.93GHz」(以下,i7-870),そして競合のAMD製CPUから最上位モデルとなる6コアCPU「Phenom II X6 1100T Black Edition/3.3GHz」(以下,X6 1100T)を用意している。X6 1100Tは「AMD Turbo CORE Technology」を有効にし,メモリアクセスは「Ganged」設定とした。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション10.2準拠だが,グラフィックス描画負荷が高くなりすぎるとCPUの性能差が見えづらくなるため,今回は「標準設定」「低負荷設定」を用いることとし,解像度も1280×1024&1680×1050ドットの2種類としている。
 なお,上でオーバークロック動作に成功した5GHz動作のi7-2600Kと4.60GHz動作のi7-2500Kでもテストは実施し,以下文中,グラフ中とも「i7-2600K@5GHz」,「i7-2500K@4.60GHz」と表記して区別する。


i5-2500Kがi7-975を超える衝撃

Sandy Bridgeのゲーム性能はなかなか優秀


 基礎検証レポートで,その性能にはかなりの期待が持てそうであると判明しているSandy Bridgeだが,実際のゲームアプリケーションで,従来のCPUよりどの程度速いのか。まずはグラフ1,「3DMark06」(Build 1.2.0)の総合スコアから見てみよう。
 Sandy Bridge同士で比較してみると,倍率ロックフリーという点以外は同じスペックのi7-2600Kとi7-2600はほぼ同じスコアで並び,i5-2500Kはそこから4%程度低いスコアになっている。動作クロックの違いは100MHz,パーセンテージにして3%程度なので,L3キャッシュ容量にも順に8MB,6MBと違いがあり,さらにHTTサポートの有無という差があることも踏まえると,ほぼスペックどおりの違いが出ていると述べていい。

 注目したいのは従来製品との実力差で,i5-2500Kが,i7-975に対して10〜12%高いスコアを示している。また,オーバークロックの効果も小さくなく,i7-2600K@5GHzはi7-2600K比で24〜25%,i5-2500K@4.60GHzはi7-2500K比で18〜19%,それぞれスコアが伸びた。

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 続いてグラフ2は,グラフ1の結果から,1280×1024ドットにおける「CPU Score」を抜き出したものだ。全体の力関係は総合スコアを踏襲しており,i5-2500Kがi7-975を上回る点も変わっていない。

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 グラフ3,4は,DirectX 11世代のFPS「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)から,最も描画負荷の低い「Day」と,逆に最も高い「SunShafts」,両テストシークエンスのテスト結果をピックアップしたものだ。
 まずグラフ3,Dayのテスト結果は3DMark06のそれを踏襲しており,i7-2600K&i7-2600とi5-2500Kのスコアが安定して従来製品よりも高い。3DMark06ほど明確な違いが出ているわけではないものの,i5-2500Kのほうがi7-975より高いスコアを示している点は変わらずである。

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 ただし,極端にグラフィックス描画負荷が高くなるSunShaftsだと,オーバークロックの効果どころか,CPUごとの性能差もグラフからはほとんど読み取れなくなる(グラフ4)。ゲームアプリケーションの場合,一定以上の描画負荷がかかる局面では,CPUの性能差がフレームレートを左右することはまずなくなるが,それがこのグラフに出ているわけだ。

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 グラフ5に示した「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)だと,再びSandy Bridge優勢の傾向となった。i7-2600Kおよびi7-2600とi5-2500Kとのスコア差が11〜14%と結構大きい点や,i5-2500Kがi7-975にほぼ並ばれている点からは,HTT対応の有無やL3キャッシュ容量の違いがパフォーマンスに影響するケースがある印象だ。
 また,オーバークロックの恩恵も小さくなく,i7-2600K@5GHzがi7-2600Kに対して15%ほどスコアを伸ばしている点は注目しておきたい。

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 グラフ6の「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だと,スコアにさがないわけではないのだが,有意な違いにはならなかった。
 Call of Duty 4に限らず,マルチプレイFPS(のマルチプレイモード)はCPU負荷が低く,CPU性能がフレームレートを左右しにくいので,「マルチプレイFPSではこんな感じの結果になりやすい」くらいに理解しておくのが妥当だろう。

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 グラフ7に示した「Just Cause 2」のテスト結果は,全体としてBFBC2と似た傾向。i5-2500Kはi7-975に対して安定的に高いスコアを示している。

※お詫びと訂正初出時,Phenom II X6 1100Tのスコアが極端に低く出ていました。お詫びして訂正いたします。訂正後のスコアは,取り直したものです
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 CPU性能がスコアに影響しやすい「バイオハザード5」でも,その傾向は変わらない(グラフ8)。オーバークロックの効果も,i7-2600K@5GHzで定格動作時比17〜18%増しと,しっかり出ている。

画像集#051のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ

 一方,グラフ9に示した「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)では,これまでと若干異なる傾向が出た。DiRT 2では,i7-2600K&i7-2600とi5-2500Kのスコア差が14〜19%と大きく,さらにi5-2500Kがi7-975に逆転を許しているのだ。
 DiRT 2において,HTTがスコアを大きく左右するケースは確認されていないので,これはL3キャッシュ容量の違いが影響したと考えられる。

画像集#052のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ

 なお,ここまでとくに触れてこなかったが,X6 1100Tのスコアは,X6 1100Tのレビュー時と比べて若干低いが,これは,レビュー記事と比べて,マザーボードとOS,グラフィックスカード,グラフィックスドライバといったコンポーネントが大きく異なるためだろう。NVIDIAの64bitドライバが,Phenom IIシステムで十分なパフォーマンスを発揮できていない可能性などが考えられる。

※2011年1月11日追記
 初出時,とくに触れていなかったX6 1100Tのスコアに関する考察を加えました。


消費電力面では32nmプロセスの恩恵が大きい

性能向上を果たしながらも現状を維持


 気になる消費電力は,Sandy Bridgeでどう変わってきたか。いつものように,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」から,で,システム全体の消費電力を計測することにした。
 テストにあたっては,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,OCCTを30分間実行した時点を「高負荷時」としている。

 その結果はグラフ10のとおり。アイドル時はi7-975が突出しているものの,それ以外は100W程度とほとんど同じだ。そこで高負荷時に目を移すと,i5-2500Kの低さが目を引く。i7-2600K&i7-2600も,i5-2500Kと比べてしまうと20Wほど高いが,それでもi7-870と同レベル。上で示したように,3製品はi7-870を子供扱いしているわけで,それを考えると,消費電力あたりの性能は相当に上がっていると述べていいだろう。

 なお,i7-2600K@5GHzとi5-2500K@4.60GHzの消費電力は,ある意味妥当なレベル。景気よくTurbo Boost 2の倍率を上げられた両CPUだが,CPUコア電圧を相応に高めた代償は払わされている印象だ。もっとも,1.4Vをかけたi5-2500K@4.6GHzが,1世代前のプロセス技術を採用するi7-975より遙かに低いあたりからは,32nm High-kプロセスの“威力”も感じさせてくれている。

画像集#054のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ

LGA1155用リファレンスクーラー(左)とLGA1156用リファレンスクーラー(右)。詳細は基礎検証レポートを参照してほしいが,基本的には同じ設計と述べていい
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 グラフ11は,グラフ10の各時点におけるCPU温度を,モニタリングツールの「HWMonitor Pro」(Version 1.10)から取得したものだ。システムは,室温20℃の環境で,PCケースに組み込まない状態においてテストしている。搭載するクーラーは,i7-2600K@5GHzとi7-2500K@4.60GHzのみ,前出のXTS100Hへ換装済み。残る製品は,それぞれリファレンスクーラーを用いている。

 アイドル時はi7-975とX6-1100Tが高めで,残りは30℃弱で横一線。高負荷時のi7-2600K&i7-2600,i5-2500Kは,「i7-975よりは低いものの,i7-870よりは高い」ということになった。動作クロックと,i7-870からの性能向上率を考えると致し方ないところだが,i7-2600K&i7-2600を使う前提で冷却能力を重視する場合は,サードパーティ製CPUクーラーの導入も検討したほうが幸せになれるかもしれない。

 i7-2600K@5GHzとi5-2500K@4.60GHzはCPUクーラーを大型のクーラーに変更しているため,ほかのテスト結果と比較はできないが,それでもi7-2600K@5GHzが86℃を示しているのは気になるところ。かなり無謀な設定で動かしているわけだ。

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第1世代Core iプロセッサを葬り去るSandy Bridge

i7-975を超える性能が2万円程度から手に入る


お買い得感の高いSandy Bridge。「K」シリーズのプレミアム(=価格の上乗せ)が10〜20ドル程度なので,より性能を重視する人の間では,これまで以上に「K」付きが人気を集めそうだ
画像集#042のサムネイル/「Sandy Bridge」レビュー。従来製品をまとめて葬り去る新製品は「買い」だ
 今回のテストを通じて最も衝撃的なのは,i5-2500Kがほとんどの場面でi7-975のスコアを上回っているところである。デスクトップPC向け通常モデルの主なスペックは本稿の最後にまとめたが,i5-2500KのPCメーカー向け1000個ロット時単価は216ドルなので,仮にこの価格を踏まえた店頭価格が設定されると,昨日までの4コア最上位CPUより高い性能が,わずか2万円程度で手に入ってしまうことになるわけだ。

 さらに,発表時点のシリーズ最上位モデルになると見込まれるi7-2600Kでも同316ドルなのだから,買い得感はかなり高い。マザーボードも買い換えねばならないため,そこでコストパフォーマンスが削られるのは残念だが,少なくとも,Sandy Bridgeの登場によって,LGA1366,そしてLGA1156プラットフォームのCPUを選択する理由がどこにもなくなったことだけは断言できる。

 統合されたグラフィックス機能に関しては稿をあらためたいと思うが,単体グラフィックスカードと組み合わせたいと考えている大多数のPCゲーマーにとって,状況は「Sandy Bridge一択」である。


●デスクトップPC向けSandy Bridgeの主なスペック(※省スペースPC向けを除く)
  • i7-2600K:95W,4C8T,3.40-3.80GHz,8MB L3,2ch DDR3-1333,317ドル
  • i7-2600:95W,4C8T,3.40-3.80GHz,8MB L3,2ch DDR3-1333,294ドル
  • i5-2500K:95W,4C4T,3.30-3.70GHz,6MB L3,2ch DDR3-1333,216ドル
  • i5-2500:95W,4C4T,3.30-3.70GHz,6MB L3,2ch DDR3-1333,205ドル
  • i5-2400:95W,4C4T,3.10-3.40GHz,6MB L3,2ch DDR3-1333,184ドル
  • i5-2300:95W,4C4T,2.80-3.10GHz,6MB L3,2ch DDR3-1333,177ドル
  • i3-2120:65W,2C4T,3.30GHz,3MB L3,2ch DDR3-1333,138ドル
  • i3-2100:65W,2C4T,3.10GHz,3MB L3,2ch DDR3-1333,117ドル

※スペックは順にTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力),コア数&スレッド数,動作クロック(Turbo Boost 2対応製品はその幅),L3キャッシュ容量,メモリコントローラ,1000個ロット時単価

  • 関連タイトル:

    Core i7・i5・i3-2000番台(Sandy Bridge)

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