イベント
SteelSeriesのファンイベントレポート。EVO2015ウルIV部門覇者のももち選手が凱旋し,次世代マウスの情報もちらり
プレゼンで知る,SteelSreiesのこれまでとこれから
「SteelSeries Past and Future」と題されたコーナーでは,SteelSeriesのこれまでの歩みと,日本における直近の展開が紹介された。
その冒頭では,創業者のJacob Wolff-Petersen氏が2001年にデンマークで設立した企業であることや,現在,コペンハーゲンにある本社のほか,シカゴおよび台北にオフィスを構えていることがあらためて語られている(関連記事)。
今ほど競技ゲームが盛んでなかった当時,そんなものが売れるのかどうか分からなかったため,会社としては投資を見合わせた。しかし,「Half-Life: Counter-Strike」(以下,CS)のプレイヤーだったWolff-Petersen氏だけは,その将来性や可能性を見い出した。そして,そのガラス製マウスパッド「Icemat」を販売する会社を立ち上げたのだ。そう,これがSteelSeriesの前身となるSoft Tradingである。
なお,Soft Tradingという社名は,Wolff-Petersen氏のCSプレイヤーネーム「SoftWolf」から取ったとのことで,ソフトウェアの売買を意味するものではないとのことだった。
さて,Icematの販売を始めたところ,程なくして市場にライバル製品となるスチール製マウスパッド「Steelpad」が出てきた。これを知ったWolff-Petersen氏は,無闇に敵対するのではなく,Steelpadを買収し,Soft Tradingにて二つの異なるブランドとして販売していくことを決めたのだった。
Wolff-Petersen氏は,設立時からSoft Tradingをゲーマー向けデバイスを扱う企業にしようと考えていたとのことで,以後はヘッドフォンの「Icemat Audio Siberia」および「SteelSound 5H」,キーボード「SteelKeys 6G」などを続々と展開していった。この古くからのSteelSeriesファンであれば,懐かしい製品名ではなかろうか。
そして2007年,IcematとSteelpadの2ブランドを「SteelSeries」ブランドへ一本化し,同時に社名もSteelSeriesへ変更した。このとき採用されたロゴは,FPSの照準をモチーフとしており,「正確性」「貢献」「冷静」といった意味が込めてあるという。
日本語の「怒り」からその名が取られたマウスがリリースされたことにより,現在まで続くSteelSeriesの製品ラインナップが一通り揃ったわけである。
注目は,マウスの新製品となる「SteelSeries Rival 100」だろう。本製品は「SteelSeries Kinzu」「SteelSeries Kana」の後継にあたるスペックおよび価格帯になる予定とのことだ。詳細は「今後の発表を待ってほしい」とのことだが,久しぶりに低価格向けラインナップが刷新されそうで,これは期待したい。
プロゲーマー4名が語る「プロとしての心構え」「日本と海外の競技ゲームシーン」
ももち選手は,先日北米にて開催された格闘ゲームイベント「Evolution 2015」(以下,EVO2015)の「ウルトラストリートファイターIV」(PC / PS4 / PS3 / Xbox 360 / Arcade,以下 ウルIV)で優勝しての凱旋登壇となるが,大会ではSteelSeriesのヘッドセットを使ったとのことで,「密閉性が高く,周囲の大きな歓声の中,しっかりとゲームの音が聞こえました」とコメントしていた。
ちなみにももち選手は,2014年末の世界大会にて優勝した経験が大きな自信につながり,EVO2015の各試合にもいい影響があったと振り返っている。
EVO2015の決勝戦で戦ったGamerBee選手はトップ8の常連で,しかも自身とは相性が悪いタイプ。できれば戦いたくないと思っていたという。それでも「Infiltration選手とGamerBee選手のどちらかと決勝戦を戦うことになると分かったときは,来るなら来いと気持ちを切り替えました」とのことだ。
既報のとおり,決勝戦は,ももち選手が1ラウンド取得してリードしたものの,その次のラウンドで機材トラブルが発生し,結果として1-1のイーブンになってしまうという展開を見せた。ももち選手は,勝負の決まる最終ラウンドでは相当焦っていたとのことで,「ここは決めるぞ」と意気込んだあと,気づいたら勝っていたという。優勝した実感が湧いてきたのは,日本に帰国して一息ついてからだったそうである。
一方,チョコ選手は今回のようなファンイベントを開催してほしいとのことで,いわく「ファンの皆さんと直接触れ合う機会が増えると嬉しいです」。
ちなみに今後,欲しいSteelSeries製品は,両選手とも格闘ゲームのプレイに使用するアーケードスティックとのこと。これは当然といったところか。
イベントではここで,かつてCSのプロゲーマーとして活躍したNoppo氏と,現在プロゲームチーム「DeToNator」で「Counter-Strike: Global Offensive」(PC / PS3 / Xbox 360 / Mac,以下 CSGO)部門に所属するakioni選手がトークに加わった。
4人になって最初のテーマは,「各自がプロゲーマーとなったきっかけ」。ももち選手は「もともとゲームが好きで,その延長線」としつつも,実は格闘ゲームでプロゲーマーとしてやっていくことに疑問を抱いていた時期もあったという。しかしウメハラ選手が格闘ゲームのプロとして道を開いたことから,自身もプロを意識するようになったとのことだ。
一方,チョコ選手はもともとプロは目指しておらず,ももち選手のサポートに徹していたところ,Evil Geniusesから「二人でプロにならないか」というオファーを受け,非常に驚いたとのことだった。
そして,そのチームの解散を経て単身スウェーデンに渡り,引き続きプロとしてのキャリアを築いていったわけだが,そのときには「プロゲーマーとしてやっていくという強い意志があった」(Noppo氏)。
当時からオンラインFPSはプレイしていたが,CSGOは知人であるスウェーデン人の推薦によってプレイし始めたとのことである。
「プロゲーマーとして心がけていること」について,ももち選手は「周囲の人達がいるから,自分がプロとして成立しているという意識」を挙げていた。プロになる前は,勝てばいいという意識だけでプレイしていたというももち選手だが,プロになってからは観戦した人に「このゲーム,面白そう」と思ってもらえる試合運びを考えているとのことだ。
チョコ選手は,ゲームの面白さや可能性を世間一般に理解してもらうことを意識し,自身の言動に配慮しているという。Noppo氏も,プロ時代は「自分自身が広告塔であること」を常に念頭に置いて行動するよう心がけていたと話していた。
やはり,ゲーマー代表としてのふるまいを意識することを挙げていたakioni選手は,それに付け加える形で「自分が楽しいと感じるゲームを,皆に知ってほしい」とも述べていた。初めてFPSをプレイしたとき,マウスを使った視点変更に衝撃を受けたとのことで,そうした感動を広く伝えていきたいとのことだ。
プロゲーマーになると,自身の写真や動画が多数の情報サイトなどに掲載されるが,それについてNoppo氏とakioni選手は,「プロとして当然のこと」とコメント。チョコ選手は,「男性プレイヤーが多い中,女性ということで容姿などを指摘されることもあります。最初は少し気になりましたが,最近では注目されている証と受け取るようにしています」と話している。
そしてももち選手は,自身に目立ちたがりな面があるとし,「とくに大会で上位になるような人達は,注目されることでより力を発揮できるところがあるんじゃないでしょうか。ですから,『もっと見てくれ』とも思います」と語った。実際,エゴサーチをすることもあるそうだが,同名のアイドルばかりが表示されるので,「もっと頑張らないといけないというモチベーションにもなっています(笑)」(ももち選手)。
話題は,ゲームのアップデートがもたらす影響にもおよんだ。ももち選手は,格闘ゲームがアップデートによってバランス調整されるようになったため,その対応に苦労していると話していた。たとえば,ももち選手の場合,ウルIVだと主にケンを使ってプレイしており,それが選手としての個性にもつながっているが,バランス調整によって弱体化されたときのことを想定し,リスク分散のために複数のキャラを使えるよう準備しているという。
Noppo氏は,アップデートによって,それまで有効だった戦術や技術が使えなくなることは,FPSでもあると述べていた。ただ,「その変化に適応できなければ生き残れない」と付け加え,プロとしては柔軟な対応が必要であるとした。
akioni選手は,「今度はどんなことができるのか探ることを楽しむ」と話している。さらに,仮に極めて有効な戦術を考案したとしても多用せず,ここぞというときだけ使うようにしているとのことで,これは,その戦術が広まることを避けると同時に,バランス調整の対象にならないようにする対策としても機能しているという。
これを聞いたももち選手は,「格闘ゲームにおいても,露骨に強い技や,大会で優勝したキャラが,バランス調整で弱体化されてしまうことがある」と述べ,アップデート直前になると使用を控えるプレイヤーが見られると話していた。これは「プレイヤーと開発チームの駆け引き」だそうだ。
ももち選手も,海外の選手は勝つことに対して貪欲で,どんな手段を使っても勝つというハングリー精神が強いと述べ,ここが日本の選手に足りない部分であると指摘していた。
チョコ選手は,楽しみ方の違いを挙げる。たとえばEVO2015だと,1部門2000人以上が参加する一方,最終日まで残る選手はわずか8人だ。それにもかかわらず,参加者の大部分は最終日まで会場に足を運び,スポーツとして観戦を楽しんでいるのが日本とは異なるのではないか,というわけだ。
Noppo氏は,周囲の環境を挙げていた。海外では30歳を超えてから大学に進学したり就職したりする人も珍しくないため,プロとしての活動に専念できる一方,日本の社会は,そういったことが許される構造になっていないことを指摘していた。「それが結果として日本ではプロゲーマーの認知が遅れているのではないか」とのことである。
またNoppo氏は,練習時間の違いも挙げている。スウェーデンでは,ヨーロッパ全土のプレイヤーと24時間いつでも対戦できるため,1日12時間練習することも可能だが,日本では平日だと21:00から24:00までといった感じで3時間程度しか練習できない。これが結果にもつながっているという。
会場では,Noppo氏とakioni選手を講師とするCSGOセミナーも行われた。Noppo氏の「FPSはマインドスポーツである」という持論に基づき,相手チームの心理を読んで,味方チームを有利に導く戦術の基本などが解説されている | |
akioni選手によるリコイルコントロール実演の模様 |
プロゲーマーに必要な才能や資質,あるいは年齢的な限界については,まずももち選手が,プロとして続けていくことの困難を指摘していた。実際,「プレイしていてしんどくなる瞬間がある」そうで,それでも続けられることが才能や資質なのではないかとのことだった。
akioni選手は,ゲームが好きであることと,長時間同じゲームを続けられること,そして向上心および自己顕示欲を挙げた。Noppo氏も,そのゲームが好きで何があっても続けられることと,負けず嫌いであることを挙げている。自身も,負けたときには,「今度は絶対に勝つこと」をモチベーションとして練習に励んでいたそうだ。
一方チョコ選手は,少し違った観点から,「私のような人でもプロゲーマーになれます」とし,プレイの腕前よりも,毎日プレイしたり,大会を開催したりといったように,プロになりたいと思う情熱が大事なのではないかと話していた。
また年齢に関しては,akioni選手が,ヨーロッパでは30歳近いFPSプレイヤーが経験を活かして戦っている例を挙げ,むしろ反射神経だけでは勝てなくなっていることを指摘。ももち選手も格闘ゲームにおけるトッププレイヤーの年齢が上がっているとし,「年齢に限界はないのかな,と感じます」と話していた。
トーク最後のテーマは,「デバイスの違いがプレイに与える影響」だ。ももち選手はアーケードスティックの重要性を挙げ,自分にフィットするものが欲しいと話す。今後は,ボタンの配置などをプレイヤー各自に合わせてカスタマイズできるようになるといいのではないか,とのことだ。
チョコ選手は,アーケードスティックやコントローラは一緒に戦う武器であり,ある意味仲間とも言えると表現。自身も,人と接するようにデバイスを扱っていると話していた。
Noppo氏はさらに一歩踏み込んで「デバイスがすべて」と断言。きちんとそろえないと,どんなに技術があっても勝てないと言い切っていた。とくにFPSではとくに音が大事であるとし,ヘッドセットの重要性を説いている。
akioni選手は,「デバイスは,ゲームの世界とリアルとをつなぐ道具」と表現。ゲームに没頭するには,いかに思いどおりに動かせるかが重要であり,自分に合ったデバイスを正しく選択することが重要だとしていた。
イベントのエンディングでは,SteelSeriesの大野氏が,今後も品質が高く,よりゲームを楽しむことができ,かつ格好いい製品をリリースしていくので,今後もSteelSeriesに期待してほしいと呼びかけて,イベントを締めくくった。
SteelSeries日本語公式Webサイト
- 関連タイトル:
SteelSeries
- この記事のURL:
キーワード
Copyright 2010 SteelSeries Aps