日本ファルコムの代表作「イース」は,第1作の発売が1987年という,国内ではとくに長い歴史を誇るRPGシリーズである。1980年代といえば,多くのPCゲームが互いに「難しさ」を競い合っていたものだが(今の読者が聞いたら驚くだろうか),そんな中でイースは「誰でも楽しめる」ことを前面に押し出し,大ヒットを記録。以来,日本におけるアクションRPGのスタンダードとして,20年もの間ファンの心をつかみ続けているのだ。
2006年末に発売されたアクションRPG「イース・オリジン」は,そんなイースシリーズの最新作である。今回は「Origin」と題されていることからも分かるように,古代イース王国の「起源」に迫る内容となっている。第1作から700年前,イースに築かれた塔を舞台に,戦いを繰り広げていくのだ。本連載ではこれから数回にわたって,「イース・オリジン」の魅力を,ゲーム展開をなぞる形でお伝えしていこう。
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長い歴史を持つイースシリーズの中で,本作がどういった位置づけにあるのかを確認するため,まずはストーリーを紹介しておこう。
はるか昔,「イース」と呼ばれる理想郷が存在した。イースは双子の女神と六神官,そして至宝「黒真珠」に導かれ,長く栄華を誇っていた。しかし,魔物の群れが侵攻してきている最中に,イースの象徴であった双子の女神が突然,姿を消してしまったのだ。そこで六神官達は,選りすぐりの精鋭からなる「女神捜索隊」を結成。女神捜索隊は調査の末,女神達は最後にとある「塔」へ向かった,との情報を得た……。
プレイヤーが扮する主人公は,女神捜索隊の一員として,魔物がはびこる「塔」の上層階を目指し,女神「フィーナ」と「レア」を救い出すのが主な目的となる。しかし今回の時代設定は,イース定番の主人公である“赤毛の剣士”アドル・クリスティンの時代より700年近くも前である。そのため主人公はアドルではなく,新たに用意された二人の中から選ぶことになる。それぞれのプレイスタイルが大きく異なっているので,まずは主人公の二人をチェックしていこう。
神殿騎士を目指す天真爛漫な少女。六神官であるトバ家に生まれたものの,どういうわけか魔法の類は一切使えない。しかし持ち前の前向きな性格を生かし,斧を手に,半ば強引に女神捜索隊の一員となる。
ユニカは近接攻撃タイプの主人公である。攻撃時は敵に接近しなければならないものの,たたみ掛けるような連続攻撃を得意とし,敵に反撃の機会を与えずに戦える。単純に攻撃ボタンをバシバシ連打するだけでもそこそこの強さを発揮するため,次に紹介するユーゴと比べると,初心者でも扱いやすいキャラクターだ。
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接近戦タイプのユニカは,アクションゲームが苦手な人にもオススメだ。特殊攻撃の中では,多段ヒット+スタンが付随する「下突き」が扱いやすい。積極的に狙ってみよう |
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魔道のエリートとして知られる「ファクト家」の,若き継承者。天才ではあるが傲慢な一面もあり,女神捜索隊のほかのメンバーと衝突することも多い。複雑な家庭環境に育ち,それを乗り越えるため,さらなる力を渇望する。
ユーゴは間接攻撃タイプの主人公だ。強力な魔道具「ファクトの眼」を自在に操り,それによって遠距離から広い範囲に通常攻撃を行えるのが強みである。シューティングゲーム感覚で敵と距離をおいて戦えるが,懐に入られると厳しい展開となりがち。またコントローラでの操作時は,狙いを定めるときに斜めを向いて止まるのに少々慣れを要する。どちらかというと中級者以上向けのキャラクターだ。
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「ファクトの眼」はユーゴの斜め後ろを常に浮遊している。攻撃のときにはここからも弾が発射されるため,当たり判定がとても広い |
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両主人公におけるゲーム展開についてだが,実はストーリー面はほぼ同一である。厳密にはNPCとの会話メッセージや,一部ボスの登場パターンが異なっているが,初プレイではあまり意識せずともよい。なので,近距離戦と遠距離戦のどちらのスタイルが自分に合っているか,という部分で主人公を選んでしまって構わないだろう。ゲームの難度も「Easy」「Normal」「Hard」の中から選べるので,アクションがてんで苦手だという人でも,さほど心配する必要はない。
それでは,実際にゲームを始めてみよう。基本的な操作としては,上下左右移動のほか,攻撃,ジャンプ,スキル使用,そしてブースト発動を行える。ベースは2DアクションRPGではあるが,昔のイースのように「半キャラずらし」で戦うのではなく,実に豊富なアクションを繰り出して戦う,激しいゲームとなっているのだ。
ゲームの舞台となる「塔」は,4フロアごとに景観面が大きく変わり,「〜の領域」というステージ名がつけられている。とりあえず連載第1回となる今回は,2〜5階の「蒼哭の領域」編の内容を紹介していこう。
ただし実際のところ,この段階では歯応えのあるようなトリックはほとんど出てこず,半分チュートリアルといっても差し支えない内容だ。というわけで,しばらくはユニカ/ユーゴ編を並行して進めつつ,ゲームの転換期となる箇所をピンポイントで紹介していく。今回注目したいのは,ゲーム開始後間もない段階で得られる「蒼空の翼」というアイテム。これを入手すると「風」にちなんだスキルを習得し,攻守共に大きく役立たせられるのだ。
本作ではスキルの使用時にMPが必要だが,このMPは常にハイスピードで回復しているので,出し惜しみする必要などまったくない。通常攻撃の合間に,積極的に織り交ぜていけるようになっているのだ。ユニカとユーゴとでは風スキルを使ったときの効果が違っている。詳しくは写真を見ていただきたい。
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ユニカは風属性のスキルによって,回転斬りのような技を使える。密着時に使用すると,とくに強烈なダメージを与えられるのだ |
ユーゴが風属性のスキルを使うと,ダメージを吸収する結界を張れる。遠距離攻撃主体のユーゴは防御面が心もとないので,これで補おう |
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そして両者に共通する点として,風スキルを発動した瞬間は,短時間ではあるが落下速度が緩やかになる。例えばジャンプ時にうまくタイミングを合わせて使うと,滑空距離を伸ばせるのだ。このテクニックを活用しないと先に進めないような地形も次第に登場してくるので,マップの形状にも注意しながら進めよう。
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風属性スキルは攻撃以外の用途にも役立つ。ジャンプ+風属性スキルの発動で,平常時よりも長い距離を跳ぶことも可能となる |
ステージの合間には多種多様な仕掛けが待ち受けている。これらの仕掛けに対応したアイテムには,「装備」が必要なものもある |
宝箱から冒険時に役立つマジックアイテムを入手できる。写真の宝石は,対応する属性のスキル効果をアップできるというもの |
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トランポリンのような装置で,はるかに高いフロアへ飛び移るところ。基本的にこのステージでは,さほど難しい謎解きは登場しない |
「イースII」などに登場した,聖獣「ルー」が登場。見てのとおり何をしゃべっているのか分からないが,どうやらお腹を空かせているようだ |
「イースI」にも登場した「マスク・オブ・アイズ」を装着。視界が灰色になりモンスターの類が一切見えなくなるが,隠された仕掛けを発見できる |
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塔に侵入したのは女神捜索隊だけではなかった。「闇」なる勢力のメンバーも女神を探しているようだが,その目的とは一体なんだろうか |
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各ステージの要所では,塔を守るボスモンスターや,女神を狙う「闇」と呼ばれる勢力の幹部が,主人公の行く手を阻んでいる。そして今回のイースで大きな見どころの一つは,このボス戦におけるアクション面である。本作は3D処理をミックスしていることから,例えば「ボスの体に飛び移り急所を攻撃」といったような,三次元的なアクションも必要になってくる。
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登場するボスモンスターの多くは,シリーズ1,2作でも戦った相手だ。「こんなボスいたよね」と,懐かしみながらプレイできるかも |
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旧シリーズをプレイしたことのある読者は,このボスの名前を見てピンと来たのではないだろうか。本作はダームの塔を舞台としていることから,多くのボスがかつて第1作,第2作に登場しているものなのだ。もっとも,ボスのコンセプトは同じでも,ゲームシステムの向上に伴い戦闘シーンがはるかにパワーアップしているのは,言うまでもないだろう。
ユニカ編で最初に戦うヴァジュリオンは,コウモリの怪物である。主な攻撃パターンは,「無数のコウモリに分裂して主人公に突撃」→「合体して扇状の炎のブレスを吹き出す」といったところだ。戦闘時のコツとしては,コウモリ状態のときは無敵なので,逃げながらMPを溜めることに専念。そして合体した瞬間にブレスを飛び越え,連続斬りやスキルで一気に畳み掛けよう。
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ヴァジュリオンが合体した瞬間に攻撃を叩き込みたいが,逆に反撃されることも。ジャンプ+風属性のスキルを使いつつ,ヴァジュリオンの体をぐるりと回るようにすれば避けられる |
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実は同じ局面でも,ユニカ編とユーゴ編では戦うボスが一部異なっている。ユニカ編で対ヴァジュリオン戦を繰り広げる場面で,ユーゴ編では「闇」の勢力の女戦士エポナと戦うことになるのだ。
エポナの使用武器は槍で,これによる素早い突き技やチャージなどを得意とする。ユーゴは移動速度がやや遅めなので,これらを普通に走って避けるには少々分が悪い。そこでエポナのチャージに対し,ジャンプによる飛び越えを狙ってみよう。エポナのチャージ後は無防備な硬直時間があるので,このときにある程度のダメージを与えられるはずだ。
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エポナがチャージする直前にはアラーム音が鳴る。これを目安にジャンプして攻撃を避け,振り向きざまにすぐさま反撃すれば,それほど苦戦する相手ではないだろう |
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「蒼哭の領域」編の最後に待ち受けるボス。その巨大な腕を振り回しながら毒の泡,炎のレーザー,吸い込み→噛み付きなど,多彩な攻撃を繰り出してくる。基本的な攻略法は,下部にある顔(?)をしばらく攻撃すると気絶するので,その瞬間にボスの腕から駆け上がり,頂上の緑色のコアを叩く。これの繰り返しだ。
この「ベラガンダー」戦については,「こちら」でムービーを含め詳しくまとめられている。「蒼哭の領域」編のクライマックスともいえる名シーンなので,ぜひ一度ご覧いただきたい。次回以降は連載上で,この迫力の大ボス戦のムービーを掲載していく予定だ。
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ベラガンダーは攻撃パターンが実に多く,最初の数戦はコテンパンにやられるかもしれない。それだけに,プレイを重ね攻撃を見切れるようになったときの嬉しさは格別だ |
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無事にベラガンダーを倒すと,塔の6階より上へ行けるようになり,「蒼哭の領域」編は終了となる。その頃にはおそらく,基本的な操作テクニックは一通り身についていることだろう。次回は6Fから始まる,「水獄の領域」編の模様をお伝えしていこう。