連載 : アリスとステファンのペットストーリー物語


アリスとステファンのペットストーリー物語

第1回:大見出し

 

それぞれのペット,それぞれの物語

 いわゆる“ペットを飼う”とは,犬や猫やハムスターや小鳥などの動物とともに暮らし,愛玩してあげることであり,「女王様のペットになりたい!」とかそういうのとは別のジャンルに属しているので気をつけてほしい。もっとも,世の中にはワニやヘビやサソリなどをペットにしている人などもいるし,一口に愛玩動物といっても愛の対象は人それぞれである。そんなペットの人生というか,ペット生をまあまあ大胆に描ききったエレクロトニック・アーツの新作が「ザ・シムズ ペットストーリー」なのである。
 7月12日に発売された本作は,世界中で大人気の人生シミュレーション「ザ・シムズ2」シリーズの新たなフランチャイズだ。ザ・シムズ2のゲームシステム(およびグラフィックス)を使用しつつ,そこに物語を盛り込み新たなゲーム性をなんとかかんとか……というような話は前作「ザ・シムズ ライフストーリー」のレビューなどに書いたので,そちらを参照してもらえると私もあんまりキーボードを叩かなくて済むのでよろしくです。

 シムズ・ストーリーシリーズ第2弾となるペットストーリーは,ペットの話と見せかけて実は剣と魔法の世界を舞台に光の勢力と闇の勢力が南洋の孤島で雌雄を決するとかそんなことは全然なく,やはりアメリカ風郊外住宅を舞台にしたほのぼのストーリーが展開する。前作同様,二人の主人公が登場し,それぞれがペットにまつわるドタバタに巻き込まれつつ,次々に持ち上がる問題を解決しながらペットとの絆を深め,やがて自らの存在意義や家族の愛に目覚めていくというストーリーを面白おかしく楽しめるのである。

 

 

 

 

登場するのはこんな人々(&ペット)

ベスト・イン・ショー

「アリス・ウィットは祖父母の家を相続しました。彼女は最近正式に土地の所有権を申請するためにガーデンハイツに戻ってきましたが,経済的な問題でピンチに陥っています。貧乏なアーティストである彼女は毎月税金を払うこともできないような状態が続いていましたが,彼女自身と愛犬のサムのため,きちんとしようと心に誓いました。彼女は借金返済のためのお金を用意できなければ強制的に退去させられてしまうかもしれません。彼女の友達のアマヤとトーマスは手助けしてくれますが,最終的にはアリスががんばるしかありません」

 

アリス・ウィットと愛犬サム

 

ミッドナイト・マスカレード

 「ステファン・ロイヤルは洗練されたシムシティのシェフで,メッサ・フラッツの郊外で平穏な暮らしを送っていました。最近はいとこの結婚式の準備と毎年恒例のミッドナイト・マスカレード用の料理を作ることになり,急に忙しくなってきています。彼はまもなく訪れる人生の転機にまだ気づいていません……」

 

ステファン・ロイヤル

 

 ……これが登場する二人のプロフィールだ。このようにゲーム内の文章を書き写すのは私にとっては大変楽で,一生このまま書き写して暮らしていてもいいくらいなのだが,それでは世間が納得してくれないだろうし会社をクビになるかもしれないので,さっそくゲームを始めるとしよう。今回は,アリスの物語の前半である。

 

 

 

アリス,ガーデンハイツへ帰還する

 アリスのストーリーは,彼女が愛犬サムと共にガーデンハイツに帰ってきたところから始まる。祖父母の家を相続した彼女だが,12万シムオリオンという大きな借金があり,それを返済できないと家を取り上げられてしまうのだ。この借金,祖父母のものなのか彼女のものなのか,あるいはなんでそんな大金を借金したのかなどはよく分からない。実は彼女,だまされて悪い男に貢いでいました,なんていう理由だと週刊誌っぽくて面白いが,たぶん違うだろう。
 それはともかく,借金相手はダイアナ・デブールというイヤな女。アリスに返済能力がないと判断するや,さっそく彼女の家の不動産譲渡証明書を購入し,差し押さえにかかろうとするのだ。言うまでもなく,デブールはアリスの物語における悪役である。見かけからして悪役っぽく,あまり友達にはなりたくないタイプだが,どうしてもというなら,まあ筆者も贅沢を言える立場ではないので友達ぐらいだったら,って,なんの話をしているんだろう,オレ?
 腹が立ったら拳で勝負だ,とデブールと派手な立ち回りを演じて追い返したはいいが,売れない画家であるアリスに12万シムオリオンなんて大金を返すあてはない。おほほ,じゃないや,とほほ。

 

見るからに悪役らしい悪役のダイアナ・デブール。居住権をかけた女の戦いは今ここに始まったのである。最終的に戦うのは犬だが

 

 

 

アリス,ドッグショー出場を決意する

 新聞でふと見つけたドッグショーの賞金がちょうど12万シムオリオンであることを知ったアリスは,サムを鍛えてドッグショーを目指すことにした。
 都合よくドッグショーとは,なんとなく出来すぎた話のような気がするが,いいのだ。これが借金をめぐる法廷闘争劇になったり,現代アメリカの抱える貧困問題を赤裸々に描いちゃったり,銀行強盗モノのクライムアクションになったりするわけないからだ。だってこれシムズだし。

 

ドッグショーとは別に,サムには,「ちんちん」「おいで」「ころん」など,いろいろな芸を仕込める。これは,「死んだふり」を教えているところ 12万シムオリオンが必要なアリスは,新聞でドッグショーの賞金が12万シムオリオンであることを知る。こりゃ出ないわけにはいかないだろう。サムもその気だし

 

 とはいえ,問題はサムであろう。彼は「ラッシー」や「ロンドン」や「ハチ公」のように目から鼻に抜ける名犬というわけではないというか,むしろその反対ではないかと思えるワン公。家具は台なしにするわ,庭に穴は掘るわ,ベランダにおしっこはするわで,とてもドッグショーで優勝するような犬ではななさそうだ。うーむ……。だが,シム人のいいところはけして挫けないことだ。たぶん,挫けるのはいろんなことを考えている人であり,たいして物事を考えないシム人にとって挫折はあり得ないのである。
 というわけで,ゴー! ゴー! サム! おまえの実力を全世界に見せてやるのだ!

 

庭に穴を掘ったり,自分のおしっこでできた水たまりで遊んだりと,駄犬ぶりを遺憾なく発揮するこんなサムに,ドッグショーの大舞台が務まるのだろうか?

 

悪さをしたら,叱ってやらなくてはならない。さすがにガックリするが,すぐに忘れて同じことをするのが犬である。いや,近所に似たような人がいると言われましても……

 さて,ドッグショーというと,血統書を首からぶら下げたような犬ばかりが集まり,耳の形がイカスの,シッポがカッコいいのとお互いに誉めあう集まりを想像しがちだが,ゲームに出てくるドッグショーは彼らのアスリートぶりを競うもの。具体的には,競技場に設置された「Aフレーム」「シーソー」「ハイジャンプ」の各エクイップメントをいかにすばやくこなしたかのタイム勝負になる。決勝戦ではさらに,「トンネル」と「シュートトンネル」が加わる。
 こうしたことは,本屋で買い求めた愛犬雑誌「月刊ワンワン」に載っているので,一読をオススメする,って,物語の展開上イヤでも読むことになるんですけどね。

 

「月刊ワンワン」には,ドッグショーで何をしたらいいかが事細かに掲載されており,それをこのように実際に学べる。どこの出版社が出しているのだろうか?

 それぞれのエクイップメントは,物語が進んでいくうえでいろいろな人からプレゼントされる。中でも,最も頻繁にいろいろな訓練用具を贈ってくれるのが友達のトーマス・ジョーンズだ。もう一人の友達,幼なじみのアマヤ・フローレスの話によると,どうやらトーマスはアリスに好意を抱いているようなのだが,ともかくこの二人がデブールと戦うアリスを応援してくれるのだ。
 もっとも,2007年2月に発売された前作,「ザ・シムズ ライフストーリー」ほど“惚れたのハれたの毛が生えたの”といった展開はなく,物語はあくまでドッグショーを中心に進んでいく。

 

いろいろとアリスの手助けをしてくれるロバートとデートするアリス。なにも横並びに座らなくてもいいと思うが,デートをしたことがない筆者には,間違っているとは言い切れないのが悲しい

 

本屋で「月刊ワンワン」を購入して,ドッグショーの用意おさおさ怠りないアリス。だが,ストレスのせいか,本屋のソファで奇行を。まあ,これはどのシム人もやるんですけど

 

 

 

アリス,サムを鍛えまくる

 さて,とりあえずサムを鍛えなければならないアリス。もらった道具を使って訓練訓練,また訓練である。最初はうまくいかないサムだが,何度も繰り返しているうちにだんだん上手くなってくる。このあたりの進歩の様子は実になんとも本物っぽく,エレクトロニック・アーツの「シムズ開発チーム 犬生態調査班」(推定筆者)のスタッフが「やはりここで,首をちょっとひねったほうが……」とか「ビデオによると,タイヤの下をくぐってしまうケースが多いようです」とか綿密な議論を繰り返した結果なのである。違うかもしれないが,間違いないだろう。

 そんなこんなで,ついにドッグショーの予選開催日がやってきた。
 これを突破し,次いで決勝戦に勝ち,賞金と誰もがあこがれる「金の消火栓」を獲得しなければ,アリスは祖父母の家から追い出されて路頭に迷うことになるのだ。それにしても,金の消火栓? うーん,あこがれたことないなあ。

 

ロバートにもらった訓練用具でサムを鍛えるアリスの図。最初はてんでダメだが,だんだんうまくなってくるから嬉しい。黙々とがんばるサムの姿も美しいのである

 

 

 

次回予告

 いよいよ予選大会に挑戦するアリスとサム。だが,なんということだ,あのイヤなデブールが,気取ったプードルを連れて参加しているではないか。しかも,連戦連勝だとか。勝つためには手段を選ばないデブールに,アリスはどう対抗するのか? そして「肉球のしきたり」とは何か? ロバートとの愛のゆくえは? まだ書いてないけど,疾風怒濤の次回を待て。

 

 

 

 

 

 今回のおまけムービーは,ドッグショーに向けて訓練する名犬サムの姿をこっそり撮影してみた。トンネルやシーソーだけでなく,「死んだふり」や「ころん」までこなすサム。いいぞ! 勝利はもう目前だ! たぶん!

 

 

 

 

 

■■松本隆一(4Camer編集部/PULS)■■
松本に犬の思い出を語ってもらおうと思ったが,獣医大生時代の思い出くらいしかないというので,別の話にしよう。松本といえば海外生活経験があり,海外取材には必ず駆り出されるスタッフの一人だ。しかし彼は原稿で「Game」を「Came」と書いてきたり,「PLUS」を必ず「PULS」と書いてきたり(モニターに付箋で「PLUS」と書いて貼っている),7文字以上のアルファベットからなる英単語は大抵どこか1文字間違えたり(「Electoronic Arts」を「Eloctronic Arts」と書いたことも)と,一つの原稿に必ず1か所はスペルミスが見つかる。本人いわく「英語だけは苦手な編集者」である。
タイトル ザ・シムズ ペットストーリー
開発元 Electronic Arts 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2007/07/12 価格 4980円(税込)
 
動作環境 OS:Windows XP/Vista(+DirectX 9.0),CPU:Pentium 4/1.80GHz以上,メインメモリ:512MB以上,HDD空き容量:2.7GB以上

(C)2007 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA, the EA logo, The Sims, Maxis and the Maxis logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved. All other trademarks are the property of their respective owners. EA and Maxis are Electronic Arts brands.


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/weekly/simspets/001/simspets_001.shtml