― 連載 ―

敵や味方がみるみる沈む Silent Hunter III 愛宕潜水学校
「II」番発射管:ウナギのマーチ[哨戒・攻撃]

「あー諸君,ディーゼルの調子は順調かね? さて,深海の勇者たるべき諸君が今週学ぶのは,ウィンストン卿にウナギ料理をたらふく召し上がっていただく方法だ。ゲーム内でコストはかからないとはいえ,貴重なウナギだけに確実に給仕してほしい。それと,パトロールが退屈だからといって,気晴らしに海に飛び込もうとした瞬間波に揺られ,バルジに頭をぶつけて戦死公報を賑わしたりしないように。以上!」

 

 WWII潜水艦シムに初めて挑戦する人のために,マニュアルに明記されていないUボート戦の基礎知識をお送りする本連載,今回はパトロールと敵船舶へのアプローチ,攻撃のノウハウをお届けする。

 ミッション目標として示された哨戒方区に到着したら,いよいよパトロールの開始だ。巡航速度はそのまま3分の1速,航海長に命じるなり自分でプロットするなりして,当該方区で24時間以上哨戒を続行すればよい。プロットは,方区の外側から内側に向けてらせん状に行うのが基本だが,別にジグザグでも対角線状でも自由だ。史実におけるBdu(潜水艦隊司令部)は,大規模船団の運行情報を察知し,そのコースに合わせてUボート各艦に指示を出していたわけだが,このゲームで序盤に大船団に出会うことはマレである。比較的有望な海域で,気ままに独航船を狩る心積もりでよい。また,あとで詳しく触れるが,最も優秀な哨戒スキル,聴音スキルを持つ乗組員は,パトロールの段階であまり動員しないのがコツである。

 

 

実にテキトーだが,パトロール針路をプロット。まあ,途中で敵船の発見情報が入るかもしれないので,あまり長くプロットしておいても,無駄になりがちだ

最短時間で敵船の針路上に占位

敵の針路上に最短の時間で出,針路上をさらに敵船に向かって接近するのがセオリー

 自艦の周辺に敵船舶の発見情報が出たら,まずはその船と接触可能かどうかを判断する必要がある。この時点で,パトロールの予定航路などはすべて度外視してかまわないのだが,問題はその船の予測針路が,自艦に近づく方向にあるか,遠ざかる方向にあるかだ。大まかに見て遠ざかる,すれ違う位置と方向だったら,気にせず無視してしまおう。通商破壊戦は特定の船を狙う任務ではないし,何より効率が重要だ。一般にUボートは水上で商船より速い(IIA型ではそれもあやしいものである)が,後ろから追いすがって捕捉を試みたのでは,燃料も時間も盛大に無駄になる。海戦の基本といわれる「見敵必戦」は本家本元の英国海軍にお任せして,無理なく捉まえられそうなやつだけ相手にすべきなのだ。
 さて,そうした条件で見て有望なやつがいたら,自艦の速度を上げて先回りする。一刻も早く,敵の予測針路上に出て待ち伏せるのだ。考え方としては,次のとおりになる。

 

  • 敵船の位置から,その進行方向に沿って直線を延長してみる。
  • 自艦から,その直線と垂直に交わる線を引く。

 

 まず2.の線に沿って進み,1.の線との交点で直角にターンして,今度は1.の線を辿るのが理想的だ。敵船舶の発見情報がその後更新される保障などないし,敵も移動を続けているので,やみくもに航海図上のマークに向けて進んでもダメだ。一刻も早く,敵の針路上に出ておくのがセオリーである。
 先ほど,ごく大ざっぱに「無理なく捉まえられそうなやつだけ相手にすべき」と書いたが,それは1.の線に比べて2.の線が短くて済むケースと言い換えられる。普通の商船は4〜7ノット,全速を出したUボートは,型にもよるが14〜17ノットであって,この速度差でカバーできる範囲なら,挑戦する価値があるだろう。

聴音と視認を繰り返し試みつつ,敵船に迫る

敵船に接近して,ここぞというときに腕利きの聴音員を配置。艦長自ら席まで出向くと,聴音員のレスポンスもスピーディに

 さまざまな条件によって変動するが,航海図の縮尺から判断しつつ,敵との推定距離が8000mを切るあたりで1度潜航して電動機の回転を落とし,ハイドロフォン(パッシブソナー)で敵のスクリュー音を確認しよう。腕利きの聴音員を配置に着けるべきはこのタイミングだ。何も聞こえなかったら浮上して既定の針路を進み,再び聴音を試みる。敵が針路を変えておらず,こちらが正しく針路を読めていれば,そのうち聴音員から報告があるはずだ。
 目視やUZO(双眼鏡)による海上の視界は,かなり条件が良好でも4km先までくらいが限界といわれている。敵船舶は視界に入るより先にスクリュー音で捕捉できるのが常だ。スクリュー音を捉えたら,以降水上見張りは哨戒スキル持ちを含んだベストメンバーで臨もう。

 

自艦を示す丸印から,左側に出て途中で消えているのが,船舶のスクリュー音。長さで大まかな位置が分かり,色で商船か戦闘艦かが分かる。正確な方位は聴音員からのメッセージで確認しよう

 WWII当時の潜水艦に詳しくない人は,そろそろ違和感を抱いているかもしれないが,Uボートの哨戒はそのほとんどの時間を水上で送る軍事行動である。潜水可能時間も水中運動性も,現代潜水艦とは比較にならないUボートが本格的に潜航するのは,敵船の姿をUZOで捉えた後なのだ。もっとも,史実ではそれどころの話ではないのだが。Uボートエースとして名高いオットー・クレッチマーはしばしば,夜間の船団攻撃において,浮上したまま敵船まで数百mに斬り込み,水上発射をメインに多数の敵船舶を屠った。そしてこの方法は,後にUボート部隊の公式戦術として採用される。後の回で詳しく触れるが,史実においてUボートが浮上したまま行動することには,敵のソナーに捉えられないという絶大なメリットがあったのだ。

敵船が見えたら,潜航して待ち伏せる

航海図の縮尺から分かるように,最終アプローチ段階。敵船の針路を図上に描き込んで,自艦の前を通るときの角度と距離を確認中

 さて,話をゲームに戻そう。敵船の姿をUZOで捉えたら,とりあえず潜望鏡深度まで潜ったほうがよい。このゲームにおいて,浮上中の自艦が敵船に発見される可能性はかなり高い。また,高めに突き出した潜望鏡ですら危険である。マストの高さ(見張りのしやすさ)が違うとはいえ,船体サイズもかなり違うのだから,こちらが発見される可能性はもっと低くてしかるべきだとは思うが,とにかく敵船を視認したら潜航し,原則として電動機を停止しておく。あとは断続的に潜望鏡をなるべく水面ぎりぎりの高さに出して,敵の動静を音と視界で追跡し続ける。
 理屈のうえでは,敵の針路の真下,敵と向かい合う形で待ち受けているハズであるから,あとは敵が接近するのを待てばよい。雷撃の最適距離は最終的に400mから1000mだ。近ければ近いほどよいように思われるが,魚雷の馳走距離が短すぎると信管の安全装置が外れず,命中しても炸裂しないのだ。敵がある程度接近してきたら,音源の方向と潜望鏡の視界を頼りに,敵が自分の左右どちらを通る見通しであるか判断し,潜航したまま,敵の通る方向に90度回頭を行う。つまり,敵がちょうど自艦の位置を通る瞬間に,その真横を狙える姿勢をとるのだ。
 このゲームではある意味計算がうまくいきすぎて,自艦と敵船がそのままぴったり衝突コースにいたり,わずか100m横を通り過ぎたりといったことが,頻繁に生じる。そこで最終調整として,潜航したまま微速後進/微速前進を使う必要も出てくるだろう。相手が商船であれば,ソナーなど持っていないので,少々水中で動いても大丈夫だ。ただし,角度調整はかなり難しいので,前進/後進だけで調整をとることをお勧めする。

マニュアルには載っていない,手動照準の使い方

 最終調整の必要が出る少し前には,敵船の姿がかなりはっきり確認できる距離になっていると思う。手動照準モードを使っている人は,このタイミングこそ,敵船に関する諸元を目標ノートパッドに入力するチャンスだ。
 手動照準については,英語版マニュアルの締め切りがマスターアップよりかなり早かったのか,具体的な操作が分かりづらい。英語版マニュアルだと三角関数を使った計算を自分でしなければならないかのように読めてしまうが,実際の手順はもっと簡単なので,整理しておこう。
 敵船舶について,入力しなければならないのは,次の4種類の情報だ。

 

  • Class(船型)
  • Range(距離)
  • Angle on bow(方位角)
  • Speed(敵速)

 

手動照準でRange(距離)計測中の画面。すでに前部発射管からの魚雷を命中させて,後部発射管用に照準を合わせているところだ。このときは,遠くから見て「C2 Cargo」だと思っていたのだが……

 入力の順番は,1,3,4,2ないし,3,1,4,2で行くべきだ。これは,刻々と変わる情報の入力を後に回すということである。
 1.のClassは,敵の姿と識別マニュアルを見比べて推定する。識別マニュアルで「これだ」と思うページを開けたら,右下にある四角い空欄をクリックしてチェックマークを入れれば,目標ノートパッドに反映される。なお,マニュアルには各国の海軍艦艇が盛大に載っているが,実際に見なければならないのは民間船舶の部である。表紙を開いたら「△」ボタンをクリックすれば,すぐに最後尾の民間船舶の部が見られるので,覚えておきたい。
 次に3.のAngle on bowだが,これは目標ノートパッドの文字をクリックして,開いた図をクリックすることで,自艦から見て敵船がどの方向を向いて進んでいるかを指定する。自艦が移動するか,敵船が針路を変えない限り変化しない数値なので,早めに入力しておいても比較的大丈夫だ。
 4.のSpeedは,目標ノートパッドの文字をクリックして,その次の画面にあるストップウォッチのグラフィックスをクリックすることで計る。潜望鏡のレティクル(十字線)を,敵船に合わせた状態でストップウォッチをクリックすると計測し始め,敵船をレティクルから外さないまま15秒以上待って,もう一度クリックすると,秒数表示と共に推定速度が出,反映されるはずだ。
 ときどき失敗することもあるので,やり直すハメにもなるが,何度計っても速度が推定されないときは,1.Class(船型)の推定が誤っている可能性が高い。
 さて,最もシビアな値であるRange(距離)だが,これも目標ノートパッドの文字をクリックするところから始まる。距離計算は,敵船のマストの高さを基準にして,カタログスペックと実際に見えている大きさを比べることで自動計算される。プレイヤーがやるべきは,まず潜望鏡のレティクル(十字線)を,敵船の喫水線に合わせることだ。それができたら,目標ノートパッドの距離計測ページ左下にあるアイコンをクリックする。それからマウスカーソルを潜望鏡の視界内に持っていくと,マウスカーソルの位置に横棒が表示されるはずだ。それを,敵船のマストの頂上にぴたりと合わせた状態でクリックすれば,計算結果が目標ノートパッドに入力される。

沈めた後で航海日誌を確認したら,たかだか2500t級の小型貨物船……。魚雷5本も使ったのにー

目見当で放った魚雷の行方を,TDC画面で確認してみる。やはりFastモードが使えないT-Ie魚雷は,きちんと照準を定めないと当てづらい

 すべてのデータが揃ったら,「Send to TDC」をクリックすれば,照準設定は完了だ。あとは発射管を選び,カーソルを敵船に合わせた状態で「Fire」ボタンをクリックすれば,魚雷が発射される。自動照準設定の場合,ここまでの入力手続きはすべて自動で処理されるし,あらかじめリアリズムセッティングで水雷長への命令をアリにしておけば,代行させることも可能だ。

 

 一発目の魚雷はうまく敵船に命中しただろうか? 手動照準の場合でも,TDCへのデータ入力を行わずに発射すれば,潜望鏡の視界に合わせた方向で,まっすぐに発射される。商船にしては敵船の動きが速い本作では,正確なデータ入力が望めない場面も多々生ずる。そんなとき意外と重宝するので,データ入力なしの照準も,練習しておくとよいだろう。
 これは照準でなくて発射管側の設定になるが,ゲーム序盤においては,雷深2mくらい(初期設定は5m)にしておいたほうが,艦底通過で悔しい思いをする危険が減る。また,T-I魚雷を使う場合,雷速がSlowになっているか,Fastになっているか,必ず確認しよう。水面の雷跡が目立つという欠点はあるが,手動照準を多用するなら,エンジン駆動のT-I魚雷をFast設定で使うのが,最も簡単なようだ。

 次回は,敵船に対するトドメの刺し方と,敵に発見されたときの逃げ方を中心にお送りする。

■■Guevarista(4Gamer編集部)■■
UボートXXI型の後部魚雷発射管の数や,U47がスカパフローで沈めたイギリス戦艦ロイヤルオークの艦長の当日の夕食の献立など,日常生活に役立つ知識を豊富に持つ本誌潜水艦担当編集者。記事内容をチェックする編集者が原稿中の疑問点などを聞きに行くと「それはですね,そもそも1870年の普仏戦争に端を発し……」とメガネを軽く指で押し上げて約30分間語り続けるので,怖くてなかなか聞きに行けないと漏らすほど懇切丁寧な好人物でもある。最近の楽しみは「家に帰ってM35ヘルメットを愛でることですかねえ……」と語る。「そもそもM35の形状はですね……」。あ,もういいです。
タイトル Silent Hunter III 日本語マニュアル付英語版
開発元 Ubisoft Entertainment 発売元 フロンティアグルーヴ/Ubisoft Entertainment
発売日 2006/06/02 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/1.4GHz以上もしくはAthlon XP 1400+以上(Pentium 4/2GHz以上もしくはAthlon XP 2000+以上推奨),メインメモリ:512MB以上,HDD空き容量:2GB以上,グラフィックスカード:DirectX 9対応製品(MXシリーズを除くGeForce 3/4/FXシリーズ以降,Radeon 8500/9000シリーズ以降推奨),グラフィックスメモリ:64MB以上(128MB以上推奨),サウンドカード:DirectX 9対応のPCI接続製品

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