― 連載 ―

敵や味方がみるみる沈む Silent Hunter III 愛宕潜水学校
「I」番発射管:ノコギリザメのエチュード[セッティング・航海]

「あー諸君,楽にして聞いてくれ。諸君はこれから我がドイツ海軍が誇る精鋭中の精鋭,潜水艦隊の一員となる。諸君こそはまさしく連合国商船員の死神,大西洋のハイイロアザラシ……もとい,ハイイロオオカミだ。初めて戦闘を体験する諸君に,教範類(製品マニュアル)には書かれていない実戦の流儀を,これからレクチャーしていこう。剥いてないオレンジをいきなりディナーに出して,食べ方で士官としての沈着冷静ぶりをテストしたりはしないので,安心して聞いてほしい。以上!」

 

 6月2日に日本語マニュアル付き英語版が発売される,Uボートシム「Silent Hunter III」。そこでの戦い方のノウハウを,興味はあるものの,今までにWWII潜水艦ものをプレイしたことがないという人をメインターゲットとして,局面ごとに解説していくのが本連載である。しばしお付き合いのほどをお願いしたい。
 戦い方のノウハウといっても,ゲームの操作方法は付属のマニュアルで説明されているし,勝つための工夫は自分でやるから楽しいんじゃないの? と思う人もいるだろう。だが,第2作,第3作と代を重ねた歴史モチーフ作品にありがちなように,Silent Hunter IIIのマニュアルやチュートリアルは,当時の潜水艦戦に関する基本的な説明をいささか欠いている。とくにそうしたつもりはないのだと思うが,結果として前作や類作をプレイしている人,あるいはUボートモチーフにある程度通じた人向けの説明に,なってしまっているのだ。この作品をきっかけに初めてUボート戦に興味を持つ人もいるかもしれないことを考えれば,これは少々もったいない話である。
 そこでこの連載では,主としてプレイノウハウと直結するUボート戦の常識を,プレイの過程を交えつつ補足していく。実際のところUボートは何mくらいまで潜れるのか,魚雷はどのくらいの距離から発射するのが適切か,敵の護衛艦に囲まれて,音を出してはいけない=電動機をオンにしてはいけないはずの状況から,どうやって離脱するのかといった,スケール感に関わる部分や,とにかく先に知っておけば無駄が省ける基礎知識を,ゲーム内での再現状況と合わせて解説していく。
 今回は手始めに,ミッション目標に向けて出航するところまで,大まかな数字周りを確認しつつ,プレイの大枠を押さえていくことにしよう。

 

 

 

まずは腕っこき優先で乗組員を確保

下士官を補充するところ。画面右上にある「OFFICERS」「4/4」といった文字とバーが,士官,下士官,兵ごとの充足率。とにかく上限まで人数を増やそう

 本作のシングルプレイキャンペーン「キャリアモード」を開始するに当たって,重要なのに見落とされがちなのが乗組員のリクルートだ。初期状態でもどうにかボートを動かせるだけの乗組員は配置されているため,そのまま出航できてしまうのがアダになる。
 そもそも乗組員の要素を導入し,そのスキルと疲労度,健康状態などを管理して,プレイヤーがワークロード調整を行うようになったことが,Silent Hunter IIIの新機軸である。そして,試してみればすぐに分かるとおり,初期配置の乗組員だけではとても人手が足りない。

 

潜航しながら,魚雷の再装填を急いでいるところ。前部発射管室に手の空いている乗組員を集めて,作業に当たらせている

 これは,プレイヤーが必要と思う人材を自由に起用できるよう配慮しているのだと思うが,マニュアルにはそうした説明がないため,そのまま始めてしまう人も多いだろう。ここはぜひ,士官,下士官,兵それぞれの人数上限までリクルートしておくことをお勧めする。あとで詳しく触れるが,プレイヤーは早晩より大型の潜水艦に乗り換えることになるし,そのとき乗組員は引き継がれる。乗組員達の能力は航海を通じて成長していくので,早めに鍛え始めるに越したことはないのだ。
 乗組員は「名声」値を消費してリクルートするが,新型艦は別として,ヘタな新装備よりずっと割に合う投資なので,ためらわず能力の高いクルーを起用しよう。史実において,Uボート各艦長は腕っこきの先任士官(副艦長),機関長,航海長クラスの確保と獲得に腐心し,他艦の士官達ともよくコミュニケーションをとったという。ゲームにおいても,星のマークが付いた哨戒スキル持ちの士官や,舵輪の付いた機関整備スキル持ちの下士官は,まず確実にワークロードの改善や発揮戦力の向上に役立つ。

魚雷攻撃手順と,敵艦追尾のリアリティをどう考えるか

 さて,次に問題になるのはリアリズムセッティングである。初回のプレイでは割り切ってそのまま行くのも手だが,やり込んで行くうちにいずれ気になってくるポイントだ。設定できるのは,以下の17項目である。

 

リアリズムセッティングの画面。各項目はチェックボックスでオン/オフする

  • Limited batteries (電池の充電残量制限)
  • Limited compressed air (圧搾空気の残量制限)
  • Limited O2 (艦内酸素の残量制限)
  • Limited Fuel (残燃料制限)
  • Realistic Vulnerability (リアルな艦の破損)
  • Realistic repair time (リアルな修理所要時間)
  • Realistic Ship Sinking time (リアルな,艦船の沈没所要時間)
  • Manual Targeting system (手動照準)
  • No map contact update (航海図マップに示される,発見された船舶情報の更新なし)
  • Realistic sensor (レーダー,ソナーなどのリアルな機能再現)
  • Dud Torpedo (不発魚雷)
  • Realistic reload (リアルな,魚雷の装填所要時間)
  • No event camera (イベントカメラなし)
  • No external view (外部視点なし)
  • No stabilize view (固定視点なし)
  • No noise meter (ノイズメーターなし)
  • No weapon officer assistance (水雷長への照準命令なし)

 

 難易度設定が,EASY/NORMAL/HARD/REALISTICと4段階あり,それに応じてこの17項目がオン/オフされるわけだが,このうち重要なのは,

 

  • Manual Targeting system
  • No map contact update
  • No weapon officer assistance

 

自動照準設定では,敵艦に対して適切な角度や距離をとれば,このように距離や角度,速度が自動で入力され,敵船の位置に三角形のマークが出る。手動照準では画面右上の艦種や各種数値を,プレイヤー自身が入力する

の三つである。「Manual Targeting system」はこのゲームの新機軸であり,なかなか興味深いのだが,正直出来は微妙なところだ。回をあらためて解説する予定だが,“とりあえず楽しくプレイする”のが目的であれば,外しておくのも手である。逆に,覚悟を決めてこれをフルに使いこなすなら,チュートリアルステージである「NAVAL ACADEMY」で,とにかく練習を積んでおくことをお勧めする。
 それに関連するのが3番めの「No weapon officer assistance」だ。これは,自動照準を使うのでなく,さりとて艦長たるプレイヤーが照準を担当するのでもなく,水雷長(実際には先任士官の職掌。魚雷の水中発射を艦長,水上発射を先任が担当する,といったケースが多かったようだ)に任せるという選択肢を,アリにするかナシにするかである。
 ゲーム内の水雷長はかなり優秀なので,任せてしまうと敵艦に魚雷を命中させる手続きの難しさがほぼなくなる。それゆえリアリティに影響する項目となっているのだが,要は可能な限り艦長の役回りを忠実に果たしたいか,マネジメントゲームとしてプレイしたいかという選択肢になっているわけだ。ここは,自分の好みで決めればよいだろう。

 

「No map contact update」をオフにしたところ。敵艦船を示す赤い四角形が二つ表示されているが,この二つは同一の船を示しており,下にある薄くなっているほうは過去の情報だ

 最後に「No map contact update」について。このゲームにおける船舶の発見情報は,航海図マップに船舶のマークが書き込まれる形で示される。とうてい自艦の視界に入らない位置にマークが出現するため,これは無線連絡が入っていると解釈すべきだが,そうして発見した船舶の動向に関して,情報が更新されるかどうか――つまり,さらに先に進んだ船舶のマークが,航海図上で定期的に示されるかどうかを決めるのが,このオプションだ。
 更新されないのがリアルであることに疑問の余地はないのだが,実のところこのゲーム,航海図上に示された敵艦に接触するのがかなり難しい。いや,正確にいうと難しいのではなく,確度が低いと表現すべきだろう。
 敵船舶の位置と針路と速度から未来位置を計算し,自艦をそこに向けて進ませるのが定石なのだが,水上見張りを強化しようが,途中で随時潜航してハイドロフォン(パッシブソナー)を使おうが,かなりの頻度で接触に失敗する。また「No map contact update」をオフにしたところで,実際に視界に収めない限り,船舶の位置がリアルタイムにモニタリングされるようなことはない。情報の更新間隔はかなり開くのだ。
 実際に試してから決めるのがベターだと思うが,例えば史実でよく採られた,船舶が出す煙をかろうじて確認しながら,ぎりぎりの距離で追跡するといった方法が使えない本作では,「No map contact update」を外しておいたほうが,総合的なバランスがとれるように思う。ここは僚艦か,空軍が更新情報をくれたのだとでも,思っておいたほうが楽しめるだろう。

 

リアリズムセッティングは,ミッションスタート画面の直前から入る形になっている。開始前にもう一度確認しておこう

 そのほかの項目については,Uボート戦モチーフに愛着があるならば,無条件でオンにしておいたほうがよい。潜水艦シムは,限られた情報,限られた条件からどう判断し,どう行動するかが醍醐味である。もともと全能感を満喫するゲームではないのだから,理に適った制限は,あったほうが楽しめるというものだ。「1発2万マルクもする魚雷がこの始末か!」でも「機関長,電池残量は全速であと何分ある?」でもかまわないが,例えばノイズメーターがどんなときに上がるかを確認し,ゲームの進め方にある程度慣れたら,ぜひオールオンに近い設定でプレイしてみてもらいたい。

Uボートの経済速度は前進3分の1速

 

 さて,ミッションを受領し,リアリズムセッティングを終えたらいよいよ出撃である。自艦や乗組員も含めて3D描画された母港の岸壁に,舞台は移る。前進微速(約3ノット)でブンカーを離れ,港外に出よう。史実において,こうしたときには出力の微調整がきく電動機のほうを使ったのだが,それはゲームの設定上できないようだ。
 時間帯次第では楽隊の演奏と,多くのギャラリーが見送るなか,とにかく艦を直進させる。防波堤など港の構造物から十分に距離をとったら,以降ミッション目標までの針路は航海図上にプロットする。

 

 このとき注意しなければならないのが巡航速度だ。艦が停止している状態から航海図にプロットすると,艦は自動的に前進半速(約7ノット)でその航路に就く。だが実のところ前進半速は,Uボートの経済速度ではないのだ。
 プレイヤーが最初に与えられるIIA型ボートは,沿岸および近海用の小型艇にすぎない。ところが実際に与えられるミッションには,イギリス周辺海域でのパトロールが多く,行って帰ってくるだけで,搭載燃料の大半を消費してしまう。
 そこで,コースをプロットしたら,直後に速度を前進3分の1速(約5ノット)に落として,効率のよい航行を心がけるのである。指定海域でのパトロール時間を確保する意味でも,不意に敵に出会う可能性を考えても,燃料を節約するのは大切なことである。

 

航海図マップ上で,停止状態からコースをプロットするときには,設定速度に注意。自動的に前進半速となっているので,通常の移動であれば前進3分の1速に変更しよう

 

 とりあえずはこれで,無事にパトロールエリア(=ミッション目標)に向かう準備ができたことと思う。次回は,哨戒と敵船舶へのアプローチ,攻撃のノウハウについて解説する。

■■Guevarista(4Gamer編集部)■■
「ギャルゲー担当」「ニーソックス担当」といった肩書きで呼ばれることに対しては激しい抵抗を見せるが,「潜水艦担当」と呼ばれるのはまんざらでもなさそうという,本誌潜水艦担当編集者。どうも根っからの潜水艦マニアで,将来的には潜水艦内に居住するのが夢らしい。「で,潜水艦のどこが好きなんですか?」と聞いてみたところ「仮眠室と潜望鏡」という答えが返ってきた。えーと。実はそんなに詳しくないんじゃないですか?
タイトル Silent Hunter III 日本語マニュアル付英語版
開発元 Ubisoft Entertainment 発売元 フロンティアグルーヴ/Ubisoft Entertainment
発売日 2006/06/02 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/1.4GHz以上もしくはAthlon XP 1400+以上(Pentium 4/2GHz以上もしくはAthlon XP 2000+以上推奨),メインメモリ:512MB以上,HDD空き容量:2GB以上,グラフィックスカード:DirectX 9対応製品(MXシリーズを除くGeForce 3/4/FXシリーズ以降,Radeon 8500/9000シリーズ以降推奨),グラフィックスメモリ:64MB以上(128MB以上推奨),サウンドカード:DirectX 9対応のPCI接続製品

(C) 2005 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Silent Hunter, Ubisoft, ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/weekly/silenthunter3/001/silenthunter3_001.shtml