2005年10月27日にリリースされた「ザナドゥ・ネクスト」は,一人の無名の騎士と,考古学に精通した少女シャルの二人の冒険を描いたアクションRPG。二人がハーレックの街を拠点に,「クローヴァー遺跡」「千古の迷道」「魔粧の森」「イーグリット山」「ザナドゥ・ラビリンス」「時の狭間」といった場所を冒険し,最終的に「奇岩城」の謎に挑むものとなっている。
ただし,どこへでも自由に行けるわけではなく,シナリオの進行具合によって新しいマップに行けるようになるため,シナリオは一本道となっている。
操作はマウスの左クリックで移動/攻撃を行うオーソドックスなタイプだが,連打で連続技を繰り出せる,背後に回り込んで攻撃することでより大きなダメージを与えられるといったシステムも用意されている。
また,装備している武器によってさまざまなスキルが利用できる点も大きな特徴。スキルには,鋭い突きで相手を転ばせたり,武器に炎をまとわせて追加ダメージを与えるものなどもある。
武器を使い込むと,武器の熟練度が上がって与ダメージが増加する(ザナドゥをザナドゥたらしめる大きな要素だ)。さらに熟練度が100%を超えると,武器に付加されたスキルを体得し,武器を変更しても引き続きそのスキルを駆使できるようになる。
また本作では,攻撃魔法もスキル扱いとなっていて,こちらはお店で呪文書を購入して読むことで会得できる。なおスキルも呪文も,同時に装備できるのは四つまでなので,状況に応じて組み合わせを考えていきたい。
このほか,ガーディアンという要素も特徴的だ。これは,プレイヤーキャラクターに宿す守護霊のようなもの。といっても共に戦ってくれるわけではなく,装備することで,獲得経験値上昇,HP上昇,魔法攻撃力上昇などの効果が得られる。ガーディアンは一度に一体しか宿すことができず,聖堂でのみ,ほかのガーディアンと交換できる。
この手のRPGでは定番といえる,巨大なボスモンスターも充実。筆者にとって,初めて“ボスらしいボス”(単に大きいだけで衝撃的だったが,BGMやインタフェースまで通常の敵と違う。当時としては実に斬新だ)を見たコンピュータRPGが,初代ザナドゥだったことを思えば,ここは感慨深い部分である。
樹木のベリルアードは触手で攻撃してくるし,蜘蛛のスコルチュラは毒針攻撃,炎の魔神エビルブルムは誘導弾,巨大な目玉のアスコモイドはレーザー,蠅のような姿をしたローレライは部下と共にいやらしい連係攻撃,最終ボスのガルシスは2種類の形態を持っているなど,どのボスキャラも個性的。ガーディアンやスキルの選択などを慎重に行わなければ勝利は難しく,非常に緊張感のある戦いが楽しめる。
続編はまだかと待ち望んで約20年。やっとの思いでザナドゥの続編をプレイした感想は……,正直不安もあったのだが,かなり楽しめる内容だった。
だが,期待していたものとは少し違った,という印象もゼロではない。
初代ザナドゥは,ひたすら戦闘を繰り返し,奥へ奥へ進んでいくアクションRPGだ。シナリオ性は皆無だったことから,プレイヤーは能動的に,自分なりの目標(次はこの塔を制覇する,次はこの武器を購入する,そろそろあのボスを倒そうなど)を定めつつ探索を進めていった。またモンスターは有限だった(どんどん倒していると,いつか何も出現しなくなる)ため,獲得できる経験値なども当然有限で,キャラクターの育成でも,剣を伸ばすか,魔法を伸ばすか(レベルは剣と魔法で別々に用意されていた)で悩んだり,後半のステージで入手できる装備を考慮して,(その熟練度を上げるために)わざと弱めのモンスターを残しておくなどのテクニックが必要だった。
また,無害なモンスターを倒すと「Karma」というパラメータが上がって,キャラのレベルアップが出来なくなるという(マニュアルには書いてない)ペナルティがあり,この値を減らすにはわざと毒を飲むしかなかった(こちらもマニュアルに書いていない。ちなみにシナリオIIでは,瓶の光沢の白いドット数の違う,Karmaを減らせない毒もあった)。
これが初代ザナドゥ……のクリア直前の画面
このように初代ザナドゥの根底には,RPGでありながら,妙な凝り方や隠し要素,マネージメントゲームのようなの面白さがあったように思える。そのために難度も高く(当時,“13歳未満プレイ禁止”といったキャッチフレーズが使われたほど),そのアンチテーゼとして「イース」が生まれ,日本ファルコムは「ザナドゥ」(ドラゴンスレイヤーシリーズ)と「イース」の二枚看板でアクションRPG界の牽引に成功したと記憶している。
話をザナドゥ・ネクストに戻すと,本作の場合は,むしろイースシリーズが求めているような,「誰でも気軽に楽しめるRPG」というベクトル上にあるといえなくない。もちろんそれは悪いことではないのだが,これをもって「ザナドゥスピリットを継承していない」という意見も出てしまうだろう。
とはいえ,だ。ちょっと雰囲気が変わってしまったとはいえ,初恋の人は,初恋の人である。その面影は,さまざまなシーンに散見できる。
箱を動かして先へ進むパズルでは,初代で2段ジャンプを巧みに利用して,一見行けそうもないところに登ったことを思い出すし,“宝箱”の出し方は,初代での“赤い宝箱”(食料を落とすタイプの敵でない場合,アイテムが入っている)の出し方とそっくりだ。ガルシスなどモンスター名やアイテム名でも初代のものが使われており,なんというか,当時のときめきを思い出しちゃって,なかなかいい感じ。巨大なボスモンスターを倒した後,「王冠」を入手して,当時の喜びがフラッシュバックしたというのは,筆者だけではないはずだ。
初代ザナドゥに熱狂した人ならば,本作をプレイしない手はないだろう。
ともあれ,初めてザナドゥを手に取った日から,その魅力にとりつかれ,見事にインプリンティングされてしまったような気がする。その名を継ぐ後継者かと思えば,ちょっとくらいのアラは見逃してもいいか,という気にさえなってくる。過去の思い出に踊らされながらも,今後ザナドゥの新作がリリースされるたびに遊んでしまうんだろうな,と思うのは,筆者だけではないだろう。