連載 : お父さんは夢見がち


お父さんは夢見がち

第2回:北大路コンスタンチンさんとKINYAちゃん(絵画/料理)・後編

 

すべてをなげうって「料理」に専心

 

北大路コンスタンチン氏近影

 陶芸家かつ美食家の北大路コンスタンチン氏の子として,「料理」と「絵画」への造詣を深める方針で育てられるKINYA(きんや)ちゃん。絵画のスキルはすでに天井を突いたというのに,料理は依然として苦手なまま。そうこうするうちに,中学時代も半ばを過ぎようとしている。
 中学後半ともなると,友達付き合いがかなり活発になる。「繊細さ」や「道徳心」はとうに振り切っているので,いまや娘の交友関係を制限する必要はないのだが,友達との外出があまり頻繁なのも困りものである。前回述べたとおりこのゲームの日常は,平日にストレスを溜めつつパラメータを伸ばし,日曜にそれを解消することで循環している。友達との外出にもストレス解消効果はあるのだが,北大路氏自らが連れ出す「お出かけ」に比べると効率が低い。

 

「絵画」スキル上限到達の成果がこれ。だがもう一方の課題である「料理」はさっぱりだ

 かくしてこのシリーズで定番の手法となるのが「電話を取り次がない」という行為だ。別に,娘に悪い虫が付かないようにといった高度な配慮の産物ではない。とにかく頻度を下げ,可能ならば国民の祝日にアポイントメントを入れさせる。祝日の行動予定は北大路氏の手中にないし,もともとストレッサーである平日の代わりに入るのだから,ストレス解消に貢献こそすれ邪魔にはならない。
 ……まあ,娘のマネージャーか高級秘書をやってるようで,少々おかしな光景ではあるのだが。

 

友人と休日をともに過ごすことには,ストレス解消効果もあるのだが,いかんせん中途半端。国民の祝日に約束を入れるのがベストだろう

 

門限を午後9時まで延長し,家財をなげうって「料理」スキルの向上に努める。米の粒をより分けて炊かんばかりの勢いである

 かくして迎える高校入学。習い事とアルバイトの種類が一気に増える最後の機会である。入学式もそこそこに,それぞれ確認してみると,ちゃんとあるではないですか,「料理」スキルを直接引き上げられる選択肢が。
 小中学校を通して5年間,この選択肢がなかったばかりに,現時点ではほかのスキルが「料理」スキルをはるかに凌駕している。これでは教育方針を貫徹したことにならないので,いままでなるべく「出る杭は打」つがごとく他スキルの上限到達を抑えてきた。それを継続するとともに,1日も早く料理スキルを上げさせようではないか。

 

とはいえ,最初はこんな体たらく。娘の料理スキルの低さもさることながら,執事のセリフが捨てがたい。グルメ評論に必要なのは,この「持って回った」感である。なかなかやるではないか

 

「料理スキル」の上げ幅と,家計の赤字に注目

 娘の週間スケジュールは,みるみる料理教室とファミレスでの厨房アルバイトに占拠されていく。料理教室のほうが時間効率が高いため,そちらを優先するが,言うまでもなくファミレスは収入増に,料理教室は支出増に,それぞれつながる。そこで料理教室を優先すれば,月内収支は大幅な赤字となるのだが,ここが先途である。ここまでの貯蓄を惜しげもなく料理教室に投入する。料理教室もファミレスも,付帯効果として体重増加があるので,これを打ち消すためにスポーツジムにも通わせたため,出費はさらに膨らむ。
 ともあれ,みるみる減っていく貯蓄に反比例して,娘の料理スキルはぐんぐん上がっていく。散財の甲斐あって,わずか半年で料理スキルが上限のレベル10に達した。

 

 それ自体は喜ばしいことなのだが,このあたりでそろそろ不安になってくる。わずか半年で上限に到達できるということは,1個1個のスキルが娘の将来に与える影響も小さいのではないか? ゲーム序盤はそもそものステータス/スキルが低いため,どのカリキュラムも成功率が低く,したがってステータス/スキルの成長は遅々として進まない。このあたりの体験から「スキルが上限に達するのはスゴイことなのだ」と思い込んでいたわけだが,娘もいまや高校生。未着手のスキルに挑むときでも,基本ステータスが格段に上がっているせいなのか,わずかずつでも積み上げたスキルの値が貢献しているのか,さほど苦もなく上昇する。
 つまりはどう抑えても,ほかのスキルが上限まで伸びるのは時間の問題ということでもある。そこはあまり気にせず,残る目標の達成を図ろう。「着物」の入手である。

 

急速に成長し,ついには上限に達した娘の料理スキル。文脈としては料理人ではなく,主婦の技能のような気もするが

 

料理の絡むイベントには,すべて一枚噛ませる。これらに効用があるわけではないが,ポリシーの問題だ

 

 

衣裳代は異界で調達

 

お金目当てに異界をさすらうハメになった娘

 前回「着物」の値段を21万円と書いたが,これはあくまでゲーム内イベント「バーゲン」による3割引を適用したあとの数値であって,元値は30万円。料理教室で散財した直後の北大路家にはかなりつらい金額である。娘のアルバイトでは,時給1000〜1500円がいいところであって,これでは時間がかかるうえに,育成への悪影響が大きい。
 そこで娘を「冒険」に出す。この時点で可能だった人間界/妖精界/星霊界の冒険で,1回3万円から6万円くらい手に入る。それでいながらストレスの増加はごく小さいので,余裕のあるときを選べばそれほど育成も滞らないのである。
 途中親兄弟の仇だとか,どこぞの偉い悪玉だとかを倒した気もするが,今回の関心はあくまで着物代にある。6,7回繰り返したところで十分な資金が出来た。

 

地上でのアルバイトと比べて,「冒険」は割のよいビジネス。資金のみならず,「気品」を上げるアイテムなども手に入るので,トゥルーエンド指向のプレイでなくても有用だ

 

 以降,暑さ寒さが厳しいとき以外は,常に着物で通させる。クリスマスパーティすら着物で北大路家の家風をアピール。着物に何か娘の将来を左右する効能があるとは思っていないが,価格に見合うだけ「魅力」パラメータの上昇が見られるのも確かだ。
 ゲーム内時間で6年半が過ぎたころ,娘が高校2年生のときの年末近くに,今回のプレイで目指したものはすべて手に入れた。プレイのコツをつかんでからであれば,もう半年かそこらは短縮できるだろう。とにもかくにも,「至高の娘」の完成である。

 

着物がすっかり普段着に。これである意味,コンスタンチン先生とお揃いである

 

クリスマスパーティにも着物で乗り込む娘。コンスタンチン先生とややキャラがカブりそうな大友財閥総帥のお眼鏡にも適った様子。袖口に手を入れたまま「お前は人権の本質をまるで理解しておらん」とか,講釈の一つもブッたのであろうか

 

 

気品と魅力で人格にバランスを

 

料理スキルのあとは,「気品」と「魅力」の底上げを図る

 あとは,プレイの方向性とあまり関わりがなかったために,引き上げが遅れていた「気品」や「魅力」といったパラメータを上げにかかる。片っ端からスキルを取得していくよりも,育成の方向性がブレる危険は小さいだろうと判断してのことでもある。
 高校2年の段階で,すでにこれらパラメータの伸び悩みは明らかだったので,選択授業は「書道」(気品に貢献)。これは才人・北大路先生の,得意分野の一つでもある。
 そこに加え,高校3年から演劇部に所属させ,演劇教室に通わせた。演劇教室は6時間,つまり門限を午後9時以降に設定しない限り,通わせられないカリキュラムなのだが,基本パラメータが十分に固まり,多少のストレスにはへこたれないいまの娘の能力なら,門限を遅らせても大丈夫という判断の結果でもある。

 

書道と演劇で,いささかなりとも気品と魅力を養う

 

日本の伝統に関して,だいぶ饒舌になってきた我が娘

 

 あとはもう,パラメータを伸ばす平日と,ストレスを解消する日曜の繰り返しだ……と思っていたのだが,高校生活の中盤から後半は,友人から絶交されては関係修復に努め,和解を繰り返すという,なんだか意味がよく分からない忙しさで明け暮れた。
 長期的なストレス解消ペースに必要なだけの時間を残して,週末の多くは友人宅を訪問させることに費やす。そうしないといつ火を吹いて,娘のストレスを積み増してくれるか知れたものではないのだ。地回りのヤクザよろしく,シマの巡回を欠かさないわが娘であるが,ええと,高校生活ってこんなだったかなあ???

 

……ていうか,キミら不安定すぎ。善隣外交以外考えないという方針は,良くないのかもしれない

 

 

そして,娘の未来は……

 

 いよいよ迎える卒業式,そして娘の進路やいかに……? 結論からいうと,娘はなぜか「声優」(兼アルバイター)になった。ええ,なんで? と思うことしきりなのだが,要するに,演劇/芸能人系進路のややパラメータ足りない版,もっと言えば「言霊」スキル主導版なのではなかろうかと思う。
 演劇教室に通わせ始めて半年ほど経ったとき,芸能プロダクションのスカウトがやってきて,その誘いに応じさせてみたのだが,これが大きな意味での進路選択だったということだ。以降毎月1回,タレント養成カリキュラムが挿入されたものの,ゲームも終盤のことだったため,これに通ったのはわずか4回だ。
 早くからカリスマ値が高く,すでに中学校/高校の進路相談でそれぞれ「芸能人に向いている」とかいう,学校の先生らしからぬ観測を聞いていたのだが,一方で「音楽」スキルがそこそこ,「演技」スキルの成長にいたっては,ただの副産物であったため,おそらくこのゲームにおける達成水準として,あまり高いと見なされていないのだろう。実際声優といっても,ピンで立てない端役のようであるし……。

 

芸能スカウトの誘いを受け入れた場面と,月1度のレッスンの様子

 

 娘が芸能を志す以上,グルメレポーターやら「楽しい夕○」の金○信○先生のようなオチを期待していたのだが,これではアシスタントどころか,「クゥッキ〜ング,クゥッキ〜ング,クゥッキ〜〜ング♪」とか歌わせてもらえれば上出来という結末である。
 ドジな駆け出し声優ということで,シチュエーションとしてはムダに萌え度が高いような気もするが,それでいて本人の「オタク」スキルはゼロ。あくまで演劇志向なのである。

 

 料理も絵画もかすりもしなかったことに,北大路先生としては一抹の寂しさを禁じえないのだが,それも娘の選択である。せめていつかは外画声優(外国映画の吹き替え役)になれるよう,のどにいい飲み物でも工夫するか,といった境地なのであった。

 

高等部担任による進路の見立てと,高校中盤ですでに天井を突いていた「カリスマ」パラメータ

 

 とまあ,ここまでプレイしてみて。誰しも気になるのは,もし娘が芸能スカウトの誘いに応じなかったら,どうなっていたかではないだろうか? そこで,8年目の11月に戻って誘いを断ってみると,これがまた,なぜか「自衛官」になったのである。以前ヒマを見て浜崎ゴールデン横丁の占い師に観てもらったところ「国を守るために戦う仕事」といわれていたので,いったいどこでトゥルーエンド系のフラグを立ててしまったのだろうと思っていたのだが,そういうことではなく,ダイレクトに国を守る仕事を指していたようだ。
 これは……体力と体格,そこそこ伸びた武道系スキルのなせるわざなのだろうか? 面白いのが最終評価の星の数で,前述の声優のときは2個しか取れなかったのに対し,今度は2個半である。総合的な仕上がり具合では,声優としてのスキルセットよりも,自衛官としてのスキルセットで評価したほうが高かったことになる。

 

 ますますもって頭を抱える北大路先生だが,今度の休暇には仲間と一緒に帰って来るそうなので,執事の言うとおり,ごちそうをいっぱい振る舞うしかないようだ。またもや料理も絵画も関係なくてコメントが難しいものの,懐石料理至上主義者の娘として,冷えた缶詰ごはんやMREレーションばかり食べさせられていないことを祈るばかりである。

 

久しぶりに娘から来た手紙へのリアクションと,占い師の恐るべき予言。エンディングまで生々しいのが,今作の特徴のようだ

 

今回育てた娘の,エンディング直前の「プロフィール」。のびのび育てすぎたせいで,かなり整合性のない人格になったようだ。まあ,「神経質」「破天荒」「自惚れ」あたりが,父親の北大路先生に似てるような気もする

 エンディングを二つほど見てみて,またその過程で見えてきたことについて補足しておくなら,娘の「興味」と「教育方針」の重要性だろうか。娘の進路は大枠で,娘が何に興味を持ったかで決まっているように見える。興味を持った分野はスキル/ステータスも週末ごとに伸びるから,確認自体は容易だ。しかし,それに大きな影響をおよぼすのはどうも交友関係らしく,ここを意図的にコントロールしないと,思うような成果は上げにくい。
 同様に,結果を大きく左右すると思われる要素が「教育方針」だ。今回は,当初定めた課題以外なるべく手を触れず,ニュートラルな状態で結果を楽しもうと考えたのだが,放置しておいた分野は中庸に収まるといった,単純なものではないようだ。
 むしろ,その時々の状況を娘の「プロフィール」や占いで確認しつつ,方針変更や「しつけ」で積極的な介入を心がけないと,かなりハチャメチャな人に仕上がってしまう。今回のKINYAちゃんにしても,神経質なのに理不尽な振る舞いが目立つとか,かなりやばめな感じである。
 とはいえ,美食家・北大路先生の子供として見ると,妙に説得力がある気もしないでもない。コントローラブルな部分と方法を把握して,娘の転がっていく方向性に介入,「する」部分と「なる」部分のブレンドを楽しめるのが,このゲーム独特の魅力かもしれない。

 

プレイも終盤に入ってから,引き締め気味の方針に転じてみたが,ほとんど効果は見られなかった。やはり子供を導くには,長期的展望に基づいた具体的取り組みが欠かせないという,ある意味当たり前の教訓を得てみたり

 

 

■■Guevarista(4Gamer編集部)■■
「子育て」に関しては,法で禁じたほうがよいのではないかと思われるほどに似合わない,ミリタリー/ストラテジー系編集者。娘が声優ないし自衛官になるというのは,本当に素でプレイした結果なのだが,どこかに担当記事分野を参照する機能があったとしか思えない展開だ。とりあえず,編集部員のうち誰の介入を疑ったらよいのであろうか?
タイトル プリンセスメーカー5
開発元 ガイナックス 発売元 サイバーフロント
発売日 2007/03/03 価格 9240円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Celeron 2GHz以上[Pentium 4/2GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨]

(C)GAINAX (C)CYBERFRONT


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http://www.4gamer.net/weekly/princessmaker5/002/princessmaker5_002.shtml