「指輪(リング)にかけろ」の連載第三回は,スランプに悩むエディーが,エルフの里ファラスロルンから,ドワーフの里へと足を伸ばしたときのお話だ。
風光明媚なファラスロルンから一転して,物寂しさを感じさせる荒涼とした土地を旅するエディーは,ドワーフの頼みを気軽に引き受けたところ,あれやこれやとこき使われるという,さんざんな目にあったようだ。
普段あまり語りたがらない話だが,なぜ彼が「ドワーフなんてこりごりだ」と思うようになったのか,これを読めば分かることだろう。
ドワーフの里ねえ……あんまり話したくもないんだけどなぁ。
あれはファラスロルンを出て,大雪を避けるため立ち寄った狩猟小屋で,たまたま親しくなったドワーフのオヤジから,ドワーフの里のことを聞いたのが,すべての始まりだったんだ。
あの頃は,ホビット庄に帰っても,まだ良い演奏をする自信がなかったから,気分転換がてら,ドワーフの里まで足を伸ばしてみることにしたんだよ。
狩猟小屋から数日歩いてやっとたどり着いたゴンダモンは,丘の上にどっしりと構えているっていう感じの,かなり立派な町だった。最初は砦かと思ったんだけれど,近づくにつれて町の喧騒が聞こえてきてね。
門をくぐってみたら,思いのほか,人(ドワーフ)が多くてさ。商店や職業訓練所とか,施設も一通り揃っていた。でも,店員がみんな,やたらと横柄なんだよね……。
商品を買おうと思って店員に声をかけると,「用があるなら済ませて,さっさと帰れ!」みたいに,どこかけんか腰なんだよ。最初のうちは,オイラもすっげーむかついたんだけど,どうやらこれが,ドワーフの一般的なしゃべり方らしいね。それが分かってからは,さほど気にならなくなったけど,それでも多少は気に障るんで,ゴンダモン見物もそこそこに,すぐに出て行ったよ。
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ゴンダモンは,競売所を除くほぼすべての施設が一通り揃った町だ。クエストの数も多いので,ドワーフを選択したプレイヤーが,冒険の初期段階で拠点とするにはもってこいの場所となっている。
足を伸ばしてきたエルフのプレイヤーも多く見かけることから,この場所で初めてエルフとのフェローシップを組んだというドワーフプレイヤーも,多いのではないだろうか。
町の背後には,大きなゴブリンの砦もある。ここで受けられるクエストは,このゴブリンの砦だけで完結する手軽なものだ。仲間を募って,一気に攻略してしまうといいだろう。
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ゴンダモンを出てさらに西を目指していると,少しずつ雪が深くなっていくんだ。空なんか明けても暮れてもどんよりとしてて,野山に花が咲き乱れるエルフの里とは大違いだな。そして,その街道が終わるあたりにあるのが,トーリンの館だった。
トーリンの館の何が驚いたって,その大きさだよ。山の上にさ,とてつもなくでかい建物があるんだ。扉なんかオイラの背丈の何倍もあるし,中に入ってみれば,その広さにまたビックリ。
天井なんか見えないくらいに高いし,磨き込まれた床はおいらの顔が映るくらいピッカピカでさあ。その中に,やっぱり武器や防具を売る商人がいたり,競売所があったりと,ありとあらゆるものが揃っているところだった。ぜひ一度は,ドワーフの技術力の結晶ともいえるトーリンの館を,観光してみてほしいよ。
そんなトーリンの館で,バボールというドワーフに出会ったんだ。彼はトーリンの館でドワーフの宝を守る,金庫番だったんだ。
そのオヤジは,機械仕掛けの金庫の扉を動かす装置が壊れたとかで困っていたんだ。予備の歯車がないと,どうしようもないらしいけど,面倒なところに置いてあるらしくて,誰も取りに行ってくれないんだって。
そこでオイラも暇だったし,金庫が動くようになったら特別にドワーフの宝を見せてくれるっていう話だったんで,手を貸してやることにしたんだ。だってドワーフの宝なんて,すっげー興味あるじゃん!
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初めてトーリンの館を見た人は,その巨大さに驚くことだろう。山の頂上に,他を圧するがごとくそびえ立つトーリンの館は,総石造りという,いかにもドワーフのものらしい造りだ。
中には,武器や防具の販売人,競売所,各種生産施設,職業のトレーニングなど,あらゆる設備が点在しているほか,最奥部には玉座があり,警護の兵を従えたドワーリンが鎮座しているのを見られる。ちなみにドワーリンは,小説「ホビットの冒険」(指輪物語の前日談にあたる作品)で活躍したドワーフの一人。ドワーリンを含む13人のドワーフ達は,ガンダルフやビルボと共に,邪竜スマウグに奪われた財宝を取り戻す旅に出たことがある。
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歯車は,トーリンの門から少し行ったところにある,山の上の洞窟の中で発見できた。すぐに見つけてバボールに渡してやったんだけれど,実はもう一個,歯車が必要だっていうんだ。
場所を聞いて行ってみたら,そこにはゴブリンがうようよしていやがった。やられたって思ったけど,乗りかかった船だからしょうがない。オイラのリュートで片っ端からゴブリンをぶちのめし,歯車を見つけてきたよ。
で,その歯車を持っていったら,今度は3番めの歯車がどうのこうのとか言い出してさぁ。おいおいちょっと待てよ,3個もあるなんて聞いてないぜ? って言ってやったんだけど,こっちの話なんかてんで聞かないんだよ,そのオヤジ。
しょうがないから行ったよ,3個めの歯車を探しにさ。古い塚山のどこかだって言うから行ってみたら,驚いたよ。だって,骸骨がそこら中を歩き回ってるような,メチャクチャ物騒なところだったんだぜ。あとから人に聞いたら,あんなところに行く酔狂なヤツは,ドワーフにはいないってさ……。
それでも,なんとか歯車を見つけ出して,持っていったやったんだ。そしたら,もう一個歯車を持ってこいっていう話になっちまってさぁ。今度は狩猟小屋の北東にある,ケレドゥールっていう港町だって言うんだ。
さすがに遠いから断るつもりだったんだけど,あの親父,いかつい顔のわりに話がうまいんだよ。なんだかんだと丸め込まれて,気がついたら行くことになっちまってたよ。
で,やっぱりそこも一筋縄ではいかないところだったよ。そこの町は,ドルハンドっていうごろつきドワーフの一団が占拠しててさ。こちらの姿を見かけようもんなら,問答無用でケンカを吹っかけてきやがるんだ。
そんなこんなで4個めの歯車を持っていったら,「よし,次は最後の歯車の場所じゃが……」とか言ってさ。もうあれだね,開いた口がふさがらないっていうやつ。こうなったら,オイラも意地さ。どうあっても金庫を修理させて,お宝ってやつを拝ませてもらわないと!
最後の歯車のありかは,でっかいクモがうじゃうじゃいる森の中だった。そこかしこに,オイラの背丈をはるかに越えるようなクモの巣が張ってあって,それはもう不気味な場所だったよ。
巨大クモはかなりの強敵だったけど,そこはオイラのリュートの腕前の見せどころさ。全部叩きのめしてやったよ!
蜘蛛の巣まみれになりつつ見つけ出した最後の歯車を,バボールの親父に渡したら,やっと金庫の修理が終わった。そしてついに見せてもらったんだよ,ドワーフのお宝ってやつを。
ドワーフのお宝,なんだったと思う? 見てびっくりしたよ。なんの変哲もない,ただの石ころだぜ,石ころ! 特別に変わったところもない,薄汚れた石だよ!
バボールの親父が言うことには,ドゥリンが自ら切り出したんだとか,ドワーフ最古のアーティファクトだとかなんとか御託を並べてたけれど,そんなことホビットのオイラには何の関係もありゃしないさ。あんなもののために,あっちこっちに行かされて,しかも死ぬような目にまであったんじゃぁ割に合わないぜ,まったく。もうドワーフの言うことなんか,金輪際聞かねえからな,オイラは!
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この歯車クエストでは,すべての歯車を見つけ出してきた後に,レバーを操作して自ら金庫を開けることとなる。4本のレバーを,一定の順番で操作しなければならないのだが,その順番はちょっとした謎掛けになっている。
あえてその順番を明かすことはしないが,まずは操作レバーの前に行き,それから謎掛けの文章をよく読んでみよう。
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Illustration by めざし
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あちらこちらと走り回り,やっと見ることができたドワーフの宝が石ころにすぎなかったというオチまでついてしまったが,気がついたら,音楽に対するスランプは,すっかり解消されていたという。それはそれで,エディーにとっては良かったのかもしれない。
実際のところ,本人が言うほどには,ドワーフのことを嫌ってはいない様子なので,ドワーフの諸君も,中つ国でエディーを見かけたら,気軽に声の一つでも掛けてやってほしい。
というわけで,今週の「指輪(リング)にかけろ!」はおしまいである。音楽性を見つめ直すため(?),異文化交流の旅に出ていたエディーだが,ついにスランプを脱したようである。来週こそは,本格的な冒険が始まるに違いない。ミンストレル・エディーの,「演奏する指の動きがあまりにも速いため,まるでスローモーションに見える」ほどの速弾きテクが,中つ国の巨悪を震え上がらせるに違いないのである。たぶん。
さて,最後はショートムービー「今日のエディー」。いつもは陽気なエディーも,ゴンダモンのドワーフ達が相手では,イマイチ調子が出ないようだ。それでは,また来週。