連載:ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?


ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?

第13回:されど,誰が「満州」?(後編)

 

戦争が始まった。日本との貿易は自動的にすべて解除され,資源収支は大赤字に

 満州国は日本から独立して,親ソ政策をとるもスターリンに受け入れられない。そうこうするうちに躍進した日本が,独ソ戦を勝ち抜いたソ連に痛恨の一撃を浴びせられたところで,満州は連合国入りを決意。日本を呑み込むことで,加工貿易立国としてのシーレーンを守ろうとする……。ここまでが前回の展開だ。すでにドイツはソ連に併合され,日本もまた,ソ連と連合国の挟撃に遭おうとするなか,連合国の一員たる満州国は日本に宣戦を布告した。

 

この連載は,第二次世界大戦あるいはその後の歴史に関わった,いかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていません。ときに過激な表現が出てくることもありますが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものですので,あらかじめご了承ください。

 

 

「シンチンの工業力に1.44の被害!」

 

この攻撃で崩せなかったのが後々まで響く。突然凍結するんだもんなあ

 最初の戦いは朝鮮半島からだ。朝鮮半島は非常にインフラ整備率が高く,部隊の展開が速い。平地の平均的なインフラ整備率は80%と,ヨーロッパ地域に匹敵する。結果として簡単に戦力が一つの戦場に集中でき,一つの無理が大きなダメージにつながりかねない。また,部隊の移動が速いということは,爆撃による被害もそこまで大きく期待できない。ただし,北の山岳部はその地形の負荷に加えてインフラの整備率も低い,例外的な地域だ。そこで,日本軍を山岳部に誘い込んで爆撃で削ることを基本指針とする。
 と,ある意味無難な作戦指針を立てて,いよいよ連合国入りを果たす。それと同時に満州は,日本とその仲間達との戦争状態に突入する。時に1946年10月である。開戦に冬を選んだのは,火力を集中した結果にある程度自信があり,また爆撃効率が上がることを期待したためである。だが,ソビエトが中国方面で快調に進撃を続けるいま,一刻も早く連合国入りして,一時的にせよソ連からの攻撃に対する保障を得たかったというのが本音だ。

 

 定石どおり,爆撃機部隊に阻止爆撃で指揮統制を削らせ,十分に士気が乱れたところに火力を集中,敵の撤退を誘う。仮に撤退まで持ち込めなそうな場合,早めに攻撃停止を命じて,やり直せばよい。こちらは山岳部に建てられた強度10の要塞から攻撃しているのだから,反撃で突破される危険性は皆無だ。

 

東京に五族協和の旗を立てるまではクニに帰らないと約束したもんで。……いやその,クニってどこ? なんとか政体を元に戻した満州の,新閣僚名簿。だが1936年のプレイ開始時にとは,似ても似つかない

 

ICが急低下。最初何が起こったか分からず,慌てて確認する

 攻撃は無事に成功し,爆撃機は日本軍を削りはじめた。だがここで異変が発生する。なぜか満州のICが激減し,ついには60を割り込んで研究ラインが3本にまで減ってしまったのだ。
 一体何が起こったのだろう? 資源は足りている。閣僚は相変わらずのIC−3%だが,それ以上に何か問題があるわけではない。おかしい。
 ……こうなると可能性は一つしかない。戦略爆撃である。戦略爆撃のログを表示させておくと,重要なメッセージを流してしまって不都合な場合があるので,このときは情報ログに戦略爆撃の被害を表示させないようにしていた。ゲームオプションでオンに切り替えて確認すると……

 

「中国(国民党)がわが国を爆撃し,シンチンの工業力に1.44の被害!」

 

 ……国民党中国の戦略爆撃である。いや,国民党空軍もしばらく見ないうちに大きくなったなあ。

 

国民党中国が我が首都および工業地帯を戦略爆撃。いや,される側であれば,南京や錦州など有名な例があるんだけど

 確認してみたら,飛んでいたのは戦略爆撃機ではなく,戦術爆撃機だったのだが,それでも被害はシャレになっていない。
 連合国入りを前提にプレイを進めていたので,制空権はアメリカが勝手に取ると思って,戦闘機を生産ラインに入れてすらいないのだ。いまさら戦闘機を作っても遅すぎる。国民党の爆撃機は中国の奥地から飛んでくるので,途中にアメリカが支配する空域はない。そして,極東ソビエト軍に制空権などという概念はないようだ。

 

 これは予想以上に厳しい戦争になりそうだと思いつつ,ログをよく見てみると満州の近接攻撃機が空戦を挑まれたという項目があった。結果としてどちらが勝ったとも負けたともなく,交戦した飛行隊はほとんど損傷を受けていない。
 これはいけるかなと思い至って,近接攻撃機に制空権をとるよう命令してみる。結果は正解で,我が近接攻撃機と敵の戦術爆撃機では,我が近接攻撃機が数で押し勝ったため,しばらくの間は戦略爆撃が止まった。まともな対策とはいえないし,朝鮮半島での地上戦効率を犠牲にしているのでデメリットも大きいのだが,当面やむを得ない。

 

朝鮮半島中央部に入ると,戦闘は過酷そのものに。ちょっと油断すると簡単に包囲され,全滅する

 国民党の空襲を食い止めて一息ついたところで,再び朝鮮半島の戦闘に戻る。基本的には勝ちパターンで,陸軍の質でも劣っていなかったため全体としては滞りなく進んだ。
 ただし,1回の総攻撃で補充のための労働力が20だの30だの必要になるのは,満州にとってけっこうな痛手である。そんな戦闘は避けたいのだが,朝鮮半島も中部に入るとインフラ整備率が高いうえに地形が狭いので,小競り合いがすぐ大規模な衝突に発展してしまうのだ。
 とはいえ行き足を止めるわけにはいかない。ときには退き,ときには決然と押し込み,その間空軍がえんえんと爆撃を繰り返すうちに,1949年末に朝鮮半島はチョンシン(清津)を除き,満州国の支配下に降った。

 

釜山に日本軍の残存部隊を押し込んで殲滅。残るは北方のみ

 かくして,日本にとって最後の大陸プロヴィンスであるチョンシンに篭もった日本軍を,どう掃討するかが問題になった。チョンシンは海浜の山岳プロヴィンスで,港がある。日本海の制海権は日本軍にあるため,頑張って爆撃している間にも増援が揚陸されたり,どうかすると帝国海軍の艦砲射撃で攻撃を封殺されたりする始末である。おまけにソビエト領にも隣接しているため,一歩間違えると撃退後にソビエト占領地になってしまう。
 結局,チョンシン攻めでは,わざと包囲陣を1か所下がらせて日本軍のスタックを挑発し,AIが空白地に攻め込もうとしたところに爆撃と反撃でトドメを刺すというトリックを使った。
 赤軍とのチョンシン占領レースでは,相手は渡河なので負けないだろうという確信はあったが,世界最速の部隊の一つである司令部ユニットを単独で突っ込ませることで確実を期した。何を再現しているのかよく分からないが,司令部は地形による移動ペナルティを受けにくいうえ,とにかく足が速いのである。しかし,戦って大丈夫なのかなあ,この人達。

 

ハイスタック+艦砲射撃が手に負えなかったので,おびき出してカウンター。ちょっとずるい

 

 

海ゆかば水漬くかばね

 

朝鮮半島を失うと,日本のICは80を割り込む。IC勝負的には満州と日本が完全に逆転した

 朝鮮半島制圧後は,いよいよ日本本土に上陸である。日本海の制空権は連合側と共産側が掌握しており,日本海は自由に爆撃機が飛びまわれる。
 偵察を兼ねて九州近辺に爆撃機を飛ばしてみると,なんと九州は無人だ。まるで1936年の満州のように,軍の姿が見えない。大阪に歩兵が見えるものの,いかにインフラ整備率が高いとはいえ,ここからでは北九州への上陸を阻止できないだろう。
 朝鮮半島陥落が確定したころから造り置きしておいた輸送艦(艦艇の研究はまったくしていないので,これしか造れない)を,新しく建設された満州国唯一の軍港に配備,12隻体制で九州上陸を目指す。

 

このときは,敵部隊のいない地点への上陸作戦なんて楽勝だとしか思っていなかったのだが

 まずは1隻を無人のまま対馬海峡に送り込む。そのうえで,海峡には爆撃機16ユニットを哨戒させる。罠の火力は十分だ。
 案の定,帝国海軍の駆逐艦や軽巡洋艦が現れるが,爆撃の前に指揮統制値を失って撤収したり,撃沈されたりしている。これは案外簡単にいけるかもしれない。
 そう思っていると,30隻オーバーの空母機動部隊が姿を見せた。艦載機による攻撃によって,囮の空船は退避行動をとる前に撃沈される。艦隊戦が始まると進行にポーズがかかる設定にはしてあるが,だからといって抵抗できるとは限らないのだ。
 ともあれ,仇討ちとばかりに爆撃部隊が群れ集って爆撃,空母2,戦艦1と補助艦多数を撃沈するという大戦果を得た。機動部隊は損害の大きさのあまり海域から脱出,爆撃範囲外に逃れる。

 

このあたりの空母を沈めて,一人悦に入っている場合ではなかったのでありました

 

早くて長い3日間。この部隊は結局,日本の土を踏むことなく対馬海峡の藻屑に

 海の護りの中核たる機動部隊が逃げ去った以上,上陸を仕掛けるならいましかない。というわけで,今度は5隻の船に3個師団を載せて上陸を仕掛ける。2隻までは沈んでも陸上部隊に被害はない。
 と,今度は戦艦を中心とした高速水上打撃部隊が出現する。あわてて上陸艦艇を引き返させるが,あっという間に5隻すべてが沈む。砲兵つき3個師団は対馬の荒波の中に消えた。
 復讐の念に燃えて爆撃機が打撃艦隊を徹底爆撃する。今度も戦艦1を筆頭に多くの艦艇が大破あるいは轟沈し,再び対馬は静かになった。試しに囮の空船を1隻出してみるが,周辺海域に帝国海軍の姿はない。  今度こそ,ということで,3隻に3個師団を積んで上陸を仕掛ける。上陸にかかる時間はだいたい3日,3日間襲撃がなければ北九州の軍港は満州の手に落ち,釜山で待つ多数の陸上部隊はピストン輸送で本土になだれ込む。
 息詰まる時間が過ぎ,あと20時間で上陸というところまできたとき,やはりというかなんというか,帝国海軍空母機動部隊が出現する。爆撃機が必死で抵抗するものの,上陸艦艇は部隊もろとも海の藻屑。悔しすぎる……。
 悔しすぎるうえに,何かがおかしい。空母機動部隊の構成が,さきほど撃退したものと大きく違っている。今回出現した艦隊のほうが全体に新造艦が多い。
 これはつまり……日本は30隻編成の空母機動部隊を二つ持っている,ということになる。答えはそれしかあり得ない。そしてこれ以外にも,高速打撃艦隊が最低一つは存在している。きっともっとたくさんあるのだろう。なるほど,日本がまったく無防備なのに,連合国が日本に1歩も踏み込めていない理由が納得できた。

 

なりふりかまわぬ一大上陸作戦ののち,ついに日本の地を踏んだ奇跡の兵士が出現。ここまでの犠牲といったらもう……

 だがここで「まこと日本は不沈空母よ」とかうそぶきながら1953年末を迎えるつもりはない。ここで手を引いたら,対馬の波間に消えた6個師団,確実に6万人を超える人々に,何と言って詫びればよいのか。
 不退転の決意を固めたところで,陰惨な作戦に切り替える。船は量産ラインに載っており,予備はすでに15隻ほどある。これをすべて1隻ずつにばらし,1個師団ずつを載せて日本海側の上陸可能地点すべてに波状攻撃を仕掛ける。1個師団でもたどり着けば,我々の勝ちだ。
 爆撃機は日本海上空を哨戒し,機動部隊を待ち受ける。まずは囮の空船で誘って打撃艦隊を撃退,もう1部隊の打撃艦隊も撃退したところで空母機動部隊が出現,空船が沈む引き換えとして機動部隊にもダメージを与える。
 ここまでの対艦戦闘で爆撃機部隊の損耗も激しいが,後には退けない。戦力数値が0%になるまで,昼夜問わず作戦を実行しろ,つまり,勝つまで生きて帰ってくるなという命令を出し,限界に挑む。アメリカの空母機動部隊が周辺海域をふらついているので,下手に途中で諦めたらアメリカに上陸を許すことになりかねない。
 目標地点は北海道,広島,北九州。それぞれの地点に4回の強襲上陸を仕掛ける。
 まずは第一陣,ほぼ全滅確実の部隊。案の定,日本海のあちこちに師団が沈んでいく。だが日本の阻止部隊は機動部隊が2部隊,それだけになった。
 続いて第二陣。これもまず間違いなく全滅を覚悟。やはりハイエナのように艦載機が襲い掛かってくる。だが旧式艦艇中心の機動部隊には,大きなダメージを与えることに成功した。
 第三陣。できればここで決めたい。と,ふとここで思い立って,北海道に向かうはずの部隊を沖縄のさらに南方の海域に旅させてみる。残りは北九州と広島。
 広島の上陸部隊が空母に捉まるが,いままでと違って逃げる余裕が出来た。相手もダメージは深い。ここで貴重な1日を稼ぎ,その間の爆撃で空母2隻を仕留める。結局金沢沖で捕捉されたが,輸送艦を撃沈したあとの部隊は北に回航していく。
 南の海域に向かった船は,最新式の機動部隊に捉まって,一瞬で沈む。だが,この段階で勝負はあった。その海域から北九州は対馬海峡まで戻る間に,上陸は確実に完了する。
 計算どおり,見事第三波が北九州の大地を踏む。しばらく空爆で周辺海域を洗い,安全を確認したところで残る3個師団を北九州に輸送する。強襲上陸と違い,船での輸送は迅速に陸揚げが終わる。かくしてほとんど無防備の日本本土に,満州陸軍4個師団が上陸したのである。

 

いそいそと占領用部隊を送り込む。一度上陸してしまえば敵はいない

 

とりあえず日本の主要パートの占領が完了。ここから南洋諸島および東南アジア遠征が始まる。資源の値が振り切れているのに注目。溜め込んでたんだなあ,日本

 果てしなく多大な犠牲を,果てしなく無謀な方法で支払いつつ,五色旗が日本に翻った。北九州には空港もあるので,爆撃機を北九州に移し,日本国内に唯一残っていた歩兵部隊を爆撃で消し飛ばす。残るは守備隊のみだ。
 本土はインフラの整備もよく,爆撃機による阻止攻撃の支援もあるとなっては,守備隊1個師団程度で4個師団司令部付き部隊の攻撃を退けることはできない。日本軍はあろうことか自国のインフラを爆撃して満州軍の進撃を遅らせようとしたが,あまりにも努力の方向性が違うとしかいいようはないだろう。まあ,ある種のリアリティが感じられていやーな感じではあるが。

 

本土を確保したあとに沖縄上陸作戦。このころはまだ日本にもちょっとは元気があった 話題の硫黄島も,あっという間に陥落。日本の基礎ICが1とあっては,要塞化もできない

 

豊原に立て篭もった日本軍最後の大部隊に,空襲と強襲揚陸と兵糧攻めとソビエトの攻撃に相乗りの4点セットで迫る

 いったん本土を陥落させてしまえば,太平洋の島々やインドネシアなどを攻略していくのは作業でしかない。日本は東京に莫大な資源と物資を蓄えており,これをすべて接収した満州国は世界有数の資源大国となった。逆にいえば,日本は艦隊を動かす石油も,島々に展開する守備隊のための物資も,すべてを一瞬で失った。
 失った師団の補充と,輸送船の統合,守備隊の再配置などに2か月を費やすうちに,世界中で日本軍はその姿を消していった。主力の機動部隊はインドネシアに逃れたが,彼らが再び外洋に出ることはなかった。
 満州軍はフィリピンに上陸,工兵を付けた歩兵師団で全島を素早く制圧して,再独立させる。そしてその足でインドネシアを制圧すると,ここもまた再独立させた。日本最後のVPプロヴィンスは豊原で,そこには10個師団を超える日本軍最後の精鋭が残っていたが,指揮統制を削る爆撃を仕掛けるだけで,自然に崩壊していった。最後の一押しに強襲上陸をかけ,豊原を満州領としたところで,満州は世界に向けて日本の併合を宣言することになる。

 

フィリピンに上陸し,抵抗らしい抵抗もなく全島陥落,即座に再独立

 

ついにこの日が。日本もまさか満州による併合条約に調印する日が来るとは思わなかったことだろう

 

 

世界最終戦争論…ですか?

 

結構な数の在欧州ソビエト衛星国が,ソビエトとの軍事同盟に加盟していない。それって本当に衛星国なのだろうか?

 この間,満州はただ太平洋に広がる日本軍基地を丹念につぶしていただけではなかった。連合国と共産圏が共通の敵としていた日本が消滅したいま,「超大国」は次の戦争を探すだろう。そのときにも満州は生き延びねばならない。
 この瞬間,満州には「連合国を去る」という選択肢もあった。フィリピン,インドネシアといった相応の資源を持つ属国を従え,やがて日本を独立させ,高度な海軍開発力から生み出される青写真をもとに満州国海軍を正式に設立し,東アジアの海洋を基盤とした連合体を作るというわけだ。
 しかし。仮にこの後でアメリカとソビエトが激突するとして,満州はフィリピンやインドネシアを戦禍から守れるだろうか? 議論の余地なく不可能だ。満州は自分の身を守るのが精一杯だし,それすらもしっかりした貿易ルートが確保できてこその話だ。結局,満州は「世界」に依存せずには生き延びられない。

 

そして第三次世界大戦へ。大丈夫,満州はもう倒れない

 1950年11月16日,アメリカはソビエトに宣戦布告する。ちょうど連合軍と共産圏の地上部隊が接していた中東では,即座に激烈な戦闘が発生,シリア国境付近で膠着した。
 連合軍と共産圏が地上で接しているといえば,満州とソビエトもそうなのだが,その間には険阻な山々と森,沼といった自然障壁が横たわっているのに加え,満州側にはレベル10の要塞という鉄壁の防備が待ち構えている。あまりに広大な領土と莫大な数の部隊を持つに至ったソビエトは,もはや部隊を効率的に動かすことすらできない。要塞建設に不向きとして満州が捨てた地域を占領せんと行軍するだけで,1か月以上を要した。

 

ソビエトと満州の関係はそれほど悪くない。義理と人情の絡み合った,複雑な極東情勢

 ソ連側から満州要塞に向かって発砲がなされることもなかったし,満州側からソ連軍に発砲することもなかった。満州とソ連はいまだ良好な関係(指標的には+105)にあり,トーチカに対する爆撃がときたま行われる以上の出来事はなかった。
 仮に本気でソビエトが満州攻略を志したとしても,要塞内部には機械化歩兵とエリート歩兵による大部隊が,連携を保ちつつ待ち構えている。爆撃で要塞線を破壊しようとしたところで,地対空ミサイルとレーダー網が完備されつつあるいま,話はそう簡単には進むまい。

 

要塞守備隊の一般的な編成。戦車とかは無理でも,機械化歩兵なら満州で実用レベルのものが開発できる。ソ連もそうそう動けない 連合国では上から3番目の軍事力を備える満州。この面子なら3番は当然という気もするが,もともと満州は,満州だったんですよ?

 

ソビエト潜水艦の通商破壊に対抗すべく,ついに満州国海軍が誕生。だがこれが全然役に立たない

 ただし,ソ連海軍だけは意気軒昂で,潜水艦隊をもってすれば満州国を日干しにできると踏んだのか,新旧取り混ぜ8ユニットで通商破壊に出た。だが,日本海軍相手に戦い続けた爆撃部隊にとってみれば,戦闘経験のない旧式潜水艦部隊など敵ではなかった。
 開戦直後こそ通商破壊によって資源備蓄に多少の損害はあったが,それも全備蓄量の1%以下。そもそも10万単位で資源を備蓄している満州(各資源20万〜40万ずつ。ただし石油は10万程度)に,トータル1%規模の資源損害を与えること自体,まるで無理な話ではあるが。

 

来るべき日本再独立の日に向けて,国内に工場を増築しておく

 なお米ソ開戦が急だったこともあって,満州国防衛ラインの最終的な完成を優先したため,日本の再独立は後回しとなった。もっとも満州では日本のICに相当する工場を3年で建設する(国外プロヴィンスのICは20%しか利用できないので,満州にとって日本は約15ICに相当する)計画が実行に移されており,1954年中旬には日本の再独立が果たされるであろう。
 ちなみに要塞線は,核攻撃から始まる総攻撃には耐えられないし,防衛ラインとして耐える構造にもなっていないが,ここに核が投下されたならば,そのときは満州の危機ではなく人類の危機であり,おそらくもう取り返しはつかないだろう。核攻撃の兆候があるときには,ソビエト領内に大量にもぐりこませたスパイを使って,核兵器の破壊を試みるしかあるまい。

 

満州と,東アジアの愉快な仲間達。「赤い民主主義国家」,それが満州

 やや余談に属するが,今回のプレイにおける最後の数年で,スターリン主義からファシズムにまで戻った満州は絶対王政に移行,ついには社会保守派として民主国家になった。もっとも「ユーラシア大陸における自由と民主主義の最後の砦」を気取るのは,いささか難しい。なぜなら経済体制はソビエト並みの統制経済,社会も比較的閉鎖的であって,そこは自由主義諸国に似ても似つかないからだ。
 とはいえ,そんなちぐはぐさは満州で取り立てて問題にすべきではないかもしれない。今回の満州を旧共産圏風言辞で要約するならば,こうなるだろう――

 

 満州の支配者は誰か? そいつは難しい質問だ。
 日本人が満州に来たとき,溥儀は皇帝だった。だが実権はなかった。
 ロシア人が満州に来たとき,溥儀は書記長だった。だが実権はなかった。
 アメリカ人が満州に来て,溥儀は大統領になった。だが実権はない!

 

 

世界に見捨てられた国を拾うのはプレイヤー

 

世界のミリタリーバランスを一覧で。ソビエトはあの広さに対し827個師団,アメリカが攻勢正面を一つに絞って300個師団ほど投入すれば,打ち破れると思われる

 独立満州で面白いのは,プレイするたびに違うシチュエーションが生じることだ。満州が生き延びるためには,工業化と要塞化は不可避のケースが多い。しかし満州の資源産出量に限界がある以上,工業化満州は世界とどう付き合っていくかを,常に考え続けねばならない。うまく立ち回れば立ち回るほど,どんどんミスの代償が高まっていくスリルは,なかなかチャレンジ精神を喚起するものがある。
 また,忍びがたきを忍び,侵略の恐怖に耐えつつ,実質ゼロから自力で積み上げた国家というのは,なかなか愛着が湧くものだ。戦略級の常としてこのゲームにも一種の成長/育成要素はあるが,それを最大限に楽しめる国の一つかもしれない。

 

最終的な満州の技術開発状況。実質完全に真っ白な状態からここまで埋まる。不可欠な産業/情報関係技術を押さえ,あとは一点豪華主義でいけば軍事的にも見劣りはしない。海軍はこれからの課題だが

 

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
本作のプレイに費やす時間が,生活のなかでシャレにならない水準だという噂がもっぱらの,PCゲームライター。前作における満州国プレイとは方針を変え,サンドボックス的挑戦に徹した今回は,とくに事前の試行錯誤が多かった様子。「もう一度やっても,情勢がどう動くか次第で,まず同じ結果にはなりませんよ」とは彼の弁だが,その多くは中国,ソ連,日本のいずれかに呑み込まれて終了というあたりに,プレイの難しさと興味深さが集中しているようだ。
タイトル ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ 完全日本語版
開発元 Paradox Interactive 発売元 サイバーフロント
発売日 2006/08/04 価格 通常版:8925円,アップグレード版:4725円(共に税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/800MHz以上(Pentium III/1.20GHz以上推奨),メインメモリ:128MB以上(512MB以上推奨),グラフィックスメモリ:4MB以上(8MB以上推奨),HDD空き容量:900MB以上

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http://www.4gamer.net/weekly/hoi2dd/013/hoi2dd_013.shtml



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敗北を抱きしめて 上 増補版
ジョン・ダワー著。これを日本人以外に書かれてしまったことの衝撃が,ひところ言論界を賑わした,日本戦後史概説の決定版。

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