― 連載 ―

ハーツ オブ アイアンII 世界ふしぎ大戦!
第16回:どこまで続くぬかるみぞ(日本)

 第二次世界大戦に参加した各国の歴史を追体験するストラテジーゲーム「ハーツ オブ アイアンII」で,思うさま史実と異なる道を選んでみる本記事,最終回はここ,日本からお届けします。

 

 明治維新以後の日本は,帝国主義列強に肩を並べるべく,ほぼ一貫して対外拡張政策を採り続けます。日清戦争で朝鮮半島の支配権を中国から奪い,その支配を脅かすロシアを日露戦争でかろうじて退けたのち,次なる目標は朝鮮半島の後背に位置する満州(中国東北部)となりました。
 日露戦争前後からしばらくの間,イギリスとアメリカは日本に,東アジアにおけるロシア勢力のストッパー役を期待していました。しかしその政策も,第一次世界大戦およびロシア革命(革命干渉戦争/シベリア出兵)を経て,次第にトーンを変えていきます。

 広く知られているように,第一次世界大戦の講和条件を定めるベルサイユ会議において,日本は人種差別撤廃条項の提案を取り下げる代わりに,中国における帝国主義権益の承認を列国から取りつけ,対華二十一か条要求を不問に付させることに成功しました。ベルサイユ会議には,中華民国政府の代表も出席していたにもかかわらず,です。
 その後の経過を見るにつけ,東洋の国家である日本が人種差別問題というカードを国際政治の舞台で何に使ったかは,重大な意味を持っていたように思われます。ネガティブな要素も多大に含みつつ,日本は西洋列強の仲間入りをし,また同じベルサイユ条約によって日英同盟は破棄。諸列強とイーブンな立場で植民地争奪戦を演ずることは,確かに近代日本の一つの到達点でした。

 ここでクエスチョンです。日本の中国侵略は,1930年代後半にあってはさまざまな意味で既定の路線といえるものでした。しかし,例えば東洋経済新報の石橋湛山が主張したように,満州の直接支配は(人道的な側面はひとまずおくとして)経済面から見合わないという,同時代人の冷静な意見もありました。米英と対立してまで独自の支配領域の獲得を目指すことは,本当に必然的な選択だったのでしょうか?

 

日本の選択画面。アメリカの脅威をどう捌くかが鍵になるが,材料の多い国といえる。今回は今回で奇妙な展開になるものの,奇妙な遊び方はいくらでも考えられる

 

自由度の高さ/低さが複雑な日本プレイ

 さて,ついに日本である。ここまで日本を避けてきたのには,さまざまな理由がある。最後の枢軸国である日本で連載を締めたいというのも一つだが,一番大きいのは,「日本はプレイとしてあまり易しいとはいえず,かつプレイの選択肢が限られる」と推測していたことだ。その理由はいうまでもなく対米戦争である。
 日本は海洋国家であり,国土をいきなり占領される不安がないうえ,比較的短時間で大兵力を遠方まで運べる。そして,ゲーム開始前から中国大陸に武力介入しているため,はじめから陸海空の三点セットがそこそこ揃っている。実を言うと,少々トリッキーな手を使えばアメリカ上陸作戦さえ可能だ。だが,ゲームの“穴”を露骨に突くのでなく,多少なりとも戦略的リアリティを考慮するとなると,残される選択肢はそう多くない。
 だがこの連載も16回,ここまでハーツ オブ アイアンIIと向き合ってきて,さすがに筆者もさまざまなノウハウを習得した。今なら日本でもアメリカに踏みつぶされたり,中国で泥沼の戦争をしたりする以外のことが,できるのではなかろうか。いや,できねばならん。
 というわけで日本篇,プレイ方針に沿ってできることはなるべく試してみたので,ぜひお付き合いいただきたい。
 なお,はじめにお断りしておきたいが,この連載は第二次世界大戦に関わったいかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていない。ときに過激な表現が出てくることもあるが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものである。あらかじめご了承いただきたい。

「国力の現状」を把握してみる

このスライダーを1コマ動かすと,日本はいきなり社会保守派に。このままゲームを進めたほうが,戦争したいときにできるぶん便利だった,とプレイを終えてから思う

 日本プレイではとりわけ,「この国をどのように運営するか」という方針立案が大切である。そのために,まずはざっと現状を整理してみる。ICは修正込みで100を超える程度,基本ICが80を超えているので,技術ラインは5本ある。だが資源は乏しく,とくに石油は絶望的だ。仮に陸軍を全部歩兵にしても,それを運ぶ輸送艦で石油を消費する日本にとっては,重い重い十字架である。だが,エネルギー以外はICに対して必要十分な供給がある。
 労働力800は多くも少なくもないが,日本が展開していく戦線の広大さを考えると,少ないと言わざるを得ない。政体は絶対君主政で,ゲーム的に(ある意味で)最も影響の大きい軍隊システムは,徴兵制と常備軍の中間くらい。どちらか極端に寄っていればと思うが――というか切に寄っていていただきたいが――中間程度が現実だ。まずはそう認識しておこう。

 

高度な水準にある技術スタッフ。海軍と空軍の開発力はとくに素晴らしい

 ゲーム開始時点における軍隊の充実度は,異常といえるレベルだ。技術水準の高い空母機動部隊がいれば航空部隊もあり,陸軍も旧式とはいえ十分な数の歩兵がいる。輸送艦もさすがに数が多い。陸海軍ともにドクトリン研究はかなり進んでおり,とくに海軍はインチキと言いたくなるくらい高度なドクトリンを確立済みだ。
 技術開発陣もなかなか充実していて,アメリカやドイツに比肩し,部分的には凌駕する。山本五十六のスキル9は文字どおり神といっていいし,海空軍の開発力は飛び抜けている。またレーダー研究や暗号関係技術にも,それぞれ適した開発スタッフが存在する。計画的に研究していけばミッドウェイで苦杯を舐めずに済む……かもしれない。
 まとめると,「技術は超大国級,生産力はぎりぎり大国と呼べるか否かのライン」だ。史実と照らし合わせての議論は尽きないと思うが,ともあれゲームとしては非常に楽しめるセッティングである。
 比較的分かりやすい国内事情に対し,日本の置かれている国際的環境は厄介である。項目別に整理してみよう。

 

●中国大陸方面

 

 中国大陸は,前回の国民党プレイを見れば自明だが,資源<IC地帯である。また世界有数の労働力を誇る土地ではあるものの,海外労働力の使用には一定のペナルティがあるので,笑いが止まらないほどの労働力を確保できるわけではない。
 またヨーロッパと比較すると,ICや資源の生産量に比較して国土が広大であり,占領地では激しいパルチザン活動が生じる。戦争経済には限りなくつらい土地である。

 満州国は日本の属国となっている。エネルギーの輸出国となるほか,戦線をつなぐ歩兵を供給し,またソ連との国境を防衛する。
 一方,このゲームにおける朝鮮半島と台湾は日本の中核州に設定されており,日本がこれを独立させることはできない。そしてこれら海外領土だけで見ると生産資源の量がICを下回っており,日本にとっては“外付け工場”である。

 日本はゲーム開始時点で,大陸侵攻への足がかりとなるプロヴィンスを複数支配しているが,対中戦争における軍事的価値以外に見るべきものはない。
 国民党および軍閥は日本軍の強敵ではない。歩兵は日本軍とて1917年式が多いものの,ドクトリン研究の差は圧倒的であり,まず負ける要素はない。全部を一度に相手にするのは厄介だが,抗日統一戦線が作られる前に叩き,個別に講和して切り崩せば,深刻な敵対勢力にはならない。
 一方,中国共産党は歩兵と山岳歩兵の質で日本軍を凌駕しているが,日本軍は1年以内に追随可能で,ドクトリン研究では圧倒的優位に立っているうえ,こちらには航空支援もある。山岳の要塞と合わせ,国民党と軍閥よりは圧倒的に危険な相手だが,その初期においては素早い殲滅が可能な範囲にある。
 忘れてはならないのがソ連のプレッシャーだ。極東はソ連にとって辺境なので,戦争になった瞬間に赤い津波に飲み込まれる心配はない。しかし,ICと労働力の差はいかんともしがたく,独ソ戦の期間以外日本にチャンスはない。また,日ソ戦争をしている間は,これに全力を投じなければならない。

 

●南太平洋/インド洋方面

 

 東南アジアおよびインド周辺は,豊かな資源産出エリアである。またパルチザン発生率も全体に低く,手に入れておいしい土地であることは議論の余地がない。最大の問題は,そこが島である=海運が必須ということだが,それを言い出すと日本はどこにも行けないので,恐れてはいけない。
 オーストラリアとニュージーランドの海軍は,いざ敵に回すと少々厄介だ。オーストラリアそれ自体が連合軍の巨大な空軍/海軍基地となるので,できれば切り崩しておきたいが,経済的にはあまりおいしくはない。

 

●北部/中部太平洋方面

 

 太平洋は戦場であって資源エリアではない。アメリカと戦争をすると小さな島々の奪い合いになるが,奪ったところでもちろん経済効果はない。その島に補給物資を送らねばならないので,即物的に見ればマイナスである。

いたってプライベートな「帝国国策遂行要領」

やる気になれば,これを口実に対ソ戦に踏み出すことも可能。準備さえしっかりしておけばそれなりに勝てる。最後は結局ドイツ頼みだが

 さて,現状を整理したところで,何をすべきか考えよう。まあゲーム的にはどうかと思うが,絶対にやってはならないのは,アメリカとの戦争である。このゲームのA.I.がいかに上陸作戦下手だとしても,あの物量を相手に戦争するのは無理だ。おまけに日本経済に必要な資源を確保するに当たって,一番安全なのが対米貿易なのだから,一番のお客と戦争をするのだけは避けねばならない。
 ここですぐに思いつくのは「中国なんて知りません。満州? それ何ですか。アメリカさんと仲良く貿易できればそれでいいですよ」という,引きこもりプレイである。引きこもりといっても,アメリカはなかなか連合国に加盟しないので,うまくアメリカを孤立させつつ「連合国」とのみ戦争すれば,インドを解放したりできる。
 また,それは結局アメリカが連合国に入ったら破算するだけのバクチだというならば,アメリカの資源供給を受けて「おいらは愉快な反共十字軍」をやる,という手もある。日独で同盟を結ばず,しかし友好関係は維持するという立場,かつ親米路線(イギリスはどうでもいい。物資を売る相手としては,ドイツ様とアメリカ様がいれば十分すぎる)を堅持する。そして,ドイツの対ソ戦に呼応して満州国境から北上すれば,シベリアでヒトラーとがっちり握手も可能だろう。

 だが。しかし。悲しいかな,これらはすべてハーツ オブ アイアンII日本プレイにおける「定石」なのである。このゲームにおいては,どれもこれもまったく不思議でないプランなのだ。いや,何も無理しなくたって世界は勝手に不思議化するのだが,それはそうとしてシベリア遠征は前回中国国民党がかなり変則的な形であれ,やってしまった。2週連続でシベリアで赤軍と戦うのは,プレイヤー的にも食傷気味だ。
 さて,では何をどうしようか。せっかくだから今まで意図的にはやらなかった方針で戦ってみたいものだ。
 というわけで,「アメリカとは戦わず,対外拡張もする」ために「日米同盟を組んでアジアから既存の列強を排除する」ことを目標にしてみよう。アメリカはモンロー主義を建て前にカナダを傘下に収められるし,日本は大東亜共栄圏どころか環太平洋(たぶんインド洋も含む)共栄圏を夢想できる。なんだか日本にばかり都合の良い話に聞こえるが,そのあたりの不謹慎さが,このゲームの魅力でもあるのだから仕方がない。
 ハーツ オブ アイアンIIにはParadox伝統の「政体スライダー」があり,これを民主/独裁,右翼/左翼の間でいろいろ変動させることによって不思議政府を樹立できる。スタート時に日本は絶対王政だが,これをアメリカの政体である社会自由派に近づけていけば,日米同盟だってきっとできるに違いない。もしその過程で日本が連合国に入ってしまったら……そのときはヨーロッパに日章旗でも翻すことを考えるとしよう。

現実には一番変えられなそうだが

 さて,大いなる野望に向かう最初の一歩は,いたって地味に政体スライダーを左翼方向に1コマ動かすことだ。これで日本は絶対王政派から,社会保守派の国家になる。まだまだ行きますよー。
 社会保守派はアメリカの体制である社会自由派に近いため,放置していても両国の関係は少しずつ改善する。素晴らしい。
 そのうえで,次にやるべきは対中戦争である。「アメリカと仲良くするんじゃなかったの?」と聞かれそうだが,アメリカにはあとで謝っておくことにしよう。

 

2月7日には対中戦線準備完了。えらくたくさん部隊がいるように見えるが,満州国軍との混成である

 1936年2月26日以前に対中戦争を始めてみたところ,2.26事件は発生しなかった。2.26事件イベントは国内体制を絶対王政〜ファシズムに引きずるので,これに再現性があれば有効な一手となる。もっとも,中国で抗日統一戦線が結成される前に対中戦争を終わらせてしまいたいというのが,この策の主眼なのだが。
 大陸の日本軍だけだと若干不安が残るものの,満州軍を動員する(今回のプレイでは,同盟国かつ属国の軍隊に限って統帥権を取ることにした。同盟国全般の軍隊の統帥権を取ることにすると,最終的には米軍を動かせることになるわけで,それは避けた)ことで戦線の穴を埋める。
 山西軍閥は部隊数こそ多く見えるが,敵をそれだけに限れば問題になる数ではない。山西軍閥にとって,敵対する中国共産党のエリアは「金床」でしかないし,また相手の軍隊が打たれ弱いので,併合の条件である「首都とVPプロヴィンスの占領」だけを目指して,多少の包囲を恐れず軍を動かす。そうこうするうちに条件を満たしたので,素早く併合をクリックする。
 で,筆者はいきなりここで凡ミスをする――中国特有の激しいパルチザンに辟易して,山西軍閥を独立させたのである。パルチザンは補給物資の到達阻害要因でもあるので,煩わしいことこのうえないためだ。

 

ケアレスミスでクーデター。ある意味ヒストリカル。せっかく社会保守派にしたのに,一気にファシズムになってしまった。舵取りもなかなか大変

 が,実はこのとき日本の国民不満度は宣戦布告などの影響で10%超。占領プロヴィンスの独立でさらに上昇し,右翼クーデターイベントが発生。地道な努力も空しく,日本は一気にファシズム国家になってしまった。
 ここでセーブデータのロードも考えたが,目先の戦争のことを考えるなら,ファシズム体制が便利なのは事実。素直に運命を甘受しよう。
 山西軍閥領のパルチザン発生率が0%になったことで前線は活性化,そのまま国民党との戦争にもつれ込む。まだ統一戦線が出来ていないせいもあって,広西軍閥が国民党に宣戦布告。国民党とがっぷり四つで戦争すると,けっこう時間がかかるのだが,南北から挟撃してしまえば敵ではない。あっという間に国民党の戦線は崩壊,1937年1月には無事併合となった。
 この併合イベント,国民党が降伏すると,中国共産党以外の全プロヴィンスが日本に降伏する。当然,今までの盟友(いや同盟はしていないが)広西軍閥領もである。かくして日中戦争は実質11か月で終了した。うーん,どうなんだろう,これ。

 

山西軍閥を独立させてパルチザンを絶ったのち,広西軍閥との挟撃。二正面作戦に耐えられる国民党軍ではなく,あえなく陥落
中国の属国化は……無理

イベント「敵国から奪った技術」で国民党から青写真を奪取! ……敵国?

 さて,国民党の降伏イベントにおける大きな選択肢が,その後の中国をどうするかという問題である。要は日本が併合する(日本領にする)か,傀儡政権を立てるか,に分かれるのである。
 ここで中国全土を日本領にすると「ヨーロッパ ユニバーサリスII」の安定度−3が可愛く思えるような,大パルチザン祭りが展開される。これをすべて守備隊で抑えようとすれば,今度は守備隊維持に物資が要求される。そして,守備隊はいちいち海を渡らせて配置しなくてはならない。

 一方,傀儡政権を立てても,なぜかこの政権,ちっとも傀儡になってくれない。いや一応同盟国として軍隊の統帥権などは取れるのだが,資源のバーターにしても青写真の交換にしても,敵国扱いのレートである。事実「敵国から青写真を奪うイベント」が,傀儡国民党相手に発生したりする。どういう傀儡なのかとも思うが,もしかすると深いデザイン意図が込められているのかもしれない。

 

三択だが実質ニ択といってもいいだろう。傀儡は一見すると損なのだが,ちゃんとメリットもある

 

新国民党。併合してみたところで,結局海外ICも労働力も100%を利用できるわけではない。それよりも,技術供与して優れた軍隊を組織させ,統帥権を取って利用することで,文字通り2国分の力を使えるわけだ

 どちらも実にやりきれないが,ここで筆者は迷わず傀儡化を選んだ。このとき,筆者のなかには黒いアイデアが成立しつつあったのである。
 それはそうとして,とりあえず山西軍閥と西北軍閥を独立させる。「我らが血を流して獲得した土地を手放すなど!」と,日本国内では再び右翼クーデターが起こり,今度は絶対王政政権が立った。……スライダーを動かし直す手間が省けるというものだ。
 ちなみに,独立させた国はそのときの宗主国の政体を引き継ぐので,中国はファシズム一色である。……正直,国家と国民に申し訳なし。

 

無理な独立政策で再度国民不満度を上げてしまい,またもやクーデターが。今度はファシズムから絶対王政に戻って,もうけものだ

 日中戦争で疲弊した戦力を回復させ,多少悪化した日米関係も改善し,技術開発と物資生産を主体として,日本は平和を謳歌した。政体スライダーは毎年左翼方向に動かし,社会保守派への復帰も果たした。もののついでに中国共産党も併合しておく。この期に及んで国共内戦が起こるとも思えないが,不安要素は可能な限り取り除くべきだろう。  毛主席の未来はさておき,この「次の戦争までの平和」において,日本はほとんど軍拡らしい軍拡を行わなかった。海軍艦艇だけは建造したが,陸軍については山岳歩兵を増強し,戦車を生産した程度で,大動員は避けた。それよりも,生産した膨大な物資をアメリカに売って大金を獲得,それを米・独・ソにばらまいて,世界の主要国とマブダチ関係の日本を構築する。  もっとも,軍事面で進展がなかったわけではなく,技術開発だけは全力で行った。そして獲得した技術は,ほとんど仮想敵国といっていい関係にある国民党に投下していった。国民党はその見返りに何一つよこさないのだが,別に問題はない。代償はのちほどきちんと払っていただきますから。

 

アデュー,毛沢東。中国共産党の跡地に何か国家が出来るかなと思ったが,残念ながらそんなことはないようだ。いや,プレイ上は残念じゃないのだが 日本を盟主とした謎の同盟。西北軍閥や広西軍閥が名簿に連なっているのが熱い。効率を考えるなら,たぶん両方とも独立させないほうがいいとは思う

 

この体制最大の問題は,政府首班に「同盟の確率−20%」があること。なんとかならないではないが,正直厳しい

記念すべき真珠湾会議(仮称)。非常に戦争向けでない野坂参三だが,彼がいなければ成功率は43%。え,えーと,ありがたみも微妙……

 その傍ら,日本の左傾化(というか中道化)と民主化をどんどん進めていくと,日本はついに社会民主派となり,国家元首である「大本営」は引退,代わって野坂参三が元首の地位についた。このゲームにおける彼の能力はずばりマイナス効果なのだが,一つだけ光り輝く能力を持っている――「民主国家との同盟の可能性+30%」である。当然ながらアメリカは民主国家,日米同盟が視野に入ってきた。それはそうとして,民主国家アメリカは戦時体制もしくは著しく介入主義に偏らないと軍事同盟に加盟しない。わくわくしつつも,じっと我慢である。

 

この手のイベントを使って右翼/左翼をスライドさせていくと楽でいい。1年1回しかないスライドは,できれば常備軍化のほうに使いたいところ
ということで,野坂政権発足。なんというか全体にこれはどうかな,という人材が溢れているが,要はアメリカとの同盟が第一。考えてみれば,ここでスライダーを止めて,同盟してから大本営体制に戻せばよかったかも

 

 そうこうするうち,1939年には独ソによるポーランド分割,1940年にはフランス降伏と,ヨーロッパでの戦争が本格的に始まった。ヴィシー政権が立つや,仏領インドシナを割譲していただく。
 インドシナもそのまま日本領にしておいて問題ないのだが,はっきりいって今回の日本に工業力はいらないので,むしろ資源を積極的に輸出してくれる同盟国にすることにした。かくして「インドシナ」国の誕生である。ベトナム・ラオス・カンボジアに分割して独立させると面倒なうえ,各国個別のリソースが低下するので避けた。将来もしベトナム戦争があったとしたら,アメリカ軍は「ここから先はラオスだから入っちゃダメ」とか考えなくてもいいわけだが,歴史にそれどころでない変化をもたらしているので,気にしないことにしよう。

 

ヴィシーフランスからインドシナを割譲してもらうところ。マダガスカル割譲まで望むのも魅力的だが,成功率は低い

 

 その後,ドイツから三国同盟のオファーがあったものの,当然却下。ドイツと戦争するつもりはないが,それはそうと,同盟する以外にも「協力する」ことはできる――などと思いを巡らす1941年4月,アメリカがついに完全な戦時体制に移行。同盟が組めるようになる。
 おそるおそる同盟打診をしてみると,成功率73%! そして一発で成功した。日本外交が勝利した瞬間である。よく分からないが,真珠湾のミズーリ号,もしくはサンフランシスコで調印式をしたに違いない。
 この瞬間,アメリカの連合国入りはなくなった。まあ,日本が味方になるより,アメリカが敵にならないほうが総統閣下の野望により大きく貢献してしまうのだが。

 

まだ防共協定だが,あえて拒否してみた。Ver.1.3aパッチ以降のドイツさんなら,ソ連くらい単独でなんとかできると思いますよ 三国軍事同盟。これをやるとドイツが盟主の「枢軸」同盟に入ってしまうので,アメリカと組めなくなる。今回は却下
北太平洋条約機構,とかなのか?

国民党の弱点は資源不足。アメリカから資源をもらって,それを国民党にばらまくと国民党の生産効率向上。自前で軍隊を作らなくていいのが楽でいい。軍隊の内容はシェフにお任せになるが

 日米同盟を締結した今,ゲームには勝ったも同然である。即座に日本の研究してきた高度な海軍技術と艦艇技術の青写真をアメリカに提供する
 この段階で,日本とはいかなる国家に変貌したか。簡単に見てみよう。実軍事力は,大国水準に達していない。イタリアに陸軍の師団数で劣るほどである。海軍は空母機動部隊を有するが,大艦隊というわけではない。空軍は技術開発こそしているが,海軍爆撃機を少数作ったのみ。一方で,各主要兵科の技術水準は世界的にいって最高水準を維持している。  そんなひ弱な国家が何をするというのか? いや,このプレイにおける日本は断じてひ弱ではない。陸軍は,日本の技術をもとに国民党が無尽蔵の労働力を使って生産している。インドシナは戦車の生産を始めた。海軍はアメリカが巨大としかいいようのないやつを持っている。空軍でもアメリカを上回る国はない。

 

独立インドシナ。軽戦車や中戦車を生産してくれるので,戦線の突破正面に持っていける。かなりありがたい 1941年のアジア情勢。順調に環太平洋共栄圏(あるいは北太平洋条約機構)は発展中

 

 日本軍は数こそ少ないが,戦車やロケット砲兵付き歩兵など,突破力に優れた軍隊を構築している。日本軍とインドシナ軍が突破し,国民党軍が戦線を維持する。資源はアメリカや各同盟国が供給し,海の安全はアメリカが守り,守りに入った敵にはアメリカ空軍が爆撃の洗礼を浴びせるのである。
 ちなみに1941年中盤で日本の労働力は1700弱。いかに日本人が戦争に行っていないかを象徴するような値である。このゲーム内の日本人にとって,軍隊とは「特別な訓練を受けたプロフェッショナルのみが所属する場所」であって,戦争は「海の向こうで起こっている,何か特別なこと」なのだ。……書いていてだいぶ複雑な気分になってきたが,それはさておき,日米同盟の力を世界に示していくとしよう。

 

本当はいろいろイベントがあるのだが,クーデター一撃で全部すっとばして同盟成立。謀略好きの血は健在なのか?

 最初の目標はシャムである。シャムは日英が開戦すると自然に日本側につくのだが,この場合,日本の初期侵入ルートは山また山でインパール作戦そのまま。そこでシャムを前もって同盟に引き込みたいのだが,相手は絶対王政,こっちは社会民主制,友好度+200なのに同盟の可能性は0%と言われる。
 というわけで,情報大臣宇垣の登場である。彼には「クーデターの成功確率+20%」があるので,シャムの政体に揺さぶりをかけてもらう。クーデターは無事成功し,社会民主派シャムが誕生した。そこで同盟を打診すると,快くイエスという返事。なんというか,基本的な倫理観を麻痺させつつ,政策を推し進める。

 

クーデターで社会民主派になったシャム。これで同盟も楽に

 

ク号作戦実施! いやその,たまたまポーズしたらクリスマス直前だったっていうだけなんですけどね

インパール作戦……じゃなかったク号作戦。すでに日本軍のスタックは彩り豊かな状態。これからもっと豊かになる

 シャムを同盟国にしたところで,日本陸軍と国民党軍を中心とした軍隊をシャム/イギリス国境に配置,イギリスに宣戦布告する。ときに1941年12月24日23時。クリスマスイブで防備が弱まったところを攻撃するこの作戦は「ク号作戦」と呼ばれた……かどうかは定かでないが,とにかくまずはインド方面に進出する。同じ英領でも,ロイヤルネイビーが元気なうちにインドネシアやオーストラリアに侵攻するのは不利だ。
 対英戦争勃発と同時に,アメリカはカナダに進撃開始,1942年初頭にはカナダを併合する。ちなみに1936年だとカナダがアメリカを併合できたりもするらしいが,そんな話題はさておき。
 日本(と国民党)は怒濤のようにインドを進撃,ろくに戦争準備ができていなかったイギリス軍は,日本軍の戦車の前に追い散らされていった。1942年7月にはロイヤルネイビーの主力が沈んだので,インドネシアにも進駐開始。日本軍を先頭にシャム・国民党軍がインドネシアを占領していった。同じ頃インド戦線も終結,イギリス軍は南アジアから追放された。

 

インドネシアのオランダを駆逐。ICとしても,資源としても,おそらくここが日本にとって1,2を争うおいしいエリア。ゲーム終盤になるまでインドネシア独立だけはさせられなかった 南アジアも解放。ネパールやブータンがこっそり日本領だが,この2国もおいしかったので手放せず。軍隊を提供してもらっても,あの山から徒歩で軍を港まで下ろすことを考えると……
アメリカがカナダを併合。1941年12月25日開戦だから,割と時間がかかっている。実際のところ意外とカナダ軍は精強だったりもする

 

独立インド。ここも豊かなICと労働力で優れた軍隊を提供してくれる。で,ときにガンジーの評価ってそんななんですかね?

オーストラリアとニュージーランドを併合。これで連合国がもつ太平洋の海軍・空軍拠点は全滅。太平洋は日米同盟軍のものに。満州国海軍だって遠出できます

 インドのICはちょっと魅力的(さらにパルチザンもないのでおいしい)だったが,いまさら日本のICがどうこう言ったところで誤差である。それよりはインド軍を率いてイギリスと戦ったほうが絶対楽しそうだと踏んで,インドとパキスタンを独立させる。
 1943年にはオーストラリア,ニュージーランドへの侵攻も開始,パプアニューギニアで激戦となったものの1944年には併合に成功。両国はそのまま日米同盟の一員として再独立を果たした。
 ちなみに栄えある大日本帝国海軍はロイヤルネイビーの空母機動部隊を壊滅させたうえ,空母がいなくなったあとの機動部隊の残骸,つまり戦艦と巡洋艦と駆逐艦の群れとのリベンジマッチに大敗を喫して壊滅した。大艦巨砲主義が空母機動部隊を圧倒した瞬間を目撃した山本五十六の胸中や如何。アメリカが空軍と潜水艦で後始末をしたからよいものの,戦術レベルでの不思議現象はいかがなものかと。
 ともあれ太平洋は完全に日米同盟の庭となり,いまや日本の視線は中東の解放へと向けられた。別に中東を解放しなくても,石油についてはアメリカ,インドネシア,ブルネイから無償援助を受けているのでとくに問題はないのだが,東アジア,東南アジア,南アジアときて,西アジアを解放しない道理があるだろうか。ということで日米同盟軍はクウェートに上陸するのであった。
 あー,そういえば世の中には中央アジアっていうのもありましたね。うん。あそこってどうもドイツ領になりそうなのね。独立したい場合はヒトラーのおじさんに頼んでくれないかなぁ。うん。

 

ロイヤルネイビーの空母機動部隊が壊滅。制海権の行方は決まったといってよいだろう,とか思ったんですよ,このときは
今回の日本の技術水準の高さを示す一コマ。アメリカに一方的な技術供与。日本が偏った技術発展をさせているので,もらうものがないせいもあるが,渡す技術に注目。えー,これまだできてないのー? 状態である
中東解放のための間接的アプローチ

勢い込んで中東に上陸,ついに英軍との本格的な戦闘に突入

 さて,意気揚々と中東に乗り込んだ多国籍軍を待ちかまえていたのは,日英開戦までにアメリカからのレンドリースで肥え太っていたイギリスの大軍である。インド戦線とは比較にならない,本物の戦争が始まった。最終的にイギリス軍は50個師団を超え,こちらはなんとか40個師団を輸送できたところ。イギリス軍にはアメリカ製の戦車も揃っていて,我が「チヘ」戦車の突破を許してくれない。これは困った。
 ここで筆者は考えた。イギリスは全部で陸軍120個師団ほど。アフリカに少しいるだろうから10個ほど引いて,グレートブリテン島には70個いるかいないか,のはず。戦車師団の数を考えても,イギリス本土にはあまり戦車がいないという結論がでた。
 ここで砂漠の消耗戦をやっていてもらちがあかない。いや消耗戦自体は無尽蔵の国民党歩兵がいる多国籍軍有利だが,非常に不毛な展開だ。むしろ今こそ,ロンドンに日章旗を掲げるチャンスなのではないか。

 

ハイ・スタックが林立する英本土の戦い。ここでは見えないが,シェフィールドに英軍の塔が立っている

 思い立ったら即実行。海兵隊を生産するとともに,上陸用舟艇を大量生産,南京にスタックされたよく分からない数の国民党軍を上海〜ウェーク島〜アカプルコ〜マイアミ〜グリーンランドと輸送する。約40日の船旅である。ちなみにグレートブリテン島上陸作戦の策源地は海軍基地のあるアイスランドなのだが,島が狭くてマウスクリックがしづらいため,まずは広いグリーンランドで休養してもらうことにした。
 ほとんど半年かけて各国陸軍(インド戦車とインド自動化歩兵あたりは日本軍と変わらない精強さである)をグリーンランドに搬送,こっそり中東戦線からも日本の機甲部隊を引き抜き,さらには編成されたばかりの最精鋭海兵隊師団に自走ロケット砲旅団を付けて(燃料消費を気にしないでいい日本って素晴らしい……)上陸部隊の最先鋒とする。
 まず1945年1月に孤立していた北アイルランドを占領,ここに空軍基地を建設する。1945年8月30日,エジンバラに上陸作戦を開始。アイルランドから飛び立った爆撃機と,日本機動部隊の残存艦艇が支援砲火を形成するなか,海兵隊6個師団が英本土上陸に成功。待ってましたとばかりに合計40個師団程度の多国籍軍が,英国の地を踏む。
 上陸に成功した海兵隊は小休止させて指揮統制値を回復させると,次はプリマスに強襲上陸。エジンバラの上陸部隊に対処すべく北上を始めた英防衛部隊の裏をかいてドーバー側の橋頭堡確保に成功,そこにすかさず20個師団ほどの精鋭部隊がなだれ込む。
 多国籍軍はエジンバラの大兵力を囮(おとり)かつ牽制としつつ,ロンドンに進撃。バーミンガムを占領すると,英軍主力が南下を始めたのでエジンバラの部隊を南下させ,そのまま包囲網を完成させる。英50個師団ほどが一瞬で壊滅し,英本土決戦は終幕を迎えた。ロンドン突入の一番槍をつけたのがインドの戦車師団と国民党の歩兵だというのも,実に皮肉な話である。
 ここまできたらもう勢いに任せるということで,スコットランドを独立させて今後の成長に期待する。

 

英本土の戦い,終局。分かりにくいが,これでも包囲網である。英軍を連続的に敗走させ,指揮統制値が崩壊した大部隊を袋小路に追い込んで一気に殲滅する 日印中によるロンドン制覇。インド戦車が驚きの最新鋭なところに注目。そもまま主力を張れる。これが勝手に生産されてくるのだから,言葉にできないありがたさ
思い立ったので大規模に作ってみた航空騎兵。石油消費量が尋常でないが,全世界の産油国のほとんどから援助してもらっているので,問題なし 本邦初公開(推定),日本軍の航空騎兵。技術の粋を尽くしたヘリコプター師団の正体はこれだ! ……って馬じゃないだろ,馬じゃ
ナチズムとの思想的対決は,将来の課題か

こんな変なスペインも一度作ってみたのだが,同盟には入らないという

 さて,ここから先,多国籍軍にはまだ選択肢が残されていた。一番大きな選択肢は,対ドイツ宣戦布告して「世界を日米同盟に染める」かどうかである。これは成功したらある意味で最高の結末だが,ドイツ国境と満州国境が接点を持ちつつあり,いまドイツに宣戦すれば,それはもう凄まじいことになるだろう。
 せめてモスクワが陥落してソ連とドイツの講和イベントが起きれば,シベリアはソ連領に戻るので対独戦をしようという気力も起きるのだが。

 

日本の隣国,ドイツ。モスクワも陥落しソビエト全土の併合に成功している

 

 ちなみに多国籍軍最大の問題は,統帥権を取った国の軍隊を戦略再配置できないことである。なのでどうしても動きは鈍重だ。また師団の統合も不可能なので,簡単に指揮負荷ペナルティをもらったり,速度の違う部隊がバラバラに進撃して進撃先で各個撃破されたりする。
 ともあれ対独戦は回避するとなると,狙うはイギリスの併合かアフリカ解放となるだろう。
 イギリスの併合は,ジブラルタルにどうしても手が届かないので諦めた。ジブラルタルはVPプロヴィンスで,これを占領しないとイギリスは降伏しないのだが,

 ・ジブラルタルには上陸作戦を仕掛けられない
 ・ジブラルタルに届く空港が利用できない
 ・スペインではクーデターを誘発して同盟工作までしたにもかかわらず同盟しない
 ・せめて空挺降下でと思いポルトガルにクーデター&同盟工作をしたが同盟成功率0%
 ・ヴィシーフランス領からなら空挺降下が可能だが,ヴィシーフランスは旧フランス植民地で独自の同盟を形成しているので同盟工作はできない

 要するに,無理。もうちょっと対英戦開始を遅らせ,ヴィシーフランスがアフリカでの領土をすべて失うタイミングを狙えば,元フランス領北アフリカからのアプローチが可能だったろう。あるいは日本を民主化させすぎず,独裁的に宣戦布告できる国にしておけば,スペインに宣戦して併合,独立,ジブラルタル攻略の三段活用をさせることもできた。いずれの道も社会自由派にまで移行した日本には無理なので,諦めてアフリカ攻略をしてみた。
 日米同盟が太平洋だけでなく,インド洋,大西洋までを完全に「我らが庭」とし,日の沈むことなき大同盟を構築したところで1947年が終了。アジア諸国が独立し,イギリスが完膚なきまでに没落した世界でVP的に枢軸(というかドイツ)の勝利というのは,もっぱら西欧的ヒューマニズムの功罪という観点から,かなり微妙な世界を作り上げたことになるのだろう。

 

夢と希望の詰まった国家も作ってみた。イラク北部に,ちゃんとこんな国家が 石原莞爾,アフリカで騎兵を率いて戦う。普通あり得ないと思いますがね,ええ
かなり新しいアジア。実にいろいろな国が。新国家は宗主国の技術をある程度引き継ぐので,日本の技術水準が高ければ高いほど強い軍隊を量産してくる 「連合国」が地上から消え去った瞬間の貴重なショット。アメリカは世界の覇権をかけてドイツに宣戦布告。いや,一番被害受けるの日本なんでカンベンしてください
手段としての「戦争」を見据えるゲームデザイン

 さて,最後なので総評じみた私見を少々述べてみたい。ハーツ オブ アイアンIIは,一見するとParadox作品らしい「抽象化の妙」に欠けているように思える。確かにほかの作品にないほどデータは詳細で,個々の戦場における采配が重視されるのだが,実は本質的なところでParadoxの芸風は健在であって,それが近代の戦争の本質をうまく捉えている。
 このゲームから想像できるのは,要するに総力戦という形態が存在しうる世界では,戦争は基本的に損だということである。「中立を堅持,物資を生産しては戦争している国に売って資源を買い,国内の工場を運営する」という箱庭的遊び方は,ハーツ オブ アイアンIIにおいて一つのプレイ指針なのだが,この「工業化」プレイと,普通の戦争をするプレイを比較すると,前者のほうがあらゆる意味で国家が効率良く機能することに気づかされる。
 戦争をして,負ければ当然多くのものを失い,たとえ勝ってもハーツ オブ アイアンIIでは「勝ち」の維持にリソースが要求される。その維持費は,ときに勝利によって得られる報酬を帳消しにし,最悪,伸びきった補給線と,守りきれないほど長大な防衛ラインのみが残る。「ならば最初から戦争なんてしなければいいじゃないか!」いやはや,多くの場合これは真実なのだ(余談だが,ハーツ オブ アイアンIIのアメリカは,民主的で開放的な社会を“黒字で”維持できる数少ない――もしかしたら唯一の国家であり,それはつまり「勝ち」の維持費が最少限で済むことを意味している。このゲームにおけるアメリカの本当の強さはそこにある)。
 それでも,なかには儲かる戦争だってあるのが複雑だ。そういう戦争は,もし「儲ける」ことが国家の目的であるのなら,手控える必然性がない。その戦争によってさまざまな動揺が生ずるかもしれないが,それも含めて利益のほうが大きいなら,その手段を排除することはたいへん難しいのだ。もちろん,計算を間違えれば悲惨なことになるし,人間の性として,つい戦争のために戦争をするハメになることも多いのだが。
 Paradox作品において戦争とは,「政治における一つの手段であり,そこには明確な目的と,しっかりした利害計算がなくてはならない」という位置付けになっているように思う。そしてその視線は,かなり戦争そのものを扱ったハーツ オブ アイアンIIにおいてさえ,失われてはいない。ハーツ オブ アイアンIIは確かに戦争ストラテジーゲームだが,戦争は常に「選択肢の一つ」でしかないのだ。

 さて,これで当連載は終了するが,筆者自身まだまだ積み残した話題のあるゲームと認識している。当連載はこのゲームの遊び方の,ほんの一部を紹介しているに過ぎない。4月4日には「Hearts of Iron II: Doomsday」(英語版)も発売されるわけで,しばらく遊べる作品である。
 人類がいる限り世界にミステリーは尽きない。またいずれ,どこかのふしぎな世界大戦でお会いしよう!

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
知らないほうが幸せに違いない知識を,本連載で十二分に活用したゲームライター。プレイ終盤の展開をめぐって「ロンドンにチャルカの旗を立てるんですよ!」と気軽に提案してみたところ,きちんとインド陸軍を連れて行くあたり,予想以上に真面目な人らしい。ただ,さすがにインド独立の闘士スバス・チャンドラ・ボースは登場してくれないそうで,残念がるやら安心するやらである。
タイトル ハーツ オブ アイアンII 完全日本語版
開発元 Paradox Interactive 発売元 サイバーフロント
発売日 2005/12/02 価格 8925円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/450MHz以上[Pentium III/800MHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:4MB以上,HDD空き容量:900MB以上

Hearts of Iron 2(C)Paradox Entertainment AB and Panvision AB. Hearts of Iron is a trademark of Paradox Entertainment AB. Related logos, characters, names, and distinctive likenesses thereof are trademarks of Paradox Entertainment AB unless otherwise noted. All Rights Reserved.


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