― 連載 ―

グラナド・エスパダ:えすぱ田家の人々
最終回:刮目せよ。えすぱ田家の未来と主人公の脚に

「母さん,まずは怒らないで聞いてほしいの。えすぱ田家の長女めありぃ姉さんとついに,ポルトベルロで会うことができました。姉さんは海賊も廃業して,今は母さんに会いたがっています。どうか彼女を許してあげてください。もう一つ,きっと母さんは怒るでしょうけれど,私達兄弟はこれからお父様に会いに,恐ろしいあの場所へ向かいます……」

カフェ「セイウチ」に集うえすぱ田三姉妹。いっそ,泪・瞳・愛とか名乗らせればよかったかも

 一家の歴史でその存在すら隠されていた,長女めありぃ・えすぱ田との再会を果たした主人公達。ポルトベルロからほど近いコインブラで,ねりーとめありぃの二人も長い空白の時を埋めるがごとく語り合うのであった。

「ろーら,こちらへいらっしゃい」

静かにほほ笑んでろーらを手招きし,めありぃは重い口を開いた。

「あなたはまだ,お父様の顔を知らないのね,可哀想に。お母様はあなたに教えなかったでしょうけれど,私達のお父様は……ジャケン収容所に無実の罪で囚われているのよ。あの3年戦争の終りからね」

 

 息を呑む主人公。なにせジャケン収容所は新大陸グラナド・エスパダが持つ歴史の闇である。つい先日まで旧大陸にいたろーらですら,その悪名を知る場所なのだ。
 もともとは3年戦争中,捕虜を収容するために建てられたジャケン収容所だが,戦争終了後も捕虜達は政治的な取り引き材料に使われ続け,収容所の名を口にすることはタブーとされてしまったのである。そして,えすぱ田家当主,ちゃーるず・えすぱ田はその財を妬んだ同国人の策謀にはまり,スパイ容疑で拘束されたままであった。父の顔を知らずに育った娘,ろーらの胸中に燃え上がる炎。

リボルドウェ市内で撮影されたとおぼしき1枚の写真。リボルドウェには「写真好きの少女」がいたりするが,以前述べたように世界初の写真技法「ダゲレオタイプ」が発明されたのは1839年

「姉さん,兄さん,お父様を救いましょう。私達の手で」
「それには,あの子の助けが必要だわ……」

ねりーは,カフェ「セイウチ」の奥から1枚の写真を取り出してきて,ろーらの手に載せた。プラチナブロンドをばっさり切り落とした,美しくも猛々しい一人の女性が写る写真。手にはショットガンが握られている。

「次女のきゃりー姉さん。お父様から直接銃の手ほどきをうけたあの子は,男だけに任せておけぬとばかりに,3年戦争に義勇兵として参加したのよ。“魔女”と呼ばれたその腕前は,ポルトベルロにまで聞こえていたわ」

 ここに来て,面白いように家族の情報が集まるえすぱ田家。いや決して,最終回だから残りのプロットを使いきっちまえというわけではないのだが。
 思えばろーらは多種多様なスタンスを操る剣の名手,ねりーは短剣の使い手,めありぃは曲刀と拳銃を愛用し,3人が3人とも接近戦メインだ。うぃりーは唯一治療が可能なスカウト職,ただ一人滞空モンスターを相手にできるあるまんぞは虚弱体質ときている。魔女の名を欲しいままにして戦場を駆け抜けた次女,きゃりーの手はぜひとも借りたいところだ。

「すぐにでも出られるよう,旅支度は私達に任せて。ろーら,あるまんぞ,きゃりー姉さんに会って来なさい」

 

グレイス・ベルネルリこときゃりー姉さんは最初からレベルが高く,銃に関するほとんどのスタンスが使える

 再び野を越え山を越え,旅の始まりの地であったリボルドウェへ戻ってきた,ろーらとあるまんぞ。おるそん兄さんへの挨拶もそこそこに,二人は写真だけを手がかりにきゃりーを探し回る。しかし,何度も写真を見るうちに,ろーらの頭にぼんやりとよみがえってきた記憶が一つ。あ,やっ,この人は日雇いアルバイトをくれた,グレイス・ベルネルリさんじゃないですか! まあついでに言うなら,彼女が親切にもくれた銃を,即座に売り飛ばして食べ物に替えたわけですが……。グレイス・ベルネルリはおそらく世を忍ぶ仮の姿,お父様の例を考えれば,かつての敵や悪意ある同国人から身を守るための,偽名だったと思われる。
 唐突に姉妹だと名乗り出たろーらの話に,じっと耳を傾けるきゃりー姉さん。すべての話を聞き終えると,彼女は黙って店の中に姿を消した。あぁ,姉さんの力は借りられないのか……肩を落とす主人公だが,しばらくするときゃりーは何かを手に戻ってきた。

「これを持っていきなさい。お父様が若い頃に愛用していた名剣デュランダルよ。わたしには,コイツがあるわ」
「……姉さん,ありがとう」

ショットガンを愛しそうに撫でるきゃりーの目は,ろーらのそれによく似ていた。

ジャケン収容所の死闘,父との再会

 リボルドウェからジャケン収容所への道は,リオン平原を経て続いている。ただしリオン平原に出るには,「アル・ケルト・モレッツァ」「テトラ大遺跡」「ポルトベルロ」の探索を終えて,新大陸拓殖会社の許可をもらうことが必要だ。街から比較的近くて移動費がかからない点は助かる。
 リオン平原から水辺の風景が心なごむ「ボナピスタ支流」を越え,景色が一変する「ジャケン噴火口」へ入れば,ジャケン収容所は目前だ。

 

リオン平原は,街から近くて敵が多い,おいしい狩り場。全滅してもすぐに出直せるため,気にならないのが長所だ。オレンジ色の鳥はコカトリスだが,触れても石になったりはしないので安心 隣のボナピスタ支流は水辺の景色が爽やかなマップ。ぴょんぴょんと跳びながら近づいてくる「サマ」が敵ながら愛らしい。これでワニ皮の一つでも落とせば,もっと可愛いやつなのだが

 

ジャケン収容所は「党」設立と,上級ダンジョン開放のために一度は突破せねばならぬエリアだが,難度は高い。とにかく防御重視で,パンをくわえながら,曲がり角でちょいワルだけど素敵なモンスターにぶつかったりしないよう,走り抜けるのがコツだ

 溶岩が流れ,火山灰が空を覆う,暗いジャケン収容所前。そしてここから先,生きて帰れる保障はどこにもないことを知るえすぱ田家の子供達。誰からともなく,父の救出に向けた決意を込めて,剣を合わせるのであった。
 ちなみに,通常の戦争捕虜の取り扱いに関する初の近代的な合意「ハーグ陸戦条約」が締結されたのは1907年。それまでに捕虜の取り扱いをめぐる慣習はある程度成り立っていたとはいえ,近代的な意味での人道概念は未だ形成途上であり,ましてやスパイは通常の戦争捕虜ではない。ろーら達が収容所での待遇と合わせて父親の身を案ずるのも,無理はないのだ。

 ジャケン収容所内部は,レベル70〜80の敵が当たり前のように出現する,今のところ最も難度の高いエリアの一つになっている(5月19日の大規模アップデートでだいぶ変わりそうだが)。レベル60以上でもあっさり戦闘不能に陥る危険区域なので,ここを突破したければフェルッチオ・ブレッドとフェルッチオ・ミルクを1000個単位で購入したい。もしもスカウトなしで挑むならば,移動速度が上がる消費アイテム「スティミュラント」も必須だ。

 

ジャケン収容所は高レベルプレイヤーにとっても挑戦の場。このエリアをおいしいと感じるようになれば,現在のマップで恐い場所はどこもないだろう

 

 えすぱ田の兄弟達が肩を寄せ合って戦う,その先に現れた巨大な階段。その上に現れた人影は……

「お父様! ちゃーるずお父様っ」

女海賊が,カフェ「セイウチ」の気丈な女主人が,3年戦争の魔女が,武器を放り出して泣きながら走り寄る。男の子ゆえに泣けぬあるまんぞとうぃりー。ろーらは初めて見る父の足元にそっと跪いた。

「お前はめありぃ…それにきゃりー,ねりー」

 上の3姉妹は覚えているちゃーるずも,見ぬ間にすっかり成長したあるまんぞと,赤子の姿すら見ていないろーらには気づかない様子。しかし,いつまでも再会を喜んでばかりはいられない,ここはまだ収容所の中だ。長い収容所暮らしで片目の視力を失ったちゃーるずではあるが,その剣の腕前は衰えておらず,ろーらが持つ長剣「デュランダル」にちらりと目をやりほほ笑むと,ちゃーるずは先頭をきって収容所脱出のために敵中へ斬り込んでいった。

 

父との再会に泣き崩れるろーら。救出直後なのに,ちゃーるずが武器や鎧を身に着けている点は,あまり聞かないでほしい
ていうか,ちゃーるず父さん,別に助けなんぞなくても,一人で脱出できそうな迫力ですが……

 

 こうしてえすぱ田家の子供達は,無事に父ちゃーるずを救い出した。ろーらが旧大陸の実家を離れてはや1年が経過しているが,生き別れたすべての兄弟との再会を果たし,あとはもう一度,家族が一つ屋根の下で楽しく暮らせれば……。そう切に願うろーらに,父ちゃーるずはこう答えた。

「みなで新しい土地に移り住もう。本国の母さんも呼び寄せてな」

 旧大陸の家には悲しい思い出が多すぎる。それに加えて,ねりーやおるそんのように,グラナド・エスパダで新しい生活を始めた兄弟達にとって,この土地を離れることは難しい。そう判断したちゃーるずは,家族全員を集めて商工都市「オーシュ」への移住を提案したのだ。
 忌まわしきジャケン収容所を後にして,えすぱ田家は再び旅に出る。しかし今度のろーらの旅は一人ぼっちではない。そこには家族がいるのだから。

 

チューリンゲン森は緑のトカゲ(?)が闊歩するエリア。足が遅いのでかわせるが,同時に出現するバッファローの体当たりは,なかなか痛いので要注意 こちらは敵が一切いないチューリンゲン湖畔エリアだ。抜けるような青空が美しいマップなので,ここを訪れたらぜひとも空のグラフィックスを見てほしい 長い旅路のすえに辿り着いた商工都市「オーシュ」。どこかノスタルジックなコインブラとは違い,勢いを感じさせるアーケードの前で,家の行くすえを想う

 

それから……5年後のえすぱ田家

 さて,ここからは後日譚。無事オーシュに到着し,あとは旧大陸に残った母と祖父を呼び寄せるだけとなったえすぱ田ファミリーがどうしているか,ちょっとだけ覗いて見よう。

 

 あるまんぞは,ウォーロックの娘「ろーず」と結婚し,すでに一児の父である。今はオーシュで土産物屋を営んでいる。

 

 ねりーとあるばーとは,なんとコインブラのカフェ「セイウチ」をたたみ,オーシュで心機一転,店を構え直してしまった。今度はアビシニアン料理レストランではなく,ケーキ屋さんである。店は繁盛しており,バイトにケーキ売りの少女を雇っているほどだ。

 

 さて,我らが主人公ろーら・えすぱ田だが……。以前解説したように,20代前半はこの時代の結婚適齢期。16歳で冒険を始めたろーらも今や22歳のお年頃になってしまった。ご覧のとおり,今日もろーらはニーソックスで元気です♪

 

 物語の最後は結局“絶対領域”になってしまうこの運命を呪いながら,そろそろお暇(いとま)申し上げましょう。とはいえゲーム内では,えすぱ田家はまだまだ子孫繁栄にがんばりますので,よろしくお願いいたします。えすぱ田家に幸あれ!

 

 

えすぱ田家家系図
えすぱ田家家系図
■■麻生ちはや(フリーライター)■■
E3 2006特集で箱庭系やシミュレーション系の新作が報じられるたびに,わくわくしつつチェックしていたというゲームライター。せっかく「ファンタジー=アレンジされた中世」というお約束を打ち破った「グラナド・エスパダ」の記事を,絶対領域で締めてしまうあたりに,何かへの比類なきこだわりが感じられる。ここまで来たら,リアルタイムストラテジーやフライトシミュレータでもぜひ,ニーソックス道の探求に努めてほしいところである。
タイトル グラナド・エスパダ
開発元 IMC Games 発売元 ハンビットユビキタスエンターテインメント
発売日 2006/07/21 価格 基本プレイ料金無料,アイテム課金
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c),CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/2GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce2 MX 400以上[GeForce4 TiまたはRadeon 9000以上推奨],グラフィックスメモリ:64MB以上

(C)2003-2007 IMC Games Co.,Ltd./Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.


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http://www.4gamer.net/weekly/ge/006/ge_006.shtml