美しい姉と優しい義兄を囲む夕べを楽しんだ,ろーらとあるまんぞだったが,翌朝あるまんぞの胃には異変が起きていた。見知らぬ土地では水を飲んでも腹を壊すような体には,どうやら異国アビシニアン料理は刺激が強すぎた様子。さらに間の悪いことに,コインブラは旧大陸との玄関口で栄えているとはいえ,もともとはただの漁村だ。残念ながら,苦痛に悶えるあるまんぞを診察できるほどの医療施設は備わっていない。
街一番の知恵者「グルトルデン」氏の話によれば,遥か遠くにあるという商工都市「オーシュ」には,設備の整った病院があり医者がいるとのこと。ろーらは青ざめたあるまんぞに治療費を握らせ,彼は海路オーシュへと旅立つのであった。
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| しっかりしているようで,まだまだ子供のろーらを,精神的に支えてくれていた兄,あるまんぞがここで表舞台から退場。そして,なけなしの旅費は兄の船旅+入院費用に消えてしまった |
次に手に入れたいNPCとして,静かな注目を集めるグルトルデンさん。逆三角形のボディからは,ただならぬ気迫が感じられる(2006年5月10日現在,入手できるクエストはない) |
急に心細くなるろーらの肩を,そっと抱きしめるねりー姉さん。
「力になってあげたいけれど,ごめんなさい。私もあるばーとも,今はこのセイウチを守らなければいけないの」
旧大陸からリボルドウェまで,気丈にも一人旅を続けた主人公だが,さすがにここから先,幼い彼女だけではどうにもならない。まさか誰ひとり家族を連れて帰れないまま,連載は終了か? 青ざめる主人公の耳に飛び込んできたのは,腹立たしいほど元気なボーイソプラノ。
「大丈夫。僕についてきて。まかせてよ!」

突如現れたのは,甥のうぃりー・えすぱ田。初めて出会ったときよりも,だいぶ露出度の高い服装に変わっているが,男性キャラの露出が上がったところで,何ら喜ぶ理由はない気も
妙にイラっとくる声の主は,リボルドウェで別れた兄おるそん・えすぱ田の,一人息子うぃりー・えすぱ田ではないか。妹と弟だけにえすぱ田家再建という重責を担わせてしまったおるそんは,せめて自分の代わりにと,一人息子を遣わしたのであった。ホっと笑顔が戻るろーらに,ねりーはようやくもう一人のえすぱ田家メンバーの情報をささやいてくれた。
「彼女の名はめありぃ姉さん。えすぱ田家の長女で,生きていればもう35歳になるはずだわ」
ようやく“長女”の存在が確定したえすぱ田家情報に,なんだか別の意味でも喜ぶ主人公。しかしそれを告げるねりーの表情は暗く重苦しい。ん? 生きていればって,どういう意味ですか姉さん。
「めありぃ姉さんは……えすぱ田家から勘当された身。私がコインブラに嫁いできたときにもらった手紙を最後に,音信が途絶えているの」
家の体面を何よりも重んじる風潮が,根強く残るこの時代,勘当は家から個人に告げられる,最も重たい宣告だ。思わず息を呑む主人公。いったいめありぃ姉さんは何をしでかしたんですかっ! しかし,自分の口からはとても……と言葉を濁すねりー姉さん。ろーらの手の中には,古く黄ばんだめありぃからの最後の手紙だけが残された。
「大丈夫。僕についてきて。まかせてよ!」
能天気な発言を繰り返す甥っ子うぃりーと共に,ろーらは手紙に記された場所「ポルトベルロ 忘れられた埠頭」を,一路目指すのであった。

ポルトベルロの入り江が見渡せる小高い丘の上。なんとなくうらぶれた寂しい一本道だが,実は中盤のお金稼ぎにはもってこいのエリアである
エメラルドグリーンの海と水平線,ざわめく潮風。小高い丘からの眺めは絶景ではあるが,通る人影は皆無の寂しいエリア「ポルトベルト 忘れられた埠頭」へやってきた,ろーらと新相棒うぃりー。丘のてっぺんに建っているのは,とうてい人が住んでいるとは思えぬあばら家だが,ねりーから渡された手紙に記されているのは,間違いなくここだ。
羽振りの良い一族にお金の無心をする旅のはずが,どうにもこうにもえすぱ田家の血というのは,貧窮を呼ぶのだろうか? 人を拒むがごとくに固く閉ざされた扉を,ろーらはそっと叩く。やがて中から出てきたのは……あぁ,どんな苦労を背負ったのか知らないが,義足に眼帯姿のその女の人こそ,えすぱ田家長女めありぃ・えすぱ田であった。
勘当にまで至った理由はもちろん,その物騒な外見どおり海賊稼業にあるようだ。貴族の娘がどんな事情で海賊になったかは知らないが,現役を引退した今のめありぃは人を避け,あばら家同然の家に(お尋ね者の?)身を隠していた。

ろくに窓もない丘の上の一軒家に到着したろーら。面積から想像するに,間取りは1階がオープンキッチンの1DK,2階が6畳と4畳+屋根裏部屋といったところか。いや,西洋で「畳」もないもんだが
「めありぃ姉さま。そんなお姿になって」
はらはらと涙を流す主人公。これまでの長い長い旅路と今や崩壊寸前のえすぱ田家の事情を切々と訴え,どうか一緒に旧大陸に戻り,母に許しを乞うてほしいと切り出してみることにした。
「お母様には会いたいわ。海賊稼業を後悔はしていないけれど,えすぱ田家の名に泥を塗ったことは,もちろん申し訳ないと持っているし……」
すげなく断られるものと思っていたが,めありぃの口から出たのは意外にも殊勝な言葉。しかし,何かここを離れがたい事情がありそうな口ぶりでもある。
「私には,まだやらなければならないことが残っているの。それまで,どうしてもポルトベルロを離れるわけにはいかない」

ノーテンキなうぃりーと,真摯にお願いをするろーらの図。白い犬はめありぃの愛犬「じゃっく」です
やらなければならないこと,それは戦いの中で失ったかつての部下達の弔いだ。現役時代には何隻ものガレオン船で交易路を荒らし回っためありぃ一家だが,時代の流れと情勢の変化には打ち勝てず,やがてほとんどの船を失った。
そして,座礁した船の中に,腹心の部下でありながら遺骸を回収できなかった5人の骨が,まだ残されているらしい。ここまで話を聞けば,次にやるべきことは見えている。というわけで,めありぃは今や数少ない部下達を招集。元海賊達を先頭に,ろーら&うぃりーは遺体探しの旅へ出かけるのであった。遺体探しといえば,もちろんBGMは「Stand By Me」なわけだが。
アデリー……じゃなかった,めありぃのために,五つの骸骨を捜すこのクエストだが,ポルトベルロの船内は通路が狭くて先が見通しにくく,そのうえ敵のポップが激しいという,なかなかきついダンジョンになっている。通常より強力なエリート系モンスターも出やすい場所なので,レベル35以上,余裕を持って行くならレベル40以上が望ましい。範囲攻撃が優秀なウォーロックを連れているかどうかで,戦い方にもかなり差が出るだろう。
五つの骸骨探しに初めて挑む場合,探しきれないうちに全滅の憂き目にあい,以降も何度かそれを繰り返す場合が多い。ここでつまずいてしまった人のために,こっそり特別マップを用意した。自力ではどうしても辛い人だけ,参考にしてほしい。
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| かつての部下3人を従え,6人でポルトベルトダンジョン攻略に挑む! |
全部で五つの骸骨が,ダンジョン内部に散らばっている |
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| ポルトベルロの死闘の様子がこちらの2枚。レベル40中盤の総勢6人でも,犠牲者が数名出てしまった |
ダンジョン後半に出現するのは,真っ赤に茹で上がってあとはポン酢をつけるだけ! のロブスター風モンスター |
▼特製マップ ※ネタバレ注意!
※クリックで,骸骨の位置がマーキングされたマップを表示
すべての部下の遺骨を収集して胸に抱き,コインブラの港へ戻ってきた3人。疲れ果てたろーらがそこで目にしたのは,無事に治療を終え,元気いっぱいのあるまんぞ兄さんだった。
「兄さん,その人は誰!?」
「おぉ,おかえりろーら。紹介しよう。僕の婚約者きゃろらいんだよ」
ろーら達が魑魅魍魎と死闘を繰り広げている間に,あるまんぞは病院でちゃっかり未来の嫁さんを見つけていたのだ。えすぱ田家の将来は安泰のようだ。いや,現在はともかくとして,だが。
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「姉さんあれを見て! 公衆の面前で不謹慎なっ」と言ったかどうかは知らないが,ショックを受ける妹ろーら |
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実の家族のこんなシーンを偶然目撃したら,ちょっと気まずい雰囲気になるかもしれないわな |
それはともかくとして,憑き物が落ちたかのように,晴れやかな顔に変わっためありぃ。海の男には海が見える墓がふさわしいとばかりに,めありぃはそっと,コインブラの港が見渡せる崖上に五つの骨を埋葬した。その目じりには何かキラリと光るものが……。
「許してもらえるかは分からない。でもえすぱ田家の長女として,あなた達と一緒にえすぱ田家の名誉を取り戻すために力は惜しまないわ。そのためには……分かってるわよね?」

こうしてめありぃの心は部下の死から解き放たれた。読者もぜひコインブラに立ち寄った際は墓参りに行ってみてほしい
二人に力を貸してくれると誓った,元女海賊の言葉は頼もしい。そして,何もかもすっかり了解した長女は,おもむろに口を開いた。そう,ろーらが旅の記録を記す手紙は,常に「母さん」で始まっている。では,えすぱ田家の大黒柱であるはずの父はどこに?
「お父様を救いに!」
読者の疑問をよそに,勝手に盛り上がる3人。そしてどうやら父親は生きてはいるようだ。いったいどこから,何から父を救うのか? ばらばらになっていたえすぱ田家が,いよいよ一つになるときが来たのか? 全ての謎は次週解ける……はず。
今回の舞台は,カメにタコにエビが闊歩するマリンテーマパーク「ポルトベルロ」。これでヒラメと鯛と乙姫がいれば完璧だったのに,と,どこまでも国籍を無視してコメントしてみる。