「呪文を使えない劣等生パラディンは,一生呪文が使えないのか?」という,内心ヒヤヒヤなテーマを抱えたまま冒険を続けてきた本連載も,今回で最終回。いよいよテーマに決着をつけるときが来た。
レベル4になった私は,1レベルのパラディン呪文の能力を得た。ただし,そのままでは呪文を唱えられないので,前回紹介した「Wisdom+1」のネックレスを装備してみる。すると呪文の発動自体は可能になったが,SP(スペルポイント)は0のままなので,やはり実際に唱えることはできなかった。
「やはり無理だったかー」と,しょんぼりうなだれていたのだが,ふと「SPを増加させるアイテムを装備すればいいのではないか」ということに気づいた私は,Catacombsというクエストの固定報酬で「Witchdoctor's Mantle」というマントを入手。これを装備することで,とうとう呪文の発動が可能になった。ネックレスとマントはずっと身に着けていなければならないという条件付きながら,一生呪文の使えないパラディンにはならずに済んだのだ。めでたしめでたし。
使う呪文は,もちろん「Divine Favor」。攻撃時の命中とダメージに,それぞれ+3のボーナスを与える頼もしい呪文だ。大事な戦闘の前にこれを唱えることで,私はたいていの敵に対して恐れることなく立ち向かえるようになった。
だが冒険を繰り返していくうち,能力値やアーマークラス,使う武器,防具などの重要性もさることながら,いつどの敵をどのように攻撃し,防御すべきときにはいかに盾でブロックするかなど,戦闘時の動き,つまりプレイヤー自身の操作スキルが非常に重要なことが分かってきた。
アクション性の高いDDOならではといえるかもしれないが,例えば敵の背後に回りこんで攻撃するだけで,攻撃の命中判定に+2のボーナスが付く。敵が攻撃してきた瞬間に盾でブロックすればアーマークラスに+2のボーナスが付き,敵の遠隔攻撃なら避けられる。うまい人の動きを観察して参考にする日々である。
レベル5を過ぎたあたりから,お金にも余裕が出てきた。宝箱から得られるアイテムに高価なものが増えてきて,これを売却することで順調にお金が貯まるようになってきたためだ。
今後のキャラ育成の方針としては,やはり「Charisma」(魅力)最重視という原則はそのままに,セービングスローの値をとにかく高くしていきたい。その分アーマークラスが心もとないが,そこは盾でのブロックをうまく使うことでカバーできればと思っている。
そして今回挑戦するのは,DDOの中で最もハイレベルなクエストの一つ,「Cult of the Six」である。
・ヒーラー二人
前回とは打って変わってクレリックが二人もいるパーティとなった。だが,二人いるから一人のときと比べて2倍のパフォーマンスを発揮できるかというと,そう簡単にはいかない。ヒールがかぶってしまうからである。よってヒーラーが二人いる場合は,どちらかがメインヒーラー,もう片方がサブヒーラーとなって,うまく連携を取ることが重要になってくる。今回のクレリックの二人は事前に相談したのか,それとも自然にそうなったのか定かではないが,Oさんがメイン,Pさんがサブというように絶妙な役割分担ができていた。
・全員が近接戦闘タイプ
攻撃呪文の使い手がまったくいないだけでなく,全員が剣や斧などの近接武器で戦うタイプのキャラばかりだった。攻撃タイプが偏っているとボス戦などはつらいことが多い。6人のうち3人が「Reflex」(反応)セーブが高かった(パラディン二人,ローグ)ことで,範囲攻撃に対して強かったのが少しは救いである。
・ハイレベルクエストへの挑戦
6人の平均レベルは6.2で,今回のクエストの最終章のレベルは10。クエストについて詳しい人がパーティ内に何人かいたということを考慮しても,かなりのチャレンジだった。今回のパーティのまとまりを振り返ってみて,こういうときに一番大事なのは,パーティメンバー全員が「絶対に最後まで行ける」と確信していることだと感じた。
○クエスト「Grey Moon WaningとCult of the Six」
カルト教団の寺院に潜入。そこには多数のカルト信者が住み着いていて,怪しげな儀式を執り行っていた
Stormreachの北西に浮かぶSorrowdusk島は,地図にも載っていないような呪われた島だ。そこにはかつて悪の教団Dark Sixの寺院があり,幾多の血が流されたとの伝説があるが,現在ではその実態は謎に包まれている。プレイヤーはEye of Kol Korranの船長Kurvicのわずかな情報を頼りに,Sorrowdusk島の探検を開始した。
Sorrowdusk島では,オーガとトロルの抗争が起きていた。プレイヤーはオーガを助けてトロルを撃退するが,この騒動の背景にはDark Sixの陰謀が絡んでいた(ここまでが「Grey Moon Waning」クエスト)。プレイヤー達はこの謎を明らかにするべく,Dark Sixの寺院へと乗り込んでいく。そこでは復活した教団の信者達によって,恐ろしい企みが実行に移されようとしていた(「Cult of the Six」クエスト)。
House Deneithエリアの北東部にいるBrother Mirashaiに話しかけると船に乗せられるが,そこで船長のKurvicと話すとSorrowdusk島に上陸できる。そこから浜辺を北上したところにいるBrukuというオーガに話しかけると,「Grey Moon Waning」クエストが始まる。
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Sorrowduskはトロルが多数棲みつく島だ。トロルはHPの自動回復能力を持っているため,戦闘を長引かせると危険 |
この壮絶な罠をかいくぐって,ローグが一人,橋の向こうにある罠の解除に向かっている |
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「Grey Moon Waning」と「Cult of the Six」は,二つでひとまとまりの連続クエスト。色々な敵が登場し,ダンジョンの構造や仕掛けも複雑で,ストーリーも壮大という意味で,DDOの中で最も凝ったクエストの一つだ。いわゆる「力押しの強引なクリア」がしづらく,チームワークをもってじっくり取り組む必要があることから,筆者の大好きなクエストでもある。
今回,パーティの平均レベルは6前後ということで,私はこのクエストをクリアできるとは思っていなかった。とりあえず前半のGrey Moon Waningをやり,その後,別の場所に移動しようと考えていたが,プレイを進めていくうちに「このパーティなら最後まで行けるんじゃないか」と思い始めるようになった。
そして,パーティの皆も同じように考えているようだった。偶然にも,今回のパーティにはパラディン二人とクレリック二人がいる。悪の教団を打ち倒すにはぴったりのメンバーが揃っているではないか。
Grey Moon Waningは,合計4ミッションからなる。主にトロルとの戦いだ。トロルは火や酸に弱いという特徴があるから,その系統の武器や呪文を使えれば戦闘を有利に進められるのだが,不幸にも私達のパーティには,そうした呪文を使える人も,火や酸の属性武器を持っている人もおらず,そういう意味でちょっと不安はあった。だが全員が近接戦闘に参加していたため,敵を取り囲んで袋叩きにするという,オーソドックスなやり方でとくに問題なく進めたのだ。
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島の丘の頂にそびえるDark Sixの寺院の入り口。いかにもカルト教団といったふうの怪しげな外観である |
この台からは無限のFire Mephitが召喚される。一刻も早くすべて破壊しなければならない |
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Grey Moon Waningはレベル6か7のクエストなのでまだ余裕があったが,問題は次のCult of the Sixである。こちらの対象レベルは8〜10で,範囲攻撃呪文である「Flame Strike」(この呪文は半分は火炎ダメージ,半分が無属性ダメージなので,火に対する防御を整えてもダメージを受けてしまう)を使ってくる敵が大勢いるのが恐ろしい。必然的に消耗戦を強いられることになるため,回復手段に余裕を持つことと,戦闘を長引かせないことが重要になってくる。
私達のパーティはクレリックが二人いるとはいえ,一人はまだレベル5である。パーティ全体の戦闘力も低いため,戦闘も長引きがちだ。クレリック二人でうまくやりくりしても,途中でスペルポイントが尽きてしまうのだ。そうなったらワンドでの回復ということになるが,ワンドは呪文のように短時間に連続して使えないため,いざというときの回復量が足りない。
そこで,パラディンの「Lay on Hands」(癒しの手)を有効活用することになった。私の「Lay on Hands」は1日に2回使え,1回あたり90HPを回復させる能力を持っている。このとき私は初めて,「Lay on Hands」が緊急時の味方の回復手段として,大変有用であることを痛感させられた。それまで私は,自己回復専用の能力だと思い込んでいたのだ。
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Fire Reaverの「Fleme Strike」を受けた場面。セービングスローに成功しているため,ダメージは少なくて済んでいる |
「+1 Frost Longsword」でとどめを刺した場面。この後,凍り付いた敵は粉々になって砕け散る |
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パーティは何度か全滅の憂き目に遭ったものの,なんとか持ち堪えて見事最後までクリアできた。パーティメンバー全員の能力をフル活用した末の勝利である。今回のようなギリギリの冒険を経験すると,“自分が強いか弱いか”というのは実に些細な問題なのだと,つくづく思う。
私は唯一の心の支えであった「オーラ」がNさんに負けていたのはしょんぼりだが,結局Nさんのオーラの恩恵を私自身も受けていたわけである。あくまでパーティの仲間達は守り合い,助け合っていく存在であって,競争する相手ではないのだ。集まった6人の力を結集してクエストを遂行するという,ただそれだけである。
DDOをプレイする中で,バラバラに集ったパーティの一体感を感じる瞬間が,私はたまらなく好きである。これまで(初回を除く)5回にわたってパーティプレイを紹介してきたが,メンバーの構成によってプレイの様相も変わったものになると,感じていただけただろうか。「今日はどんな人達とパーティを組むのだろうか」と思いをめぐらせてログインするとき,出会った仲間達と束の間の時間を共有するとき,そして過去に組んだ仲間達と再会するとき,そこにはシングルプレイのゲームにはなく,そしてほかのマルチプレイのゲームにもない,MMOならではの楽しみがある。
今後日本語版の展開も始まるが,現在の英語版でもサーバーごとの雰囲気というか世界があるので,日本のサーバーが設置されれば,また新しい世界ができるのだろうと思うと,とても楽しみである。今回の連載で興味を持ってくれた人が,一人でも多くDDOの世界に入ってきてくれることを願ってやまない。