

善を成すための慈悲の心,秩序を守る強い意志,悪を討ち負かす力――この三つがパラディンの武器である。パラディンの道を歩むために必要な純粋さと献身を兼ね備えた者は,わずかしかいない。だが,そうしたごく少数の者達は守り,癒し,悪を討つ力を恩寵として授かる・・・・・・(ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック 第3.5版より)
ここまで読んで,私はハッとした。今までプレイしたRPGにおいて,パラディンというクラスを選んだことはほとんどなかった。私の本来のキャラといえば“男,Bosmer,Archer”である(ほかのゲームの話で失礼)。今でもそうだ。だが,ダンジョンズ&ドラゴンズとなると話は違う。秩序・善の属性を基調とした堂々たる存在感は,どのプレイヤーからも一目置かれる存在である。ぜひ私も一度やってみたい。
洗練されたルックスと善のオーラを放つ正義の戦士に憧れて,私はそう,パラディンになることにした。
6人のパーティでの行動が「Dungeons & Dragons Online」のスタイル。各自が自分の役割を演じるという,ロールプレイングゲームの原点に立ち返った作品だ
そんなことを考えていた矢先に,たまたま「連載しない?」という話が4Gamerから来て,よくよく考えもせずに「Dungeons & Dragons Online」(以下,DDO)でパラディンのキャラクターを作成して,プレイと連載記事をロケットスタートで開始することになった。
DDOは,偉大なるテーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のシステムを採用した,初のMMORPGである。現在主流となっているダンジョンズ&ドラゴンズ3.5版(以下,D&D3.5版)のルールを,ほぼそのまま採用しており,少人数パーティでのクエスト挑戦を基本としたゲームプレイ,正統派ファンタジー風の世界観,ほどよいアクション性などがDDOの特徴だ。
まだ新しいこともあり,D&Dの中では比較的メジャーどころではない「Eberron」という世界が,DDOでは採用されている(これに対し「バルダーズ・ゲート」や「ネヴァーウィンター・ナイツ」は「Forgotten Realm」というメジャーな世界を採用)。
Eberronの特徴を一言で表現するなら“魔法と,それを基盤としたテクノロジーの発展した世界”といえる。D&Dの中世ファンタジー風な世界は踏襲しつつも,それに加えて魔法チックな産業技術がある程度存在していて,列車や飛行船が魔法の力で動いている,そんな世界だ。
とはいえ,DDOに限っていえば,グラフィックスにそうした雰囲気は感じられるものの,ゲームプレイに影響してくる要素はほとんどない。純粋に,正統派ファンタジーの世界設定がベースになっていると考えていいだろう。
本連載では,D&Dシステムならではの“パーティ”に焦点を当て,パーティ行動の楽しさや大変さ,しょんぼりなハプニングなどを交えながら,DDOの楽しさをお伝えしていく予定だ。今回は連載第1回なので,まずは開始時のキャラクター作成について紹介。次回からはさっそく冒険に出発する。


性別は男性でも女性でも,能力にまったく差は出ない。装備品などもすべて共通のため,男女の差は単純に見た目の違いだけ
各クラスの優劣は置いて,実際にDDOでどのクラスが人気かについて述べておこう(もちろん2006年4月25日現在の話で,さらに筆者の個人的見解に過ぎない)。結局は自分がやりたいクラスをやるのが一番だが,MMORPGの性質上,広く仲間を募集しようと考えている人の参考にはなるだろう。パーティ編成に関しては,本連載のテーマとして今後も考えていく予定だ。
パーティは6人で編成する。パーティの人数に関わらず経験値や報酬の額は一定のため,可能な限り6人のフルメンバーで冒険するのが一般的だ。
冒険に必須とされているため人気の高いクラスが,RogueとClericである。Rogueは罠解除と開錠のできる唯一のクラスということで,揺るぎない存在感がある。しかしパーティに2人は必要とされていないのも実情。一方のClericはメインの回復役に加えて前衛での戦いもできるキャラが多いため,2人以上パーティにいることが多い。
D&D3.5版にあってDDOにないクラスとして,モンクとドルイドが挙げられる。今後のアップデートでの実装に期待がかかる
FighterとBarbarianは前衛系の戦士として需要/供給共に根強い人気がある一方,Paladinのプレイヤー数は少なめ。だがPaladinはパーティメンバーとしての需要は高いため,仲間に誘われる頻度は高いだろう。
WizardかSorcererのどちらかは,パーティに最低一人は欲しいところ。プレイヤー数としてはWizardのほうが圧倒的に多い。しかしSorcerer好きな人も少なくなく,これは好みの問題といったところだ。
RangerとBardはどちらかというとレアな存在だが,決してパーティメンバーとして人気がないわけではない。ただし,5人め,6人めのメンバーとして選ばれる,という傾向があるのも確かだ。

・Human(人間) どのクラスにもなりやすい柔軟性の高さが人間の特徴。個性的なカスタムキャラを作りやすい種族だ |
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- 開始時に追加のFeatと追加のスキルポイント
- レベルごとに追加のスキルポイント
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・Dwarf(ドワーフ) 前衛系の戦士として優秀なドワーフ。男性ドワーフは多いが,女性ドワーフはなぜかものすごく少ない |
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- Constitution+2
- Charisma−2
- Search+2
- Balance+4
- 呪文と毒に対してセービング・スロー+2
- Giantに対してAC+4
- OrcとGoblinsに対してAttack+1
- Dwarven WaraxeをMartial Weaponとして使える
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・Elf(エルフ) Dexterityにボーナスがあるため,遠隔攻撃を得意とする。前衛戦士以外のどのクラスにも適性がある |
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- Dexterity+2
- Constitution−2
- Sleep呪文に対して完全セービング・スロー
- Enchantmentsに対してセービング・スロー+2
- Listen+2
- Spot+2
- Search+2
- Longbow,Longsword,Rapier,Shortbowをクラスに関係なく使える
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・Halfling(ハーフリング) 小柄な体格を生かしてローグになるのが一般的。持ち物の重量制限はほとんど気にならないといっていいだろう |
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- Dexterity+2
- Strength−2
- AC+1
- Attack+1
- Hide+4
- Jump+2
- Listen+2
- Move Silently+2
- 全てのセービング・スロー+2
- Fearに対するセービング・スロー+2
- Throw WeaponでのAttack+1
- 持ち物の重量上限−25%
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・Warforged(ウォーフォージド) ほかの四つの種族と比べて,あまりに特殊ではあるが,強さも一歩抜きん出ていると思う。私自身はプレイしたことはないが,強い人は本当に強い |
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- Constitution+2
- Wisdom−2
- Charisma−2
- 次のような効果に対して耐性を持つ:Sleep,Energy drain,Nausea,Exhaustion,Poison,Disease,Paralysis
- Cure(回復)呪文では通常の半分しか回復しない代わりに,Repair(修理)呪文で回復できる
- AC+2
- 5%の確率で秘術呪文の詠唱に失敗する
- 防具を装備できない
- 25%の確率でクリティカルヒットとスニークアタックを無効化
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人間,エルフ,ドワーフ,ハーフリングは一般的にポピュラーな種族なので,詳しい紹介は省略する。
ウォーフォージドは,D&Dの標準的な種族ではないので知らない人がほとんどかもしれない。ウォーフォージドとは,Eberron独特のテクノロジーの中から生まれたゴーレム系の人造人間だ。Eberronの世界設定によると,“過去の世界大戦時に開発された戦闘用機械の生き残り”といった位置づけらしい。防御力が非常に高いため,前衛系の戦士に適している。ウォーフォージドを選択するプレイヤーは現時点ではあまり多くないが,私は仲間に迎えるのが大好きな種族だ。
私自身はパラディンということで,順当に人間を選択した。

属性とは,キャラクターのおおまかな倫理観や性格を表す指標だ。“Good(善),Neutral(中立)”の2種類と,“Lawful(秩序),Neutral(中立),Chaotic(混沌)”の3種類を掛け合わせた,合計6種類の属性がある。
属性はゲームプレイにそれほど重大な影響はないが,マルチクラスキャラクターを作ろうと考えている場合は,属性によってなれるクラスが制限されてくるので注意しよう。例えばパラディンはLawful−Goodのみ,バードはLawfulは不可,などといった制限がある。
また,特定の属性でないと装備できない武器というものが,いくつか存在する。しかし,どの属性が有利ともいえないので,やはり単純に好みで選んでしまって問題ないだろう。
私はパラディンなので,必然的にLawful−Goodになった。

「グラナダ・エスパダ」連載の“ろーら”に対抗すべく作られた美形キャラクター。というわけではないが,高いカリスマ値に沿ったイメージのつもり
種族,性別,クラス,属性,名前,外見を決めると,それに合ったキャラクターが自動的に生成される。
この時点で,「Play this Character」「Customize your Character」というボタンが出てくる。つまり,ここでキャラメイクを完了するか,さらに複雑な設定を行うか選べるのだ。
初心者はまず,この段階で試しにプレイしてみるのがいいだろう。DDOでは1サーバーにつき5体までキャラクターを持てるので,まずはいろいろなキャラを思いつくままに作って,あれこれ試してみよう。何回か作っては消してを繰り返したころには,きっと自分にピッタリの愛着あるキャラクターが作成できるようになっているはずだ。
この先の「Customize your Character」というのが,実はDDOの非常に面白い部分である。以下では,私のパラディンを例にして,より詳しいカスタムキャラ作成について見てみよう。

Strength(筋力) |
16 |
近接戦闘に関係する能力。持ち物の重量上限にも影響 |
Dexterity(敏捷力) |
8 |
遠隔戦闘に関係する能力。軽装時の防御力にも影響 |
Constitution(耐久力) |
11 |
HPの総量に影響するほか,健康面の耐久性に影響する |
Intelligence(知力) |
8 |
Wizardの呪文に関係する能力。得られる技能ポイントにも影響 |
Wisdom(判断力) |
10 |
Cleric,Paladin,Rangerの呪文に関係する能力。精神面の耐久性にも影響 |
Charisma(魅力) |
17 |
Bard,Sorcererの呪文に関係する能力。Turn UndeadやPaladinの特殊能力に |
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Charismaは本当は最高値の18にしたかったが,さすがにほかに振り分けるポイントがなくなったので断念。しょんぼりした
各能力値の初期値は8で,これに計28点のポイントを振り分けることで能力値を決定する。私のパラディンはStrengthとCharismaに極端に比重を置いたキャラクターになっている。能力値は高ければ高いほどいいに越したことはないが,15以上になるとポイントを余分に払わなければならない(例えば14→15にするためには2ポイントを消費する)ため,ひたすら高いことが効率的なキャラクター作成とはいえないのだ。私の能力値の割り振りは,あまり賢明ではないかもしれない。
戦士なのでStrengthが高いのは当然として,Charismaはパラディンの核心ともいえる能力値だ。パラディンのクラスとしての「特殊能力」には,次のようなものがある。このうち四つが,Charismaの能力値に関係している。
- Aura of Courage(周囲にいる味方を鼓舞する)
- Aura of Good(周囲にいる味方のセービングスローとアーマークラスにボーナス)
- Divine Grace(Charismaボーナス値がセービングスローに加算される)
- Lay on Hands(HPを回復する。Charismaボーナス値に比例)
- Remove Disease(味方の病気を治療する)
- Smite Evil(悪属性の敵に対して大ダメージを与える。Charismaボーナス値に比例)
- Turn Undead(アンデッドの敵を退散させる。Charismaボーナス値が使用回数と効果に影響)
上の二つ,「Aura of Courage」と「Aura of Good」が私の憧れだった。実は以前,私は別のキャラクターでプレイしていた。そのとき,パラディンが近くに来ると画面右上に,この二つの特殊能力下にあることを示すアイコンが表示されるので,「ああ,Pally(パラディンの愛称)が近くにいる! オーラが漂ってる!」と感じたものだった。
今度は私の番である。そう,皆が私の近くに寄ってくることを期待して,私はパラディンを選択したのだった(本当はパーティの皆から置いてかれてしょんぼりしないためだ)。

ローグ以外のクラスにとっては技能の割り振りはそれほど重要ではないが,高くしておくと,いざというときに役立つだろう
次は「Skill」(技能)のポイントを振り分ける。技能とは,さまざまな能力にどれくらい熟練しているかを表すものだ。ローグにとっては鍵開けや罠発見などの技能に熟練することが最重要問題だが,パラディンにとってすれば,さほどのものではない。獲得できる技能ポイントはクラスの種類とIntelligenceの値に依存するが,あいにく私のIntelligenceは,たったの8。よって技能ポイントも8ポイントしか得られなかった。
- Heal(神殿での休憩時の回復量と瀕死の味方の治療)に2ポイント
- Balance(転ばされたときの起き上がる速さ)に2ポイント
- Intimidade(NPCを威圧する,敵の注意を自分にひきつける)に4ポイント

最後に「Feat」(特技)について。特技とは,キャラクターに新しい能力を与えたり,すでに持っている能力を高めたりするものだ。レベル1,3,6,9で一つずつ取得できるのに加え,種族が人間の場合は開始時に一つ追加で選べる。クラスがFighterなら,さらに多くの特技を取得できる。
私はパラディンで人間なので,開始時に二つの特技を取得できた。
- Toughness(HP増加)
- Shield Mastery(盾の防御力増加)
どの特技を取るかは,どのクラスを選ぶかと同じくらいキャラの個性に影響する。合計93種類もあるので,はっきりいって非常に迷う
この二つは,どちらもごくポピュラーな特技だ。
特技の取得には,“能力値が一定以上”“ほかの特定の特技を取得済み”などの条件が必要なものもあるので注意しよう。できれば今後取るつもりの特技をすべてリストアップし,それに応じてキャラ作成をするのが望ましい。だが私はロケットスタートのため,後で考えることにした。
呪文を使えるクラスであれば,このあと呪文に関係する項目の設定になるが,パラディンが呪文を使えるのはレベル4からなので,とりあえず設定することはない。開始ボタンをクリック……あれ?
あとで分かったことだが,パラディンが呪文を使うためには「10+(呪文レベル)」のWisdomが必要。つまり最低でもWisdomが11ないと,呪文はまったく使えないのだ。よく読んだらキャラ作成画面にも書いてあった。まあキャラ作成には,こんな失敗が付き物なのである。
呪文を使えない劣等生パラディンを作ってしまった筆者。果たして大丈夫なのだろうか。この続きは次週で
とはいえ連載は始まってしまい,今さら作り直すわけにはいかない。ネットの情報などをあらためてチェックしてみると,Wisdom10以下のパラディンなんて,この世にほぼ皆無だった。Wisdomの能力値が上昇する装備品を身に着けたりすれば,なんとかなるのだろうか。一生呪文を使えないパラディンとして生きていくのだろうか。スクロールやワンドをたくさん持つしかないのだろうか。「呪文が使えないパラディンなら意味ないじゃん」と,仲間から言われないようにがんばりたい。開始早々しょんぼりしつつ,次週に続く。