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Let's 浜茶屋 〜恋のBattle Beach〜
BIGLOBEがダウンロード販売する「Let's 浜茶屋 〜恋のBattle Beach〜」。スタンダードな恋愛アドベンチャーパートと不思議なノリの陣取り&料理バトルの経営パート(?)をもった,良質な「バカゲー」だ
 今回俎上に乗せるゲームは「Let's 浜茶屋 〜恋のBattle Beach〜」。決してメジャーとは言い難いが,なかなかあなどれないテイストの作品だ。プロバイダのBIGLOBEがオリジナルコンテンツとしてダウンロード販売を行っており,接続サービスとしてBIGLOBEを利用していなくても「コンテンツ会員」登録(無料)すれば,購入/プレイ可能である。価格も2480円と安価で,気軽に購入できる。
 ゲームジャンルは「恋愛アドベンチャー+経営シム」。主人公の幼なじみである4姉妹の家が経営する浜茶屋(海の家)を手伝い,3軒のライバル店と売り上げを競うという内容だ。ゲームのテイストは,何というか,コメディの域を微妙に逸脱した,いわゆる「バカゲー」である。

今日のワンポイントレッスン  :  バカゲー
 プレイ内容やゲームシステム自体は普通だが,ストーリーやキャラ造形に過剰な演出がなされており,失笑,もしくは脱力系の笑いを意図的に狙っていく作品を「バカゲー」という。制作者のパーソナリティ次第で,必ずしも「意図的」でない場合もあり得るが,ここにおける「バカ」の語は決して,ゲーム性,プレイアビリティに問題があることを意味しない。むしろ,その感性,芸風にある種の敬意を込めて使われる表現である。

 キャラクターゲームの世界では,その人物が料理を苦手としていることの表現として,鍋を爆発させるシーンがよく登場するが,実際に鍋が頻繁に爆発することなどあり得ない。こうしたカリカチュアライズされた表現を,より有効な形で多用するのが「バカゲー」のポイントである。ただし,ゲームシステムはあくまでまっとうに楽しめるものでなくてはならない。これを外してしまうと,往々にして目も当てられないことになるからだ。


夏の海といえばこれ,ビーチクイーンコンテスト。4姉妹全員が最終選考に残るとは御都合主義にもほどがあるわけだが,まじめに突っ込むのは野暮というものだろう
 このゲームに登場するキャラクターといえば,当然ながら主人公が手伝うことになる浜茶屋の4姉妹ということになる。優しくて母親代わりの長女,元気で男勝りさらに主人公と同い年の次女,生意気でイタズラ好きな小悪魔タイプの三女,おとなしくて人見知りする甘えん坊の四女と,実に典型的なパターンである。メインヒロインはもちろん幼なじみである次女の渚。過去の話や"友達以上恋人未満"の関係という,幼なじみキャラ固有の資産を存分に活用したストーリーが展開される。またほかのキャラに関しても,基本的にはそのキャラクターの社会的ロールから想像されるとおりのエピソードが展開する。
 ゲーム中では,浜茶屋の営業中やその後に4姉妹の家などで各種イベントが発生し,選択肢が示される。選択内容で各キャラクターの好感度が変化するのは言うまでもない。
 典型的なのは休憩時間に4姉妹の誰かに話しかける会話イベントだが,話しかける相手は自由に選べるので,目的の相手を集中的に選択していけば好感度は容易に上がる。ただし,キャラクターの好感度はエンディングだけでなく,ゲーム中の陣取り合戦(後述)における「技」の使用に影響を与えるので,それも勘案しておくのがよいだろう。ゲームをうまく進めるためにはお目当てのキャラだけでなく,全員とある程度会話しておいたほうがよい,ということだ。

 サブキャラクターの"濃さ"に比べてメインキャラクターの造形はスタンダードだが,これはプレイヤーの素直な思い入れの対象となるためだろう。実にオーソドックスかつ王道の展開である。
 このゲームを制作したアルカディアエンターテイナーは知名度こそ低いものの,その中心スタッフはかつてコンシューマタイトル「ファーストKiss☆物語」を手がけたことでも知られる。この作品は最初PC-FXで発売され,その後プレイステーションにも移植されてコアなファンを獲得,続編も制作されている。「Let's 浜茶屋」でも一部イベントに,よく似たテイストが見え隠れする。その意味で確かな実績に基づく開発ともといえよう。

汐里 渚

 本作のメインヒロイン。汐里4姉妹の次女で主人公「風杜大地」の幼なじみでもある,明るく活発な高校2年生の17歳。幼いころは女らしい姉への反発から男勝りな行動が多かったが,今は落ち着いている。主人公の家がやっている空手道場に通っており,二段の腕前を誇る。空手に関しては,過去主人公の間でちょっとした事件があり,お互いそれを引きずっているところがあるらしい。主人公のことを「大地」と呼び捨てにし,対等に接する。(CV.非公開)

汐里帆波

 汐里4姉妹の長女で,亡き母親の代わりに姉妹の母親代わりをしてきた優しい大学2年生の20歳。一緒にいると心が落ち着く癒し系,つまり必然的に天然ボケ気味のおネエさんだ。亡き母親の影響が強く,日本舞踊をたしなみ,少し古風な面も持つ。主人公のことを「大地くん」と呼び,弟のように思って,家族同様に接する。(CV.非公開)

汐里江利華

 汐里4姉妹の3女にして,イタズラ好きで好奇心旺盛な中学1年生の13歳。生意気で頭の回転が速く,面白いと思うことには積極的に関与し,もっと面白くするために策略を巡らすが,往々にしてろくでもない結果を引き起こす天性のトラブルメーカー。眼鏡っ娘で語尾に「にゃー」とつける猫娘。主人公のことを「大地兄(だいちにぃ)」と呼んですり寄ってくる。(CV.非公開)

汐里みさき

 汐里4姉妹の末っ子。控えめで人見知りする小学4年生の10歳。姉妹の最下級者ゆえ可愛がられ,少し甘えん坊でわがままなところもある。芯は強くがんばり屋で店の手伝いも進んでするのだが,ドジな面もあり失敗が多い。主人公「大地」のことを「お兄ちゃん」と呼んで慕っており,苦手な水泳をコーチしてもらったりする。(CV.非公開)

アドベンチャーパートは,浜茶屋の営業の合い間などに汐里4姉妹と会話することがメインとなっている。会話の相手は自由に選べるので,お目当てのキャラの好感度を上げるのは容易だ 会話イベントにはこのように1枚絵があるものも。これは渚と休憩時間に泳いだ後。ふとしたことで改めて女性として意識するようになるというのは,幼なじみキャラのスタンダードな展開である 渚と大地が一緒に空手を習っていたころの話を回想するイベント。この件が二人の間にはしこりとなって残っているらしい。これも幼なじみキャラのドラマにはぜひとも必要なスパイスだ

イベントによってはこのように豪華な(?)グラフィックスも。これは物置にものを取りに行った際に壁に開いていた穴をのぞくイベントだ。この穴を見つけた際の行動選択肢は右のとおり。いやまあその,選択肢の存在意義とかに今さら突っ込んでもムダであろう 一部の会話には微妙な小ネタが折り込んであることも。ゲーム全体のテイストはコメディとギャグの中間といったところだろう

どこまでもお約束に忠実な設定の汐里4姉妹に比べ,実に「濃ゆい」サブキャラクター達。少年マンガ誌の掲載作品などで見かける造形のキャラもいるが,浜茶屋になんでこんなに専門家っぽい人達がいるのやら。まあ,これがこのゲームのテイストの一端なわけだが


陣取りパートのメイン画面。右の緑色の部分が主人公の経営する浜茶屋の陣地だ。ただ陣地を大きくするだけでなく,その陣地の整備を行って,多くの客を集める必要アリ
 さてこのゲーム,経営シミュレーションと銘打ってはいるが,中身は砂浜での陣取り合戦である。浜茶屋のある「宝ヶ浜」の海水浴場がヘクスで区切られており,そのヘクスをライバル達と取り合うのである。
 だが,ただ多くのヘクスを取ればよいというものではない。このゲームで勝敗を決めるのは,各ヘクスからの売り上げであり,砂浜でのよい位置,つまり客の多くいるヘクスを取らねばならないのだ。そして手中に収めたヘクスに対しては,ゴミを拾ったり整備したりして快適さを上げないと,客がいなくなって売り上げが落ちることになる。
 陣取りのルールは単純明快。自分のヘクスに隣接する無主のヘクスはそのまま自分のものにできる。誰かの陣地になっているヘクスの場合,「バトル」で勝利すれば自分のものだ。このバトルが本作のキモであり,バカゲーのバカゲーたるところである。
 バトルの中身はなぜか「料理対決」である。それも,少年漫画誌の料理マンガで繰り広げられる勝負をイメージしてもらえば分かりやすい類のものだ。どう見ても料理に関係ない不可思議な技を繰り出し,むしろその技のインパクトで客を魅了してしまうアレである。いやまあ,浜茶屋の経営で料理がそんなに大きなポイントになるのかといった,正当な突っ込みはさて措くとしても,突っ込みどころはふんだんに用意される。

 バトルでは4姉妹から調理担当,接客担当,調理サポートの3役を選ぶ。浜茶屋の4姉妹はそれぞれ得意な料理のジャンルと必殺技(!)を持っている。料理のジャンルにはそれぞれに好む客層があり,バトルを行うヘクスの客層と合わせたほうが有利になる。また,調理担当とサポートの二人には合体技(!!)もあり,組み合わせによって異なる技が繰り出せる。通常の必殺技のほかに1枚絵のグラフィックスを伴う超必殺技もあり,こちらのほうがさらに強力だ。
 料理バトルでは客を取り合うことになるのだが,上記の技を使うことで相手側にいる客を自分側にできる。ただし,技を使うには専用のゲージが満タンでなければならないので,タイミングを見計らうのが重要だ。ゲージは主人公への好感度が高いほど短い時間で回復するため,お目当てのキャラ以外もある程度好感度を上げておいたほうがよい。

 陣取りパートで行うのは,上記のバトルのほか,バトルに影響する4姉妹のパラメータ上げ,そして陣地のメンテナンスである。4姉妹には「調理」と「接客」のパラメータがあり,これらが高ければ料理バトルのそれぞれの担当に就けたとき有利になる。パラメータは「料理修行」「接客修行」で上げられるが,修行や料理バトルで技を使うと体力パラメータが下がるため,ときどき休息して復活させる必要もある。
 手に入れたヘクスに関しては,ゴミ拾いをしたり,整備をしたりして「整備」値をあげ,快適にすることでそこに客が多く来るようになる。だがゴミ拾いや整備には費用がかかり,効果が上がるぶん売り上げにも影響してしまうので,バランスが肝要だ。
 こうして陣取りを行い,売り上げ第1位を目指すのがプレイの目標である。テーマや個別のバトルでなくゲームシステム全体はいたって素直に作られており,難度はもそう高くないので気楽にプレイできる。

 購入にはBIGLOBEのIDが必要になるが,これは無料のコンテンツ会員契約でも構わないし,ネットワークへの接続はダウンロード後のアクティベーションのときだけでよく,必要なスペックも,例えば推奨CPUでPentium III/450MHzと軽いため,ノートPCなどでプレイするにも不自由はない。明るく「おバカ」なテイストが気に入ったら,プレイしてみるのもよいだろう。

陣取りだけでなく,従業員たる汐里4姉妹の能力も上げていかねばならない。日頃から料理と接客の訓練を行って,各自のパラメータを上げておく必要がある 陣取りを進めていくと,隣り合った店がこちらの陣地を奪おうと料理勝負を仕掛けてくることが。この勝負は回避できないので,勝てるよう4姉妹の育成が重要になる 料理勝負の画面。真ん中に現在の状況(客の数)が表示されている。多くの客を自分の側に集めたほうが勝ちだ。[LP]ゲージが満タンなら必殺技が使える

相手が必殺技を繰り出したところ。バトル系料理マンガでよくある,それでまともに料理ができるのか分からない包丁さばきや,本当に食べられるのか分からない新作料理が続々登場する 相手の超必殺技。超必殺技は普通の必殺技より客を引き寄せる効果が大きく,またこのように専用のグラフィックスが表示される。それにしてもこれ,本当に料理をしている絵なのだろうか? こちらの合体技。超必殺技と同じく1枚絵が表示される技で,料理担当と料理サポートのキャラクターの組み合わせによって異なる技になる。合体技の1枚絵はこのように華やかなものが多い

必殺技などが出ると,誰ともなくその技(料理)に対して解説を入れてくれる。これもバトル系料理マンガのノリそのものである バトルに勝つと,こちらから仕掛けた場合には相手の陣地を奪え,相手から仕掛けられた場合であれば自分の陣地を守れる

■■柿島真治(フリーライター)■■
必ずしもメジャーとはいえないゲームタイトルにもチェックを欠かさない,ハードウェア&ゲームライター。「オレじゃなくてオレの知り合いが(濃いだけ)」というセリフを常套句としているが,あなたの同志およびそのネットワークも,当局ではあなたのパーソナリティの一部と見なしています。すぐに武器を捨てて投降しなさい。
タイトル Let's 浜茶屋 〜恋のBattle Beach〜
開発元 アルカディアエンターテイナー 発売元 BIGLOBE
発売日 2004/07/19 価格 2480円(税込。ダウンロード販売のみ)
 
動作環境 Windows 98SE/Me/2000/XP,PentiumIII/300MHz以上(PentiumIII/450MHz以上推奨),メモリ 128MB以上推奨,HDD空き容量 350MB以上,ビデオメモリ 8MB以上(16MB以上推奨),High colorの表示が可能なディスプレイおよびグラフィックスカード,PCM音源機能,DirectX 8.1以降

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