BIGLOBEがダウンロード販売する「Let's 浜茶屋 〜恋のBattle Beach〜」。スタンダードな恋愛アドベンチャーパートと不思議なノリの陣取り&料理バトルの経営パート(?)をもった,良質な「バカゲー」だ |
ゲームジャンルは「恋愛アドベンチャー+経営シム」。主人公の幼なじみである4姉妹の家が経営する浜茶屋(海の家)を手伝い,3軒のライバル店と売り上げを競うという内容だ。ゲームのテイストは,何というか,コメディの域を微妙に逸脱した,いわゆる「バカゲー」である。
今日のワンポイントレッスン : バカゲー |
プレイ内容やゲームシステム自体は普通だが,ストーリーやキャラ造形に過剰な演出がなされており,失笑,もしくは脱力系の笑いを意図的に狙っていく作品を「バカゲー」という。制作者のパーソナリティ次第で,必ずしも「意図的」でない場合もあり得るが,ここにおける「バカ」の語は決して,ゲーム性,プレイアビリティに問題があることを意味しない。むしろ,その感性,芸風にある種の敬意を込めて使われる表現である。 |
キャラクターゲームの世界では,その人物が料理を苦手としていることの表現として,鍋を爆発させるシーンがよく登場するが,実際に鍋が頻繁に爆発することなどあり得ない。こうしたカリカチュアライズされた表現を,より有効な形で多用するのが「バカゲー」のポイントである。ただし,ゲームシステムはあくまでまっとうに楽しめるものでなくてはならない。これを外してしまうと,往々にして目も当てられないことになるからだ。
夏の海といえばこれ,ビーチクイーンコンテスト。4姉妹全員が最終選考に残るとは御都合主義にもほどがあるわけだが,まじめに突っ込むのは野暮というものだろう |
ゲーム中では,浜茶屋の営業中やその後に4姉妹の家などで各種イベントが発生し,選択肢が示される。選択内容で各キャラクターの好感度が変化するのは言うまでもない。
典型的なのは休憩時間に4姉妹の誰かに話しかける会話イベントだが,話しかける相手は自由に選べるので,目的の相手を集中的に選択していけば好感度は容易に上がる。ただし,キャラクターの好感度はエンディングだけでなく,ゲーム中の陣取り合戦(後述)における「技」の使用に影響を与えるので,それも勘案しておくのがよいだろう。ゲームをうまく進めるためにはお目当てのキャラだけでなく,全員とある程度会話しておいたほうがよい,ということだ。
サブキャラクターの"濃さ"に比べてメインキャラクターの造形はスタンダードだが,これはプレイヤーの素直な思い入れの対象となるためだろう。実にオーソドックスかつ王道の展開である。
このゲームを制作したアルカディアエンターテイナーは知名度こそ低いものの,その中心スタッフはかつてコンシューマタイトル「ファーストKiss☆物語」を手がけたことでも知られる。この作品は最初PC-FXで発売され,その後プレイステーションにも移植されてコアなファンを獲得,続編も制作されている。「Let's 浜茶屋」でも一部イベントに,よく似たテイストが見え隠れする。その意味で確かな実績に基づく開発ともといえよう。
汐里 渚
本作のメインヒロイン。汐里4姉妹の次女で主人公「風杜大地」の幼なじみでもある,明るく活発な高校2年生の17歳。幼いころは女らしい姉への反発から男勝りな行動が多かったが,今は落ち着いている。主人公の家がやっている空手道場に通っており,二段の腕前を誇る。空手に関しては,過去主人公の間でちょっとした事件があり,お互いそれを引きずっているところがあるらしい。主人公のことを「大地」と呼び捨てにし,対等に接する。(CV.非公開) |
汐里帆波
汐里4姉妹の長女で,亡き母親の代わりに姉妹の母親代わりをしてきた優しい大学2年生の20歳。一緒にいると心が落ち着く癒し系,つまり必然的に天然ボケ気味のおネエさんだ。亡き母親の影響が強く,日本舞踊をたしなみ,少し古風な面も持つ。主人公のことを「大地くん」と呼び,弟のように思って,家族同様に接する。(CV.非公開) |
汐里江利華
汐里4姉妹の3女にして,イタズラ好きで好奇心旺盛な中学1年生の13歳。生意気で頭の回転が速く,面白いと思うことには積極的に関与し,もっと面白くするために策略を巡らすが,往々にしてろくでもない結果を引き起こす天性のトラブルメーカー。眼鏡っ娘で語尾に「にゃー」とつける猫娘。主人公のことを「大地兄(だいちにぃ)」と呼んですり寄ってくる。(CV.非公開) |
汐里みさき
汐里4姉妹の末っ子。控えめで人見知りする小学4年生の10歳。姉妹の最下級者ゆえ可愛がられ,少し甘えん坊でわがままなところもある。芯は強くがんばり屋で店の手伝いも進んでするのだが,ドジな面もあり失敗が多い。主人公「大地」のことを「お兄ちゃん」と呼んで慕っており,苦手な水泳をコーチしてもらったりする。(CV.非公開) |
イベントによってはこのように豪華な(?)グラフィックスも。これは物置にものを取りに行った際に壁に開いていた穴をのぞくイベントだ。この穴を見つけた際の行動選択肢は右のとおり。いやまあその,選択肢の存在意義とかに今さら突っ込んでもムダであろう | 一部の会話には微妙な小ネタが折り込んであることも。ゲーム全体のテイストはコメディとギャグの中間といったところだろう |
どこまでもお約束に忠実な設定の汐里4姉妹に比べ,実に「濃ゆい」サブキャラクター達。少年マンガ誌の掲載作品などで見かける造形のキャラもいるが,浜茶屋になんでこんなに専門家っぽい人達がいるのやら。まあ,これがこのゲームのテイストの一端なわけだが |
陣取りパートのメイン画面。右の緑色の部分が主人公の経営する浜茶屋の陣地だ。ただ陣地を大きくするだけでなく,その陣地の整備を行って,多くの客を集める必要アリ |
だが,ただ多くのヘクスを取ればよいというものではない。このゲームで勝敗を決めるのは,各ヘクスからの売り上げであり,砂浜でのよい位置,つまり客の多くいるヘクスを取らねばならないのだ。そして手中に収めたヘクスに対しては,ゴミを拾ったり整備したりして快適さを上げないと,客がいなくなって売り上げが落ちることになる。
陣取りのルールは単純明快。自分のヘクスに隣接する無主のヘクスはそのまま自分のものにできる。誰かの陣地になっているヘクスの場合,「バトル」で勝利すれば自分のものだ。このバトルが本作のキモであり,バカゲーのバカゲーたるところである。
バトルの中身はなぜか「料理対決」である。それも,少年漫画誌の料理マンガで繰り広げられる勝負をイメージしてもらえば分かりやすい類のものだ。どう見ても料理に関係ない不可思議な技を繰り出し,むしろその技のインパクトで客を魅了してしまうアレである。いやまあ,浜茶屋の経営で料理がそんなに大きなポイントになるのかといった,正当な突っ込みはさて措くとしても,突っ込みどころはふんだんに用意される。
バトルでは4姉妹から調理担当,接客担当,調理サポートの3役を選ぶ。浜茶屋の4姉妹はそれぞれ得意な料理のジャンルと必殺技(!)を持っている。料理のジャンルにはそれぞれに好む客層があり,バトルを行うヘクスの客層と合わせたほうが有利になる。また,調理担当とサポートの二人には合体技(!!)もあり,組み合わせによって異なる技が繰り出せる。通常の必殺技のほかに1枚絵のグラフィックスを伴う超必殺技もあり,こちらのほうがさらに強力だ。
料理バトルでは客を取り合うことになるのだが,上記の技を使うことで相手側にいる客を自分側にできる。ただし,技を使うには専用のゲージが満タンでなければならないので,タイミングを見計らうのが重要だ。ゲージは主人公への好感度が高いほど短い時間で回復するため,お目当てのキャラ以外もある程度好感度を上げておいたほうがよい。
陣取りパートで行うのは,上記のバトルのほか,バトルに影響する4姉妹のパラメータ上げ,そして陣地のメンテナンスである。4姉妹には「調理」と「接客」のパラメータがあり,これらが高ければ料理バトルのそれぞれの担当に就けたとき有利になる。パラメータは「料理修行」「接客修行」で上げられるが,修行や料理バトルで技を使うと体力パラメータが下がるため,ときどき休息して復活させる必要もある。
手に入れたヘクスに関しては,ゴミ拾いをしたり,整備をしたりして「整備」値をあげ,快適にすることでそこに客が多く来るようになる。だがゴミ拾いや整備には費用がかかり,効果が上がるぶん売り上げにも影響してしまうので,バランスが肝要だ。
こうして陣取りを行い,売り上げ第1位を目指すのがプレイの目標である。テーマや個別のバトルでなくゲームシステム全体はいたって素直に作られており,難度はもそう高くないので気楽にプレイできる。
購入にはBIGLOBEのIDが必要になるが,これは無料のコンテンツ会員契約でも構わないし,ネットワークへの接続はダウンロード後のアクティベーションのときだけでよく,必要なスペックも,例えば推奨CPUでPentium III/450MHzと軽いため,ノートPCなどでプレイするにも不自由はない。明るく「おバカ」なテイストが気に入ったら,プレイしてみるのもよいだろう。
必殺技などが出ると,誰ともなくその技(料理)に対して解説を入れてくれる。これもバトル系料理マンガのノリそのものである | バトルに勝つと,こちらから仕掛けた場合には相手の陣地を奪え,相手から仕掛けられた場合であれば自分の陣地を守れる |