― 連載 ―

ベルアイルな女たち

第4幕 シアワセをつかむオンナ

 先週の出来事から,わずか5分後のEmmaの様子から,今回の物語はスタートする。

 

「フッてやったわよ,あんな男! ふんふんっ」

 

 鼻息も荒く,慣れぬボーダーの町を闊歩するEmmaの顔には,「ワタシ,フられてばっかじゃないのよ!」という誇らしげな表情が浮かんでいる。結局また幸せにはなれなかったわけだし,自分が8人いる女の一人だったことを考えると,あまり誇らしげな顔をしている場合ではない気もするのだが,本人は気が昂ぶっているようである。

ついに最後の手段に出る女,Emma

一昨年の流行語「負け犬」の定義は……。なぜかEmmaよりも筆者がブルーになってしまったのは本文とは無関係だが,とりあえずEmmaはもう,なりふり構っていられないようだ

 しかし,この連載もすでに4回め。全何回なのかはEmmaの知るところではないが,このままでは世間でいうところの「負け犬」のまま連載終了,ということにもなりかねない。ベルアイルには,未婚を貫くキャラクターのために「養子」システムも用意されているが,「結婚」を目的として連載を始めた手前,Emmaにだってプライドがある。プライドが一応あるから,「旦那様 絶賛大募集」の看板を街中で出してみることにした……。

 

 カルガレオンにいたころ,「嫁さん候補募集」「カルガ仕官するお嫁さん募集中」といったコメントを頭上に出しながら街中を歩く男性キャラを,よく見かけたものだ。お嫁さんを募集するプレイヤーはいても,お婿さん募集のチャットや看板はあまり見かけない(偶然かもしれないけど)。
 この女性売り手市場のベルアイルにおいて,3週連続で幸せになれなかった我が娘。親のひいき目を割り引いても,Emmaは結構可愛い顔立ちだし,気立ての良い子だと思うのだが……。このさい,相手に条件など求めてはいけない,遺伝子継承さえ出来れば,もっと端的に言うと「子作り」さえできればよいのだ。

 

「お婿さん大募集,限定1名 早い者勝ち!!」……恥も外聞もないコメントだが,女のプライドがかかっている

 Emmaは一つの英断を下した(暴挙に出た?)。結婚の前提条件を満たしている男性であれば,顔も名前もファッションセンスも問わない。街の中で「婿募集」の看板を掲げ,とにかく「最初に声をかけてきた男性」と結婚することにしたのだ。
 さっそく看板を出して街中に座り込み,あとは通りがかる男性プレイヤーが目を留めてくれるだけ。青年期でも壮年期でもかまわないから,カモン! 花婿っ。さあ娶れ!

モッテケドロボー価格で試される男運

 「誰でもいい」と言っておきながら,タイプじゃない男性が通りかかると「来ないで,来ないで!」と,激しく念を飛ばすEmma。いったい誰に似たのかは知らないが,Emmaは大変な面食いなのである。
 道行く男子達を品定めしながら,さまざまな邪念を飛ばしまくるEmma。傍目にはじっと座ったままの,儚げな少女の前に最初に現れたのは,ひどく個性的なN君であった。

 

(うっぎゃああああああ! 何このスリリングな殿方!)

 

 

 心の中で絶叫するEmma。N君は簡単に言うと,Emmaの好みとは正反対のタイプ。

 

(何その裸短パン! 何そのナタ!)

 

「……」

 

 何も言わず目の前に立ちはだかり,じっとEmmaを見つめ続けるN君。結局,日が暮れるまで無言で立ち尽くしたあと,彼は無言のまま去っていった。「婿募集」の予想以上の難しさに,心身共に疲れ果て,ぐったりしながら明日に懸けるEmmaであった。

 

「ぎゃあああ,絶対ヤダ!」と,心の中で絶叫する娘。切羽詰ってるんだから,このさい誰だっていいじゃない。と,投げやり気味な母

シャイなのか,Emmaに不満があるのか,朝から晩まで目の前に立ち尽くした挙げ句,無言で消えていったN君。あの……怖かったです

 

 翌日,再び同じ場所で「婿募集」の看板を掲げ,座り込みを開始するEmma。誰からも声がかからないままゲーム内での数時間が経過し,焦り始めるEmmaの背中に,一人の青年がそっと近寄る。

 

「僕と結婚しません?」

 

「はいっ」

 

 相変わらず幸薄そうな顔で振り返るEmma。そこに立っていたのは,第3回でダメ男っぷりを露呈したS君であった……。

 

「うっぎゃああああああ!」

 

昨日の今日で「結婚しません?」と来たもんだ。いくら,Emmaも昨日まで嫁ぐつもりでいた相手とはいえ,こんなダメ男と! ……って,あれ?

何があったのか,涙,涙の結婚式

 というわけで,Emmaはとうとう結婚しちゃいました。ここだけの話ですが,実は「ゲームの中でゲームのキャラクターが結婚している」と分かっていつつも,ちょっと胸がいっぱいになってしまって……少し涙ぐんでしまいました。Emmaや,母さんの分までボーダーで幸せに暮らすんだよ。
 ここからはしばし,新婚夫婦の家を訪ねたら頼みもしない披露宴のビデオを(それも2時間近く)見せられたと思って,Emmaの花嫁姿をご堪能ください。あ,またちょっと目じりに水滴が。

 

まだ仕官できていないなどの理由で結婚していないプレイヤーのために,結婚できちゃったEmmaが教えてあげよう。ベルアイルでも,「入籍」と「結婚式」はまったくの別物。籍を入れるだけなら「牧師」に話しかければOKだ。それにしても,いつの間にかギャラリーが……

結婚式を行いたいなら,教会で予約が必要だ。予約時間はベルアイル時間ではなく,現実の時計で表示されるのに注意(Emmaの結婚式はリアルタイムで午前4時に行われた)。なお,ウェディングドレスと参列者への招待状は,無料でもらえるので忘れずに

 

 

 健やかなるときも病めるときも,富めるときも貧しきときも,死が二人を分かつそのあとも,もう二度と「ナナちゃん」とは呼ばないことを誓わせ,ついにEmmaとS君は夫婦となった。
 さて,何かお忘れではないだろうか? いや,結婚式の引き出物のことではない。二次会? いえいえ,結婚式の後にベルアイルで忘れちゃいけないものといえば,アレですよ。そう,遺伝子継承という素晴らしいシステムを活用するための……子作りですよ。いや筆者が子作りしたいんじゃなくて,そういうシステムなんですから,仕方ないですよね?

 

 ウェディングドレスを脱ぎ,新妻らしいシックなニーソックスに着替えたEmmaは,S君とパーティを組んだ状態で,「宿泊所」を訪れる。ちなみにボーダーには宿泊所が2か所あるが,子作りが可能なのは北側の宿泊所だけなので注意。

 

こんなときだけ「ワタシ,よく分からないわ」と言わんばかりに,初々しい新妻っぷりを発揮して一人そっと離れるEmma

 宿泊所のマスターに話しかけて,今夜一晩の部屋を予約する二人。通された部屋は窓も,ミニバーも,シャワーもトイレすらもなく,はっきりいって「ベッドだけ」の部屋。なんて生々しいんでしょ。
 部屋の中はあまり自由に行動できず,ほかにやることは何もないため,ベッドをクリック。欲しい子供は男か女か,それともコウノトリさんにお任せするかを選んだら,それで終了。ちなみに子作り開始後は自動的にログアウトとなり,5分間は再ログインできない。さらに詳しく解説するとすれば,リアルタイムの5分はベルアイル時間における約2時間に相当する。だから何だといわれても困ってしまうのだが。

 

 生まれたときから薄幸そうな顔立ちのEmmaが,果たしてこのまま本当に幸せになれるのか? S君との新婚生活に加えて,育児の重責に耐えられるのか。それはまた来週のお話……。

 

地味で殺風景な宿屋の2階に呆然とする新婚夫婦。本当は女の子が欲しかったのだが,ここはお楽しみということで「どちらでもかまわない」を選択

 

スキル
調理:50.2%
裁縫:54%
雑貨製作:42.8%

勝負服:ウェディングドレス

テーマ:青い鳥をわしづかみにした女

 

 

 

■■麻生ちはや(ライター・独身)■■
式当日は大勢の方にご参列いただいて大いに盛り上がり,本人はいたく感動して,ついホロリと涙してしまった模様。ついに嫁に行く喜びよりも先に,娘を嫁に出す喜びを知ってしまったようである。ところで感涙しているところ申し訳ないのですが,ベルアイルの世界のウェディングドレス,スカートがちょっと短すぎませんか。
タイトル ベルアイル
開発元 ヘッドロック 発売元 VerX
発売日 2006/05/25 価格 基本プレイ無料
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 8.1以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4以上推奨],メモリ:256MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 4 Ti以上[GeForce FX以上推奨],HDD空き容量:6GB以上

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