仕官も済ませ,あとはもう結婚を控えるのみ。長かった,たった3週間とはいえ,あまりにひどい仕打ちを短期間で体験したEmmaには,永遠とも思われたこの期間。
苦しみが大きかった分,反動でEmmaのはしゃぎようもすごかった。早くもウェディングドレスをゲットしては無闇に着てみたり,S君を伴ってボーダーの託児所に行き,ねだって他人の赤ん坊を抱かせてもらったり……。ボーダーに着いた瞬間から結婚モード全開のEmmaだが,S君もとくに嫌がっている様子はなく,すべてがうまくいっているようである。
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| 他人の赤ちゃんも抱くことが可能。「たかい高い」「あやす」「なでる」「ご飯をあげる」の五つから行動を選択でき,子供が望むことをすれば機嫌がどんどん良くなる。この「機嫌」も,その後の成長にどうやら影響があるらしいが…… |
ねだったら赤ん坊を抱かせてくれた,若いパパさん。S君もきっとこんな子煩悩なお父さんになるのかしらん
「やっぱり結婚式には大勢の人に祝ってほしいし,招待状を出しまくって,あ,あと引き出物も用意しなくっちゃ。今人気の引き出物アイテムといえば,使うとキャラクターの外見が若返る「魅惑の化粧筆」か「魔法の化粧筆」よねっ。それと結婚式当日に何か新しいものを一つ,古いものを一つ,借りたものを一つ,青いものを一つ身につけると花嫁は幸せになれるらしいから,これも揃えてっと。ねーぇS君,お義母さまから何か借りられないかしら?」
マリッジブルーなんて単語からはかけ離れたところにいるEmmaをよそに,どこか上の空のS君。チャットウィンドウに返事が出るタイミングが,いつもより微妙に遅い……その挙動不審っぷりに乙女レーダーが激しく反応。さすがに2回も痛い目にあうと,能天気な娘でも学習能力が働くらしい。仮縫い中のウェディングドレスを身に着けたまま,詰め寄るEmma。
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| ウェディングドレスは別に用意済みなので,お色直しと二次会の衣装を決めかねて,次から次に試着するEmma。だけどその縞々ニーソは違うでしょ? |
「ちょっと今,誰かとWisしてなかった?」
「うん,アリアバート出身のサンちゃんとだよ♪ あと,カルガレオンのロクちゃんとも同時Wisしてたから」
屈託のない笑顔で答えるS君に,思わず「あ,そうなんだ」で終わりそうになった会話。
うーん来た来た,いつものめまいが。しかしウェディングドレスに袖を通した女は強い。一歩も引かずS君に詰め寄っていく。
「ちょっと,サンちゃんて誰よ,サンちゃんて?」
「僕の3番めの彼女。あっ,でも今一番大切なのはナナだから心配しなくていいんだよ。1番がナナで,2番がカルガレオンのロクちゃんで,3番がボーダーの……,4番は……」
まったく悪びれずに,彼女がハチちゃんまでいることを明かすS君。彼の頭の中では「でも結婚したいのはナナだからいいでしょ?」という理屈らしい。
いつもならここで「うっそ〜ん」とか言って,涙を飲んで身を引き次週に続くEmmaだが,今回は違う。そそくさといつもの服に着替え,婚約破棄を自ら告げると,黙ってその場を立ち去った。
こんな女の名前も覚える気のない男に引っかかって,国まで捨てるという不覚を取ったとはいえ,ボーダーに仕官してしまった手前,もう故郷カルガレオンには戻れない(注:実際には仕官後でも出奔可能)。ここボーダーで,新たな人生をやり直すことに決めたEmmaだが,どうなる次週?
 相手の名前を覚える気もないくせに,結婚はするつもりだったという,とんでもないダメ男。許せん! |
 いつまでも幸せな二人の背中を見送ってばかりの女と思ったら大間違い。自分の背中が幸せじゃないのは癪だけど |