4月13日に正式サービスが開始されたカジュアルレースゲーム「テイルズランナー」。4月25日には新キャラクターの追加を含むアップデートが実施されおり,確実な進化を遂げている。
そんな中,運営元のネッツジャパンにお邪魔し,ローカライズ担当の李恩京(リ・ウンギョン)さんに話を聞く機会が得られた。韓国では美人プロゲーマー「Berry」として知られている彼女に,テイルズランナーの今後の日本展開や,アップデート計画について語ってもらったので,興味のある人はぜひご一読を。
4Gamer:
李さんは,韓国NetTimeSoftからネッツジャパンに出向し,テイルズランナーのローカライズを担当しているとのことですが……,プロフィールをしげしげと見てみると,プロゲーマーとして実に輝かしい経歴を持っていますね。現在,プロゲーマーとしての活動は休止中なんですか?
李恩京さん:
現在も,韓国プロリーグのプロゲーマーとして登録されています。実は先日,韓国に帰国したんですが,実はそのときにも2件,プロリーグへの参加を求められました。でも仕事があったので,今回の出場は辞退することにしたんです。
韓国で仕事をしているときは,たまに会社にお願いして,プロリーグに出場しています。週末などを利用して,集中的に練習できる環境がないと,勝利は難しいですからね。
4Gamer:
プロリーグに登録されている,というのは,例えば試験のようなものをクリアして,資格を得ているということですか?
李恩京さん:
試験のような制度はありません。私の場合は最初,プロリーグではなくアマチュア大会で何度か優勝していて,それがきっかけでプロリーグにスカウトされました。ほかにも,プロリーグに自ら練習生として参加して,結果を出して正式にプロゲーマーになったこともあります。プロになるには,やはりネットカフェでのゲーム大会やアマチュア大会で,ある程度の結果を残す必要があります。
4Gamer:
プロゲーマーの資格の更新はあるんですか?
李恩京さん:
プロゲーマーになると,プロゲーマーとしての教育を受けることになります。それは定期的に,年何回か受けることになるんですが,基本的には一度登録されると,試験のようなものを受ける必要はありません。だけど,オフィシャルな大会などで結果が出せないと,プロとしての立場がなくなるので,プロとして活動していくことは難しいでしょうね。
4Gamer:
なるほど。さすがにプロというだけあって,厳しい世界ですね。
李恩京さん:
そうですね。でも実力に見合った報酬が得られるので,やりがいがあります。有名なプロゲーマーになると,年収2000万円以上稼いでいる人もいます。それ以外にも,大会の賞金やコマーシャルの出演料なども発生しますし,韓国のゲーマーから見れば,まさに憧れの職業の一つでしょうね。
4Gamer:
プロゲーマーとして,テイルズランナーのユーザーと対戦イベントを行う予定などはないんですか?
李恩京さん:
私は基本的にスタークラフトのプロゲーマーだったので,すぐにテイルズランナーで対戦イベントを行うというのは,ちょっと難しいですね。
4Gamer:
RTS以外のジャンルはあまり得意ではないんですか?
李恩京さん:
ほかのジャンルでも得意なゲームはあるんですけど,「テイルズランナーのプロゲーマー」として売り出すなら,仕事量を減らして練習時間を増やさないとだめだと思います。例えばスタークラフトのプロゲーマーとしてやっていた頃には,1日10時間以上練習していました。それくらい努力しないと,プロゲーマーという肩書きを背負って対戦することは難しいですね。
4Gamer:
プロならば,どうしても勝たなければならない,という強い意志が感じられますね。現役プロゲーマー時代の努力や経験が,今の仕事に役立っているところはありますか?
李恩京さん:
プロゲーマーとは,言葉を替えれば,“すごくゲームがうまい一人のユーザー”なので,ユーザーの立場は十分理解しているつもりです。またかつて,「コルムオンライン」というMMORPGでGMをしていたこともあるので,運営側の立場も深く理解できました。そういう意味では,これまでの活動のすべてが,今の仕事に役立っているといえます。
4Gamer:
ところで,今後ネッツジャパンさんは,李さんをどんどん露出していく方向なんですか?
ネッツジャパン ビジネスディレクター池末晃氏(以下,池末氏):
その予定でいます。当社はオンラインゲーム業界では,どちらかというと後発組ですから,例えば「プロゲーマー」という韓国のオンラインゲーム文化をも含めて,当社のカラーとしていきたいんですよ。実は今後,日本人プロゲーマーも当社に入社する予定です。
4Gamer:
おお,それは興味深い話ですね。
池末氏:
プロゲーマーという,ゲームに対して非常に造詣の深い人材を受け入れることで,今後の運営や開発に生かしていきたいという考えがあるんです。
4Gamer:
そういった人材を積極的に受け入れていくということは,今後のイベント展開であるとか,運営予定のタイトルなどにも関わってくることなんでしょうか?
池末氏:
そうですね。そうしていきたいです。
4Gamer:
なるほど。日本におけるゲームのプロリーグ発足……,というわけではないのかもしれませんが,今後の展開が非常に楽しみですね。
4Gamer:
李さんは現在,テイルズランナーのローカライズを担当されているとのことですが,どういった経緯でネッツジャパンに入社したんですか?
李恩京さん:
私は元々,韓国ネットタイムソフトで「コルムオンライン」のGMをやっていました。その傍ら,プロゲーマーとして,オンラインサイト内のゲーム紹介番組に出演したり,レビューやゲーム紹介記事なども執筆していたのですが,そういった活動を通じて,NetTimeSoftの社長から目を付けられまして。最初はプロゲーマーとして,テイルズランナーへのアドバイスやレビュー記事執筆を依頼されていたんですが,いつの間にか企画に携わるようになり,今にいたっています(笑)。
4Gamer:
なるほど。テイルズランナーの企画に携わっているというのは,具体的にどのような部分に関わっているんですか?
李恩京さん:
アイテムの企画出しや,ゲームの基本仕様など,開発初期の段階から参加させてもらっています。
池末氏:
ほかにも李は,日本の公式サイトコンテンツの大部分の設計に関わっています。公式サイトのほうは,完全に彼女が担当しているといってもいいでしょうね。また,韓国の開発者との交渉もしてくれています。
4Gamer:
単にローカライズ担当というわけではなく,テイルズランナーの日本展開の中心人物といえる存在なんですね。
池末氏:
ええ。李はかなりの日本通でもあるし,日本のスタッフとのコミュニケーションも,とてもスムースにいっています。非常に心強い存在ですね。
4Gamer:
しかし,いくら日本通とはいえ,仕事柄,言葉の面で苦労することが多そうですね。
李恩京さん:
韓国にいる頃から日本語の勉強をしていたんですが,まだまだ未熟なもので,とっさに言いたいことが言えないのが歯がゆいですね。テイルズランナーのクローズドβテストでは,ゲームに参加して一般プレイヤーと一緒に遊んでいたんですけど,あるプレイヤーから,「あ,Berryたんだ!」といわれて(笑)。とても嬉しかったんですけど,なんて言えばいいのか分からずに,もどかしい思いをしました。
4Gamer:
「Berry」というのは,「スタークラフト」の大会などで使っているIDと同じ名前ですよね。
しかし,そういうユーザーの反応を見ていると,もう少し「Berry」であることをアピールして,ゲーム内や公式サイト上での露出を増やしていってもいいんじゃないかな,などと思うんですが,どうでしょうか。
李恩京さん:
私もプロゲーマーとしての経歴があるので,当初は,GM兼プロゲーマーとして作品を盛り上げていく道もあるかな,と思っていました。でも,日本での立ち上げ事業が大切ですし,まずはローカライズ/企画担当としての仕事に専念しようと思います。
4Gamer:
そういえば,近い将来,テイルズランナーにロビーチャット機能が実装されるという話を先ほど耳にしたんですが。
池末氏:
ええ。まだテイルズランナー自体に「チャットができる場所」というものが実装されていないので,それが実装されたら,李にももっと登場してもらいたいなと考えているんです。実装は,えーと……。
李恩京さん:
ロビーチャット機能は,韓国では8月くらいに実装される予定です。日本での実装はそのあとになってしまうんですが,それほど時間を置かずに導入する予定ですよ。