4Gamer:
2月8日に韓国で行われたプレスセッション時に,GEは「RPGの楽しさの原点について熟慮したゲーム」とおっしゃっていましたが,ハッキュさんにとって“RPGの楽しさの原点”とはなんでしょうか?
キム・ハッキュ氏:
いきなり大きい話ですね(笑)……そうですね,私が考えるRPGの楽しさは二つあって,一つめは新しい世界に浸れること,そして二つめは,プレイヤー,キャラクターを問わず仲間と力を合わせて目標を達成できることだと思っています。
4Gamer:
なるほど,そこは分かりやすいですね。では二つめの定義として挙げられていた,「MMORPGの限界点と,既存の公式からの脱皮を目指したゲーム」という点に関してはどうでしょう。ハッキュさんの考える,既存のMMORPGの限界点を教えてください。
キム・ハッキュ氏:
私の考える現状のMMORPGの限界点とは,一人でプレイをしていると,解決できない問題にぶつかってしまうことが多い点です。それはレベルが上がれば上がるほど顕著になってきてしまって,プレイヤーの選択肢を狭めてしまっていると思います。すべての人がほかのプレイヤーと交流を積極的に図りたいわけではないですからね。
また,仮に一緒にプレイする仲間がいたとしても,いつでも一緒にプレイできるわけではないと思います。その点GEはMCCなどを取り入れ,一人でも十分に楽しめるようにしています。
4Gamer:
確かに,毎日毎日何時間も何時間もコミュニケーションとるのもツラいですよね(笑)。いくら友達とはいえ。しかしまだGEの全体像がはっきりと見えないのですが,プレイヤー同士の交流や衝突をなるべく減らしてあったりして,どちらかというとMMOというよりはMOを目指しているということでしょうか?
![]() |
![]() |
![]() |
キム・ハッキュ氏:
いえいえ。あくまでも,一人でプレイしていると何もできない,という状況をなくす努力を最大限に行った結果です。一人でもゲームを進められるし,ほかの人と一緒に楽しむこともできるように,プレイヤーに選択の幅を与えたのです。
さらに,コントロールが複雑と思われるMCCに関しても,キャラクターの操作をAIにまかせられるといったような,ライトユーザーへの配慮も図っています。GEは,とにかく色々な人を取り込めるようにしていきたいと思っているのです。
4Gamer:
一人でなんでもやりたい人,他の人との交流が好きな人,MMORPGの初心者,上級者……あらゆるタイプのプレイヤーを取り込もうと考えている,ということなんですね。そうなってくると心配になるのが,プレイヤーのモチベーションに関してです。
モチベーションはどこに設定しているんですか? とくに,一人でなんでもできることに惹かれてプレイを始めた人が,何にモチベーションを感じるのかが,現時点ではちょっと疑問です。「なんでもできる」ことは,「なにもできない」ことと同義になりがちではないでしょうか。
キム・ハッキュ氏:
まずゲームの序盤は,クエストを通じてゲームの基本的な部分を理解していきつつ,NPCを仲間にしていくことですね。そして,NPCも含めて自分のキャラクターを色々組み合わせて状況に合ったパーティを研究するといった楽しみもあるので,そういった点がモチベーションにつながると思います。
4Gamer:
ではその後はどうでしょう?
キム・ハッキュ氏:
その後ある程度ゲームに慣れてきたプレイヤーを,ほかのプレイヤーとの交流を持つように誘導します。たとえば,先ほど話したボス戦などがその例です。仲間と協力して初めて勝てるものなので,こういったものに挑むことも楽しいでしょう。パーティを組むときは,一人でプレイするときとは違ったキャラクターの構成をほかの人と相談して決めることになりますので,これもモチベーションにつながると思います。
4Gamer:
なるほどなるほど。では,レベルを上げ切って,NPCなどを全部揃えてしまったあとはどうですか?
![]() |
![]() |
![]() |
キム・ハッキュ氏:
それは,そんなプレイヤーが出てきたときにお話します。いま答えてしまうと,完全にネタバレになってしまいますし(笑)。
4Gamer:
なるほど,策は練ってあるんですね。では,さらにつっこんで聞きますが,それは新しいマップやアイテムやクラスといったコンテンツの追加でしょうか? もしそうだとすると,開発案件がどんどん増えていって,結局はゲーム内インフレーションを加速していくことになりませんか?
……だとすると,「G★2005」の基調講演の内容があまり反映されてない気がするのですが。
キム・ハッキュ氏:
ちょっと待ってください。確かに開発自体は増えていきますが,私たちは単純にマップの広さやアイテムの数などを差別化の手段にしているわけではありません。
インフレーションそれ自体は,MMORPGにとって必要なことだと思っていますし,GEは開発が増えることをも最初から想定して設計しています。いまの件に関しては,まったく別の部分で差別化を図っていきますよ。
4Gamer:
あ,私の早とちりでしたか。単純にマップやアイテムを増やすことで,他のゲームとの差別化を図ろうとはしていないと聞いて安心しました。おそらく一人で遊べる部分と,プレイヤー同士の交流が必要になる部分をうまく融合させつつ,差別化を図っていくということですね。
ただ,そういったことは見た目では分からないので,早くプレイをしたいですね。日本でのテストはどんな感じになりそうですか?(編注:すでにHUEからリリースは出されていますが,インタビュー時の原文のまま残しておきます)
キム・ハッキュ氏:
日本で行う次のテストは,ファイナルクローズドβテストです。「Progressive Test」という名称で、韓国の「FINALTEST」と同じように5000名規模で実施します。
4Gamer:
それはまた急激に増えましたね。
キム・ハッキュ氏:
ええ,今まで極々少人数でやっていて,こちらももどかしく思っていたんです。やっと多くの人に遊んでもらえるものになりました。
4Gamer:
ゲームシステム的な部分はどうですか? もしかして時期的に考えて,韓国のオープンβテストと同じ内容だったりします?
キム・ハッキュ氏:
ええ,もちろん。しかも,さらに安定性を増したものなっていますよ。
4Gamer:
おお,それは凄い。今まで個別機能のテストはありましたけど,ゲームの全体が分かるものとしては,日本で初お披露目になるわけですね。
キム・ハッキュ氏:
そうですね。正式版にかなり近いもので,チュートリアルモード,NPCを仲間にする機能,PvP,トーナメントとほぼ全部入った状態です。
![]() |
![]() |
4Gamer:
いままで言葉でしか語られなかった“GEのウリ”となるものが,全部込められているといった感じですね。ところでGEは日本にも熱狂的なファンが大勢いるんですけど,正式サービス開始後に,日本独自仕様とか考慮されたりする可能性はありますか?
キム・ハッキュ氏:
基本的に韓国と日本では,同じコンテンツを提供していこうと考えています。とはいえ一方的に韓国側の仕様を押しつけるといったわけでなく,仮に日本オリジナルコンテンツを作ったとしたら,それを韓国にも提供するといった感じですね。
そうそう,日本オリジナルというわけではないですけど,アイテムに“スシ”がありますよ(笑)。
4Gamer:
世界観的にどうなんでしょう,それ(笑)。
キム・ハッキュ氏:
先日ちょうどその話をHUEとしたんですけど,HUEとしては「日本のオリジナルアイテムなどを提供したい」というのが基本方針のようです。HUE側でやる気なら,こちらもがんばります(笑)。ジャストアイデアに過ぎませんが,NPCにプレイヤーの声を使ったり,サーバー名の募集をやったり,オリジナルアイテムを導入したりしてみたいですね。
4Gamer:
GEは世界観がはっきりとしているので,難しい面もあると思いますが期待しています。そろそろ時間だと思いますので,最後に読者へのメッセージをお願いします。
キム・ハッキュ氏:
今までお待たせしてしまってごめんなさい。やっと多くの人にお見せできるものができあがりました。日本のみなさんが興味を持っている要素はしっかりと組み込んだものが,もうすぐプレイできるようになりますので,あと少しだけ期待して待っていてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
改めて色々と聞いてみたインタビューを終えてみて分かったが,GEの目指す方向性は「最大公約数」なのだ。それも単純に二つの要素の公約数ではなく,さまざまな要素をまとめてカバーをする巨大なものである。プレイヤーに可能な限りの選択肢を与え,多様なプレイスタイルやプレイヤーの状況に応じ,それぞれのプレイヤーが楽しめるゲームを目指しているように感じた。「誰でも楽しめる〜」といったキャッチコピーは世の中にごまんとあるが,それを本気で考えて本気で取り組んだ作品が,この「グラナド・エスパダ」なのだろう。
話を聞く限り,MCCシステムやNPCの追加機能など,一人で遊べる要素は充実している。しかし,必ずしもMMORPGを一人で遊べるようにすることが,そのまま“楽しさ”に直結するわけではない。一人でも遊べる要素と,他人との交流が必要になる部分のバランスが気になるところだ。
だが,この部分に関しては,いくら口頭ベースで話を聞いたとしてもはっきりとは分からない部分。ここは素直にテストの開始を待ち,今回キム・ハッキュ氏が語ってくれたことを念頭に置きながらプレイをしてみたい。なにせ彼がインタビュー中に何度となく口にしていたのが,「それはプレイすれば分かるよ」というセリフ。βの開始を素直に期待したい。(2006年2月21日収録)



















