「Age of Empires III」の登場を機に,その風向きが変化してきたリアルタイムストラテジー(RTS)にとって,今年は熱い1年となりそう。昔のような地味な印象はなくなり,美しいグラフィックスや物理エンジンを盛んに利用する一方,ゲームのメカニズムとしては資源管理が簡略化されるなど,より広いプレイヤー層に受け入れられるような工夫がなされているのが最近の傾向だ。
Company of Heroes
開発元:Relic Entertainment
発売元(米):THQ
リリース時期:2006年内
「Homeworld」や「Impossible Creature」「Warhammer 40,000: Dawn of War」など,良作RTSを連発し続けるRelic Entertainmentの新作は,ヨーロッパ戦線をテーマにした「Company of Heroes」だ。2006年内の発売が発表されていながら情報はなかなか出てこないものの,自社設計によるグラフィックスエンジンの緻密な美しさと,Havok物理エンジンによる派手な演出が,地味な印象を与えがちな世界大戦ものRTSを華やかな雰囲気に仕立て上げている,注目作といえる。
現在公開されているムービーデモでは,とにかく一人一人が人間的な動きをするアニメーションが秀逸で,戦車の陰や塹壕に身を潜めながら激しく撃ち合う様子にはゾクゾクさせられる。実際,ゲーム中ではどんな建物でも破壊可能になっており,オブジェクティブ遂行のためには,直進するか迂回するかなどプレイヤーの意思によるところが多くなりそうだ。ゲームのメカニズムについてもまだ不明な点は多いものの,戦略拠点の占拠でユニットが追加されるという,Dawn of Warで利用されていたようなアイデアが継承される見込み。マルチプレイモードでは,ドイツ軍でもプレイできる予定だ。
Heroes of Might and Magic V
開発元:Nival Interactive
発売元(米):Ubisoft Entertainment
リリース時期:2月21日
「Heroes of Might and Magic」といえば,本家RPG「Might and Magic」のスピンオフとして10年以上も前に誕生して以来,ターン制のファンタジー系ストラテジーゲームとして世界的な人気を博してきた作品である。ファンタジー種族で構成される軍隊を作り上げ,砦を築き,世界制覇を目指して突き進むというもので,「ファイナルファンタジー」風の別画面に切り替わっての戦闘フェーズは,日本人にも馴染みやすい。
3DO倒産の折,130万ドルという投資によってMight and Magicシリーズの版権を買ったUbisoftだが,初のフル3Dグラフィックスとなった「Heroes of Might and Magic V」ではストーリーや世界はもとより,ファクションやマジックシステムまで,完全に新しいものに生まれ変わる予定だ。戦闘時にはカメラを自由に移動させて剣と魔法のぶつかり合いを堪能できるし,今作からは先にコマンドを出しておいて,一斉に戦わせるような半リアルタイム制システムでプレイできるオプションもある。
また今作は,マルチプレイモードも用意される予定。かなり熱狂的なファンがいることで知られるシリーズなので,コミュニティの拡充にも重点が置かれているようだ。
The Lord of the Rings: Battle for Middle-Earth 2
開発元:Electronic Arts Los Angeles
発売元(米):Electronic Arts
リリース時期:2月28日
「The Lord of the Rings: Battle for Middle-Earth 2」では,原作小説の版権をも利用することによって,映画では語られていない中つ国(Middle-Earth)の裏側までが描かれる。エルフ,ドワーフ,そしてゴブリンの勢力でもプレイでき,北方の積雪地帯などを含めた50か所の広い地域において,光と闇の軍に分かれての壮大な物語を堪能できそうだ。
前作との大きな違いは,まず城をマップの好きな地点に設置して,ゲームの進展に従って拡充できるようになったことだ。投石器や煮えた油を落とす兵士などを配置することで,建設シムの要素と共に,防御することの楽しさが加わっている。また,ブラックライダーなどの新ユニットをはじめ,トム・ボンバディル(Tom Bombadil)のような映画に登場しなかったキャラクターも,想像力豊かに描かれているのが特徴だ。
もう一つ,前作であまり追求されなかったオンライン対戦にも本作は力が入れられている。とくにタイタンユニットと呼ばれる,非常に強力なユニットを召喚できる力を持つ指輪をめぐって戦う「One Ring」モードには期待できそうだ。
Rise of Nations: Rise of Legends
開発元:Big Huge Games
発売元(米):Microsoft
リリース時期:春
「Rise of Nations」の名称が冠されているが,前作とはまったく違うゲームになってしまった「Rise of Nations: Rise of Legends」。3Dエンジンは一新され,ゲームデザインの基本部分やマルチプレイモードにも大きな変更が加えられている。そのうえ「歴史」というテーマからは離れて,スチームパンク風の工業社会が描かれた世界に変貌しているのだ。
シングルプレイモードはカットシーンを多用した演出が特徴で,ジャコモ(Giacomo)という主人公を中心に物語が進んでいく。四つの勢力が存在し,ダ・ヴィンチの残したスケッチなどにヒントを得たユニットが登場するビンチ族,そしてガラスのドラゴンやゴーレムを生産できるアリム族の2種類が,現在のところ発表されている。それぞれの勢力の施設やユニットには細かいアニメーションが施され,ベースとなる街は画面に入り切らないほど巨大化していくのが興味深い。資源収集も簡素化されており,街と街の間で交易することで得られる金銭と,架空の鉱石であるティモニウムの2種類のみでまかなわれる。
対戦モードでは,ゲーム中に特定条件を先にクリアしたプレイヤーが,特殊スキルや魔法を得る「Dominance」モードが加えられており,ゲーム中に何度もどんでん返しが起こる可能性がある。
Star Wars: Empire at War
開発元:Petroglyph
発売元(米):LucasArts Entertainment
リリース時期:2月15日
映画シリーズが完結しても,その人気が衰えない定番作品「スター・ウォーズ」。その最新ゲーム「Star Wars: Empire at War」は,RTSというジャンルそのものを生み出した元Westwood Studiosのメンバーが集結した,Petroglyphによって開発されている。宇宙でのバトルも堪能でき,非常に壮大なゲームになっている。
本作はなんと銀河が一つのマップでできており,タトゥイーンやホスといった馴染みの深い惑星が戦場に見立てられて,ステージとして100種類ほど用意されている。ユニットもストーム・トルーパーやX-Wingファイターはもとより,AT-ATウォーカー,モン・カラマリ型戦艦,巨大な肉食生物ランコア,さらにはデス・スターやジェダイまでが生産できるようになる。掌握した惑星は後方支援として活用することで生産力も上がり,より強大な軍隊を築き上げられるようになっていく。
このキャンペーンモードはオンライン対戦にも存在し,二人のプレイヤーが銀河制覇するまでプレイを続ける「Galactic Conquest」モードには期待。ランダムにマップを選んで1ゲームを遊ぶ「Skirmish」は,最大で8人が参加できる。
Warhammer: Mark of Chaos
開発元:Black Hole Games
発売元(米):Namco Hometek
リリース時期:冬
「Warhammer: Mark of Chaos」は,ここ数年PCゲームの販売にも力を入れているナムコの米現地法人Namco Hometekが,2004年に「Army of Exigo」でデビューしたBlack Hole Gamesと組んで制作するRTSである。Warhammerは,The EmpireとThe Horde of Chaosという二大勢力を中心とした種族が血肉の争いを続ける,欧米で根強い人気のミニチュアを使用したボードゲーム。日本での知名度は低いが,本作ではボードゲームと同様,大量のユニットによる体力消耗戦がクローズアップされている。
Warhammerの世界はChaos Taintという摂理で成り立っており,The Horde of Chaosは破壊と殺戮によって全土を混沌の世界にするのが,The Empireはこの混沌を浄化させていくのが目的だ。資源管理に工夫が加えられており,プレイヤーは直接生産には関わらず,ユニットを動かして農場や鉱山などを占拠するだけで資源が得られるという。またヒーローユニットを複数使用できるのだが,これらはゲーム序盤では自分の存在を認められるまで小規模な戦闘を続け,最終的にはチャンピオンとして数千体という大軍を操ることになる。
定点観測基地より
情報がなく掲載は見送ったが,かなり期待できそうなRTSが「Supreme Commander」。Gas Powered Gamesを率いる,あのChris Taylor(クリス・テイラー)氏の久々のストラテジーゲームである。「Europa Universalis」以来固定ファンの多いParadox Interactiveは,アメリカの南北戦争という難しいテーマを扱った作品を制作中。Segaの「Medieval 2: Total War」,GSC Game Worldの「Heroes of Annihilated Empires」,GFIの「Jagged Alliance 3D」など,今年も期待できそうな作品が多い。
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