― 特集 ―

PCゲーム新作ガイド2006

Text by 奥谷海人 

アクション/その他

バイオレンスゲーム満載な過激な一年

 何もゲームメディアに限ったことではないのだが,暴力表現は毎年過激さを増していく。今年のPCゲーム界も,全体的に暴力的な内容のものが多い風潮にあるといえる。本来なら二の足を踏みそうな大企業も参入しており,この手の表現が過渡期を迎えつつあるようだ。

 

 

Bad Day L.A.

開発元:Enlight Software/TMIEC
発売元(米):Enlight Software
リリース時期:4月12日

 

 2000年の「American McGee's Alice」(邦題 アリス イン ナイトメア)で一躍有名になった,元id Softwareのデザイナー,American McGee(アメリカン・マギー)氏の最新作は,痛烈な社会風刺を盛り込んだコミカルなアクションゲーム「Bad Day L.A.」である。この物語の主人公は,ロサンゼルスで生活するホームレス,アンソニー・ウィリアムス。ある日,テロリストが高速道路に墜落させたジェット機に搭載されていた大量の化学薬品によって,人々がゾンビへと変化してしまう。さらには地震や隕石の衝突など,あり得ないような災害が次々と発生し,アンソニーはただ生き抜くためにミッションをこなしていく。
 トゥーンシェーダによって描かれたコミック風なグラフィックスで,インタフェースを含めて全体的に非常にシンプルな作りだ。アンソニーは困っている人を助けるたびに,右上に表示された「Threat Advisory」というパラメータが下降し,市民からも好かれるホームレスとなる。反対に,人助けをせずにガンバトルに夢中になっていると同パラメータが上昇し,難度も高くなっていくようだ。モンスター化した肥満集団やハンバーガーの着ぐるみを着用した巨人など,画像を見ているだけでも笑えるノリの作品である。

 

 

Hitman: Blood Money

開発元:IO Interactive
発売元(米):Eidos Interactive
リリース時期:5月

 

 暗殺者“エージェント47”が活躍する,カルトヒット作品の第4作「Hitman: Blood Money」は,日本でも人気の高いステルス系アクションシリーズの最新作だ。このたび,ついに新しいグラフィックスエンジンが搭載されて,見た目もずいぶんと洗練されたDirectX 9世代作品へと生まれ変わる。
 前作のクローン兄弟が次々と殺されていくという事件から,人目を避けるようにしてラスベガスに向かったエージェント47だったが,生活に困って殺し屋家業を再開するというのが今回のバックストーリーとなる。今作では,目撃者を極力少なくすることで新聞記事のネタにならないよう心がける「Notoriety」システムが加えられ,その成果によって依頼人からより多くの金銭をもらえるという方式になった。報酬は新たに銃器やアイテムを購入したり,次のミッションの標的に関する情報を得たりするのに使用できる。また,現場であまりにも被害を出してしまった場合には,現場のクリーンナップや新聞記事の改竄といった事後処理を,所属するグループに金を支払って依頼できる。
 どのようにミッションを遂行するのかがプレイヤー次第となるのは前作どおりで,シングルプレイヤー専用ながらも何度も楽しめそうだ。

 

 

Lara Croft Tomb Raider: Legend

開発元:Crystal Dynamics
発売元(欧):Eidos Interactive
リリース時期:春

 

 シリーズ第7作となるアクションアドベンチャー「Lara Croft Tomb Raider: Legend」は,これまでの開発元だったCore Designsを離れ,初めて外部開発チームのCrystal Dynamicsに委託された作品となる。ゲームエンジンやキャラクターデザイン,操作性が一新され,かなりアップデートされた印象を受ける。しかもオリジナルのデザイナーだったToby Gard(トビー・ガード)氏が絡んでいるとあって,今作は歴代ファンからもポジティブに受け止められているようだ。
 とくに今回大きな変更となっているのが,「プリンス オブ ペルシャ」を連想させるララの軽快な動きで,豊富なアニメーションで壁を自由によじ登り,ジャンプや反転を繰り返す。今回からは鉤縄を高所や遠方に引っ掛けて上り下りに利用するなど,パズルにもアクション性が加えられたものが多い。
 ララが旅するのはアフリカ東部の密林やペルーの古代遺跡,ヒマラヤの山岳地帯など。使用できる武器はピストル,ショットガン,サブマシンガン,ロケット弾などで,敵の目を眩ませるフラッシュグレネードや,暗い場所で利用できる,肩に設置されたフラッシュライトなどもある。ミッションの達成具合で新しいコスチュームがアンロックされたりするらしい。

 

 

Monster Madness

開発元:Artificial Studios/Immersion Software & Graphics
発売元(欧):未定
リリース時期:3月30日

 

 両親の留守中に秘密パーティを開いていた4人組の高校生のいる郊外の町に,突然モンスターの大群が襲ってきた。彼らは,ガレージやキッチンにあるガラクタをかき集めて武器を作り,ショッピングモールから学校までのモンスター退治に出かけるのだ。
 開発を行うArtificial Studiosは,「Realityエンジン」という独自のグラフィックスエンジンを開発している会社で,本作もそのデモとしての役割が大きい。とはいえ,物理エンジンとして有名なNovodeXもサポートしており,群がるゾンビやアンデッドサムライなどをなぎ倒していくのが爽快そうな,ダークホース的ゲームである。
 カメラはかなりトップダウンに近い三人称視点で,往年の「ガントレット」や初代「Postal」に近い,Shoot'em upなアクションゲームとなりそうだ。武器にはショットガンやキッチンナイフから,ベースボールバット,チェーンソーなどまであり,貴重なアイテムを見つけては改造していくことも可能。周囲のオブジェクトを集めてバリケードを作ったり,車を建物にぶつけて倒壊させたりというようなこともできるようだ。

 

 

Scarface: The World is Yours

開発元:Radical Entertainment
発売元(米):Vivendi Universal Games
リリース時期:3月

 

 1980年代のマイアミを舞台に,ドラッグエンパイアを築くために主人公が奔走する……と書くと,まるで「Grand Theft Auto: Vice City」のようにも聞こえるが,この「Scarface: The World is Yours」は,1983年にアル・パチーノ主演で撮影されたブライアン・デ・パルマの名作映画をゲーム化したものだ。もっとも,完全にリバイバルさせたものではなく,「もしエンディングで主人公トニーが射殺を免れていたら?」という後日談による展開となる。
 ゲームは,その災難からなんとか逃れ,マイアミ沖にある島に逃避したところから,またまた無一文の状態で始まる。もっとも,今回トニーは自分の商品には手を出さず,更正した麻薬密売人へと変貌。かたぎの商店の裏で商売しながら,自分を追い落としたアレハンドロへの復讐と,テリトリーの奪回を狙っての格闘を始めるのである。
 自由度の高いGTAと似た作品ではあるが,キューバからの密輸船の安全確保に努めたり,貯めた小金を新車やファッションに浪費したりと,どこか経営シミュレーションのような側面も持っている。ライバルが多いScarfaceだが,どこまで健闘できるだろうか。

 

 

The Godfather

開発元:Electronic Arts
発売元(米):Electronic Arts
リリース時期:3月

 

 イタリアンマフィアの名門コルレオーネ一家に認められた主人公が,ファミリーのために密輸,抗争,恐喝,賄賂,暗殺といった仕事をこなしていくのが「The Godfather: The Game」である。Grand Theft Autoや,上のScarfaceと同じコンセプトのゲームといえる。
 プレイヤーキャラクターは,アル・パチーノが演じた劇中の主人公マイケルではないものの,マーロン・ブランドのヴィト・コルレオーネを始め,映画の登場人物の多くが登場。フランシス・コッポラの映画三部作だけでなく,マリオ・プーヅォの原作を含めた60年前のニューヨークが再現されており,もはや過去の遺物となりつつあるイタリアンマフィアの生活を堪能できる。もちろん最終的な目的は,ミッションをこなして仲間達からリスペクトポイントを稼ぎ,やがてはドンとして摩天楼に君臨することだ。
 ゲーム内の展開はプレイヤー次第で,傘下の店主を抹殺してしまえば儲けを独り占めできるし,追っ手の警官にマシンガンを乱射するなんてこともできる。しかしあまりにも派手に活動すると,ライバルや警察から睨まれ,プレイしづらいことになるため,どこまでやるか十分な注意を払う必要がありそうだ。Electronic Artsにとっては,かなり冒険的なソフトである。

 

 

定点観測基地より
 過激な描写のアクションゲームはプラットフォームに限らず,この後も多く産出されそうな気配。あのRunning with Scissorsも「Postal 3: Catharsis」なる新作を発表しているし,Grand Theft Autoの続編のウワサもアチコチから聞こえてくる。また,今年発表予定の映画には「スーパーマン」「X-メン」「ジュラシック・パーク」の続編があるようで,このあたりのゲーム化にも期待か。


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