4Gamer:
まとめれば,セカンドゲームというポジションを確立したことと,最初のプレイのハードルを低くすることで人を集め,その人達を逃がさないようにうまくコミュニティを育て上げていった結果,そのコミュニティがさらに多くの人を呼び,短期間で100万を突破した……という感じでしょうか。
しかし,説明するのは簡単ですが,実現するのは難しいことですよね。具体的には,どのような方法を採られたのでしょうか?
植田氏:
これについては,昨日お話しした(編注:インタビューの前日に,ゲームポットの親会社アエリアが主催するセミナーが行われており,植田氏も講師としてオンラインゲームの運営ノウハウについて講演していた),ゲームポットの取り組みについて思い出してもらうのが早いかもしれません。
4Gamer:
ええ,実は私も,それを念頭に置いて質問していたんですよ。確かゲームポットの取り組みとして,「日本人の嗜好に合わせた企画」「ユーザー参加型の運営スタイル」「新鮮なサービスを提供する運営体制」「マルチタレント化したGMの育成」を挙げていましたね。それぞれ,詳しく教えてください。
植田氏:
日本人の嗜好に合わせた企画というのは,もうそのままですね。パンヤの場合,多くの追加アイテムが,日本運営側,つまりゲームポットで発案したものなんですよ。単にアイデアを文字で伝えるだけでなく,イラストを起こして渡していたりします。
4Gamer:
具体的にはどんなアイテムが日本発案ですか?
植田氏:
色々ありますね。最近だと,「ピコピコハンマー」や「はりせん」が,分かりやすいでしょうか。ああいったものが韓国にもあるのか分からなかったので,ちゃんとこれらがどういうものかイラスト付きで説明して,作ってもらいました。あと,夏限定アイテムの水着も,日本側のアイデアです。
4Gamer:
水着……うちにも結構お金を費やしたスタッフがいたような(笑)。
植田氏:
日本人の感覚では,アリですよね。コレクター魂を刺激するといいますか。限定品とか,レアなものだと,余計欲しくなる。ところがあまり,韓国ではこういった考え方はしないようです。韓国はどちらかというと,有名人を使うなどのプロモーションが多い。パンヤでは,ちゃんと開発側と連携を取って,日本人に合ったサービスを提供しています。
次の,ユーザー参加型の運営スタイルというのは,先ほどのイラストコンテストなどが具体例ですね。投稿できるだけでなく,Web上から審査に参加できるし,コメントも付けられます。それ以外にも,オンライン/オフラインを問わず,さまざまなプレイヤーが参加できる場を作っています。
オンラインだと,最近だとアリンを追加したときの,パズルがこの例ですね。特設サイトに置いたパズルを,ユーザー達がクリアしていき,一定のクリア数に達すると,新しい壁紙をダウンロードできるという企画だったんですよ。ただこれが,我々の予想を超えた人気になっちゃって……。
倉元氏:
確か1000回クリアごとに新しい壁紙を出すようにしていて,1週間くらいは持つ予定でしたが……わずか1日で全部の壁紙が出ちゃいましたね(笑)。ちなみに,以前クリックすればクリックするほど絵が見えてくるという企画を行ったこともあるんですが,これは企画倒れでしたね。見事にサーバーがパンクしました(苦笑)。クリックがアタックになっていたという……。
4Gamer:
ちなみにこういった企画って,どなたが考えているんですか?
植田氏:
これは,実は倉元をはじめとする,GM達が考えています。倉元は広報担当ですが,GMでもあり,企画立案者であり,イベント司会者でもあるんですよ(笑)。さっきの,日本独自アイテムの追加も,やはりGM達による発案です。
このように,パンヤのサービスは「企画」「開発」「運営」の3本柱の連携が取れているのが,強みです。大抵のことは,「自前」でやっていますからね。これが,三つめの“新鮮なサービスを提供する運営体制”ですね。アイデアをすぐに実現させることで,「常に新しいサービスがある」というイメージをプレイヤーに与えられるよう心がけています。
倉元氏:
細かい話ですが(と言って,紙資料を出す),見てのとおり,ほぼ毎週アップデートを行ってきました。またイベント的なものも,細かいものを入れれば100回を超えていますね。
あとデザイナー陣もがんばってくれていて,例えばパンヤにログインしたときに表示されるポップアップも,週に数回入れ替えるようにしているんですよ。しかも毎回,インパクトのある絵にしてもらっています。ログインするたびに,新鮮さが感じられるようにしているわけです。
4Gamer:
課金体制の“決断”ができたスピーディさは,その後のサービスでも生きているわけですね。
植田氏:
大企業と戦うとき,スピーディさは強い武器になりますからね。
最後の,マルチタレント化したGMの育成というのは,倉元をはじめとするGM達が,ゲーム中ではそれなりに人気があるというのが,具体例ですね(笑)。
4Gamer:
広報やら企画立案やら,大変ですね(笑)。この兼業具合が,ゲームポットの機動力につながっていると。
植田氏:
あと倉元は,ブログページも持っているし,パンヤの4コママンガにも「K元」としてしばしば登場しています。こういったことでGM達をキャラクターとして認識してもらい,実際にゲーム中でもプレイヤー達と一緒にプレイして,彼らのニーズを把握して,次の企画へと結びつけたりします。
またプレイヤーと一緒にプレイするには,営業としての側面もあり,例えばGMが有料アイテムを使っていれば,実演販売じゃないですが,みんな使ってみようと思ってくれるかもしれませんよね。
4Gamer:
昨日のセミナーの話では,倉元さん,バレンタインイベントではたっぷりゲーム内アイテムのチョコをもらったとか……。
倉元氏:
ええ,おかげさまで。
植田氏:
ゲーム内だけは,ね(笑)。