現代戦をテーマにしたオンラインFPSというジャンルで,韓国内でヒットを飛ばしているDream Executionの「WarRock」。2005年のG★では,開発者のインタビューを行ったが,このたび同社CEOのJang Youn Ho氏が来日していることをキャッチ。急遽時間を取ってもらって,2月22日にインタビューを行った。
本作は,韓国ではNEXONがパブリッシングを行うが,日本での展開の情報はまだ聞こえてきていない(NEXONとの契約は韓国内だけのようだ)。どのパブリッシャが行うにせよ,日本でFPSはまだまだ(なぜか)マイナーなジャンルなので,通りいっぺんな展開では成功は難しいだろう。そこで,Jang氏に日本のオンラインゲーム市場と,JINDOエンジンの特徴,これからの展開の3本を軸に話を聞くことにした。
4Gamer:
お忙しいところ時間を割いていただき,ありがとうございます。本日はよろしくお願いします。
Jang Youn Ho氏:
こちらこそ,よろしくお願いします。
4Gamer:
そういえばお会いするのは初めてですが,日本には結構来るんですか?
Jang Youn Ho氏:
ええ。1か月に1回くらいは来てるんですよ,実は。日本のコンシューマ業界とも共に仕事をしてますし,刻々と変わる日本のPC BANG(編注:ネットカフェのこと。以後意図的にそう表記します)の状況にも興味がありますし。
4Gamer:
なんかさりげなく重要な発言をしてますね。
Jang Youn Ho氏:
コンソールについてはこれ以上は勘弁してください(笑)。
4Gamer:
日本のネットカフェはどう思います?
Jang Youn Ho氏:
韓国のネットカフェにはゲームしかないんですけど,日本のネットカフェは色々持ってて凄いですね! マンガがあったりDVDがあったり,すごく新鮮です。あとマシンスペックがすごく高いのが印象的でした。
4Gamer:
あれ? ちょっと前に韓国行ったときにはやっぱりハイスペックマシンが揃っていたような気もするのですが。
Jang Youn Ho氏:
いえ。2005年末にも日本のネットカフェを周りましたが,そのときからさらに一段スペックUpしているお店が多い気がします。これからはオンラインゲーム専用ネットカフェとかできるといいのですが。
4Gamer:
日本のネットカフェでは,まだまだオンラインゲームは主軸のコンテンツではないお店が多いと思うんですよ。
Jang Youn Ho氏:
時間とインフラ,それとコンテンツが解消してくれると思っています。もう少しライトな感じで歯ごたえのあるゲームも増えるといいんですけどね。
4Gamer:
そういえば,2005年末のWarRockのアカウントプレゼントは,非常に好評でした。日本のオンラインゲーム市場を見て,どのように感じますか?
Jang Youn Ho氏:
追加発行のお願いが来たときには少し驚きました。日本のゲーマーに関心を持ってもらって非常に嬉しいです。
日本のオンラインゲーム市場は,ネットカフェが今後店舗数を伸ばして「気軽に訪れられる場所」となって,また世界的にも強いコンシューマゲーム市場との連携が進めば,韓国よりももっと大きくなる可能性があると信じています。
最近は,コンシューマゲーム市場もPCオンラインゲームに対しての興味や視野といったものが出てきていますので,よいオンラインゲームタイトルが続々とリリースされてくれば,いい市場となるでしょうね。
4Gamer:
現在の日本のオンラインゲーム市場で,優れているところや足りないところはどこだと思いますか?
Jang Youn Ho氏:
日本のゲーム市場を総合的に見た場合,ほかの国よりも20年から30年先に進んでいる感じがします。これは非常にマレな市場だと思いますが,オンラインゲーム市場だけは韓国に後れを取っているんじゃないでしょうか。その韓国は,PCのオンラインゲームに特化しているところがありますので,もしも日韓で共同開発が進めば,日本のオンラインゲーム市場も急成長するかもしれませんね。
先ほど少しだけ述べましたが,Dream Executionとしては,現在日本のあるメーカーとコンシューマゲームの共同開発をしているところです。今後はもっと日本メーカーと技術的な交流,共同開発をして,PCオンラインゲームを活性化させていきたいですね。
4Gamer:
お,すでに次のタイトルを開発しているのですね。その日本メーカーとの共同開発タイトルは,やはりFPSですか?
Jang Youn Ho氏:
ええ,そうです。PCやコンシューマ,オンラインなどのプラットフォームにかかわらず,FPSに特化した開発スタジオを目指していますので。
4Gamer:
そのメーカーが気になりますねぇ……。
Jang Youn Ho氏:
まだ発表していないので,内緒です(笑)。そろそろリリースを出せると思いますよ。
4Gamer:
分かりました。ちなみに,わざわざ日本のメーカーと共同開発をする理由はどのあたりにあるんでしょうか。
Jang Youn Ho氏:
韓国メーカーとして日本市場に進出するためには,日本のメーカーと組むのが最もスムースです。日本人が好きなコンテンツは,日本人が最も良く知っているという,当たり前のことですね。
また,韓国と日本のゲーム開発プロセスは異なっているのですが,やはりコンシューマ機で培われたノウハウが詰まっている日本のプロセスを学ばないと,韓国メーカーは日本市場だけでなく,グローバル市場でも成功は難しいんじゃないでしょうか。
4Gamer:
そんなに違うものですか?
Jang Youn Ho氏:
そうですね。共同開発を進めていて学んだのは,韓国と日本の開発プロセスが違うことをお互いに理解/認識するところで時間がかかるということです。日本では,ゲーム開発においてスケジュールなどでかっちりと分業化やシステム化がなされてますが,韓国では流動的な部分が多いのです。日本のメーカーからみると,「なぜそのようなやり方を」と思うところがあるようですね。
でも,オンラインゲームは,継続的な運用やサービスが必要となります。運用中にもさまざまな問題が発生してきたり,アップデートの要求に答えていく必要があったりしますので,オンラインゲームではそのあたりの流動的な部分も必要なんです。
4Gamer:
これまでの市場の環境やプラットフォームが,その差を生み出していたということですね。