レビュー : ソーサリアンオンライン

往年の名作がオンラインゲームに。それは「やり込み」系MMORPGだった

ソーサリアンオンライン

TEXT by 大陸新秩序
2006年12月18日

※本稿は12月18日時点でのゲーム内容に準じています

 

世界観こそ共有するものの,
オリジナルの「ソーサリアン」とは別のゲーム

 

往年の名作のタイトルを冠したMMORPG「ソーサリアンオンライン」。しかしプレイ感は,オリジナルの「ソーサリアン」とは別のゲームといっていいくらい違っている

 「ソーサリアンオンライン」は,日本の電遊社が開発/運営するMMORPGである。2006年に行われた数回のクローズドβテストおよびオープンβテストを経て,11月16日に正式サービスがスタートした。課金形態としては基本プレイ無料,アイテム課金制を採用しており,12月18日から課金アイテム各種の販売が始まっている。
 また,正式サービスに先駆けて限定3000本の「ソーサリアンオンライン豪華特典付きロイヤルユーザーパッケージ」が発売されたが,こちらは11月30日をもって販売終了。代わって12月21日から通常版の「ソーサリアンオンライン パッケージ版」が,価格7980円(税込)で発売される予定だ。いずれもクライアントCDのほか,限定レアアイテムセットがもらえるチケットなどの特典が付いてくる。これらのレアアイテムがあればプレイ序盤は有利になるが,もちろん,持っていなくてもプレイに支障はない。

 

 さて,「ソーサリアン」といえば,日本ファルコムが1987年12月にPC-8801mkIISR版を発売して以来,PC各機種に移植され累計180万本ものセールスを誇ったタイトルである。当時からのPCゲーマー(おそらく現在は40歳前後にはなっているはず)なら,ほとんど全員プレイした経験を持つといっても過言ではないだろう。
 またメガドライブやPCエンジン,ドリームキャストといったコンシューマ機用のバージョンがリリースされたほか,Windows用リメイク版として1997年には「ソーサリアンフォーエバー」が,また2003年には「ソーサリアンオリジナル」がリリースさているので,そちらで知ったという比較的若いプレイヤーもいるかもしれない。

 

 最初に書いておかなければならないが,ソーサリアンオンラインは,以上のオリジナルソーサリアンとは別のゲームである。ゲーム中に流れるBGMこそソーサリアンであり,アイテム名や地名,装備を強化する「星魔法」や一部のシナリオなどにそれっぽさを残してはいるものの,ゲームのプレイ感はまるで異なる。ソーサリアンオンラインでプレイヤーが操作できるキャラクターは一体のみだし,もちろん横スクロールでもなければ,ジャンプもできない。おなじみの二段ジャンプなどもってのほかだ。ソーサリアンという名前にばかり注目すると確実に肩透かしを食うので,当時の思い出を抱いている人は期待しすぎに注意。

 

 本作の大きな特徴としては,あらかじめ用意された「パブリックホスト」を利用してMMO的にプレイするだけでなく,各プレイヤーが「個人ホスト」を立てることによってMOとしてプレイ可能になっている点が挙げられる。不特定多数の人と一緒にプレイしてゲーム内の知り合いを増やしたい場合にはパブリックホストで,そうして知り合った仲間とじっくりプレイしたい場合には個人ホストで,というような使い分けができそうだ。パブリックホストでは最大50名,個人ホストでは最大8名でのプレイが可能となっている。
 ただし,個人ホストを設定するには指定されたポートを開放する必要がある。決して難しい作業ではないのだが,初心者にとってはハードルが高くなっており,誰もが気軽に利用できるわけではないのが残念なところだ。

 

MMO的にプレイするにはパブリックホストを選択し,MO的にプレイするには自分で個人ホストを設定する。パスワードのかかっていないほかのプレイヤーの個人ホストに「乱入」もできる 町からフィールドに出る際には,どのホストにログインするか選択する。「自分のゲーム」はソロプレイ専用だが,個人ホストを設定しなくともプレイ可能

 

 

プレイヤーの成長にはレベル制ではなく
「熟練度」を採用

 

職業は,最初の10種類のクラスから二つを組み合わせる。ドロップアイテムの「秘伝の書」によってほかのクラスの特殊スキルも習得できる

 プレイヤーキャラクターとして選択できるのは,人間の男女のみで,髪型と顔はそれぞれ7種類ずつ用意されている。先に「別のゲーム」と書いておいてなんだが,ソーサリアンと名乗る以上,エルフとドワーフは欲しいところだった。

 

 また,プレイヤー名に半角英数字と記号しか使えないのも少々残念。20年前のPCゲームなら容量その他の都合で全角文字が使えないことも珍しくなかったが,今どきのオンラインゲームとしては大きなマイナス要因だろう。その一方で,ゲーム内のNPCには漢字もカナも使われているため,どうも違和感が残る。これは早期の改善を望みたい。

 

 プレイヤーの職業は,以下に挙げる初期の10種類の中から,二つのクラスを選択する。組み合わせの制限はとくにない。

 

●ファイター
 近接攻撃力が高い。戦闘中の回復手段や,敵の行動を制限する手段に乏しく,長期戦は不利

 

●レンジャー
 遠隔攻撃力が高い。ただし命中率はさほどでもないため,回避能力のある敵や,遠隔攻撃を行う敵に対しては不利

 

●ガード
 防御力と体力が高い。防御力アップのスキルを併用することで,比較的強めの敵と対峙しても生き残る可能性大

 

●フェンサー
 近接攻撃の命中率が高く,スキル攻撃を主体とする。体力が少ない敵に対しては有利だが,防御力の高い敵には不利

 

●シューター
 遠隔攻撃の命中率が高い。休憩することなく連続で狩りを続けられるが,レベルの高い敵には分が悪い

 

●ローグ
 回避率が高いため,自分と同等以下の敵と戦うとダメージを受けにくい。トリッキーなスキルが多い

 

●ソーサラー
 攻撃魔法のスペシャリスト。攻撃魔法がレジストされると一気に不利になってしまう

 

●カースメイカー
 デバフ系魔法のスペシャリスト。敵の行動を止める魔法を使って敵を追い込む

 

●ヒーラー
 回復魔法のスペシャリスト。各種回復魔法を駆使して,長期戦を展開する

 

●プリースト
 バフ系魔法のスペシャリスト。自らの能力をアップさせて,長期戦を展開する

 

 プレイヤーにはレベルがなく,代わりに「ランク」と「熟練度」の概念が存在する(熟練度10につき,ほかのゲームの1レベルに相当)。戦闘を繰り返すことで,各クラスの熟練度が上昇し,熟練度を100にするとそのクラスのランクが上昇する。現在は,どのクラスもランクIIIの熟練度100が最高となっている。また,特定の条件を満たすことで新たな上位クラスに転職可能になる。
 転職は,各町に設置されているホームで随時行える。ただし,ランクIでは使用できるスキルや魔法がまだ少ないため,最初に選んだクラスがランクIIになるまでは,あまりコロコロと転職しないほうが賢明だ。

 

 プレイヤーは初回プレイ時に,「リドニア」か「ヤマト」のいずれかの国家を選択する。国家の違いは,スタート地点および後述するシナリオの内容の違いとなる。今のところ国家戦など実装されていないので,どちらを選ぶかはプレイヤーの好み次第である。

 

男女ともに髪型と顔が7種類ずつ用意されている。女性がヤケにセクシーだが,ゲームでは鎧などを装備するため,あまりこの姿は拝めない

 

 

カスタマイズによって操作の自由度は高いが,
ハードルも高い

 

マクロ編集画面。書式は決して難しくないが,記述作業そのものが面倒。マクロの組み方次第でゲームパッドのみの操作も可能になるが,昨今のユーザーフレンドリーなMMORPGに慣れてしまったプレイヤーだと,この画面を見ただけで投げ出したくなってしまうかも

 操作には,主にキーボードとゲームパッドを使用する。マウスによる移動にも対応しているが,あくまでも補助的なもので,基本的にはテンキーまたはゲームパッドによる操作が推奨されている。きめ細かいキーカスタマイズにも対応しており,自分好みのキー配置にすることも可能。適切に設定すれば,ほぼゲームパッドのみで操作できる。

 

 しかし,この「適切に設定すれば」という前提がクセモノだ。というのも,スキルや魔法,そしてアイテムをショートカットキーまたはゲームパッドのボタンに登録するためには,プレイヤーが自分でマクロを組まなければならないのだ。
 書式自体は「:(コマンド) (スキル名) (対象)」といった感じで,そう難しくはないのだが,いちいち記述するのが非常に煩雑である。さらに。ゲーム中にマクロに関する説明がほとんどされておらず,公式サイトで一つ一つ確認しなければならない。そのため,初心者や昨今のドラッグ&ドロップでスキルスロットに登録できるタイプのゲームに慣れた層には,相当にハードルが高い。

 

 とはいえ,自分でマクロを組めることには,頻繁に行う連続操作を一つのショートカットにまとめてしまえるという利点もある。例えば本作で体力を回復するためには,「戦闘状態を解除」して「休憩状態に入る」という二つのアクションが必要だが,マクロによってこれらを一つのショートカットにまとめてしまえるのだ。これを応用して,「戦闘で敵にデバフをかけた直後に連続した攻撃魔法で追い討ちをかける」などといったことも,一つのキー操作で可能になる。
 もっとも,こうした自由度の高さは,本作におけるプレイスタイルがある程度確立して初めて利点となるものであって,初心者にはとっつきにくい印象を与えてしまうのは間違いない。やはり,ほかのゲーム同様に簡単に登録できるスキルスロットのようなものも,併せて欲しいところだ。

 

 戦闘は,アクション要素の高いアクティブなもので,キー入力のタイミングで三回までのコンボがつながる。攻撃するごとにスタミナを消費し,ゼロになると行動不能になってしまため,適度に相手の攻撃を受け流して,スタミナを回復するといった戦略も必要になる。
 こうしたアクション要素があるとはいえ,残念ながら戦闘における爽快感はあまり感じられない。システム上,前述のように戦闘中にスタミナを回復する過程が入るため,たたみかけるように攻撃を繰り出す局面が少なくなり,また一戦闘あたりの所要時間がどうしても長くなってしまいがちだからだ。スキルのエフェクトや効果音などのバリエーションも少なく,どんな攻撃を行っても画面上の変化が乏しく単調になってしまうのも気になるところ。こちらは比較的追加しやすい要素のはずなので,ぜひ検討してほしい部分だ。

 

マクロを組まないと,回復アイテム一つ使うにもわざわざ階層メニューから呼び出さなければならない。戦闘中にそんなことをやっている暇はないため,マクロの知識はやはり必須となる スキルおよび魔法のエフェクトは,バリエーションが少なくやや単調な気がする。派手ならいいというものでもないが,もう少し変化がほしかったところだ 転職は随時,各町に設置されているホームで行える。とはいえ,ランクIIになると使用可能なスキルや魔法などが増加するので,最初はあまり転職せず,じっくり育成するほうがいい

 

町の中にはクエストを斡旋するNPCがいる。どのNPCがクエストを持っているかも教えてもらえるので,効率的なプレイができる 武器スキルや特殊スキルは,熟練度を上げるだけでなく,クエストをクリアしたりドロップアイテムを使ったりして習得するものもある 星魔法はオリジナルのソーサリアン同様,各星の魔法の組み合わせで効果が変わる。組み合わせをひたすら探求するようなプレイも可能だ

 

 

自由度とやり込み要素は十分。
続くチャプターの追加に期待

 

メインストーリーとなるチャプターには,「消えた王様の杖」のようにオリジナルのソーサリアンに登場したものも登場する。オリジナルをプレイしているなら,ソーサリアンオンラインでのアレンジを楽しもう

 「シナリオ」に関しては「チャプター」と「クエスト」が存在し,プレイヤーがリドニアとヤマトのどちらに属しているかでそれぞれ内容が異なる。チャプターはメインストーリーを追うもので,繰り返してプレイすることはできない。
 クエストはプレイヤーのランクに応じて何度もプレイでき,クリアしたかどうかに関わらずログアウトすると情報がリセットされる。なおチャプター,クエストともに,クリアすると金銭的な報酬とモンスターの持つドロップアイテムが手に入るが,各クラスの熟練度は上がらない。
 またランクII後半以降を対象としたペンタウァの町では,「消えた王様の杖」「ルシフェルの水門」といった,往年のソーサリアンプレイヤー必見のチャプターが用意されている。オリジナルのソーサリアンに登場したシナリオが,どのようにアレンジされているかが見どころだ。
 次に登場するチャプターは「失われたタリスマン」が予定されているが,実装時期などは未定。オリジナルのソーサリアンも,続々と追加されていくシナリオが最大の魅力だっただけに,ソーサリアンオンラインでも同じ勢いの追加を期待したい。

 

 そのほか,使用する武器固有の「武器スキル」およびクラス固有の「特殊スキル」を習得するクエストや,装備や回復アイテムを生産する「錬成」システムなど,その気になればプレイヤーのやれることは山のように用意されている。また原作のソーサリアン同様,装備にさまざまな特殊効果を与える星魔法の組み合わせも探求できる。全クラスをランクIII熟練度100にして,こうした要素をすべて堪能するには,相当の時間と根気が必要だ。やり込みがいは十分にあるといえるだろう。

 

 ソーサリアンオンラインは,さまざまな点で自由度の高さを追求した結果,ゲーム開始当初,「公式サイトの操作説明なしではプレイできない」「何をしていいか分からない」という,初心者には少々とっつきにくい作りになったようだ。いちおうゲーム内にチュートリアルが用意されているが,正直なところ説明は不十分であり,初心者お断りな雰囲気を醸し出している感は否めない。
 しかし,そうした説明不十分な部分を乗り越えてゲームの中身が理解できるようになり,チャプターを思ったように進められるほどになると,俄然面白くなってくるのも事実。それはまるで,噛めば噛むほど味の出てくるスルメのようでもある。タイミングよく課金アイテムの販売も始まったし,時間のある年末年始の休みにジックリ腰を据えてプレイするゲームとしては,ちょうどいいのではないだろうか。

 

錬成はレシピと材料を揃えて行う。強力な装備やアイテムは,レシピ,材料ともにドロップアイテムとなるので,入手は簡単ではない 比較的低レベルプレイヤー向けのダンジョン,幻霧洞。さまざまなトラップが仕掛けられているため,パーティを組んで挑戦しよう ソーサリアンオンラインのフィールドマップ。よく見ると、往年のソーサリアンプレイヤーにとっては懐かしい名前も並んでいる

 

ヤマトの町には日本風のオブジェクトが並ぶ。NPCの名前も日本語表記なので、ぜひプレイヤー名にも漢字を使えるようにしてもらいたい チュートリアルではごく基本的な行動について学べる。しかし、スキルや魔法をマクロ登録する方法についての説明がないのは、やはり不十分だ ペンタウェの町にたどり着くには、ランクII後半からランクIII前後になっている必要があるが、ローグの「ステルス」スキルを使えば簡単に行ける

 

タイトル ソーサリアンオンライン
開発元 電遊社 発売元 電遊社
発売日 2006/11/16 価格 基本プレイ無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(DirectX 8.1以上),CPU:Pentium 4/2.4GHz以上,メモリ:512MB,HDD空き容量:2GB以上,グラフィックスカード:ピクセルシェーダ対応グラフィックスメモリ128MB(GeForce 4Ti,Radeon 9700以上),サウンド:AC97対応,通信回線:ホストはADSL12Mbps以上,クライアントは56kモデム以上

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