レビュー : ニード・フォー・スピード カーボン

キャニオンデュエルが熱すぎるシリーズ最新作

ニード・フォー・スピード カーボン

Text by UHAUHA
2006年12月26日

 

交通法規完全無視の熱いストリートレース
求めるのはスピードのみ!

 

ド派手なエアロパーツとバイナルで着飾ったチューニングカーで,警察が目を光らせる一般道でイカれたレースを繰り広げるニード・フォー・スピード カーボン。圧倒的な加速感とスピード感の虜になっているファンも多いことだろう

 ニード・フォー・スピード(以下NFS)シリーズといえば,PCゲームの中でも特筆すべき長寿シリーズの一つ。1995年にスーパーカーを乗り回す純粋なシミュレータとして登場した初代NFSだったが,一般道でのストリートレースを行ったり,パトカーとのチェイスがあったりと,徐々に凶悪化の道をたどりつつ進化してきた。ここ数年間で発売された「NFS アンダーグラウンド」「NFS アンダーグラウンド2」「NFS モスト・ウォンテッド」では,大ヒットしたカーアクション映画「ワイルドスピード」「ワイルドスピードX2」「ワイルドスピードX3」の世界をそのまま再現したような,無謀にして妙に惹きつけられるストリートレースの世界を味わえた。
 そんなNFSシリーズの記念すべき10作目となるのが,この「ニード・フォー・スピード カーボン」なのだ。

 

 カーボンは前作モスト・ウォンテッドの続編になっており,シナリオモードのストーリーにつながりがある。ゲームの流れも同じであり,前作をプレイした人は違和感なく本作のストーリーに入っていけるはずだ。ゲームにはダッヂ,ポルシェ,ランボルギーニといったスーパーカーのほか,レクサス,トヨタ,マツダ,日産といった日本車を含めた有名車が実に50種類以上収録されており,エンジンや足回りなどをチューンナップし,エアロパーツやバイナルで着飾り,コテコテのスポコン仕様に仕立て上げ,現実では決して味わうことのできない(味わってはいけない)一般車をも巻き込んだストリートレース,そして警察とのカーチェイスを楽しめるのだ。もちろん,NFSシリーズの人気を牽引しているであろう,一度体感したら病みつきになるニトロ(NOS:Nitrous Oxide System)の,ホッペタが引っ張られるような圧倒加速感とスピード感は健在だ。

 

 毎回,有名のアーティストの楽曲が登場するゲームサウンドも忘れてはいけない。「こちら」の記事を読んでいただくと分かるとおり,これでもかと言わんばかりの豪華な顔ぶれがBGMを担当している。いずれもノリノリの曲ばかりで,熱いストリートレースをさらに熱くしてくれる。ちなみにサウンドを担当したハワイ出身の日本人アーティスト melody.は主人公のチームメンバーとなる“ユミ・ヤマモト“ 役としてゲームに登場する。また,ヒロイン役として映画「ハウス・オブ・ザ・デッド2」に出演したハリウッド女優のエマニュエル・ヴォージアを起用するなど,シリーズ10作累計で8000万本を売り上げている世界一のストリートレースゲームは,お金のかけかたもさすがだ。

 

シートに押しつけられるような加速感を味わえるニトロ。最高速を伸ばすか,加速に使うか,使い道はいろいろ 現実では買えないような高級スポーツカーをフルチューンしたりフルエアロに仕立て上げられるのも魅力の一つ スポコン仕様車には絶対に必要なバイナルは,レイヤーで複数を重ねられる。色の変更や位置の微調整も可能だ

 

やはりお姉さんは必要不可欠。左からユミ(melody.),ニッキ(エマニュエル・ヴォージア),レーススターターのお姉さん。とはいえ,本作にはあまりフェロモンを過剰放出させているような女性がいないなあと思うのは筆者だけだろうか

 

 

帰ってきたオレは,ちょっと昔とは違うぜ

 

ストリートレースでは,当然のごとく一般車も走っており,わざとぶつけることで後続車の妨害としても使える(極悪非道だ)。一般車はレースをしているわけではないので,当然,コースを横切ったり,右折や左折をしてくる。ご注意を

 今回の舞台となるのは“古巣”であるパルモント・シティだ。主人公は二年前に無実の罪を着せられ,この街を追われることになった。そして,前作モスト・ウォンテッドの舞台となったロックポート・シティに向かい,そこでブラックリストの頂点を極めることに成功する。そんな主人公が再びパルモント・シティに舞い戻ると,そこは数々のストリートレーサーチームによる激しい縄張り争いの真っ最中だった。主人公は昔の走り仲間と共に,街を牛耳るストリートレーサー達とのバトルを繰り返し,併せて過去の事件の真相を暴いていく……。これがゲームのメインとなる「シナリオモード」のストーリーだ。

 

 舞台となるパルモント・シティは,大きく四つのエリアと二つの峠で構成されている。街にはストリートレーサーの集団である「BUSHIDO」「TFK」「21stストリート」の3チームが争っており,夜な夜な街のいたる所で道路交通法とモラルを無視したストリートレースが行われているのである。ライバルチームの仕切るレースへ次々に参加し,勝利を重ねて自分のチームのテリトリーを広げていくのだ。もちろん,自分のテリトリーのレースへもライバルが挑戦してくるので,そいつらを返り討ちにしなければ縄張りを奪われてしまう。

 

 レースには次の7種類がある。スタートからフィニッシュ地点まで決まったルートでレースを行う「スプリント」。街の中に作られた周回ルートでレースを行う「ストリート」。ルート上にあるチェックポイントを制限時間内で通過していく「チェックポイント」。順位よりもルート上の各所に設置された速度計測ポイントをいかに高速で通過したかを競う「スピードトラップ」。ドリフト走行をしてドリフトポイントを競い合う「ドリフト」。複数のチームが入り乱れてレースを行う「バトルウォー」。そして,峠道でレースを行う「キャニオン」だ。なお,前作にあった「ラップKO」「ドラッグレース」はなくなった。

 

 レースに勝利すると賞金が得られ,新しいマシンやチューニング&ドレスアップパーツなどがアンロックされる。獲得した賞金で新しい車を買ったり,チューニングパーツで強化したり,ドレスアップパーツで着飾ったりしていくのだが,何台も車を買いでもしない限り,資金難になることはほとんどない。万一,資金不足に陥ったら,再びレースで賞金稼ぎと行きたいところだが,一度,勝利したレースでは賞金が微々たるものになってしまう。

 

 なお,マップ上に点在するレーススポットへは自由に街の中を走れる「フリーランモード」で向かってもよいが,ヒートレベル(警察の警戒レベル)が高いと,パトカーに発見される可能性も増える。警察との面倒なカーチェイスを避けたいときは,クイックリストからレーススポットを選択することで直接レースに参加できる。とはいえ,フリーラン中にアンロックされるアイテムもあるため,フリーランモードでも走っておく必要がある。アンロックのためにどういった条件が必要なのかは,メニューの「報酬カード」から確認できるので,取りこぼしなどないように。

 

 テリトリーを広げていくと,ライバルチームのリーダーとのレースに挑戦できる。チームリーダーバトルで面白いのが,峠道での「キャニオンデュエル」だ。これはレースというより,一対一のタイマン勝負だ。敵車を追う形でスタートし,ボスとの距離によってポイントが加算されていく。もちろん,より接近するほど多くのポイントを獲得できるのだ。次のレースでは,今度は追跡される側となる。敵車に接近された距離によって,最初のレースで獲得したポイントが減っていき,ゴール時点でポイントがマイナスであれば負けというシステムだ。
 また,キャニオンデュエルでは,最初のレースで相手を追い抜き,そのまま10秒間リードすれば即勝利となるのだが,追われる立場のときにそれをやられると即敗北となるから油断ならない。キャニオンデュエルはかなり熱くなる。ヘアピンカーブが多く狭い峠道であり,気を抜くとオーバースピードで谷底へ転落となる。ヒートアップしないように気持ちを抑えるのも重要かもしれない。

 

「ドリフト」は壁に当てないように実行する。繰り返してコンボを成立させれば高ポイントが得られる。スピードも重要 「キャニオンデュエル」では状況に応じて画面左上にボスの顔が表示される。これが表情豊かで愉快である チームリーダーに勝利すると「くじ引き」ができる。6枚中2枚を開けるのだが,運がよければボスの車がもらえる

 

レーススポットは好きな順番で挑めるので,得意なレースから始めるとよい。苦手なものはチューンしてから挑戦だ このマップでエリアの支配状況が分かる(ドクロマークが自分)。上部のヘビマークは最後に倒すべきチームだ 報酬カードの条件を満たすとアイテムが。レースで勝てばもらえるものもあるが,厳しい条件のついたアイテムもある

 

 

軽く一年は遊んでいられるほど豊富なゲームモード

 

ド派手なスポコン仕様もいいが,ボディカラーのみのシンプルな車も素敵。普通,簡単に手に入らない高級スポーツカーを自由に乗り回せるのも本作の魅力だ。実物に忠実にモデリングされているのがよく分かる

 シナリオモード以外では,シングルプレイ用の「チャレンジシリーズ」「クイックバトル」,マルチプレイ用の「カスタムマッチ」「クイックマッチ」が用意されている。

 

 「チャレンジシリーズ」には14種類のチャレンジがあり,ブロンズ,シルバー,ゴールドの3レベル(難度)の順番でそれらに挑戦し,それぞれのレベルで設定された条件をクリアしていく。ゴールドレベルをクリアすると報酬としてさまざまなアイテムがアンロックされる。使用する車が固定されているため,どんな車も乗りこなす腕が必要になるだろう。シルバーまでは比較的簡単にクリアできると思うが,ゴールドレベルともなると難度は高い。ただし,本作はプレイヤースキルによって難度が自動調整されるシステムなので,繰り返して挑戦すればクリアの道は必ず見えてくるはずだ。14種類のアイテムをアンロックするために計42チャレンジに挑戦せねばならず,これはかなり大変。

 

 「クイックバトル」ではシナリオモードに登場するレースを選んで走ることができ,シナリオモードの進行具合によって選択できるレースが制限される。シナリオモードの車が使用できるので,ちょっと練習するにも便利だ。また,最初からチューニング済みのボーナスカーなども使用できるため,ハイパワーな車で街を気ままに暴走したいとか,ドライブがてらちょっと走りたいときなどにプレイするといいだろう。

 

 この二つのモードについては,少々不満に感じたことがある。「クイックバトル」は当然として,「チャレンジシリーズ」についても,それぞれに達成条件があるというだけで,やっていることはシナリオモードのバトルや警察とのチェイスなどと大きな違いはない。そのため,どのチャレンジをプレイしても,似たようなレースを繰り返しやっているという印象を強く受けてしまった。個人的には,自由なルートで制限時間内に目的地に到着したり,「ドライバー3」にあったようにカラーコーンを弾き飛ばしながら走ったりなど,ストリートレースにこだわらない,遊び心の入ったチャレンジも用意してほしかったところだ。

 

 ネットによってマルチプレイを楽しめるのが「カスタムマッチ」「クイックマッチ」だ。本作ではEAサーバーに接続してのマルチプレイのみをサポートしており,そのため必ずEAサーバーへログインが必要となる。ゲーム起動時にオートログインも可能なので,シームレスにマルチプレイを楽しめる配慮がなされている。マルチプレイ専用のゲームモードとして,周回ごとに最下位のプレイヤーが警察になる「パースートKO」。一人のプレイヤーがドライバーとなり,ほかのプレイヤーが警察として追跡する「パースートタグ」がある。なお,マルチプレイにも“オンライン限定報酬”が用意されており,条件を満たすことでアイテムがアンロックされるのだ。

 

チャレンジシリーズやクイックバトルには手軽にプレイできるレースが揃っており,ちょっと遊びたいときにお勧め 急カーブを曲がりきれなかったり,コントロールを失いそうなときは,慌てず焦らずスピードブレイカーで回避する 高級スポーツカーだけかと思いきやニトロ搭載のダンプトラックも登場。パトカーなんて,簡単に弾き飛ばしてしまう

 

街に点在するパースートブレイカーは,これを破壊することで敵の追跡を妨害できる。走行中のトレーラーも体当たりで同じように使える パトカーを並べて妨害するロードブロック。体当たりするよりも隙間を抜けたほうが良い。すり抜けるときはスピードブレイカーをうまく使おう 三つのレベルを順番にクリアしていくチャレンジシリーズ。ゴールドとなると苦労するものが多い。アイテムを手に入れるために,がんばろう

 

 

レース,カーチェイス,チームバトルなど,
走る楽しみが満載

 

警戒レベルが上がると警察も精鋭集団で攻めてくる。写真のランボルギーニ・ムルシエラゴは4輪パンク状態で最高速は出ないのだが,パトカー同士でぶつかったり自爆したりと,結構,間抜けなときもあるので運が良ければ逃げ切れる。諦めちゃダメ!

 カーボンには,レースゲーム全体を見ても目新しい要素といえる“チームメンバーの採用”が追加されている。チームメンバーは一緒にレースで走行し,プレイヤーの手助けをしてくれる仲間だ。シナリオモードの進行状況で最終的に6人が登場し,その中の一人をレースに参加させられる。
 メンバーは,ライバルの行く手を阻む“ブロッカー”,プレイヤー車が背後に付くと空気抵抗が減少して2台の速度がアップする(ドラフトという)“ドラフター”,ショートカットできる道を探して指示してくれる“スカウト”といった役割を持ち,レース中に指示を送ることで,そうした仕事をしてくれるのだ。それぞれのメンバーには“スピードブレイカーとニトロが50%アップ”“勝利ごとに+10%のキャッシュボーナスアップ”“マシン購入時10%割引”といったボーナスが付いているため,そのへんも見極めて採用するといいだろう。ちなみにレース中はうるさいくらいにメンバーからの無線が入り,仲間と走っている雰囲気がうまく演出されている。

 

 忘れてならないのが,今回はチームバトルだということだ。プレイヤーだけでなくメンバーがトップでフィニッシュしてもレースは勝ちとなる。メンバーはサポート役となっているが,プレイヤーを簡単に追い抜くほど速いこともあり,ときにはライバルチームの車をプレイヤーがブロックしてメンバーを逃がす,というのもありだ。
 ただし,仲間のメンバーは相当強く,このへんのバランスはちょっと微妙だ。ゲームを進めるうえでメンバーに助けてもらうのは嬉しいのだが,仲間に追い抜かされて2位でフィニッシュし,それで「勝利!」と出てもちょっとなんだかなあ,という雰囲気である。やはりレースゲームは勝ってナンボなので,メンバーの常識外れの強さはなんとかしてもらいたいところだ。もっとも,最終エリアではメンバーのありがたさを痛感することにはなるが。

 

 パトカーとのカーチェイスも前作と大きく変わった点はない。最初は張り合いのない弱っちいパトカーが相手だが,警戒レベルが上がるにつれて新鋭パトカーが次々と登場し,プレイヤーを逮捕すべく,あの手この手を使って取り押さえようとしてくる。怖いのはやはり,路上を塞ぐようにパトカーを並べ,抜け道として残したところに配置されるスパイクベルトだ。通過すると4輪ともパンクし,高速走行が不可能となる。ここは,時間経過をスローモーション化できる“スピードブレイカー”を使って切り抜けたいところだ。華麗なドライビングテクニックと街に点在する“パースートブレイカー”を駆使して,押し寄せるパトカーの群を蹴散らしてやろう。警察無線を傍受しながら凶悪犯になった気分で逃げ回るのは,なにより単純に楽しい。

 

 車種ごとの挙動の違いなどは再現されているものの,他車や道路上にある物を弾き飛ばしたり,壁にこすったりするのは当たり前なので,あくまでシミュレータではなくレースゲームだと思っていたほうが良い。セッティングについても,チューニングパーツの組み合わせで,アンダーステアやオーバーステアに割り振ったり,ニトロを「加速」から「持続性重視」にしたり程度の比較的大ざっぱな仕様なので,ステアリングデバイスなどは必要なく,ゲームパッドでも十分な手軽さだ。レース自体も比較的気軽にプレイでき,難度もそれほど高くないので,ドライブゲームの知識がまったくないような人でも,ストリートレースや警察とのカーチェイスを楽しめるだろう。

 

 前作をプレイしている人はもちろんのこと,普通のレースゲームとは違うちょっとイカれた世界を覗いてみたいという人にも勧められる。ニトロのボタンを押した瞬間に,鼓動が高まり,アドレナリンが吹き出し,スピードの虜になるだろう。まずは4Gamerに掲載した体験版で“いけない”ストリートレースの世界を覗いてみてはいかがだろうか? ちなみに,本作は非常に重い部類のゲームであり,自分のPCでどのくらい動くのかをチェックするためにも,まずは体験版を試しておこう。
 また,こちらには筆者の撮影したムービーも掲載している。ゲームの雰囲気を知りたい人は,ぜひ見ていただきたい。

 

チームメンバーのドラフターは,テールに張り付くと(青い帯状の領域に入る),空気抵抗が減って最高速が伸びる ライバル達も妨害行為を使ってくる。追突や幅寄せを切り抜けて,トップを目指そう。ニトロをうまく使うのがコツ 看板や建物を破壊して邪魔をするパースートブレイカー。マップに位置が表示されるので,逃走中に使うと良いだろう

 

絶対に見たくない「逮捕」シーンだが,アイテムアンロック条件のために逮捕されることも必要になる。イヤすぎ チューニング(セッティング)はパーツの組み合わせで行う。自動で最適なチューンを施してくれるオプションもある チームメンバーの役割も重要だが,ボーナスが付いているのが嬉しい。レースによって使い分けるといいだろう

 

タイトル ニード・フォー・スピード カーボン
開発元 EA Black Box 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2006/12/21 価格 オープン価格
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.70GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 4 TiまたはRadeon 8500以上,グラフィックスメモリ:64MB以上[256MB以上推奨],HDD空き容量:5.3GB以上,ノートPC用チップセットの内蔵グラフィックスコアはサポート外

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【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/nfsc/nfsc.shtml