― レビュー ―
現代陸軍の戦い方をシミュレートしたユニークなRTS
フル スペクトラム ウォリアー2 テンハンマーズ
Text by 松本隆一
2006年10月3日

 

平和になったはずのジーキスタンの今は?

 

分隊単位の小規模戦闘をテーマにしたストラテジー「フル スペクトラム ウォリアー2 テンハンマーズ」日本語版が発売された。2004年に登場した「Full Spectrum Warrior」の続編で,画面の印象はFPSだが実はストラテジーという独特のシステムが評判になったゲームだ。アメリカ軍の活躍で平和になったはずの中央アジアの小国ジーキスタンだが,そうは問屋が卸さなかった。銃弾飛び交う地獄の戦場をチームワークで切り抜けろ!

 テロリストの指導者アル・アファドを無力化してかなり強制的にジーキスタンに平和をもたらしたはずの多国籍軍というかもっぱらアメリカ軍だったが,世にテロリストの種は尽くまじ。北部の軍閥指導者であるムラー・アブドル・ハッサンが民衆を扇動して蜂起した。かくしてロクなインフラもない小国は再び,傭兵だの民兵だのムジャヒディンだのアル・ライード派だのアル・ゼキ派だの,筆者の理解力をはるかに超える混迷状態に陥ったのだ。どいつもこいつもヒゲなので,誰が味方で誰が敵なんだか,ちっとも分かりゃしないのだが,ことほどさように国際問題は難しい。
 だが,兵士,それも序列の最末端に位置する分隊所属の兵士にとって,グローバルなポリティカルイシューのソリューションのメソッドのコントラビクションなどはヒゲ剃りスプレーほども重要ではない。彼らは,今日も上官の命令に従い,肩を並べて戦う戦友のため,銃弾の飛び交う戦場に一つしかない命を晒すのである……。

 

 というわけで,2004年に発売された「Full Spectrum Warrior」(邦題 フル スペクトラム ウォーリア日本語版)の続編「Full Spectrum Warriot: Ten Hammers」の日本語版「フル スペクトラム ウォリアー2 テンハンマーズ」(以下 テンハンマーズ)が9月21日,セガから発売されたのだ。上にも書いたように,舞台はふたたびジーキスタン。プレイヤーはアメリカ軍(ときどきイギリス軍)の分隊にあれやこれや命じ,あの手この手で勝利を目指すのである。
 ゲームの開発は前作同様,カリフォルニアのPandemic Studios。北米ではすでに2006年3月に発売されており,今回のセガによる日本語版では音声はそのままに,画面に表示されるテキストがすべて日本語化されている。味わいある汚い兵隊言葉を聞きつつ,ははあ,この言い回しはこういうときに使うのかと勉強になって,とても助かる。普段の生活に役立たないのが泣き所だが。

 

 そもそもこのフル スペクトラム ウォリアーは,アメリカ軍が小隊指揮訓練のためにゲーム会社と共同で開発したシミュレーションをベースに……,というような話はあちこちで書かれているので(関連記事は「こちら」)そちらを参照していただきたいわけだが,なにはともあれ,プレイヤーは分隊の指揮官となり,あれしろメンデス軍曹,これしろフェルナンデス軍曹,さっさと走れこの役立たず,ちゃんと撃ておたんこなす,という具合に命令を下しつつ,与えられてたミッションに挑むというゲームである。画面だけを見るとスクワッドもののFPSなのかしら? という雰囲気だが,意外にもストラテジーなのだ,ってのもどこかで書いた気がする。
 プレイヤーが演じるのは姿の見えない分隊長である。分隊は二つの火力班,すなわちA(アルファ)チームとB(ブラボー)チームに分かれる。1チームは,ライフル兵2名(うち1名がチームリーダー)とM203擲弾筒を持つ兵士1名,そしてM249分隊支援火器(軽機関銃)を持つ兵士1名からなり,チームリーダーは三等軍曹もしくは伍長だ。
 第二次世界大戦中は,1チーム5名編成で一個分隊は計11〜12名だったが,個人携行火器の圧倒的威力向上で現在は9〜10名編成となった。もっともこれはM2ブラッドレー戦闘兵車に乗れる乗車兵の上限が6名で,4両編成のM2が一個小隊を運ぶためにあれやこれや計算したら分隊の人数を減らさざるを得なかったというのが現実らしく,歴史的必然によって作られた分隊の人数を,乗せる車両の都合で減らすというのは主客転倒もはなはだしいなんてことを話しているとキリがないので止める。
 そもそもは「前作は,1チーム4名(フォーマンセルと呼ばれる)が命令を下せる最小単位だったが,本作はそのチームをさらに二つに分け(ご想像の通りツーマンセルと呼ばれる),それらをバディチームとして別個に指示を出せるようになった」と言いたかったら脱線しただけなのである。話が長いのは年をとった証拠なので,読者諸君も気をつけよう。

 

プレイヤーが率いるのはアメリカ陸軍(とイギリス軍)の一個分隊。常に最前線に立ち,敵の姿を見て銃を撃つ男達だ。彼らを手足のように使ってミッションをクリアするのだ 今回の特徴の一つが「M2ブラッドレーに乗れる,撃てる」である。登場回数はあまり多くなく,移動可能な場所も制限されるが,歩兵相手には圧倒的な威力を発揮してくれる アルファチームのリーダーは戦闘ヘリコプターの支援を要請できる。呼べる回数は決まっており,ここ一番で使わなければならないが,どこがここ一番なのか見極めるのが大変

 

機関銃を搭載したハンビーが登場すれば,それに乗って撃ちまくることも可能。敵が気の毒に思えるほどの圧倒的な火力を堪能していただきたいが,出てくる回数は多くない 敵の大型火器は,トラックの荷台に機関砲を載せた“テクニカル”と呼ばれる車両。歩兵にとってはやっかいだが,スモークに身を隠しながら擲弾を撃ち込めばこのザマだ 旧ソ連製のBMP戦闘兵車も面倒な存在だ。航空攻撃を要請するか,グレネードを投げるか,このようにC4爆弾をセットして吹き飛ばすことで対処できる。お好きな方法でどーぞ

 

 

さまざまな命令を下しまくって,平和のために戦うのだ

 

勝利の要諦は,各チームを正しいタイミングで正しい位置に置き,正しい攻撃方法を選ぶことだ。漫然とプレイしていては弾薬が減る一方だし,吶喊してどうにかなるゲームではない。負傷者が3名以上出るとゲームオーバーになる。例によってセーブポイントでのオートセーブシステムなので,場合によってはずいぶん前からやり直し,なんてことも。

 それ以外にも,前作に比べてパワーアップした部分は多岐にわたる。攻撃行動一つとっても,敵に向かって4名全員が銃を撃つ「全力攻撃」と,2名が周囲を警戒する「警戒射撃」から選べるし,階段を昇ったり,建物の中にも入れるようになった。建物へは「突入」と「警戒進入」があり,適宜使い分けなければならない。さらに,負傷した兵士を「収容」するだけでなく,安全地帯まで「引きずってくる」ことも可能など,それ以外にも下せる命令の種類が格段に増えている。
 とはいえ,こうしたパワーアップがすべからくプレイアビリティ向上に寄与しているかというと,いささかの疑問はなきにしもあらず。早い話,前作に比べて操作が煩雑になってしまったという印象がやや強い。このゲームの面白さの一端は,戦況に応じて適切な命令を素早く選んでいくところにあるのだが,下せる命令が多いと迷いが生じてしまうのだ。また,増えた命令に関連したユーザーインタフェースも直感的でなくなった感じを受ける。個人的には,C4爆弾の起爆方法がなかなか分からず,マニュアルを何度もひっくり返してやっと「報告メニューの表示」を使って爆発させることに気づいたのだが,それまでメンデス軍曹は何度も何度も敵のBMP戦闘兵車の機関砲でハチの巣にされて気の毒だったのである。悪かった。
 もっとも,このあたりは“慣れ”の問題でもあろうし,できる限りマニュアルは読まない(理由は不明)という筆者のプレイスタイルにも問題はあるだろう。まあ,命令が多彩になったとはいえ,ゲーム中の90%(当社比)のオペレーションはトップ数種類の命令でカバーできるから,安心といえば安心だ。

 

 前作同様,ゲームのポイントとなるのは「敵に対してどのようなアプローチを取るか?」である。民兵だか傭兵だかアル・ライードだかモハメド・アリだかが,こちらに向かってバリバリ撃ってくる。敵は二人だ。届くようならフラグ(手榴弾)を投擲して無力化してやりたいが,フラグの数には限りがあるし,敵はうろちょろしてうまく当たってくれない。では,「精密射撃」でヤツの眉間を撃ち抜いてやろう。いかん! 遮蔽物から身を乗り出して照準をつけている間に別の敵が伍長を撃ち倒しやがった。さようなら伍長。君は国家のために勇敢に戦った。
 では,Aチームが牽制のために射撃を続けている間に,Bチームを敵の背後に回そう。しかし,遮蔽物の位置関係で,Aチームの射線をBチームが横切らなくてはならない。うーむ。わかったぞ。こんなときはスモークを投げて安全を確保するのだ……。という具合に,数ある可能性の中からいち早く「正解」もしくは「限りなく正解に近い答え」を見つけ出し,確実に処理していくことが求められるし,そこが面白さの中心となる。
 むろん,正しい答えは一つではないだろうし,何も考えずに撃っていたら当たっちゃった,というラッキーな状況もままある。とはいえ,「正解」はマニュアルに従った行動を取ることであり,それはまあ“軍用シミュレータ出身”ということで仕方ないのだが,そのため「オレ様が考えた非常にユニークな戦術」が通用する可能性はほとんどない。
 アクションゲームではないので,正面切って撃ち合うとほとんど撃ち負けるし,敵の射撃は「まじすか?」というほど正確だし,遮蔽物からちょっと身を離していただけで倒されちゃったりする。

 

 マップは前作よりもいくぶん広い印象で,複数の進行ルートを選べる状況もあるが,基本的にはリニアな一本道で,前作同様,敵の登場地点はあらかじめ決まっている。こうした理由から,どうしても自由度が低いと感じる向きも多いようだ。とはいえ,これはプレイヤーの感じ方の問題であり,個人的にはこうしたストイックさがフル スペクトラム ウォリアーのゲーム性だと思う。そんなわけで,難度はすこぶる高めだ。おそらく,同じ局面を難度もやり直すことになるだろう。敵のAIも改善されており,登場してからは状況に応じた自律的な動きをある程度取るので,手強い。

 

このミッションでは,サポートのチャーリーチームとして狙撃ライフルを持ったアメリカ兵がイギリス軍分隊を助けてくれる。遠距離の敵に有効な彼を上手に使いこなしたい CASEVACでは負傷した兵士の収容だけでなく,弾薬の補給なども行える。弾丸はともかく,スモークやフラグ,擲弾などはなくなりやすいので,チャンスがあれば寄っていこう 戦闘はもっぱら市街戦となる。入り組んだ場所が多いので,ときどきマップを確認するのが賢明な指揮官だ。マップを開いている最中もゲームは進んでいるので,気をつけよう

 

作戦遂行中,状況が進展するにつれてやらなければいけないことが次々に変わっていき,あっちへ行ったりこっちへ戻ったり。だが,日本語字幕がちゃんとあるから心強い グラフィックスに関しては,前作から格段に進歩したとは言えず,人によっては前作のほうが好きだった,という意見もあるかも。とはいえ,戦場の雰囲気は相変わらず良好だ 走って撃ってまた走る。武器や戦略は変われども,歩兵の仕事は昔から同じだ。彼らを無事に故国に帰してやることが指揮官の使命なのだって,おい,ちゃんと隠れてろって!

 

 

小規模地上戦闘ファンなら試して損はない

 

グラフィックスは普通のレベルだが,兵士の挙措動作はキビキビして非常に気持ちがいい。ぶつくさ文句は言うものの,彼らは熟練した職業軍人なのだ。物理エンジンはおなじみのHavocを使っているが,ラグドール効果はいまいちで,敵兵がかなりヘンテコな格好で倒れたりする。とはいえ,命中すると糸が切れたようにくずれおちる姿は妙にリアルだ

 続編としての本作は,シミュレータとしてのリアリティを若干犠牲にしてもゲームとしての面白さを狙う方向に進んでいる。その顕著な例が「M2に乗れる」「機関銃を撃ちまくれる」ことではないだろうか。続編の目玉の一つとしてアピールされている機能だが,状況によって,プレイヤーはアルファチームとブラボーチーム以外に,チャーリーチームを指揮してM2戦闘兵車を操作できるのだ。分隊指揮官が最寄の戦闘車両を援軍に呼ぶ感覚だ。また,M2機関銃を搭載したハンビーが出現したら,それに飛び乗って12.7佚姐綻動价討琉厠呂鬟謄蹈螢好箸匹發紡己に思い知らせてやることもできる。当然ながら,空爆やヘリコプターの援護は前作同様。
 まあね,現実には分隊指揮官がランボーよろしく機関銃を撃ちまくったりM2に飛び乗ったりするようなことはあり得ないが,ゲーム的には戦術にある程度の幅が出るし,単純に気持ちがいい。だがまあ,あくまでこれはアトラクションと考えておいたほうがよさそうだ。なにしろ,M2は意外なほど弱くてビックリする。敵のBMPが出現? よし,ただちにM2出動。前進! あ,やられた,という感じで,RPG-7個人携行ロケットを持った歩兵にさえすぐやられてしまうし,事実,M2なしでも任務遂行は可能なのだ。アルファかブラボーが全滅するとゲームオーバーだが,チャーリーは破壊されても大丈夫。ちょっと悲しい。
 そういや,前作のM2も弱かったなあ,などと感慨にふけるのもいいだろう。

 

 例によって,兵士達はブウブウ文句を言いながら,それでも与えられた任務はきちんとこなす可愛いやつらだ。クセノフォンがペルシアで戦っていた時代から,兵士の仕事はあれやこれやの不満を鳴らすことなのだ。もう一つあるとすれば,それは負傷すること。負傷すると,前作同様,メディックの待つCASEVAC(Casualty Evacuation)に運ばなければならないが,今回は「負傷した兵士が首を振って起き上がり,戦列に復帰する」という演出はなく,代わりに別の兵士があっさり補充される。つまり,撃ち倒されるとその兵士はそれっきりで,次のミッションからは補充された兵士が代わりに登場するのだ。リアルさという面では本作のほうがリアルだが,感情移入という点ではちょっと惜しい。私はなぜかアルファチームの損害が多く,ミッションが進むうちに最初いた兵士は全員交代してしまった。指揮官としてのいたらなさを痛感する思いである。今頃みんな国へ帰って平和に暮らしていることであろう。敵の弾に当たるのがいけないと思うが。

 

 マルチプレイでは前作のCo-opに加え,待望の対戦プレイが追加された。シングルプレイでは敵役を務めるムジャヒディンやアル・ライードといったテロリスト側を使っての戦いを楽しめるのである。用意されている対戦用のマップは8種類で,単純なデスマッチではなく,たとえばマップ「救出敢行」では,アメリカ軍側が墜落したヘリのパイロット2名を救出すること,そして対するムジャヒディンはそれを阻止する,といった具合に,必ずなにがしかの目的が設定されている。
 どうでもいいことだが,アメリカ軍以外でプレイすると,チームインジケータのアルファベットがアラビア文字になってカッコいいのである。まったく読めないのが問題だけど。

 

 総じてこの「フル スペクトラム ウォリアー2 テンハンマーズ」は,前作のプレイ感覚を引き継ぎつつ,よりゲームっぽくなったという印象だ。老若男女,日本中の皆様にオススメというわけにはもちろんいかないが,現代陸軍のフィールドオペレーションに興味があり,ちょっと変わった雰囲気のゲームを遊んでみたいという人にはうってつけ。前作を「ああ,難しい。もうダメだ!」と投げ出してしまった人もぜひ雪辱を果たしてみよう。

 

各ミッションの間にはムービーシーンが挿入される。ストーリーはごく緩やかにつながっており,最終目的はやはり悪の指導者をアレすること。いや,正義のためなんですよ 階段を駆け上がり,高い位置から攻撃。これにより,敵の隠れている遮蔽物の効果を格段に減らせる。階段は勝手に昇って勝手に展開するので,チームの操作は楽である 1チームを二つに分け,“バディチーム”として個別に命令を下せる。建物の中から外を撃つ際,窓の幅が狭くて4人並べないとき(たいていは,そうだ)などに使うと便利だ

 

車など,軟弱な遮蔽物の背後に敵がいる場合,擲弾筒を使って遮蔽物ごと吹き飛ばしてやろう。ただし別のチームが制圧射撃を加え,敵を押さえ込んでおくことが必要だ それぞれのマップはかなり広めだが,進行ルートは基本的に一つ。敵をすべて倒す必要はなく,適当にスキップできる場合もある。確実に一歩一歩作戦を進めていくことが大切 負傷者はどんどん交代していくし,イギリス軍の指揮を任されることもあったりで,前作に比べて各キャラクターへの感情移入度は低め。とはいえ,みんなで一緒に国へ帰ろうぜ

 

タイトル フル スペクトラム ウォリアー2 テンハンマーズ
開発元 Pandemic Studios 発売元 セガ
発売日 2006/09/21 価格 8190円(税込)
 
動作環境 CPU:Pentium 4/2.0GHz以上,メインメモリ:512MB以上,グラフィックスチップ:GeForce 4 あるいは Radeon 9500以上,HDD空き容量:2.9GB以上

(C)2005 Pandemic Studios, LLC. All Rights Reserved. Pandemic, the Pandemic logo and Full Spectrum Warrior: Ten Hammers are trademarks and/or registered trademarks of Pandemic Studios, LLC and are reproduced under license only. Exclusively licensed by THQ Inc. THQ and the THQ logo are trademarks and/or registered trademarks of THQ Inc. All rights reserved. The Full Spectrum Warrior game is not sponsored or endorsed by the United States Army.

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