― レビュー ―
数少なくなってきた硬派なWWIIミリタリーRTSの最新作
ブリッツクリーグ2 日本語版
Text by 虎武須(Kobs)
2006年7月20日

 

熟し切ったジャンルに風穴を開けられるか?

 

ソ連軍キャンペーン。何としてもドイツ軍のモスクワ侵攻を防がなければならないという防戦ミッション。銀世界が印象的なマップだ

 ブリッツクリーグシリーズは,第二次世界大戦をテーマとしたミリタリーRTSとして,サドンストライクシリーズと共に人気が高い作品だ。この二つのシリーズは,どちらもパブリッシャはドイツの大手CDV Software Entertainmentで,クォータービューで緻密に描写されたグラフィックス,RTSの王道に則った操作感,リアルさを重視した硬派なゲーム性など,かなりの部分が似通っており,実際のところプレイヤー層はほぼ共通していると思われる。
 もっとも,この手の“硬派な第二次世界大戦モノ”は一般的なRTSとは異なり,資源収集や生産といった概念がなく,史実とかけ離れた設定やゲーム進行にもしづらいため,極端な独自性を持たせるのが難しいのは間違いない。かなり乱暴な言い方をしてしまうと,両シリーズに大きな差はない。

 

 第二次世界大戦モノのミリタリーRTS全般にいえることだが,ゲームシステム的な観点からすれば,ほぼ完熟したジャンルだと感じているファンも多いのではないだろうか。実は筆者もそう感じている者の一人で,「第二次世界大戦を扱ったミリタリーRTSはどれも似ている」という感想を持つに至っている。そのため,結果的にゲームシステム云々よりも,シナリオの内容(というか,扱っている戦場)や,どこの国の軍隊がメインかで,購入するゲームを選択している人も多いのではないだろうか。

 

 さて,「ブリッツクリーグ2」(以下,BK2)の日本語版は,数多くの硬派RTSをリリースすることでお馴染みの,ズーから発売されている。ちなみにサドンストライクシリーズも,国内ではズーが取り扱う。
 前作「ブリッツクリーグ」には,「バーニングホライズン」「ローリングサンダー」といった複数の追加パックが存在している。だが,本作にあえて「2」と冠しているのには,何かワケがあるはずだ。今回はそのあたりを中心にレビューしていくことにしよう。大まかなところは前作とほぼ同じであり,基本的なゲーム内容が知りたい人は,前作のレビューを読んでもらえば十分だろう。

 

 BK2では「アメリカ軍」「ドイツ軍」「ソ連軍」という三つのキャンペーンが用意されている。3キャンペーンを合計すると,なんと68ミッション(!)もの戦いがプレイヤーの挑戦を待っているのだ。さらに敵国や友好国として「イタリア軍」「日本軍」「イギリス軍」「フランス軍」が登場し,歩兵だけで60種類,兵器の種類にいたっては250種類以上のユニットが収録されている。これだけでもミリタリーマニアにはたまらないものがあるが,さらにシリーズお馴染みとなっている「兵器事典」も用意されている。まさに大盤振る舞いというか,出血大サービスといえる数字だ。

 

日本軍の零戦と,米軍のワイルドキャットのドッグファイト。プレイヤーは操作できないが,つい見入ってしまう 美しい町並みも,激しい戦火の中で悲惨な状態に。2Dだった前作と比べても遜色ない,緻密な描写がうかがえる 戦地に向かう軽戦車のパレードだろうか。各章の冒頭に資料映像が流される。残念ながら吹き替え,字幕はなし

 

基本的には陸上兵器同士の戦いだが,航空ユニットも大活躍。カメラ位置の関係で大きく描かれるのが面白い RTSながら,夜間のスニークミッションも用意されている。援軍も期待できないので,スキルをフル活用すべし 兵器事典では,300以上あるユニットを徹底解説。超マイナーな兵器もフォローしているのでマニア必見だ

 

 

「援軍要請システム」の大きな変化がゲーム性を変える

 

お馴染みの落下傘降下も,本作では援軍要請の回数次第では大量投入が可能に。ちなみに降下前に輸送機が撃墜されると,当然ながら降下兵も全滅する

 前作と比較してさまざまな変化が見られるBK2だが,とくに大きな変化は二つ。
 一つはグラフィックスで,これが完全3D化されたこと。前作でも緻密で美しいゲーム画面は特徴の一つだったが,BK2で完全3D化されたことによって,自由の利くカメラワークが可能となり,よりダイナミックな演出が楽しめるようになった。もっとも,ゲーム中にカメラを動かす必要に迫られる機会はさほど多くはないと思われるので,3D化は純粋に臨場感を醸し出すためと考えるのが妥当だろう。ただし3D化に伴って,推奨動作環境が大幅に引き上げられた点は注意したい。

 

 そしてもう一つの大きな変化は,大幅に改善された「援軍要請システム」で,これがBK2の最大の特徴といっていいだろう。
 「援軍」自体は,この手のRTSでは当たり前のシステムで,生産の概念がない代わりに,援軍を要請することでユニットの補填や拡充,空爆や砲撃などの後方支援が要請できるというもの。ただ,既存作の援軍は“取って付けた程度”の存在という印象が強いのに対し,BK2ではキャンペーン全体の勝敗にも影響を与えるほどの存在となっている。

 

 BK2における援軍システムの見どころは,援軍に「指揮官」を任命できる点。指揮官は戦闘で得た経験値によって昇進していく。指揮官が昇進すると,援軍のスキルが4段階までパワーアップし,攻撃の精度が上がったり,何らかのスキルを得て,より高度な戦術を使えたりするようになるのだ。例えば歩兵が集束手榴弾が使えるようになったり,戦車部隊が移動射撃が可能になったり,爆撃機なら悪天候でも飛べるようになったりといった具合だ。

 

 先にも述べたが,BK2ではアメリカ軍,ドイツ軍,ソ連軍という三つの独立したキャンペーンがある。このキャンペーンは,それぞれ四つの章から成り立っており,各章は「予備ミッション」と「最終ミッション」で構成されている。予備ミッションには必須のものと必須ではないものがあり,必須の予備ミッションをすべてクリアすれば最終ミッションに挑戦可能で,これをクリアすると次の章に進めるわけだ。

 

 ここで重要なのが,ミッションごとの援軍要請の回数とは別に,章全体を通した援軍要請の回数も決まっている点(回数は難度によって変化)。各ミッションでいちいち援軍を使い切っていたら,最終ミッションで援軍が足りなくなったり,あるいは「次は最終ミッションだけど,必須じゃない予備ミッションに寄り道して経験値でも稼ごうかな」といったこともしづらくなるのだ。

 

 司令部からは,次にやるべきミッションが常に提示されるが,それに従うかどうかはプレイヤー次第。予備ミッションは,必ずしもキャンペーンの時系列に沿って進行する必要はなく,章の最終ミッション以外は,どのミッションからやるのも自由である。
 もちろん,最終ミッションがキャンペーンで一番の激戦となるのは確実なので,どう戦うにせよ,できるだけ無駄な援軍は呼ばずに戦力を温存しておきたいところ。うまくやりくりすれば,援軍要請を30回以上残したまま最終ミッションに挑む,なんてことも可能だ(難度によるのだが)。

 

画面左の戦略マップ上にあるアイコンが,ミッションが展開される戦地。どのミッションに着くか選択できる 援軍の指揮官任命は,一つのミッションをクリアするごとに二人まで追加できる。よく使う部隊を優先すべし ミッションをクリアすると新しい援軍部隊が配属されたり,より強力な兵器にアップグレードできたりする

 

ミッションブリーフィング。上官から大まかな作戦内容の指示が伝えられる。日本語なので複雑な任務も大丈夫 クリア後には,戦果に応じてさまざまな勲章が用意されているが,これは経験値やランクアップとは無関係だ 押し寄せてくる敵を撃退する,防衛戦も結構ある。コツを掴むまで,かなり苦戦を強いられることになるだろう

 

 

硬派な男は黙ってブリッツでしょ?

 

重要拠点をめぐっての激しい戦闘。戦車の数さえ揃えれば必ず勝てるというものではなく,偵察による視界確保や長距離砲撃といった,支援活動が非常に重要

 マルチプレイでは,Nival.netというロビーサーバーが用意されていて,世界中のプレイヤーとマッチングが可能だ。ここでは通常の対戦のほかにラダーゲームも用意されており,対戦成績に応じて勲章が授与され,レーティングによって対戦相手を自動で選んでくれる。
 ちなみに日本語版の発売当初は,バージョンが違うため海外のプレイヤーと対戦できない問題があったようだが,現在は「日本語版修正パッチ1.5」がリリースされているので,あらかじめズーの日本語版公式サイトからダウンロードして,導入してから臨んでほしい。

 

 ざっと見てきたが,新しい援軍要請システムの導入によって,前作と比べて全体的にやや自由度が増したという印象を持った。とかく堅苦しくハードルが高いイメージのあるジャンルだが,多少は遊びやすくなったのではないだろうか。とはいえ硬派なRTSであることには変わりなく,腕に覚えのあるRTSプレイヤーならば一度はチャレンジしてもらいたい。
 先述のとおり,アメリカ,ドイツ,ソ連という三つのキャンペーン,合計で68種類もの内容の濃いミッションが待ち構えている。とくにアメリカ軍キャンペーンでは,ガダルカナル,フィリピン,硫黄島などといった太平洋戦争の激戦が再現されており,こうした内容のミッションにRTSでお目にかかることは少ないだけに,プレイする価値は十分だ。
 すべてのキャンペーンをクリアするにはかなり時間を要することだろうが,腰を据えて長くじっくり楽しみたい人にお勧めだ。

 

物干し竿屋のトラックみたいなBM-13ロケットランチャー。凄まじい連射で戦車部隊を一網打尽にする姿は強烈 市街戦は死角が多く,闇雲に突入すればあっという間に全滅の憂き目。待ち伏せ回避のため,索敵をしっかり行おう 雪原での夜間戦闘時は,ヘッドライトや爆発などの光源が幻想的に浮かび上がる。見とれてばかりもいられないけど

 

北アフリカ戦線は,ドイツのロンメル将軍が大活躍したことで知られている。砂漠は意外に起伏が多いので注意 画面を覆う,ソ連軍のTB-3重爆撃機。BK2に登場する航空機の中では,最も大型の機体だろうか。とにかく大迫力 夜間,哨戒艇に輸送されて敵地の真っ只中へ潜入。限られた兵力で敵の前線を攪乱しなくてはならないミッションだ

 

タイトル ブリッツクリーグ2 日本語版
開発元 Nival Interactive 発売元 ズー
発売日 2006/06/23 価格 8190円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c),CPU:Pentium 4/1GHz以上[Pentium 4/2.40GHz以上推奨],メインメモリ:320MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量2.5GB以上

(C)2005 CDV Software Entertainment AG. All rights reserved. CDV, the CDV logo and Blitzkrieg 2 are either registered trademarks or trademarks of CDV Software Entertainment AG or Nival Interactive in the US and/or UK and/or other countries. Uses Bink Video.(C)1997-2005 by RAD Game Tools, Inc. Uses Miles Sound System.(C)1991-2005 by RAD Game Tools, Inc.

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http://www.4gamer.net/review/blitzkrieg2/blitzkrieg2.shtml