ブリッツクリーグ

Text by 虎武須(Kobs)
25th Nov. 2003

 

 第二次世界大戦にドイツ軍が誇った"ブリッツクリーグ"(電撃戦)とは,敵前線の手薄な場所に空爆で風穴をあけ,混乱に乗じて歩兵部隊や機甲部隊が一気に突入,同時に敵後方に空爆を行いつつ空挺部隊の降下により補給線を絶つことで,あっという間に敵地を占領する作戦だ。
 この「防御する手段がない」とまでいわれた電撃戦をタイトルに冠したのが,ロシアの大手ゲームデベロッパNival Interactive社が開発し,ドイツのCDV Software社が販売する,ファン待望のミリタリーRTS「ブリッツクリーグ」(以下,BK)。日本では2003年11月28日にズーから発売される予定となっている。
 もちろんBKは電撃戦だけを扱ったものではなく,第二次世界大戦中のヨーロッパ,アフリカ,シベリアを舞台としている。

サドンストライクの後継作登場

ヨーロッパの美しい町並みが,爆撃によって無残な姿に……

 ミリタリーRTSファンに根強い人気を誇り,スタンダードの地位を確立しているタイトルとして,「サドンストライク」(以下,SS)シリーズが挙げられるが,開発会社やタイトル名は違うものの(SSシリーズの開発元はハンガリーのFireglow Studios社)ものの,同じCDV Softwareからの発売ということもあり,BKはファンの間ではSSシリーズの後継として認知されているようだ

 ゲーム画面はお馴染みのクォータビューで,情景に富んだフィールドをちまちまとしたユニットが駆け巡る様子は,SSシリーズと非常に似ている。しかしグラフィックスはより緻密になっていて,とくに市街戦では顕著に見受けられる。精密に描かれたヨーロッパ風の美しい町並みが戦場と化していく様は,圧巻である。
 地形の滑らかな起伏の描写は,索敵が重要なポイントとなるこの手のゲームにおいて評価すべき点だ。なお昨今の一般的なRTSに見られるような,派手な爆発シーンといった大袈裟な演出はなく,あくまでリアルさを追及した描写となっている。戦車や装甲車など兵器類の描写も緻密で,ビジュアル的な不満点は見受けられない

 またBKには雨や雪といった天候の変化があり,これに伴って戦況が変化する点も見逃せない。例えば天候が悪くなると,爆撃や偵察といった空軍による「エアサポート」を受けれなくなるのだ

SSシリーズでも御馴染みの空挺部隊。敵の背後に侵入せよ! アフリカ戦線での砂漠マップ。砂漠は起伏が穏やかなため,索敵しやすい

 

新要素によって,より戦略的な戦いが可能に

 BKは,システム的にもSSシリーズを踏襲しているといえる。
 ほかの多くのミリタリーRTSと同様にBKには生産の概念が無く,プレイヤーは戦略に集中できる。とはいえSSシリーズと同様に"援軍"というシステムがあり,一定の条件が揃うごとにユニットの補填が行われる

中央に写っているのは600ミリ重迫撃砲。こんなので砲撃されてはひとたまりもない

 また敵の大砲を奪い取ることもできるため,闇雲に敵ユニットを破壊するのは得策ではない。

 BKで新たに加わった要素として,隊形システムがある。これは,条件に応じて防御隊形や攻撃隊形などを選択することにより,ユニットをその能力に特化した状態にできるというもの。例えば攻撃隊形なら,敵の攻撃を受けても伏せることなく突進していくので,攻撃力は高いが防御力が低い。防御隊形なら,伏せたままなので敵に発見される確率や被弾する確率は低くなるが,移動速度が犠牲になる。こうした設定が兵士一人一人ではなく,編成を組んだ部隊ごとに設定できるのがありがたい。

 戦車を始めとした兵器には前面,側面,後部,上部の各部位に装甲値が設定されているのも見逃せない点だ。つまり正面からダメージを与えられない装甲を持った戦車でも,側面からならダメージを与えられるといった具合だ。
 また戦車や大砲といった兵器類は,塹壕を掘ったり土嚢を積んだりすることで,より防御を高めることができるようになった。こうした改良点により,より戦術性が高められたといえるだろう。

 なおBKには兵器事典が用意されていて,ゲーム内でさまざまな兵器の知識を得ることができる。さらにズーから発売される日本語版では,初回限定版にのみ112ページにも及ぶ兵器事典の冊子が同梱される予定なので,これを目当てに予約するのもいいだろう。

列車型の兵器も登場する。破損した兵器は,支援車によって修理可能だ CGムービーからのひとコマ。実写とCGを織り交ぜたムービーで,いやでも士気が高まる

 

3種類用意されたゲームモード

厳寒のシベリアでの作戦もある。トーチカの破壊は容易ではない

 BKでは,キャンペーン,シングルミッション,マルチプレイの3種類のゲームモードを選択できる。
 キャンペーンは登場するドイツ軍,ソ連軍,連合軍の3勢力ごとに用意されていて,23のヒストリカルミッションと60のランダムミッションから構成されている。ヒストリカルミッションは,史実上の戦いを再現したもの。ランダムミッションは,用意された数個のミッションから一つを選び,クリアすることで新しい兵器を獲得したり,経験値を得たりできるものだ。
 キャンペーンでは,ユニットを次のミッションへ持ち越しできる。また兵士には経験値が設定されていて,経験を積むことで階級が上がり,より強力なユニットとなるのだ。このため兵器は使い捨てというわけにいかず,慎重に進軍し,いかに一つも失わないかがキャンペーンを通じての鍵となる。
 もちろんプレイヤー自身も経験を積むことにより昇進してゆく。プレイヤーが入手する経験値は,ミッションを遂行したときに,いかに指揮したかによって変化する。なお,何度もセーブ/ロードを繰り返してミッションクリアしても戦術能力がマイナスとなるため得られる経験値は少なくなるというシビアさだ。

 シングルミッションは,任意のキャンペーンシナリオを選択してプレイできるもの。そしてマルチプレイは,最大16人でプレイ可能で,LAN,IP直打ちによるインターネット対戦と,GameSpyを利用した専用ロビーが用意されている
 専用ロビーを利用すると,プレイヤーはGameSpyを意識することなく,簡単に対戦相手を見つけられる。「ウォークラフトIII」や「コマンド&コンカー」シリーズのクイックマッチほどではないにせよ,手軽に対戦相手を見つけられるのは歓迎すべき点だろう。
 マルチプレイで遊べるのは,"フラグ争奪"と,"デスマッチ"の2種類だ。フラグ争奪は,マップ上に散在する旗を奪い合い,旗を占領している間に溜まるフラグポイントを競い合うもの。援軍が一定時間ごとに補充されるので,逆転のチャンスが常にあるというのが魅力だ。デスマッチは,攻撃側のチームと防衛側のチームに分かれて旗の攻防を繰り広げるもので,攻撃側が一つでも旗を占領するとゲーム終了となる。BKは防衛線を張りやすいため,なかなか面白い対戦が楽しめる。筆者がプレイした感じでは,フラグ争奪のほうが人気があるようだ。

ミリタリーRTSファンならずとも遊ぶべき逸品

 ミリタリーRTSは,一般的なRTSと比較してハードルが高いイメージがある。またほとんどのタイトルがリアルさを最重視しているため,爽快感を求めるプレイヤーには物足りない部分もあるだろうと推測する。
 しかしもちろん,こうしたミリタリーRTSならでは魅力もある。中でも筆者がとくに魅力を感じるのは,生産に手を煩わすことなく戦略に集中できる点だ。索敵と部隊の配置,細かな戦術,地形を利用した優位性の確保など,一般的なRTSとは比較にならないほどの戦略性こそがミリタリーRTSの醍醐味といえる。
 BKもやはり戦略性の高さを持ちながら,かつSSシリーズと比較して遊びやすさも高まっているように感じた。大砲の発射地点が索敵せずとも分かる点や,マルチプレイのしやすさもその要因の一つだろう。
 ミリタリーRTS好きな人はもちろん,「クロースコンバット」シリーズやSSシリーズが肌に合わなかった人にもぜひ試してほしい作品だ。

兵器事典。ゲームに登場する230種類の兵器のデータが細かく記されている ブリーフィング画面。ミッションについての詳しい説明を受けられる ミッションを遂行すると,戦績によって勲章が授与される キャンペーンではミッションが進むにつれてユニットのアップグレードが行われる

 

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■発売元:ズー
■問い合わせ先:TEL 0268-38-1561
■価格:8800円(2003年11月28日発売予定)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/366MHz以上(800MHz以上を推奨),メモリ 64MB以上(128MB以上を推奨),HDD容量 2.4GB以上,メモリ8MB以上搭載したビデオカード(搭載メモリは16MB以上推奨),DirectX 8.1以上
Screenshots集
ムービー(4分35秒:68.8MB)
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