― レビュー ―
もう出ないと思っていた拡張パックの日本語版が2年ぶりに登場
創世紀1503 〜海賊の秘宝〜
Text by Murayama
2006年3月13日

 

■海洋箱庭シムの決定版「創世紀」シリーズ

 

貿易,戦闘,都市作りと,大航海時代のすべてが詰まった「創世紀1503」。2年ぶりに発売された拡張パックで,より面白くなる!

 ドイツのSunflowers Interactiveが1998年に開発し,日本ではズーからリリースされた「創世紀1602」(原題 Anno1602)は,海洋貿易をテーマにした箱庭シミュレーション。実に緻密な都市作りが楽しめる作品で,プレイヤーは資源の採取や加工を駆使して国家の基盤を築き,他国との貿易はもちろん,ときと場合によっては軍事力を用いて他国と戦うことも可能だ。
 2003年には続編の「創世紀1503」(原題 Anno1503)がリリース。ボードゲーム大国のドイツが贈る,秀逸な海洋シムとして不動の地位を築いていった。こちらの日本語版も,ズーからリリースされている。

 本シリーズの最大の特徴は,都市作りの奥の深さにある。基本的には土地を選んで施設を建てていくのだが,例えば畑を作って小麦を収穫したあと,粉ひき小屋で小麦粉に加工,パンを焼いて普通に食料として供給したり,あるいはビールに加工して酒場経由で供給したりなど,実に凝ったことができるのだ。ちなみに好きな施設だけ建てていればOKというわけではなく,土地の性質(特定の作物が育たない土地もある)を考慮しつつ,住民の要望に応えることも大事。需要と供給のバランスを取ることが繁栄のコツなのは,箱庭ゲームの定石どおりといえよう。

 また,一度建設した施設をずっと維持していればいいわけではなく,どこかで大きな転換期が訪れる点も面白い。資源は序盤こそ自給自足でもなんとかなるが,後半戦では税収を活かして加工貿易や輸入を駆使しなければ国家を維持できない。発展していくうえで欠かせない鉄鉱石などの資源が,自分の島にはないなんてこともあるのだ。一度作った国家を維持するだけではなく,こいういった転換期があるために,プレイがマンネリ化しにくいのは評価したい。

 今回紹介するのは「創世紀1503」の拡張パック「創世紀1503 海賊の秘宝」。なお本体となる「創世紀1503」については,すでにレビューがあるので,本記事では拡張内容にスポットを当てて紹介していこう。

 

3段階のズームイン/アウトがあり,90度単位で画面を回転させられる。最大拡大時には,動物の鳴き声が聞こえたり人々の喧噪が味わえる

 

交易だけではなく,本格的な戦闘が楽しめる点も本作の魅力の一つ。海戦や陸戦はもちろん,状況によっては砦を相手に戦うこともある

 

 

■15本の個性的な新シナリオ

 

拡張パックでは,3種の「継続ゲーム」と,12種の「新シナリオ」が追加になる

 本拡張パックでは,3本の「継続ゲーム」,12本のシナリオ,10種の建造物が追加されるほか,いくつかの新機能が楽しめる。まずはシナリオから紹介していこう。追加になったシナリオは下記の通りだ。

 

■新継続ゲーム

 

・華麗なる建築家

肥沃な大地を舞台に,豊富な資金を使っプレイヤーの思うがままに都市開発が行える。スタートと同時にすべての建造物が建設できる点もよい

 

・邸宅の所有権

中央の大きな島には豊かな鉱山が配置されている。いくつかの勢力が存在していて,プレイヤーの邪魔をしてくるので,牽制しながら都市作りを楽しめる

 

・戦略の天才

戦略といっても戦うわけではなく,建設しづらい孤島で,効率よい都市作りを行うというもの。立地条件の悪い土地で,プレイヤーは都市デザインの腕を試される

 

■新シナリオ

 

・スカベンジャーハント

数々の孤島を舞台にしたシナリオ。多数の動物がいる島を舞台に宝探しが楽しめる

 

・兄弟対決

弟によって奪われた都市を奪還するシナリオ。武装船と兵士を使って戦闘が楽しめる

 

・海賊の一生

海賊王の息子として生まれたプレイヤーは,三隻の海賊船を駆使して一帯を恐怖に陥れる

 

・鉱石の独占

鉄鉱石不足に悩むプレイヤーの街を助けるのが目的。鉱石の独占に乗り出すことになるが……

 

・海賊異常発生

多数の海賊が出現する海域で町作りを行う。海賊を退け,さらに海賊の保有する鉱石や財宝を自分のモノとするのだ

 

・モンタナとの交易

モンタナとの交易によって街を育てるシナリオ。都市作りはもちろん,交易の手腕が問われることになる

 

・唯一の支配者

散り散りになった仲間をまとめ,敵に反撃する。戦闘メインのシナリオなのでRTS好きにもオススメ

 

・密輸業者

プレイヤーは国王によって禁止された麻の栽培を行い,密輸ルートを確立することになる

 

・火を噴く山脈

火山の麓にある貧しい街を発展させる。どこかに隠されている海賊の財宝を見つけられれば街は豊かになるだろう

 

・先住アメリカ人の呪い

先住民族の呪いを解くために世界を探索して,呪いを解くための工芸品を探さなければならない

 

・小さな世界

船が座礁してしまったために,手元にはわずかな物資しかない。最低限の物資で街を建築する

 

・砂漠の決闘

砂漠を舞台にした戦闘シナリオ。要塞を攻略して敵国から財宝を奪うのが目的だ

 

 箱庭ゲームというと,「シナリオ」「キャンペーン」などといってもマップの構造と初期資金の違いだけで遊ばせるモノが多いが,本作ではシナリオごとに異なる目的が用意されている点は嬉しいところだ。また拡張パックで導入される新シナリオは,火山の噴火や海賊行為を楽しめるものなど,拡張パックならではの新機能を利用したものが多く,これまでのシナリオとは一線を画すデキとなっている。

 

新シナリオのマップ。他民族の建築物なども,いい味を出している

 

スコア表示機能があるため,繰り返してプレイできる。やり込み要素も十分 若干だがシナリオ性もある。これは「海賊の一生」のバックストーリー プレイ中に目的が変更になることも。こうしたケレン味も刺激があってよい

 

 

■新機能や新建造物

 

新ユニットの防衛塔は,うまく配置すれば堅牢な守りを実現してくれるだろう

 拡張パックでは,シナリオの追加が大きな見どころだが,ほかにもいくつかの追加要素がある。ここでは,そういった細かい新要素を紹介しよう。
 個人的に最も嬉しく思った機能は,船の拿捕が可能になったこと。本編では敵国の船を襲撃しても,ただ沈めるだけだったのだが,拡張パックでは海賊行為ができるようになっているのだ。敵船の航行ルートを把握しておけば,海賊稼業に勤しめる。また戦闘関連では,兵士や船にパトロールさせる機能が導入されたり,防衛塔という新ユニットが導入されたことで,より高度な戦術や防衛戦が可能になった。
 建造物では,ベニスの噴水,植木,将軍の殿堂,騎馬像,宮殿の門,装飾旗,宮殿のアーチなどが建設可能で,より美しい街作りができる。機能的な建物としては,倉庫が3種類に増えたほか,泥棒を防ぐ地方裁判所などが加わっている。
 また,緊張感を添えるエッセンスもいくつか追加された。地震/火山の噴火といった強力な自然災害の追加もあるが,ユニークなのは市民の不満が高まると発生する「暴動」。暴徒と化した住民が高い階級の住民宅を襲い,町が衰退するといった演出もあり,住民の要望に応える必要性は以前にも増してシビアになっている。

 拡張パックとしてのボリュームは,標準的だと思う。惜しむらくは,英語版の拡張パックが2004年3月にリリースされており,日本語版の拡張パックがもう少しタイムリーだったら……と思えてならない。また,現在では「創世紀1503」本体がなかなか手に入らないので,これから始めようとする人のために,本体と拡張パックと同梱したゴールドパックなどをリリースしてほしかった(何か事情があるのだろうが)。
 本体の発売からかなり時間が経っているので,グラフィックスはやや古めな感じがするが,絶妙なゲームバランスの上に成り立っている本作は,今でも十分に楽しんでプレイできる。レビューを書くために久々に本作を起動したが,やはり面白い。もちろん拡張パックを導入することで,新鮮かつ新しい戦術が存分に楽しめた。「創世紀1503」は,筆者の箱庭シムのベスト5に入るデキだと思っている。箱庭シムが好きならば,ぜひともこの機会にチャレンジしてもらいたい。

 

新しい建造物の追加で,より迫力ある都市作りが楽しめるようになった

 

新しい災害である火山。火山弾が降り注ぐと数々の建造物が火事になってしまう 中立勢力も追加になっている。シナリオによってはスケルトン,幽霊,ワニ,蜘蛛男などの敵も出現する

 

タイトル 創世紀1503 〜海賊の秘宝〜
開発元 Sunflowers Interactive 発売元 ズー
発売日 2006/02/03 価格 5040円(税込)
 
動作環境 N/A

"ANNO 1503 - Treasures. Monsters and Pirates" (C) 2004 SUNFLOWERS Interactive Entertainment Software GmbH. SUNFLOWERS is a registered trademark of SUNFLOWERS Interactive Entertainment Software GmbH. All rights reserved. ANNO1503 (C) 1998-2005 by SUNFLOWERS Interactive Entertainment Software GmbH.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/anno1503mp/anno1503mp.shtml